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労働ビッグバンの議事録

経済財政諮問会議が先月30日に行った労働ビッグバン関係の審議の議事録が内閣府HPに公表されています。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1130/shimon-s.pdf

八代委員からまず:

>再チャレンジに関しては非常に多くの施策があるが、1つ大事な点は、再チャレンジを妨げている規制を緩めたり、無くしていくということ。これは、残念ながら各省からの提案には余り出てこないと思う。フリーターの人が定職に就くために一つの専門的資格を取りたいと思った場合、例えば美容師や理容師は高卒以上でないと試験を受けられないという規制がある。なぜ義務教育だけで試験に挑戦することができないのか。こういう再チャレンジを妨げている規制の問題点についても是非よろしくお願いしたい。・・・

いや、仰るとおり、是非八代委員の大学でも実現していただきたいところです。

問題の派遣労働については:

>現行の労働者派遣法は、正社員を派遣社員との競争から守るという役割が含まれている。派遣社員の対象職種や働く期間の制限を見直し、本来の「派遣労働者の保護」という目的に特化させることが、雇用形態による格差を是正するための大きな鍵になるのではないかという意見もある。・・・

これもまた、全く仰るとおり。問題は「本来の派遣労働者の保護」という言葉で何を認識されておられるのか、それともそっちの中味は特に何かを提案する気もなく、ただ制限の見直しだけ主張されようとしているのか、ということでしょう。

私自身が

http://homepage3.nifty.com/hamachan/rengohakenukeoi.html

で喋ったように、そもそも現行の労働者派遣法は、派遣労働形態をできるだけごく一部に押し込めて、終身雇用形態に影響が出ないようにという論理構成で作られたものであるだけに、ここまで派遣労働が拡大してくるといろいろと矛盾が生じてきています。ILO第181号条約がそれまでの民間労働市場サービス禁止制限から「事業は自由だが労働者保護は厳格に」という方向に舵を切ったように、派遣労働者の保護こそを法の最大の目的にして作り替えるべきだろうと思っています。

そういう総論では八代委員のご意見とは見事に一致するのですが、残念ながら規制改革会議の累次の答申を見ても、この規制をなくせ、あの規制をやめろというものしかなくて、具体的にどのような保護を加えるべきというようなご提案は見当たらないようです。もっとも、経済学者としては、余計な規制をなくせばマーケットメカニズムで自動的に派遣労働者は正社員並みに保護されるようになるはずだというご趣旨なのかも知れませんが、産業革命以来の2世紀の歴史は必ずしもそうではないことを物語っているように思います。

後ろの方で、

>新しく雇用される人にとってみると、例えば3年間の派遣が4年である方が、雇用はより安定するが、3年に制限されるということは、その企業でもっと働きたいと思う人が、法律によって首を切られることになる。派遣期間を制限することで、本当にその人が正社員になれる保証はどこにあるのか。規制というのは、それが持つプラス・マイナスをきちんと判断した上で必要になるのではないか。

と発言されていますが、それなら3年と期間を限られていない26業務の方々は大変ハッピーなはずですが、派遣で働いている限り、それが例えば伊予銀スタッフサービス事件のように、半年ごとの更新で13年あまり継続勤務した派遣労働者がある日派遣契約を解除されたら、一切何も補償がないわけです。直用の有期であれば、更新を繰り返して常用と変わらない状態にあれば解雇権濫用法理の準用という道がありますが、派遣には何もない。この事件は最近最高裁までいってエンドースされましたから、まあ、派遣労働者はどんなに長く使ってもいつでもただでクビを切れるということになってしまっているわけです。「正社員保護よりも派遣労働者の保護を」という言やよし、さてその中味は何があるのか、これから専門調査会でご披露いただけるのでしょう。

まじめな話、そろそろ派遣法の基本構造はオーバーホールした方がいいとは私自身思っているので、その刺激剤としては大変貴重な問題提起ではあろうと思います。

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