最低賃金見直し大詰め
12月1日に労政審の最低賃金部会に提示された見直し案が厚労省HPに載っていますが、
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/s1201-3.html
これをみると、遂に職種別設定賃金というのが消えたようですね。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1201-3a.pdf
まあ、もともと規制改革会議が産業別最賃を廃止しろといったことから始まった今回の見直しですが、昨年初めの在り方研報告がセーフティネットとしての最低賃金という観点から、生活保護水準との関係にも言及して地域最賃の見直しも検討範囲に入り、昨年労政審の審議が始まったわけですが、その中で産別最賃に代わって職種別設定賃金などというものが出てきてから話がややこしくなり、今年1月に一旦中断し、4月に再開されてからもああでもないこうでもないとごちゃごちゃやってきていたわけです。
はっきり言って、日本には職種なんてモノ自体がほとんどないのですから、職種別の賃金もなく、それゆえ職種別設定賃金なるものを公的に設定するなどということができるはずもないわけです。これからの日本を、欧米型の職種型社会にしなければならないという、崇高な理想に萌えられるのは結構ですが、現実にないモノの上に何やら精緻な制度を設計しようたって、そんなことできるはずもないのは分かり切ったことだったはずなんですが・・・、その分かり切った結論にいたりつくのにここまでかかったということのようですね。
今回の案では、今まで違って地域最賃の方が先に来ています。これは当然のことで、最賃の意義は何よりも地域最賃にあるのですから、そこに「「地域における労働者の生計費」については、生活保護との整合性も考慮する必要があることを明確にする」と書かれることには大きな意義があると思います。これこそ今までこのブログでも何回も書いてきたメイク・ワーク・ペイの話ですね。
で、その後に産業別最賃が復活しました。いろいろこねくり回した挙げ句、やっぱり産別しかないよな、ということになったようです。ただ、今までの産別最賃と異なり、「一定の事業又は職業について決定された最低賃金については、最低賃金法の罰則の適用はないものとする。(民事効)」というふうになっています。これはつまり、一般的拘束力を持った労働協約と同じ効力しかないんだよ、ということですから、話としては大変筋が通っています。だって、最低賃金というのは本来労働組合がこれ以下では労働力を売らないよというラインであって、それをアウトサイダーに強制するのが一般的拘束力なわけですから。
これに対して、「労使各側とも持ち帰って検討することとなった」とのことで、「年内のとりまとめに向けて、部会長から労使各側に対して特段の協力が要請された」と書かれています。規制改革会議は顔を潰されたと怒るかも知れませんが、まあこんなところじゃないですかね。少なくとも、ジョブなき日本社会にジョブ賃金を六法全書の上だけで書いてしまうという暴挙に行かなくてよかったと思います。
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「危険ではないか?」に続いて、hamachanさんにエントリー(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_99cb.html)に、関連して。 [続きを読む]
» 労働基準監督署に行く前に! [労働基準監督署に行く前に!]
はじめまして「労働基準監督署に行く前に!」の まこ と申します。
突然のTB失礼します。
ご迷惑でないかと、とても心配なのですが、
ブログを初めて書き始めたばかりで、
TBというのが良くわからずに…しかし…どうしてもしてみたかったのです。
ご気分を悪くなされたのではと不安でいっぱいです。
しかし、勉強させていただきたいと思いTBさせていただきました。
ぜひ仲良くしていただく事は出来ないでしょうか。
二度とTBはするな!と言われても、決しておかしくないのですが、
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