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2006年10月

許し難い本

戸塚悦朗氏の『ILOとジェンダー 性差別のない社会へ』(日本評論社)です。

453551205101_ss500_sclzzzzzzz_v65930225_http://www.amazon.co.jp/ILO0680b80a70f30c00fc-15%6027-eeR2506e06a044y3eO1a078-%E6%88%B8%E5%A1%9A-%E6%82%A6%E6%9C%97/dp/4535512051/sr=8-1/qid=1162257800/ref=sr_1_1/503-1488340-3867946?ie=UTF8&s=books

いや、ジェンダーがけしからん、などとどこぞのおじさまみたいなことを言っているのではありません。題名だけ見ると、いかにもILOの男女平等政策を取り扱った本みたいに見えるでしょう。もしそうであるなら、この分野は類書が比較的少ないだけに、有益な本という評価になるところです。

ところが目次を見るとですね。「第1章 ILO創設と男女平等賃金原則の成立」「第2章 国際機関を動かす女性運動」と、まともな内容がひとしきり続いたところで、次に「第3章 日本軍性奴隷問題とILO」なる文章が来る。これが何かというと、この戸塚氏が毎年のようにILOにいわゆる「従軍慰安婦問題」を持ち込んで騒ぎを起こしてきた経緯を延々と綴った文章です。

それがひとしきり終わって「第4章 日本の女性賃金差別とILO」で第100号条約という女性労働関連の話になったかと思ったら、最後の「第5章」で日本軍性奴隷が女性賃金差別の原因だとか、訳の分からないことを書いて終わっている。

いや、これがもっぱらいわゆる「従軍慰安婦」問題について書かれた本ならいいんですよ。どうせ、そういう人しか読もうとしないでしょうし、本来現在の労働問題を取り扱うべきILOに、「従軍慰安婦」は強制連行されたからILO強制労働条約違反だなどという馬鹿げた話を何回も持ち込んだアホな弁護士の手柄話か、というだけに終わりますから。

ところが、この本の半分はILOの男女平等政策についてのよくできた解説書になっているんですね。しかも、類書はあまりない。そうすると、各地各大学の図書館などでも、労働問題の棚に、これは必読文献だてな感じで入ってしまうんではないか、「国際労働法を学ぶ上で有益だから読んできたまえ」みたいな感じになってしまうんではないか、と怖れるわけです。というか、恐らくそういう効果を狙って、わざと外見はILOの解説書みたいな感じにして、中味で性奴隷、性奴隷、と繰り返しているのでしょう。

こういう本がはびこると、「ジェンダー?ああ、あれやろ、あの従軍慰安婦がどうたら喚いとるアホ女どもやろ、いらんいらん、はよいね」という反応がますます高まって、結果的に大変まずいことになると思うんですがね。まあ、しかし、こんなところで苦情をこぼしても何にもなりませんが。

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ビッグバンははや消えた?

今月14日のエントリーで、経済財政諮問会議の民間4委員が連名で出したペーパーで「労働ビッグバン」が打ち出されていたことを紹介し、思わず禁句の「本気ですか?」を出してしまいましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_b286.html

その次の会議(10月24日)に提出された同じく4委員連名のペーパーでは、「創造と成長のための7大重点改革分野」の一つとして「労働市場改革」が挙げられている形になり、あの「ビッグバーーン」は言葉としてどこかへ飛んでいってしまったようです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1024/item1.pdf

この「労働市場改革」も、単純に規制緩和バンザーイではなくって、なかなか練った表現ぶりになっていますよ。

2. 労働市場改革

ⅰ.労働市場制度の包括的改革(規制改革、機会均等と企業活力の両立等)

ⅱ.人材育成、人材流動化・多様化促進

ⅲ.再チャレンジ支援策

というわけで、ある意味で相対立する要請を同時に達成し、両立させていかなければならないんだ、というバランス感覚がおもてに出た表現ぶりですね。

ま、再チャレンジは安倍政権の看板ですから当然ですが、重要なのは「人材育成」と「人材流動化・多様化促進」をきちんと並べて、ダイバーシティというのは流動化すればいいというだけではなく、さまざまなタイプの労働者をきちんと人材育成していくという企業の責務とつながっているのだということをさりげなく示していることろでしょう。

「職種によって処遇が決まる労働市場」という変なお題目が消えたのも、とりあえずはそういう趣旨と受け取っておきましょう。

あそこで、本音のターゲットはこちらではないかと書いた公務員改革は、

7. 政府改革

ⅰ.公務員制度改革(官民の自由な人材移動のあり方等)

として、真っ先に書かれています。やはり、こちらが当面のターゲットであることは確かなようです。

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外国人労働者の雇用報告義務化

産経によると、「厚生労働省は、外国人労働者を雇用している企業に対し、氏名や出身国など雇用状況の報告を義務づける方針を固めた」そうです。

http://www.sankei.co.jp/news/061029/kei000.htm

現在労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会で審議している雇用対策法の改正の一つの柱ということですね。政策的な柱は先日書いた若年者の雇用促進対策になるのでしょうが、労働規制という観点からは一番大きいのはたぶんこちらの方でしょう。記事にもありますが、一応現在も職業安定法施行規則という省令レベルで、年1回の任意の報告を求めるという規定はありますが、強制的な効力はありませんし、不法就労対策にもほとんどなっていません。

今回導入しようとしているものは、記事によると「雇用対策法で企業による報告を義務化し、対象を外国人労働者を雇用する全企業に拡大する。報告内容も人数だけでなく、氏名や在留資格(医療、教育など)、出身国なども含める方針だ。また、報告は年1回ではなく、新規採用や離職など就労状況が変更されるたびに求め、違反企業には罰金などの罰則規定も設ける方向だ」ということですから、いわば不法就労者を使用する企業に対する武器を手に入れることになります。外国人労働者政策には噛んでいるとはいえ、法務省と異なり現場における実力権限をもっていなかった厚生労働省が、側面からの武器を行使できることになるわけですから、これは大きな力になりますね。

規制される企業側は、「日本経団連など経済界は不法就労防止の観点で義務化を容認する構えだが、その一方で原則として「専門的・技術的に優れた高度な人材」に限定されている受け入れ基準の見直しも求める意向だ」ということです。このあたりは一部の企業や学者の意見に引きずられて、多くの失業者や無業者、不安定就労者を残したままでうかつに単純労働者の受け入れ拡大に走ることのないように、気をつけていかなければならないところです。

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EUにおける労使立法システムの展開と問題点

本日の講演メモです。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hikakurodoundo.html

この比較労働運動研究会というのは、生活経済政策研究所というところが開催している主として政治学者の方々からなる研究会のようで、メンバーは以下の通りです。

http://www.seikatsuken.or.jp/

ちなみに、この研究所、「民主・リベラルの基本理念に立脚」しているそうなんですが、薬師院さんと同様、ヨーロッパ流の「リベラル/ソーシャル」の対立軸でものを考える癖のついている私には、大変耳障りな基本理念なんですけどね。

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今度は歳入庁ですか?

目まぐるしく変わる社会保険庁改革問題ですが、今度は「歳入庁」だそうです。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20061027/eve_____sei_____000.shtml

「政府・与党は二十七日、社会保険庁を給付などを担当するサービス部門と、保険料の徴収部門に分割し、徴収部門のみ国税庁に統合する「歳入庁」構想の検討に入った。年内に案をまとめ、関連法案を次期通常国会に提案する方針」だそうですが、これって(この部分だけをとると)民主党案なんですよね。

昨日のエントリーで書いた「分割」して「民営化」という作戦からきているんでしょうか。「自民党の中川秀直幹事長は同日の記者会見で「社会保険料と税金の徴収は、米国、カナダ、英国など数十カ国で一元化の方向にあり、世界の流れだ」と述べ、年金保険料の徴収部門を国税庁に統合する案を検討すべきだとの考えを示した」ということからすると、そういう流れのようにも見えます。「政府・与党で検討を始めた案は、給付部門と完全に切り離し、徴収部門もリストラした後で国税庁との一本化を検討するという内容」とのことなので、つまり厚生労働省には一滴も残さないという意思表示なんですかね。

なかなか気を抜けない今後の展開、ってとこですかね。

(追記)

おそらく、給付業務は民営化できても、徴収業務は公権力の行使そのものであり、いわば税務署そのものを民営化するようなものだということに改めて気がついたのでしょうか。

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20061029k0000m010047000c.html

「国税庁への移権案には丹羽氏が「年金制度が税方式へ移行しかねない」との懸念を示し、中川氏が27日の会見で否定する一幕もあった」ということで、年金の在り方の基本的な議論とも絡んでくるんですね。民主党のいう税方式を否定したい自民党としては、迂闊に歳入庁構想には乗れない。

個人的な意見を言えば、徴収業務のうち厚生年金や健康保険のような企業から賃金の一定割合を天引きする保険料は事実上労働保険と重なるわけですから、労働基準監督署が企業にサーベルちらつかせて徴収した方が効率的なように思いますね。国民年金や国民健康保険は市町村レベルの方が効率的ではないでしょうか。ま、こんなこと書くから、「ずぶずぶの労働官僚」とかいわれるんでしょうねえ。

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必修世界史の逆襲

話自体は必ずしも労働法政策と関係するわけではありませんが・・・。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061027it01.htm?from=top

いま日本中の受験校を巻き込んだ騒ぎになっている世界史必修逃れのバレバレ事件、規制緩和の人は何黙ってるんですかあ?受験による市場メカニズムに従って生徒のとりたい科目をとらせればいいのに、無理やり世界史を必修なんぞにしているからこういう事態が起こるんだと、なぜ反論しないんですかあ?

