経済同友会はホワエグに疑問?
昨日、経済同友会が労働契約法制及び労働時間法制に関する意見書を発表しました。
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2006/pdf/061121.pdf
なんと言っても注目されるのは、日本経団連が成立を熱心に働きかけているホワイトカラーエグゼンプションに対して、かなり否定的なトーンになっていることです。
まずは「ホワイトカラーの自律的な働き方を可能とする制度(いわゆる日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)については、労働者は裁量を持ち柔軟な勤務時間で付加価値の高い仕事をしながら、より一層の自己実現や能力発揮を行い、仕事の生産性を向上させるとともに、健康確保や生活とのバランスを保つということは、将来進むべき方向としては適正な考え方である」としながらも、「しかし、仕事の裁量という点では、仕事の具体的な進め方(手順)について裁量を持つ従業員は多いが、何の仕事をするかという質、量やスケジュール(納期)にまで裁量のある者は多くはないのが現実である」と、全く正しい認識を述べ、「論点の中で、「緩やかな管理の下で自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者」という定義に合致する対象者は、年齢や資格、年収という基準よりも、仕事の質や種類によって適・不適が判断されるべきものである。一方で、年齢や資格、年収が高くとも労働時間を管理し、その長短によって処遇される仕事もあるのが実情である」とした上で、結論として「そうした分類を明確にすることが必要であるが、現行の裁量労働の対象業務はその適用業務が考慮されていることから、まず最初のステップとしては、裁量労働制の一層の活用から進めるべきである」と、新たな適用除外制度の導入には反対という立場を明らかにしています。
日本経団連の苦虫を噛み潰したような顔が目に浮かぶようですが、しかし、仲間内からこういう「裏切り行為」まがいの発言が飛び出してくるそもそもの原因は、自律だの自由だのといった、現実に対応していないふわふわ語をもてあそんでいたことのツケでもあるのだということをきちんと認識し直す必要があるのではないでしょうか。
ヘアヌードだけが売り物のエログロ週刊誌に「あなたの残業代は年間平均114万円カットされる!」などと煽り立てられるのを嫌がって、「いやいや残業代をどうこうしようというんじゃない。自律的に働くんだ、自由度の高い働き方なんだ」なぞと心にもない言葉をもてあそんでいるから、言葉の表面レベルの議論で正直に考えるまじめな経営者が「そんなこと言ったって、そんなに自律的でも自由でもないぞ」とホントのことを言ってしまうわけです。
ある意味でこれはホワエグの基本的な思想を考え直すいい機会ではないでしょうか。厚生労働省は規制改革会議の設定した矛盾した枠組みから自由になれないとしても、労使の方は、もっと自由に考えを提起することができるはずです。
ホントに残業手当を25%の割増を付けて全額払わなければならないような労働者はどこまでであって、必ずしもそうしなくてもいい労働者はどこからであるのか、という正直ベースの議論に取り組んでいけば、それが具体的に幾らになるかがすぐに答えが出るわけではないにしても、少なくともどこかのラインで線が引かれるべきであろうという点については、合意は成り立つはずなんですがね(まあ、連合さんも応援団が週刊ポストなんぞを振り回して絶叫するとなかなか引くに引けないつらさはあるでしょうが)。
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