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2006年11月22日 (水)

労働者派遣の構造転換

日本経団連が内閣府規制改革・民間開放推進室に提出した要望事項が昨日公開されていますが、雇用労働分野では5項目で、うち3項目が労働者派遣関係となっています。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/077.html

具体的には、

(2)自由化業務における派遣期間制限の撤廃

(3)派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止の撤廃

(4)派遣労働者への雇用契約申込義務の廃止

で、これらがまさに現在労働政策審議会職業安定分科会労働力需給部会で議論されている点であるということはご承知の通りです。

日本経団連の主張は畢竟するところ、派遣先への紹介を予定しなくても事前面接を可能とし、そうして特定された形での派遣就労を期間の制限なく恒久的に可能にしたいというところにあります。これが、これまで原則として禁止された労働者派遣システムを例外的に認めるために設けられてきた理論的防波堤を突き崩すものであることはいうまでもありませんが、その論理的帰結を突っ込んで考えると、恐らく経営サイドが想定しているのを超えたインパクトが考えられるのです。

 まず、労働者派遣において一般的に事前面接を解禁するということの含意を考えてみましょう。現在、紹介予定派遣において事前面接が認められているのは「円滑な直接雇用を図るため」とされています。だとすると、紹介予定派遣でなくとも事前面接をするのは、その時点で紹介を具体的に予定してはいなくとも、将来的に円滑な直接雇用を図る必要性が予想されているからでなければなりません。この改正は、労働者派遣全体に対して直接雇用への前段階的性格(テンプ・トゥ・パーム)を付与することになるのです。

一方で、派遣期間制限を撤廃し、雇用契約の申込み義務を削除することは、労働者派遣の「臨時的・一時的」性格を希薄にし、労働者派遣全体に対して恒久的就労形態としての性格を付与することになります。この両者が矛盾する性格を有することはもちろんですが、その点を批判するだけでなく、両者が同時に実現した場合の労働者派遣の法的性格がいかなるものとなるかを考えてみましょう。

それは、期限の定めなく恒久的に直接雇用への前段階的性格を有する就労形態ということになります。仮に臨時的・一時的な直接雇用への前段階であれば、これは一種の試用期間ないし試用契約であって、直接雇用を前提とする労働契約上の権利を制限する根拠があると言えるでしょう。逆に直接雇用への前段階ではない恒久的なものであれば、それ自体としての保護を考えればよく、直接雇用を前提とする労働契約上の権利を論ずる必要はないと言えるでしょう。しかしながら、この両者を併せて恒久的に直接雇用の前段階的性格を持ち続けるのであれば、直接雇用を前提とした労働契約上の権利を論じる必要が生じるのではないでしょうか。

これは、1985年労働者派遣法の法理念とも、1999年改正の法理念とも異なるものですが、そのような法理念が存在し得ないわけではありません。意外に思われるかも知れませんが、戦前期の労務供給事業に対する考え方は、まさにそのようなものでした。それ故に工場法その他の労働保護法規においては、供給労働者に対して供給先への直接雇用を前提とした労働契約上の権利を一定程度認める形で施策を講じていたのです。

経営サイドはそこまで想定していないでしょうが、一般的に事前面接を解禁し、かつ期間制限と雇用申込み義務を削除する改正は、派遣先責任を大幅に強化する形での労働者派遣システムのモデル改造(戦前型への復帰)をもたらす可能性があります。いつまでも規制緩和の一本調子が続くわけではないことも考えた上で、労働者派遣システムの将来像をどう構想するかと考えた方がいいのではないかと、老婆心ながらご忠告申し上げたいところです。

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