世界史なんぞを必修にしてるから、二言目には「歴史を見ろ」とうるさく喚く莫迦野郎がはびこると思っているんじゃないんですかあ?価格の神様さえ崇めておればいいのだから、下らん歴史なんぞ必修から外せと、はっきり言いたいことを仰ればいいんじゃないんですかあ?

世界史に加えて日本史まで必修にしろと喚いている文部科学大臣はとんでもない野郎だと、思っていることをはっきり言われたらいいんじゃないですかねえ。

(追記)

ちなみに、自民党の議員さんたちも、うかつに文部省の学習指導要領なんか従わなくてもいいんだ、と受け取られかねないような発言をしちゃってもいいんですかねえ。文部官僚も、ここはきちんと、そういうことを仰ると、日の丸君が代に従わなくてもいいじゃないか必修世界史すら従わなくてもいいんだからということになりますよ、とお諌め申し上げなければならないですねえ。

(再追記)

どうでもいいことだけど、必修逃れバレバレが高岡南高校じゃなくって、灘高校から始まっていたら、最初の世間の雰囲気はがらりと違っていただろうな、と。そんなん、今すぐ今年中に夜中に徹夜してでも単位とれ、何が受験がありますだこの野郎!さんざんやっとるやろが、てな感じになっていたのではなかろうか・・・。

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社保庁は分割民営化?

自民党の中川幹事長が、社会保険庁について「単に非公務員型の組織に移すだけではなく、分割や大幅な民間委託も必要なのではないか」と述べ」たそうです。

http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2006102601000206

今日の午前中に、福島市内で行った福島県知事選応援演説の中で「年金事業を保険料徴収部門と年金給付部門の組織に分割することなどを検討すべきだとの考えを示した」とのことです。

でたぁ、というところですね、必殺技の分割民営化。国鉄の悲劇再び、というところですか。

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過労死遺族会の陳情

過労死遺族会が、厚生労働省に対し、「自律的な労働制度」を導入しないよう要請したとのことです。

http://www.asahi.com/life/update/1024/007.html

>遺族らは「労働時間規制がなければ過労死・過労自殺に拍車がかかるのは明らか。犠牲をこれ以上出さないでほしい」と、規制の厳格化や企業への罰則強化を求めた。

ほーらね、だからいわんこっちゃない。「自律的」などという虚構の上にホワイトカラーエグゼンプションを組み立てようとしても、足もとがぞろぞろと崩れていくんですよ。

労働時間法制研究会報告以来の間違った方向を悔い改めないと、これからますます過労死を促進するエグゼンプションという批判が強まってきます。

彼らには本来こう答えるべきだったんです。「いえいえ、労働時間規制をゆるめようなんて考えていませんよ。高い給料貰っている人にまできちきちと残業手当を払わなくてもいいんじゃないかという検討をしているだけです。それがホワイトカラーエグゼンプションなんであって、皆さんがご懸念の過労死や過労自殺とは何の関係もないんです」と。

もちろん、「自律的」の罠に絡め取られている今の厚生労働省事務局にそんな回答はできないでしょう。

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団体交渉・労働争議

10月23日のエントリーの続きです。

「日本の労務管理」講義案の11回目「団体交渉・労働争議」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/dankou.html

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バイク便ライダー

阿部真大『搾取される若者たち-バイク便ライダーは見た!』(集英社新書)がなかなか面白い。

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http://www.amazon.co.jp/gp/product/4087203611

著者は1976年生まれの団塊ジュニア、受験戦争が終わったら就職氷河期が待っていたという世代。東大大学院で労働社会学をやっている人ですが、大学休学中にバイク便ライダーをやり、その体験をもとに「団塊ジュニア世代が直面する労働・雇用問題を社会学的な知見を駆使して考察した」のが本書というわけ。

キーワードは「ワーカホリック」。「好きで好きでしょうがないことを職業に」という『13歳のハローワーク』の宣伝に乗ってやりたいことを仕事(でもとても不安定な仕事)にした若者が、ワーカホリックに陥っていく姿を描いています。プレカリアスなワーカホリックほど危ないものはない、というところですか。

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EU労働時間指令にフィンランドの妥協案

このブログでも継続的にずっと取り上げてきているEU労働時間指令の改正問題ですが、今年下半期の議長国フィンランドが新たな妥協案を提示した模様です。妥協案自体は公開されていませんが、報道によると、オプトアウト自体は恒久的に認めるが、その上限として週60時間という枠をはめるというものだということです。

http://www.workplacelaw.net/display.php?resource_id=7859

http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/10/21/nwork21.xml

ブレア政権としては、これを受け入れるべきか否か真剣に検討しているとのこと。その背景には、イタリアのベルルスコー二が退場して、味方が減ったということもあるようですが、最大の問題は大陸諸国にとっても頭の痛い問題、病院の医師や看護婦の待機時間の扱いがあるんですね。イギリスはオプトアウトという強力な手段があるんだから、医師でも看護婦でもそれでやってるのかと思いきや、そういう力の強い専門職は抵抗力もあるらしく、オプトアウトしていないんですね。それは大変です。イギリスも、大陸諸国と同様、なんとか欧州司法裁判所の判決で課された「病院で仮眠してても労働時間」というのを立法でひっくり返したいという欲望があるわけです。

デイリーテレグラフ紙によると、60時間じゃ短すぎるから70時間くらいにしてくれないか、という交渉をしているらしいですね。次期雇用社会相理事会は11月7日の予定です。引き続き注目していきます。

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福利厚生と労使協議

10月13日のエントリーの続きです。

「日本の労務管理」講義案の9回目「福利厚生」と10回目「労使協議」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hukurikousei.html

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hrmroushikyougi.html

毎回必ず明治の親方職工の話から始まるのは、同一テーマの変奏曲という感じを受けるかも知れませんが、それはそれなりに理由はあるのです。

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フレクシキュリティに関する非公式政労使三者会合

20日、EU議長国を務めるフィンランドの主催で、ラーティというところで非公式の政労使三者会合が開催されました。

http://www.eu2006.fi/calendar/vko42/en_GB/1152024070238/?calYear=2006&calMonth=9

このテーマ、先日来紹介している「労働法の将来」の話とも密接に絡んでいて、大変面白い。欧州労連もHPで報じていますし、

http://www.etuc.org/a/2947

UNICEのHPにも発言が載っています。

http://212.3.246.117/1/NPEBOHOBEHIICHPIGDAJDJFIPDBN9DW1PD9LI71KM/UNICE/docs/DLS/2006-01520-EN.pdf

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社会保険庁を民営化?

毎日によると、「政府・自民党は21日、継続審議となっている社会保険庁改革法案について、臨時国会の会期末に審議未了・廃案とする調整に入った」そうです。

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20061022k0000m010127000c.html

「社保庁職員が国家公務員のまま新組織に移る案では、来年の参院選で勝てない」からだそうですが、「公的年金を非公務員に委ねることに対する議論は不十分で、自民党が志向する法案が実現するかどうかは不透明」としています。

私にとって関心があるのは、誰を非公務員型組織に移し、誰を残すのかという話をどういう風に扱うのかということです。同紙曰く、「強制徴収などの中核業務を厚生労働省に移し、社保庁を周辺業務を請け負う非公務員組織とする案も有力視される。だが、泥縄的で難点も多い」。

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20061022ddm002010014000c.html

>「不祥事に加担した職員の多くは労組員」と攻撃し、労組の支持を受ける民主党に打撃を与える--のが自民党の参院選戦略だ。悪質な職員は新組織に移さず免職する考え。だが公務員の大量免職は困難で、行き場のない職員を公務員のまま厚労省で引き取るという、最も同党の意に反する結果にもなりかねない・・・。

国鉄の場合には、残るところは清算事業団という泥船で、JR各社に行けなかった人が貧乏くじを引いたわけですが、今回は残る方が国家公務員ということになると、そうはいかなくなります。

色んな意味で大変興味深い事例です。今後の動向を注意深くフォローしていきたいと思います。

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規制改革は規制強化?

