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2006年11月 1日 (水)

雇用保険の国庫負担

日経によると、財政制度等審議会は雇用保険への国庫負担を全廃すべきとの考えで一致したとのことです。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061101AT3S3102731102006.html

この問題は3年前からずっと言われ続けている問題ですが、最近景気が好調で雇用保険の保険料の積立金残高が今年度予算で3兆3800億円にのぼるなど財政が健全化したことが後押ししたようですね。

会合では「雇用された人だけが対象の保険に国庫負担をすべきではない」との意見が続出したということなのですが、それでは雇用されたことのない人(学卒後そのまま無業の人など)には一般会計からお金を出してあげましょうという話にはなっていないようです。

この問題を考える上では、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(10月10日)に提出された岩村正彦先生のペーパーが頭の整理として大変役に立ちます。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1010-10a.pdf

「①失業保険制度に国が財源を投入するかは国によって異なる。

→失業保険だから国の財源投入は必要ないというわけではない。

②失業保険に国の財源投入がない国の場合、別途税財源による失業扶助制度があり、失業保険と公的扶助との間をつなぐ役割を担っていることが多い。

③失業保険も失業扶助も、機能としてはいずれも失業者に対する所得保障等の仕組みであり、国際比較をする場合には、両者を一体としてみて比較する必要がある。

④仮に国庫負担を廃止すれば、それまでと同じ給付水準を維持しようとすれば保険料率の引き上げが必要となり、雇用に悪影響を及ぼすし、それまでと同じ保険料率を維持しようとすれば、給付水準の切り下げが必要となり、失業扶助制度のないわが国では失業者に深刻な影響を与える。

⑤国庫負担を廃止しても、失業状況が悪化したときには国庫負担を投入する仕組みを用意しておけばよいという考え方もあるが、

1)失業状態を当局が把握するまでのタイムラグ、

2)当局が把握してから国庫負担投入の決定までのタイムラグの問題があることに加えて、

3)一度廃止した国庫負担の再開には当然財政当局の強い抵抗があること、

を考えると現実性に乏しい。」

理屈はほとんどこれに尽きています。ま、しかし「西室泰三会長は会合後の記者会見で「現在の雇用保険会計は極めて健全。労使拠出だけで賄える。国庫負担は全廃してもいい」と明言した」のですから、理屈の世界ではなくなりつつあるようですね。

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コメント

労働官僚のhamachanとしては、雇用保険制度は現状維持の方向でいきたいと思ってるんですね。
私としては、田近先生の意見も注目しています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1010-10b.pdf

おっしゃるように、田近先生のペーパーも大変興味深く示唆的です。

私は別に何が何でも現状維持と思っているわけではありません。ただ、変えるなら変えるなりの突っ込んだ議論が必要だろうと思っているだけで。
むしろ、生活保護も含めてがらがらぽんというドイツ型の実験は大いに検討する必要があると思っています。

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