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2006年11月13日 (月)

自由度の高い働き方にふさわしい制度の具体的内容

金曜日のエントリーの続きです。土曜日に水口洋介さんのブログに、この制度の素案の文言がアップされました。今のところ厚生労働省も連合もHPに出していませんが、今までの経緯からして、間違いなくこの文言で提示されたのだろうと思います。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/11/1110_f76a.html#more

これを読んで、私がまず感じたことは、標題の「自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設」というのを除いて、自律だの自由だのといったふわふわ語が姿を消しているということです。対象労働者の要件は、

ⅰ 労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者であること
ⅱ 業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者であること
ⅲ 業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者であること
ⅳ 年収が相当程度高い者であること

とされています。つまり、業務内容自体の決定自体については使用者の具体的な指示が行われるような労働者であるということですね。そういうのを「自由度の高い働き方」というのかね、という気がしますが、逆にいうと、標題に目をつぶると、いわゆる総合職の上層部に相当する働き方である、といっていいように思います。

週休2日の義務付けはこういう書き方です。

① 労使委員会は,次の事項について決議しなければならないこととしてはどうか。
ⅲ 週休2日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日を特定すること
(3) 制度の履行確保
 ① 対象労働者に対して,4週4日以上かつ一年間を通じて週休2日分の日数(104日) 以上の休日を確実に確保できるような法的措置を講ずることとしてはどうか。

恐らくこのこころは、労働時間規制は(残念ながら理屈は通らないのだけれども)外してしまうので、その代わりに休日規制をぐぐっと厳格にして、1年365日のうち約3分の1近くは休んでいるようにしよう、という発想なのでしょう。

ただ、ちょいと気になるのは、本質的には自由じゃない働き方なんですから、この制度の対象者じゃない人が週休1日で働いているのに、あるいは休日出勤して働いているのに、エグゼンプトさんが休めるんだろうか、ということです。ここには具体的なイメージは出てきませんが、以前は「管理監督者の一歩手前」といっていましたよね。すっごく具体的に言うと、係長や係員に土曜出勤させといて、課長補佐が俺はエグゼンプトだから出勤しちゃいけないんだといえるんだろうか、と。現実にはそういう風にはやれないんじゃないかな、と経験からすると思うわけです。

労働側にホワエグを呑んで貰うためにいかにも厳しそうな案を出すというのは、割賃の時と同じような気がします。仮にこういう制度設計で法律を作ったとしても、実際に動き出すと「こんなんじゃ動かない」という悲鳴が続出して、規制改革サイドからまたぞろ攻撃を受けて、結局ここは緩和するという話になってしまうような感じがします。

もう一つの健康福祉措置はこれです。

② 健康・福祉確保措置として,「週当たり40時間を超える在社時間等がおおむね月80 時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には,医師による面接指導を行うこと」を必ず決議し,実施することとしてはどうか。

これはすなわち、本制度は労働時間規制の適用除外であるとはいいながら、週40時間を超える在社時間をきっちりと把握し、それに基づく(ある意味でパターナリスティックな)行為をしなくちゃいけないと言うことですね。これは、経営法曹会議の明敏な弁護士の方が既に指摘しておられたように、管理職だろうがホワエグだろうが、安全配慮義務から逃げられるわけではない、ということからすれば当然のことではありますが、それを面接指導の要件という間接的な形で規定しようというところが、直接規定できないつらさの現れということになるのでしょう。

アメリカのホワイトカラーエグゼンプションにも存在しない、物理的労働時間の規制それ自体の包括的な適用除外という制度を、日本の法体系の中に無理に持ち込もうとするからこういうことになるんだ、と私は思うのですが、閣議決定で方向が決まっている中での最大限の工夫が凝らされた案と考えれば、事務局サイドからの案としてはこれがぎりぎりなのかなという気もします。

あとは労使の側が工夫を凝らすべき順番ですよ。

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コメント

入手した「素案」をアップしておきました。

水口さん、有り難うございます。
ホワエグ以外のところについても、コメントをしたいと思います。

僕も、水口さんと同意見で、エグゼンプトが広く導入されると、普通の労働者の労働供給が増えざるを得ないと思います。月80~100時間残業まで働いてしまうのではないか。
濱口先生の問題意識も分かります。先ずは生命身体の危険性のある労働者を守ると。(政府案では相変わらず「労働者の申し出」による面接ですが…。でも副作用として、普通の労働者が競争にかり出されると困りますね。ライシュの勝者の代償を読んだりするとそう思ったり。競争したい人は問題無いですけど。

年収が高い人だと、統計的には結婚もできるし、専業主婦(夫)になってもらうことも可能でしょう。家事をしてもらうことが可能になります。
でも400万クラスだと、結婚後も共働きで子育てすることになります。家事育児の時間も要ります。どちらかというと、エグゼンプションで競争よりは、調和の方が求められている気がします。

ⅲの『業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者であること』がきちっと守られると、仕事を必死に終わらせて帰ろうとするインセンティブがあるエグゼンプト労働者を上司が呼び止めて新たな仕事を押しつけることも無いのですが。。。これが守られるかどうか。まあ完全には無理でしょうが、相当程度守られることが必要です。
企画業務型裁量労働制が破綻したのも、結局「指示したい」からですもんね。
悪用防止の知恵を絞れば絞るほど、企業には使いにくくなる。落としどころはどこでしょうかねー?

実のところ、「業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこと」という要件はあんまり意味がないと思っています。山のような課題をどさっと机の上に積み上げられたら、どれからどういう風にやっていこうが、結局手際のいい人はさっさと終わらせるし、そうでない人は深夜までかかってこなすしかないわけです。

では、何でコントロールするかと言えば、物理的時間量でイエローカードラインを引いて、これだけの業務量をこなすのにこれだけの時間がかかる人には、これだけ減らしてこれっぽっちの業務量にするというやり方しかないでしょう。その結果査定が低くなって年収が下がるかも知れませんが、それはやむを得ないという割り切りでいかないと、話が進まないと思います。

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