朝日によると、「佐田規制改革担当相は、政府の規制改革・民間開放推進会議の草刈隆郎議長に対し、教育委員会の権限・機能の強化に向けた検討に着手するよう求めた」のだそうです。

http://www.asahi.com/politics/update/1021/003.html

「これまで推進会議は、教育委員会制度について「硬直化した文科行政の上意下達システム」などと批判し、教委の権限を首長に移すために設置義務の撤廃を主張」していたのですが、佐田規制改革相は「「いじめ自殺が社会問題化している」としたうえで、「責任ある教育のためには、教育委員会をしっかりしないといけない。責任をもった教育委員会を確立していかなければならない」と強調したということで、これにより「これまで教委の権限を弱める方向の改革を進めてきた推進会議が方針を転換させる可能性がある」と報じています。

まあ、何にも事件が起こらなければ、というか、起こっていてもマスコミが報じないでいれば、役人なんてよけいなことするだけだ要らないんだこんな奴らと、規制緩和の方が役人を叩けるのであほなマスコミはそっちに乗りますが、事件が起きると、何をしていたんだ何にもしていなかったんじゃないかこの役人の莫迦ものめとぶん殴ることができるので、規制強化側に手のひらを返すんですね。

何はともあれ、規制は緩和さえすればいいわけのものではないということを、規制改革担当大臣がよくおわかりになってきたということは悪いことではありますまい。宮内議長退任後の規制改革民間開放推進会議の動向を占う上で、教育の問題は大変興味深いですね。安倍首相を始め、政権中枢部は「リベラル」な教育論には蕁麻疹が出る方でしょうから。

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FAとお呼び!

FAとはフライト・アテンダント。「アテンション・プリーズ」「スチュワーデス物語」以来の、女の子あこがれの職業だったんですが、そんな専門的な仕事じゃない!という冷たい判決。

今日、判例研究会で私が報告した事件のレジュメです。これだけではなんだかよく分からないかも知れませんが。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/Northwest.html

(追記)

おわかりと思いますが、この判例研究はしばらくここで話題になった職種別労働市場に関係のあるものです。御手洗会長がどういう労働市場の在り方をお考えになっておられるのかよくわかりませんが、企業の人事労務管理は職種限定の合意の認められる範囲をぎりぎりまで狭めて、「なんでもやりますやらせます」の世界を構築してきたわけで、それをひっくり返すとなると、大変な話になるはずです。

同じ配転法理といっても、勤務場所の変更を伴う配転(転勤)については、ワークライフバランスの観点から制限する方向に大きく動いてきているのですが、職種変更を伴う配転については全くそんな気配は見られず、むしろ昭和時代よりも平成に入ってからの方が職種の意味を否定する方向に傾いてきているのが現状です。

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御手洗会長、請負法制に苦情

10月13日の新メンバーによる第1回経済財政諮問会議ですが、前にも書いたように労働ビッグバンの話が一体どうなるのかが最大の懸念ではあるのですが、日本経団連の御手洗会長がちょっと思い切ったことを発言されていたようです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1013/shimon-s.pdf

「今の議論とは関連しないのだが、先ほど、甘利議員が正社員と非正社員のことを言われたので、喫緊の課題でもあり、少し本件について話をしたい。2つ問題がある。 1つは、労働の多様化。多様化の一つの中身として、派遣社員と請負社員がある。

結論から言うと、実は、このおかげで、日本の産業の空洞化がかなりとめられている。ただ、この制度にも問題がある。請負は、請負事業者が全部自分で労働者をトレーニングして、何かの仕事を請け負う。その場合、受け入れ先の人はいろいろ指揮命令ができない。これは当たり前のことだと思う。一方で、派遣は、ただ単純に派遣して、派遣先で監督や訓練をしてもらおうということになっている。これも問題ない。 ところが、請負の方が中小企業に多いため、例えばAという会社に行って請け負う、それからまたBに行って違う職種で全部請け負うような場合がある。その場合、現実には、会社の職種に応じた訓練を請負事業者が全て行うことはかなり難しい。ところが、受け入れた先で指揮命令してはいけないという中に、いろいろ仕事を教えてはいけないということも勧告で入っている。そこに矛盾がある。どんな工場に行っても、例えば何か突発的な事故があったり、難しいことがあったりすると、その現場で雇っている方が教えるというのは当たり前で自然の流れである。ところが今の勧告では、それは指揮命令という言葉の中に含まれるので、そういうことはできない。法律を遵守するのは当然だが、これでは請負法制に無理があり過ぎる。勧告にも無理があり過ぎる。これを是非もう一回見直してほしい。 もう一つは、今、労働市場が逼迫して、どんどん派遣社員が正社員に代わるようになっているが、この動きについてはそのままもうしばらく市場に任せた方がいいということである。このペーパーにもあるが、日本の労働市場が職務給に変わりつつある。しかしながら、職務給に変わらないうちに、年功序列型の給料で、今の派遣法のように3年経ったら正社員にしろと硬直的にすると、たちまち日本のコストは硬直的になってしまう。それは空洞化に結びつくことになる。したがって、ここはもう少し市場に任せてほしいということと、派遣法を見直してもらいたいということ、この2つを申し上げたい。」

法律の観点からの議論はここではあえてしないことにします。そもそもなぜ「現実には、会社の職種に応じた訓練を請負事業者が全て行うことはかなり難しい」ということになるのか、ということです。一言でいえば、企業横断的な、どこの会社に行ってもそれだけで通用するような職種別労働市場なんてものが日本にはほとんど存在していないからなんですよ。

同じジョブでも、A工場での仕事の仕方と、B工場での仕事の仕方では違う、というときに、派遣なら行った先のやり方に合わせて、というか、こうやるんだよという指揮命令を受けて仕事をすればいいわけですが、請負だとそういうわけにはいかない。そうすると、一つのやり方は、特定の企業の専属の構内請負になって、その工場がこういうやり方で生産しているということはもうちゃんとはじめから分かっていて、そういう風に請負会社で訓練しているから、いまさら指揮命令を受けなくてもいい、というのが一つのやり方。これは今までの日本で多く見られた協力会社の道ですね。

ところが、現在「偽装請負」といわれている請負会社というのは、どの会社にでも、労働者何人というだけで人を送り込む実質的派遣会社に過ぎないわけですから、そういう風に、送り込み先の工場毎に取りそろえるというわけにはいかない。そこで、送り込み先で指揮命令しなくてはいけなくなるわけです。ジョブ型でない労働市場ではそうならざるを得ないのですね。

まあ、そこで、御手洗会長は「日本の労働市場が職務給に変わりつつある」(!?)と仰るわけなんでしょうね。その点には、数日来書いているように、私としては大変疑問を抱かざるを得ないのですが、まあしかし、完全にジョブ型労働市場になってしまえば、そもそもこういう問題自体が消えてしまうと思いますけどね。

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まだ割賃にこだわってるの?

厚生労働省のHPに、10月5日の労働条件分科会の資料がアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/s1005-5.html

このうち、「各側意見の調整のための論点」が、割増賃金の問題を取り上げています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/s1005-5a.html

ちょっと厳しめに行きますが、「仕事と生活のバランスを確保するためには、長短二極化している労働時間について、特に長時間労働となっている者への対策が必要ではないか」というのは、全くその通りです。しかし、その次のセンテンスは全くナンセンス。

「このための一つの考え方として、時間外労働の実態を考慮して設定した一定時間数を超えて時間外労働をさせた場合の割増賃金の割増率を引き上げることについて、経営環境や中小企業の実態も踏まえつつ、検討を深めてはどうか」

検討を深める必要などありません。割増率を引き上げたからといって時間外労働が減るはずがないのですから。「割増賃金がどの程度長時間労働の抑制に資するのか疑問。企業のコスト競争力が落ちることにつながるし、中小企業の負担増に直結するため、反対」という使用者側の反対意見が正しいですね。労働側は「メンタルヘルス不調者や過労死の増加、少子化など長時間労働がもたらす弊害が顕在化しており、ワーク・ライフ・バランスの視点から労働時間の在り方を検討すべき」というのは全く正しいですが、それと割賃は関係ありません。本当に長時間労働がいけないと思うのなら、きちんと拘束時間規制を提起すべきではないでしょうか。カネ勘定は別にして。いつまでも割賃なんかにこだわっているから、ホワエグの話も前に進まないのです。政府が公共政策の立場から介入していいし、すべきなのは、長時間労働による労働者の健康への危険をどう少なくしていくかという問題なのであり、カネ勘定の話は労使に委ねるのが原則でしょう。

それに対して、「長時間労働の後には労働義務を一定時間免除して、健康の確保にも役立てるという新しい考え方の下、労使協定により、当該割増率の引上げ分については、金銭での支払いに代えて、有給の休日を付与することを選択できるようにすることについても併せて検討を深めてはどうか」という提案は、「割賃に代えて」ではなく、それ自体としての代替休日制であれば、使用者側はやはり反発するでしょうけど、「働きすぎて死んでもいいのか!?」を錦の御旗にして、頑張ってみる値打ちはありますね。

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パート対策の論点整理

11日に新聞記事をもとにエントリーを書いたパートタイマー対策の件ですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_cefc.html

厚生労働省のHPに10日の審議会に提示された「論点整理(案)」がアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1010-8b.pdf

まず最初の状況認識として、「少子化、労働力人口減少社会の到来、若年層や世帯主である者の増加及びその基幹化といった背景」を指摘しつつ、「パートタイム労働者の日本経済を支える労働力としての重要性は高まっており、その有する能力を有効に発揮できるようにすることがますます必要になってきている」と述べ、「その働き方に見合った処遇がなされていない場合もあり、それに対する不満も存在する」との今までの議論の論点に加えて、「正社員への就職・転職機会が減少して非自発的にパートタイム労働者となる層が増えている」と、若年非正規労働者層の問題点にも目配りをした記述になっています。

具体的な論点としては、

労働条件の明示の努力義務をどうするか(つまり法的義務に格上げしたい)、

就業規則の作成・変更の際の短時間労働者からの意見聴取の努力義務をどうするか(つまり法的義務に格上げしたい)、

均衡処遇の確保は指針で示されている短時間労働者の態様を基本に検討(つまり指針の法文化)、

賃金について均衡処遇の在り方をどうするか(能力向上、業績、努力で)、

職務と人材活用の仕組みが実質的に異ならない者の均衡処遇の在り方をどうするか(同じ賃金表を適用、支給基準や査定考課基準を合わせる)、

賞与支給制度の適用をどうするか、

退職金制度の適用をどうするか、

諸手当の支給をどうするか、

教育訓練の性格に応じた均衡処遇をどうするか、

福利厚生の性格に応じた均衡処遇をどうするか、

フルタイム・パートの処遇、

通常の労働者への転換措置の努力義務、

パート本人への処遇についての説明努力義務、

苦情の自主的解決の努力義務、

紛争解決制度における短時間労働者への特別の配慮、

短時間雇用管理者選任の努力義務、

等々が上がっています。

正直言って、対象になりうるパートタイム労働者をいくつかの性格の違う集団に分けて考えていかないと、等し並みにこれは適用すべしというような議論にはなかなかなりにくいように思われます。「再チャレンジ案件」だからそこのけそこのけパートが通る、というようなやり方ではうまくいかないことは間違いないでしょう。

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歴史的センスが欠如するいかにも経済学者らしき発言

またまた権丈善一先生の言葉です。あんまりこれやってると、人のふんどしでブログ書くなと言われそうですが、そのまま引用したくなる文章なので仕方がないんです。

http://www.keio-up.co.jp/kup/webonly/law/iryounenkin/jyobun.pdf

権丈先生の新著『医療年金問題の考え方-再分配政策の政治経済学Ⅲ』の序章です。この本自体、大変分厚いですが、特に分量的に後ろ7割以上を占める「勿凝学問」シリーズが絶妙で、是非ご一読をお薦めします。

それで、この序章なんですが、まず「浅はかな静学的社会保障論と動学」というタイトルで、こういうことを言われます:

前著につづき,本書に収めた医療,年金をはじめとした社会保障論も,多くの普通の社会保障論よりも,われわれがみているのは歴史時間における一瞬のスナップショットにすぎないことを強く意識した視点,すなわち動学的視点が強く織り込まれていると思う。
一例をあげよう。基礎年金の財源を社会保険方式とするか租税方式とするかという議論は,長く決着もつかず,その状況は,神学論争とまで評されてきた。けれども,この議論をわたくしがながめてみれば,「動学的な視点で論じているのだけれども,その重要なポイントにあまり気付いておらず,よって説明の仕方に若干の難をもつ社会保険方式支持者」と,「動学的な視点が欠ける租税方式論者」とが向き合って論争しているだけであるようにみえてしまう。動学的な視点が皆無の基礎年金の租税方式論者が経済学者に偏りをもつのも,もっともなことで,今日の経済学教育は,動学的センス,つまり「歴史センス」を養成するための「歴史」の学習を軽視,否,無視しているのだから,制度を生き物としてながめ,その動きを予測して,将来の結果に対する責任を自覚しながら発言するという習慣が欠如するのも無理はない。若い学生たちへの<教育の力> というものはみかけよりも大きいようで,それは,良かれ悪しかれ,人の生涯の考え方に大層な影響を与えてしまうのである。
さらに言おう。「歴史センス」が欠如する,いかにも「経済学者らしき発言」は,早くからマルクス経済学〔マル経〕を支持する人・批判する人のいずれであれ,マル経を理解する人がいなくなり,近代経済学〔近経〕に特化したことを看板に掲げた大学〔院〕で過ごしたことのある研究者において顕著に現れる傾向があると,わたくしは診断している。わたくしの先生の先生は,慶應義塾大学の藤林敬三先生であり,マル経に浸っていた人である。そこから伝わってくる遺伝子が,「制度をみろ,歴史をみろ」と,すでにマル経に距離をおき,近経に軸足を移しはじめていたわたくしの先生を介して,マル経とは無縁のわたくしたち世代にまで影響を与えていることは間違いない。ところが,日本のなかで早くに近経,特に米国で主流の経済学教育法に特化した大学〔院〕では,研究者の訓練時において,制度・歴史という,彼らからみれば生産性をあげるうえで非効率な夾雑物が,とうの昔に捨て去られているように見受けられて仕方がない。そして医療ならば米国の代表的サプライサイダーであるフェルドシュタイン,年金ならばフェルドシュタインや彼を指導教授とする大学院の学生であったコトリコフの信念を翻訳しただけの,此の国の国民のみならず,実は彼の国の国民をも,幸せにするというよりも混乱させることにつながりかねない浅はかな議論は,まさにこうした大学の関係者から発せられているようなのである。
ここで,「浅はか」という言葉を用いたが,これはわたくし側から彼らの言動を評した言葉にすぎない。彼らが浅はかなのか,それともわたくしのほうが浅はかなのか,この点については,ここ10年ほどの年金や医療の論議を振り返ってみたり,本書を読んで,考えてもらえればと思う。・・・

私自身は、マルクス系の学問は横目で睨みながらつまみ食いする程度でしかなく、むしろ政治的色分けからすればその反対側に自己定位していた学生生活でしたしが、それにしても、何よりも大事なのは「歴史センス」であるという感覚だけは今に至るまで変わりなく持ち続けています。ま、保守反動のパターナリストが歴史を大事にするのは当然ではありますがね。

ほんとに、薄っぺらなケーザイ学を振り回すやからを見るにつけ、「制度を見ろ、歴史を見ろ」と言いたくなるのは、社会保障論も労働論も同じです。

序章の最後で、権丈先生は繰り返します:

この「序論」は,社会保障研究という窓から世間をながめながら,ものを考えるうえでは歴史センスが重要であり,最近の経済学教育のなかではこの点が軽視されすぎているという感想,逆に言えば,そうした経済学教育を経て成長した歴史センスに欠ける者,ようするに「物に触れ事に当たりて常に極言」〔福澤諭吉『学問に凝る勿れ』〕する,無責任であまり人間を知らない人たちがエコノミストや経済学者の職業に就きすぎ,浅はかなことを論じては世の中を混乱させすぎているとの感想をいだく者が書いた文章である。・・・

そういう浅はかなイナゴ諸君には、しかしながら、こういう言葉は届かないんでしょうねえ。

(註)権丈先生の文中、藤林敬三先生について「マル経に浸っていた人」とのみ書かれているため、ホントに歴史を知らない厨さんはそういう風にだけ理解してしまう恐れがあるので、念のため言っておくと、戦前からの社会政策学の大家で、終戦直後の労働法制の制定時に、末弘厳太郎、大河内一男、山中篤太郎といったビッグネームとともに関わった人で、慶応の産業研究所の初代所長でもあります。こんな注釈をつけないといけないこと自体が情けないことではありますが

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再告知

最近、コメントやトラックバックをしてもすぐに表示されなくなった、とお感じになっておられると思いますが、先日書いたように、依然として猥褻かつ危険なトラバが多く、やむを得ずすべていったん保留して、スパムでないもののみを表示することとしております。ご迷惑をお掛けしますが、ご寛恕願います。

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公務員倫理法の副作用

日本労働法学会の場で、某々と意見交換。

結局、諸悪の根源は公務員倫理法なんじゃないか、ということに。

酒席の付き合いがないと、労使の本音がわからない。わからないまま、事務局が突っ走ると、労使が反発するのも当然。

労働側は割増賃金なんか本音では別に求めていないのに、それが労働側の要求だと思いこんでいるとか、年収1000万以上あれば残業手当なんかなくても良いんじゃないかと本音では思ってるのに、経営側だって本音は実はそのあたりなのに、「自律的」などという自分でこしらえた罠に自分でひっかかって身動きとれなくなっているとか、誰それの能力がどうこうという以前に、コミュニケーション不足が一番効いているんじゃないか。

しかしなあ、このご時世に、「役人が労使と酒を呑まないから法律がでけへん」というわけにもいかないしなあ。

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労働契約承継とEU指令

「夜明け前の独り言」というブログを書いておられる労働弁護士の水口洋介さんが、担当されている日本IBMハードディスク部門「会社分割」地位確認訴訟について、EUの既得権指令にも言及して、かなり詳しく書いておられます。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/10/post_869a.html

この中で面白いのは、日本で会社分割ができるようになってから行われた事例では、労働契約承継法に基づいて承継するのではなく、在籍出向という形をとっているケースが多いという話です。この法律は、会社分割という特定の場合についてのみ、EU型の「仕事と一緒に人も移る」というジョブ型労働市場の思想に基づく契約承継ルールを定めたのですが、現実の日本社会はそれよりもずっと遙かにメンバーシップ型社会であって、「仕事は移っても人の本籍は移らない」という方がなじみやすかったということでしょう。

ところが、この水口さん担当のケースでは、欧米型ルールに基づいた労働契約承継法の基本ルールに従って、すぱっと移してしまったんですね。その結果、「でも,おかしいじゃないか。俺はIBMに就職してんだ。なんで日立なんかにいかなきゃいけないんだ。」ということで,JMIUの日本IBM支部の労組員は,一方的な同意なき転籍(労働契約の承継)は無効だとして日本IBMに対して地位確認の本訴を提起しました」ということになったわけです。

実際、ジョブ型でなく、メンバーシップ型の日本社会では、「楽天とオリエントコーポレーション(あの規制改革会議の宮内氏の会社だよ!)の会社分割でさえ,在籍出向です」というわけですから、IBMのやり方は日本社会のソシオグラマーに反していることは確かなのですが、しかし六法全書に載っている法律の文言からは、IBMが法律違反だとは言えないのもまた確かなんですね。

で、ここで我らがEU指令の登場です。

「この事件では,EUの事業譲渡指令(「企業,事業又は企業,事業の一部の移転の際の労働者の権利保護に感する加盟国法の接近に関する77/187/EEC指令」)とEC司法裁判所のKatsikasu(ママ)事件の1992年12月16日判決も引用して,「労働者の使用者選択の自由」(ドイツ連邦労働裁判所は基本権として認めた)に基づき,「労働者の拒否権」があると主張しています」と書かれているんですね。私の本も準備書面で引用されたそうなんですが、これが本当に原告労働者にとって有利な証拠であるかどうかは、実はいささか疑わしいところがあるのです。

このKatsikas事件判決は、これです。

http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:61991J0132:EN:HTML

この判決の読み方ですが、まずEU既得権指令は、企業譲渡があればそれに伴って労働者も移転することが大前提であることを頭に置く必要があります。労働者にとって、ある会社へのメンバーシップなんかよりも、こういう仕事をしているというジョブこそが何よりも重要であって、それが営業譲渡だの分割だののために、今までの仕事ができなくなり、それと全然違う仕事をやらされるなどということはあってはならない許すまじきことなんですね。だから、EU指令は、そういう労働者のジョブを維持したいという利益を最優先にして、ある仕事が営業譲渡されたのに、それと一緒に移転されないなどというけしからんことがないように、本人が嫌だといわない限り、もとの労働条件で譲渡先に転籍することを義務づけているんですね。

日本で考えれば、例えばもうほとんど政治的に民営化が決まったらしい社会保険事務所の職員が、ちゃんと民営化された社会保険会社にいけるようにしろということですね。これがないと、かつての国鉄の分割民営化の時のように、もとの会社に残されて、気がついたら清算事業団という泥船で、沈んでいってしまったということになるわけです。

とはいえ、ヨーロッパにも日本みたいに、譲渡先の会社になんか行きたくない、もとの会社に残りたいという労働者もいないわけではありません。このカツィカス事件というのは、そういう(ヨーロッパの文脈では)やや特殊な事案であるということを念頭に置いてください。本判決は、譲受人のもとで働きたくないというカツィカスさんの自由を認めました。EU既得権指令は譲受人との雇用契約を労働者に強制するものではないんだ、と明確に判示しています。職業選択の自由には、使用者の選択の自由も含まれるのは当然でしょう。

ところが、では、その場合雇用契約はどうなるのかというと、それは加盟国が決めることだ、というんですね。つまり、少なくともEUレベルでは、譲渡人との雇用契約が維持されなければならないという法規範は存在しているわけでありません。判決の最後のところに書いてあるように、労働者が自らの意思に基づいて譲受人との雇用契約ないし雇用関係を維持しないと決定した場合において、譲渡人との雇用契約ないし雇用関係が維持されるべしと規定するように加盟国に求めているわけではない、と、これもはっきり書いています。

要するに、ジョブ中心社会を前提にして、ジョブが移るのなら人も移せ、というのを基本ルールにしつつ、行きたくない労働者はいかなくてもいいよ、しかしもとのところにいられるとは限らないよ、というのがEUのルールなんです。だから、これを、メンバーシップ社会でメンバーシップを維持しろという裁判に使えるかというと、いささか首をかしげるところはあるんですね。

この点は、実は拙著『労働法政策』の中で、労働契約承継法を解説した部分のうちEU指令に触れたところ(342ページ)でも若干論じたところです:

 日本では譲渡に伴って承継されない労働者の権利がかなり重要な意味を持ち、野党法案ではその旨の規定があるが、EU指令ではそこは、譲渡される事業に従事する労働者がそれに伴って承継されるのは当然という整理になっており、少なくともEUレベルでは承継拒否権の規定はない。これは、ヨーロッパではまず職務があってそれに就くのであり、職務が別の会社に移動すれば労働者も移動するのが当然と考えるのに対し、日本ではまず会社があってその中で職務に従事するという考え方が強く、職務が別の会社に移動しても元の会社に残るのが当然という考え方がかなり強いことによる。とはいえ、野党法案のように行くも残るも全て労働者の意思によるとしてしまうと、EU指令よりもかなり労働者の利益に傾いた制度になってしまう。

しかし、水口さんのブログで紹介されているように、実際には圧倒的大部分の会社分割で在籍出向というやり方がとられているのであれば、むしろそちらこそデファクトルールにすべきだったのかもしれませんね。

実は、労働契約承継法については、立法に至る過程において、私もいささか関わったこともあるのです。連合のシンポジウムに出席して、EUではこういう指令があって、会社分割の場合だけでなく、営業譲渡の場合にも既得権が維持されるのがルールとなっている、てなことを喋ったんですが、いうまでもなくこの「既得権の維持」というのはジョブの移転とともに労働者が既得権もろとも移転されるということであって、移転されない権利ということではないんですが、そのシンポジウムの題名が何だったか分かりますか?

「気がついたら別会社に」なんですよ。

この感覚の違いがすごいですね。ジョブ型社会とメンバーシップ型社会の違いをこれ以上雄弁に物語る実例はないんじゃないかと常々思っています。

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パートのサービス残業

朝日に興味深い記事が載ってます。パートタイマーの3割以上が、いくら残業をしても賃金に反映されないサービス残業をこなしていると、UIゼンセン同盟の調査でわかったという記事です。

http://www.asahi.com/business/update/1015/003.html

それによると、「独身女性のパートの場合、過去数カ月にサービス残業をした人は、労働時間管理の対象となる人(無回答を除く)の40%に及び、月平均のサービス残業時間は10時間に達していた。既婚で夫が正社員の「主婦パート」でも32%の人が月平均8時間のサービス残業をしていた」ということです。

ちなみに、「正社員の場合、男性の58%が月平均26時間、女性だと44%が同15時間のサービス残業をしていた」ということですので、 やや差はあるものの、労働条件の均等待遇に先駆けて、サービス残業の均等待遇の方が先行しているようですね。

このブログでも何回か書いてきましたが、私は「サービス残業」という現象は、完全月給制といえども労基法第37条が管理監督者以外には全て適用されてしまうという現行法制の問題点が一つの要因であると考えていますが、それにしても時給いくらで雇われているパートタイマーにサービス残業をやらせるというのは問題ですね。それはもはや賃金の部分的不払いというべきでしょう。逆に言えば、サービス残業やらせるんなら正社員にしろよな、というところでしょう。この辺は、UIゼンセンさんの健闘を期待したいところです。

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日本労働法学会

本日、名古屋の南山大学で日本労働法学会第112回大会。

テーマは、「労働者の健康と補償・賠償」。しかし、話が細かすぎ。もっと骨太の議論が必要じゃないのかな、と痛切に感じる。

全般的に、研究者があっちこっちに気を遣いすぎ、ちまちました話になりすぎ。もっと、どわっと反発を食らうような生意気な議論があっていいんじゃないのかな。

ジサマばかりが元気というのは、健全な社会ではないんじゃないの。

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リクルートの「ワークス」

リクルート・ワークス研究所が出している「ワークス」という雑誌の最新号が、「雇用・統治法制の新地平」という特集をしています。

http://www.works-i.com/flow/works/contents78.html

第1章が「労働版の民法がもたらす衝撃」で、労働契約法制がテーマ。最初に菅野先生の解説があって、そのあと東商の伊藤さんと連合の長谷川さんがそれぞれの意見を述べています。

長谷川さんは、一応「市民社会においては、契約の基礎にあるのは契約両当事者の同意です」などと、あたかも自己決定論みたいな顔をして話を始めますが、すぐに「労使委員会は労働者を代表しない」と、批判の矛先を明確にします。しかも、「労働組合と労働委員会が同じ機能を果たすならば、労働組合への加入や組合費を払い続けるインセンティブを削いでしまうし、企業が「組合でなく労使委員会を作ろう」と誘引する危険が十二分に予想できます」と、ホントの問題点をずばり言ってます。そうなんですね、そこが最大の問題なんです。そして、これを解決しようとすると、1949年の労組法改正で導入された、管理職は組合に入れないとか、経費援助は支配介入だからしてはいけない、といったアメリカ型の労働組合法制を抜本的に見直さなければならないという話になるのです。

この辺は、先月出た『季刊労働法』214号に載せた「労使協議制の法政策」の最後のところでふれた点なのですが、これだけ大きな問題なのに、あまりこの問題を正面からきちんと取り上げた論考がほとんどないのはおかしいのではないか、と私は感じています。

ちなみに、ここに「労働立法の最近の流れと労働契約法」を書いている寺山洋一氏は、いま香川大学に出ていますが、労働省の私の後輩に当たります。

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労働ビッグバン!?

昨日、新たなメンバーの経済財政諮問会議が第1回目の会合を開催し、そこにいわゆる有識者委員(財界2名と学者2名)が「創造と成長に向けて」というペーパーを出したそうです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1013/agenda.html

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1013/item1.pdf

先日ここに書いたドーア先生を囲む意見交換会では、ドーア先生、えらく御手洗冨士夫さんと丹羽宇一郎さんを誉めあげていたんですが(最近出た両者の対談で、会社は株主のものだ、なんてとんでもない、という旨が書いてあったとか)、このお二人を含む名前で提出された文書は、なんのなんの竹中路線全開という感じです。なにしろ、「労働ビッグバン」が7大課題の一つなんですから。なんと、ビッグバーーン。

労働ビッグバンとはいったいなんぞいな、というと、「経済全体の生産性向上のためには、貴重な労働者が低生産性分野から高生産性分野へ円滑に移動できる仕組みや人材育成、年功ではなく職種によって処遇が決まる労働市場に向けての具体的施策が求められているのではないか」ということなんだそうです、これが。

もちろん、経営者として長年経験を積んでこられたお二方に、いまさら日本の賃金制度は単なる年功制などではなく、職種にとらわれずにフレクシブルに異動できるように一定の年功的要素をベースにした能力主義であった、などということを説教すべき話ではありませんし、当然そんなことは私などより十分わかった上で、あえてこういう人事労務を知らない人間の世迷い言のようなせりふを太田大臣の言うままにここに書かせているのでしょう。

現役の経営者として、そういう仕組みも硬直的になってきたから、同じように、あるいはもっとフレクシビリティが得られるような労働市場にしていきたいと思っていることは十分理解できます。しかし、それは職種別労働市場という方向とは別の方向のはずです。

ほんとに「職種によって処遇が決まる労働市場」なんぞに日本がなってしまったら、一番困るのが企業経営者自身であることも十分わかった上で、わざとこういうことを言っているんでしょう。ホントのターゲットがどこにあるのかは、そのあとにさりげなく書かれた「公務員についても公務員制度改革が必要である」というところにかいま見えていますので、マジに突っ込むこと自体がピエロであるといわれるのは覚悟のうえで、やっぱり言っておかないといけないと思うのは、これを本気に受け止めてしまうまじめ一本な人々が日本には多いと思うからです。

ほらみろ、日本を代表する経営者が、これからは職種別労働市場だといってるじゃないか、保守反動的なhamachanが何を馬鹿なことをぐだぐだ言っても、歴史は進むのだ、てな感じになっちゃうんですよね。いやはや。

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賃金・手当と評価・昇進

9月12日のエントリーの続きです。「日本の労務管理」講義案の7回目、第2章「報酬管理」の第1節「賃金・手当」と第2節「評価・昇進」です。ただ、最後の成果主義のところは、なかなか判断が難しくて、空白になっています。講義を始めるまでには埋めますので、ちょっと待っててください。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/Wage.html

http://homepage3.nifty.com/hamachan/Evaluation.html

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職業・私的・家庭生活の両立

昨日、欧州委員会は、「欧州の人口学的未来」と題するコミュニケーションと同時に、職業・私的・家庭生活の両立に関する労使団体への第1次協議を開始しました。

http://ec.europa.eu/employment_social/emplweb/news/news_en.cfm?id=183

これがその協議文書です。

http://ec.europa.eu/employment_social/news/2006/oct/consultation_reconciliation_en.pdf

EUはすでに同様の労使への協議から生まれた育児休業協約/指令を制定しているわけですが、今さらなる政策をやろうというのは、人口高齢化と少子化の中で、女性や男性が望むだけ多くの子どもを持てるようにすることが重要な課題になってきているからですね。

今年7月に、男女均等関係の諸指令を統合する指令が採択された際に、理事会と欧州委員会がそれぞれ声明を発表し、この問題を最重要課題として取り組むと言ってたんですね。それを受けた形で、今回の労使への協議ということになったのでしょう。ただ、その前に例の労働時間指令の改正の話の中で、欧州議会がワークライフバランスの話に執念を燃やしていたこともあり、その話はこっちで集中的に取り組むから、という文脈もありそうです。

労使への質問という形で提起されているネタは、(1)労働時間と柔軟的な作業編成、(2)情報技術による新たな可能性・・・ってつまり在宅ワークってことか、(3)保育/介護施設の利用可能性と質、(4)父親出産休暇や老親・子ども・障害者の介護のための休暇、といったもので、こういうのを労使交渉で協約にしてくれるんならそのまま指令にするし、しないんなら欧州委員会が指令案を出すよ、というわけですね。

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請負で指揮命令したい足立区

ここのところの偽装請負騒動で、請負と派遣の区別などという労働法の専門家でも物好きな人しかあんまり知らないようなマイナーな話題が一気にメジャーになってしまいましたが、民間開放政策のパイオニアとして一部構造改革派から熱いまなざしを投げかけられているあの足立区が、この問題に深く関わる要望を出していたんですね。

http://www5.cao.go.jp/koukyo/iken/060711/2iken/2/3naikaku.pdf

これは内閣府公共サービス改革推進室のHPに掲載されている意見要望とそれに対する回答です。この表は内閣府の担当のところですね。足立区はこういう要望を出しています。

「民間事業者への業務委託を委託契約に基づき委託すると、行政機関側は委託業務従事者に対しての直接的な指揮命令権が生じない。一方、労働者派遣契約においては、あらかじめ定める現場責任者の指揮命令を受けることが可能である。
 市場化テストを実施したうえで民間事業者に事業又は事務の委託をする場合は、委託業務従事者が業務遂行する過程において、行政機関の指揮監督下に置き、必要に応じて随時指導、指示できるよう、公共サービス改革法における特例措置を設けてほしい。」

その要望理由はこういうことです。「窓口業務という直接的な住民対応サービスを民間企業が実施する場合においては、日々、職員との連携した対応が不可欠となる。
 円滑な事務処理、サービス提供をするためには、業務委託関係か労働派遣関係かにとらわれることなく即応する指導、指示が必要である。」

そりゃあ、窓口業務に限らず、役所だって民間企業だってみんなそうでしょうなあ。だけど、そんな理屈で認めていたら、全部OKになるわけで、足立共和国って日本から独立した国になって、派遣法も職安法も全部チャラにするというのなら別ですけれど。

さすがにこれに対しては、内閣府でさえも、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の趣旨・基本理念は公共サービスの実施に関して、民間事業者の創意と工夫を適切に反映させることにより、国民のため、より良質かつ低廉な公共サービスを実現することであることから、民間事業者が公共サービスを実施するに当たっての契約方式として、委託契約によることとしている。他方で、ご指摘のような派遣契約方式を認めると、派遣会社から派遣された者に対し、行政機関からの直接の指揮命令がなされることとなり、上記の法の趣旨目的とは相容れないことになると。このため、御指摘の派遣契約を認めてほしいとの意見は受け入れられない」と拒否しています。

ところが、足立区は既に先月29日、「公共サービス改革の推進に関する条例」を制定し、「住民票発行などを行う区民事務所の窓口業務を民間の人材派遣会社に委託する」ことにしちゃったんですね。

http://www.sankei.co.jp/local/tokyo/060930/tky003.htm

これは本当に訳の分からない条例ですね。サンケイによると、「派遣された職員は区民事務所の窓口業務を全般的に担当する。住民票や戸籍謄本、印鑑証明、課税・納税証明書など個人情報を伴う各種証明書類の発給にも関与することになる。 国の改革法では、派遣職員は申請の受付と書類の引渡しに限定しているが、足立区の条例では、委託する業務の範囲を広範にとらえ、申請の受付や交付のほか、情報端末の操作も含めることにした」云々とありますが、業務の範囲は別にどちらでもいいんですが、一体この「派遣職員」という人達は、労働者派遣の枠組みで働くんでしょうか、それとも委託契約(請負契約)の枠組みで働くんでしょうか。

「人材派遣会社に委託」とありますから、法律上は請負なんでしょう。そうすると、派遣労働者ではありませんから、指揮命令すると偽装請負になるんですけど、区長さん、最近新聞読んでますか?

「内閣府公共サービス改革推進室は、足立区の条例が国の法律に基づいているかどうか、近く説明を求める方針」だそうですが、内閣府所管の法律だけの問題ではないんですよ。

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千葉県の障害者差別禁止条例

千葉県が障害者差別を禁止する条例を制定したようです。

http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/top/index.cfm?i=2006101108203b1

千葉県のHPに飛んでみますと、県議会に提出した条例案というのが載っていますので、これがそのまま条例になったのでしょう。

http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_syoufuku/keikaku/sabetu/joreian.pdf

標題は「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」です。この条例で「差別」とは、福祉サービス、医療、商品・サービスの提供に加えて、労働者の雇用、教育、建物や公共交通機関、不動産取引、情報提供など極めて広範な分野に及んでいます。ここで関心があるのはもちろん雇用に関する差別です。

ここで差別とは、「労働者の募集又は採用に当たって、本人が業務の本質的部分を遂行することが不可能である場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、応募若しくは採用を拒否し、又は条件を課し、その他不利益な取扱いをすること」及び、「賃金、労働時間その他の労働条件又は配置、昇進若しくは教育訓練若しくは福利厚生について、本人が業務の本質的部分を遂行することが不可能である場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、不利益な取扱いをすること」、そして、「本人が業務の本質的部分を遂行することが不可能である場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、解雇し、又は退職を強いること」の3点です。

こういう差別については、「何人も、障害のある人に対し、差別をしてはならない」(第8条)と規定していますが、では差別したらどうなるのかというと、まず地域相談員に相談して(第20条)、、知事に対し、調整委員会が当該対象事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うべき旨の申立てをする(第21条)、知事は事実の調査を行い(第22条)、調整委員会に対し、助言又はあっせんを行うことの適否について審理を求める(第23条)ことになります。その結果、「調整委員会は、前条第一項に規定する助言又はあっせんを行った場合において、差別をしたと認められる者が、正当な理由なく当該助言又はあっせんに従わないときは、知事に対して当該差別を解消するよう勧告することを求めることができ」、「知事は、前項の求めがあった場合において、差別をしたと認められる者に対して、当該差別を解消するよう勧告することができる。この場合において、知事は、前項の求めを尊重しなければならない」(第24条)というわけですので、公権力の行使としては勧告までということですね。ただ、さらに「知事は、障害のある人が、差別をしたと認められるものに対して提起する訴訟・・・に要する費用の貸付けその他の援助をすることができる」(第26条)という訴訟援助の規定もあります。この訴訟には労働審判も含まれます。

施行は来年の7月からということですが、こういうたぐいの差別禁止規制を条例で制定するというのは恐らく空前でしょう。本当に動き出したときにどんな事案が出てくるか大変興味深いものがあります。

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100時間以上残業者は大企業に多い

9月29日に発表された労働安全衛生基本調査の中に面白いデータが載ってました。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/05/03.html

過去1年間に長時間労働(1週当たり40時間を超えて行う労働が、1月間で100時間を超えた場合)を行った労働者(ただし管理・監督者を除く。)がいる事業所の割合は13.4%です。これは、昨年の労働安全衛生法改正で医師による面接指導が義務づけられたものですね。面白いのは、この割合が企業規模で大差があること。

1000人以上企業では43.9%、500~999人規模では40.2%、300~499人規模は22.9%、100~299人では16.1%、50~99人は13.0%、30~49人は14.4%、10~29人は12.7%となっています。もっとも、そのうち医師により面接指導を受けたものになると、大企業ほど多く、零細企業になるほど少なくなりますね。

もっと興味深いのは、過去1年間にメンタルヘルス上の理由により休業した労働者がいる事業所の割合です。全体では3.3%ですが、企業規模で大差がある。1000人以上企業では82.0%、500~999人規模では66.32%、300~499人規模は40.99%、100~299人では16.3%、50~99人は6.5%、30~49人は1.8%、10~29人は1.5%となっています。まあ、中小零細企業からすれば、大企業からの無理難題に追われて、メンタルヘルスでゆっくり休んでいるようなヒマなんかない、ということなのかも知れませんが。

いずれにせよ、過労死、過労自殺のリスクは大企業ほど大きいわけで、このリスクマネジメントをいい加減にすると、とんでもないしっぺ返しを食らう危険性があると思った方がいいでしょう。この調査結果は標題に安全衛生と書いてあるから安全衛生担当者だけ見ておけばいいわけではありません。

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内容が本ブログの趣旨に関わるものである限り、その立場の如何によって非公開とする様なつもりはありません。イナゴさんのコメントも、スパムでない限り公開しますので、ご遠慮なくどうぞ。

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差別と格差の大きな差

昨日の労政審雇用均等部会に、厚労省事務局が、「来年の通常国会で改正を目指しているパート労働法で、正社員との賃金格差の是正と正社員への転換制度の導入などを検討対象にしていく考え」を示したそうです。現時点ではまだ厚労省のHPに掲載されていません。

http://www.asahi.com/life/update/1011/002.html

「パートタイム労働者の日本経済を支える労働力としての重要性は高まっているのに、働き方に見合った処遇がなされていない場合がある」という考え方から、「正社員と仕事や責任が同じ場合、同じ賃金表や査定基準を使うことや、パート社員に対する賞与や退職金、各種手当のあり方を検討対象とし」ているようです。また、パート社員から正社員への転換については制度創設や優先的な応募機会の提供などを企業の努力義務にすることも検討課題としているようです。

こういう政策方向は、1993年のパート法制定時に国会修正で「均衡処遇」という言葉が挿入された時以来の課題であり、2003年に一応の指針が策定されていますので、その内容の法律化に過ぎないんだから問題はないだろうと事務局は考えているのかも知れません。

ただ、大変気になる点があります。それは、「同法改正は、安倍内閣の「格差是正」と「再チャレンジ」という政策的要請に応え、今夏から検討していた」というところです。実際、5月の再チャレンジ中間報告では、「パート労働者の正規労働者との均衡ある処遇や、社会保険の適用拡大等正規・非正規労働を巡る問題に対処するための法的な整備等の取り組みを進めるとともに、企業に対しても、非正規労働者の正規労働者への転換制度や短時間正社員制度の導入、非正規労働者と正規労働者との均衡ある処遇や能力開発等に向けた働きかけを進め、雇用形態の多様化が進む中で、公正かつ多様な働き方を実現できる労働環境を整備する」と記述されており、パートの均等待遇は格差是正のための再チャレンジ案件だと言ってもおかしくない流れになっているようです。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/saityarenzi/honbun.pdf

しかし、もともと非正規労働一般ではないいわゆるパート問題というのは、昨今問題になっている意味での「格差」問題ではなかったはずです。前にも「パートって言うな」で書きましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/02/post_e4de.html

パートの主婦にせよ、アルバイト学生にせよ、確かに就労の場所では正社員とは明確に区別された低賃金かつ有期契約の縁辺労働力であるには違いありませんが、そのことが彼らの社会的な位置づけを決めるものではありませんでした。パート主婦は労働者として社会の縁辺にいるのではなく、正社員である夫の妻として社会の主流に位置していたのですし、アルバイト学生にとっての雑役仕事は正社員として就職する前の一エピソードに過ぎなかったわけです。

家計補助的主婦パートとして特段社会問題視されなかったパートタイマーが労働問題の土俵に乗ってきたのは、一つには男女平等の観点から、家事育児責任を主に負っている女性が家庭と両立できる働き方としてパートタイムを選択せざるを得ないにもかかわらず、そのことを理由として差別的な扱いを受けることが社会的公正に反するのではないかという問題意識からでした。

「差別」と「格差」の間には大きな「差」があります。場合によっては、差別をなくすことが格差を生むこともあり、差別をすることが格差をなくすこともあるのです。

夫と妻の収入が男女差別の故に大きな差が生じているとき、その差別は実は世帯単位で見た格差を縮小する働きを持っている場合もあります。男女差別をなくし、優秀な妻がその能力に応じた収入を十全に得られるようになることは、その裏側で優秀でない夫が男であるという理由で得ていた収入を得られなくなることと相まって、世帯単位で見た所得格差を拡大する働きをもちます。皮肉な話ですが、差別の解消が格差を生むという因果関係がありうるのです。

もちろん、不況の中で正社員の夫が失業したり、あるいは離婚等によりシングルマザーとなったりした場合、パート労働者の低賃金は直ちにその世帯の低所得として跳ね返ってきます。パート労働者が家計を維持しなければならない状況がじわじわと拡大してくる中で、パートの均等待遇問題は単にジェンダー視点から不正であると批判されるにとどまらず、階層論的視点からも疑義が提起されてくることにもなります。こちらはまさに「格差」論的問題です。

現在、非正規労働問題がこれだけ世の関心を集めている最大の理由は、「差別」よりも「格差」への問題意識からでしょう。そうすると、10年以上前から男女平等の問題意識で進められてきたパートの均等・均衡政策をそのままの形で進めることは、大変パラドクシカルな位置を占めることになりかねません。正直言って、大変危ういものを感じます。

ま、「殷鑑は遠くない」なんて脅し文句を持ち出すつもりはないのですが、労働契約・労働時間法制のこの間の失敗劇もあるだけに、事務局の皆さんには注意深いハンドリングを期待したいと思います。

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フリーター採用へ雇用対策法改正

サンケイのHPには乗っていませんが、yahooニュースにでています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061009-00000007-san-pol

「年長フリーターなど若者の正社員化を促すため、雇用対策に関する施策の基本法となる雇用対策法を改正して、「若者の採用機会の拡大」を企業の責務として明記する方針を固めた。安倍内閣が掲げる再チャレンジ支援のなかで、新卒以外の若者に門戸を広げて正社員化を進めることが大きな柱。厚労省は、これらの方針を法制面からも整備して、企業に採用を働きかけたい考えだ。次期通常国会に同法改正案を提出する」とのことです。

これを審議している労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会は、実は労務屋さんが委員として審議に参加されています。これです。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060927

この法改正は、まさに安倍内閣の再チャレンジ政策の目玉となるべき改正ですね。具体的には、企業の責務として「若者の能力、経験の正当な評価と採用機会の拡大に努めなければいけない」などと雇用対策法に明記する」ことを考えているようです。そして、「企業が適切に対応するために必要な指針として(1)新卒の通年採用(2)年長フリーターの新卒枠での採用(3)中途採用の拡大(4)非正社員として採用し、能力を見極めた上で正社員に転用するトライアル雇用の導入-などを柱として盛り込む」というところまでリークしていますね。

これに対し、「義務を課せられる格好の企業側は、日本経団連が「企業が若者への有意義な雇用機会を増やすとともに、受け入れ体制を整える必要がある」との方向性を出していることもあって、大きな異論は出ていない」そうですが、「具体論については「採用時に職歴は重視せざるをえないし、採用機会の拡大や通年採用も、企業に制約を課すものでは困る」(トヨタ自動車)との声も強」いのだとか。それは確かにそうですが、労務屋さんも「いずれにしてもこれからの議論なので、しっかり検討したい」と言っておられるわけですから、まあ期待して注目していきましょう。問題が問題であるだけに、事務局側がよほど変なハンドリングをしない限り、ソフトランディングはすると思いますが。

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労働法グリーンペーパー発表延期に

4日のエントリーで紹介した、労働法グリーンペーパーをめぐる暗闘ですが、EurAvtivの続報によると、欧州委員会は18日にグリーンペーパーを発表するのは諦め、早くても11月になりそうだということです。

http://www.euractiv.com/en/socialeurope/labour-law-green-paper-delay-raises-tempers/article-158603

10月4日に関係欧州委員の会合でグリーンペーパーの原案が討議されたのですが、スカンジナビアのフレクシキュリティをもっと入れろと文句が付いて、書き直しが命じられたようですね。スカンジナビアと書いてありますが、これは要するにデンマークモデルのことです。社会保障は充実するから、雇用保護は薄くするというモデルですね。これは、これで一つのモデルであるには違いありませんが、雇用保護の手厚い独仏をはじめとする多くのヨーロッパ諸国からすると、クビを切りやすくすればいいんだという話になってしまいます。それで、先日紹介したグリーンペーパー原案も、そのあたりは実に慎重に書いているのですが、そこがネオリベに傾いている現在の欧州委員会リーダーにとっては不満なんでしょう。

デンマークモデルとかいいながら、雇用保護の代わりにどこまで社会保障を手厚くできるかといえば、財政的にそんな余裕はほとんどない国が大部分ですから、事実上クビを切りやすくするだけの規制緩和路線ということになります。これまで社会保障にカネをかけるよりは仕事だ仕事だといってきた雇用戦略とどこまで整合的でどこまで整合的でないのかも、きちんと整理し直す必要があるようにも思えますし、EU官僚もつらいところですね。

(追記)

同じEurActivに、経営側(UNICE)と労働側(ETUC)のこの問題に対するインタビュー記事が掲載されています。やっぱり、経営側としては、「労働者の定義」という形でヨーロッパ型偽装請負(実質的には労働者であるものを自営業者と偽装するもの)にEU法が入り込んでくることには過敏になっているんでしょうねえ。

http://www.euractiv.com/en/socialeurope/unice-criticism-blown-proportion/article-158519

http://www.euractiv.com/en/socialeurope/debate-flexicurity-eu-harmonisation/article-158635

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城繁幸氏の近著

私が言っているのは、富士通の内幕暴露本ではなく、最近出た『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)のことです。

http://d.hatena.ne.jp/charis/20060926

このブログに内容の紹介と感想が書かれています。ちなみに、そこに私がこういうコメントをしていますので、ご参考までに。

hamachan 『採用基準が、90年代半ばに、それまでの「なんでもやりますやらせます」型から「何がやりたいんだこれがやりたいんだ」型にがらりと変わったのに、これは実は採用を絞り込むための方便で、会社の中のしくみは変わらなかったのが若者が「3年で辞める」原因だという分析自体は、かなり的確だと思います。自分探しをさせられて入ってみたら自分を殺せといわれた、なんだなんだこれはなんだ、という若者側からのメッセージとしては。ただ、的確なのはそこまで。
それと、人事部にいたにしては、年功賃金制と年功昇進制の区別とか、長期雇用制との関係、問題はジョブにあるのか、それともタスクにあるのか、といった事柄があまりきちんと腑分けされず、やや感情論的になっている印象はありますね。』

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事業としての出向

最近の請負やら派遣やらの報道は、労働市場法制についてのいい教材になりますが、またもや絶好の教材が出てきてくれました。

http://www.asahi.com/special/060801/TKY200610050395.html

日野自動車が「偽装出向」で1100人受け入れていたのを、労働局の指導で派遣に切り替えたという記事ですが、実は「偽装出向」という言い方には若干語弊があります。出向を偽装しているんじゃなくって、出向を業として行うことが職安法で禁止している労働者供給事業に当たるということなんですね。

そもそも「出向」って何でしょう。普通、この言葉は労働市場法制では出てきません。むしろ労働契約法制であれこれ論じられていますね。定義すれば、出向元と出向先と両方と雇用関係を有した形で、出向先で出向先の指揮命令を受けて就労することです。労働者派遣と何が違うかといえば、派遣の場合は派遣元とのみ雇用関係があり、派遣先とは雇用関係がない、という点が違います。

ところが、労働市場法制では、労働者派遣を含む上位概念として労働者供給というのがあるんですね。そして、現在では、もともとの労働者供給のうち労働者派遣を除いた部分を労働者供給と定義しています。そこに含まれるのは、供給元と供給先のいずれとも雇用関係がないケース、供給元とは雇用関係がないが供給先とは雇用関係があるケース、供給元と供給先のいずれとも雇用関係があるケースの3通りになります。この最後の奴をもう一度読み返してください。両方と雇用関係がある、あれっ、これって「出向」じゃないの?ピンポン。

まさにそうなんです、出向ってどの会社でもごく普通にやってますけれど、実は「労働者供給」だったんですね。え?じゃあ、何でお咎めがないの?と不思議に思うでしょう。「事業」じゃないからなんですね。まあ、普通は、子会社を支配するためとか、ポストのなくなった中高年を送り込むためとか、優秀な若手を送り込んで子会社に活を入れるためとか、まあいろいろな理由はありますが、よその会社に自分とこの労働者を出向させてその代金を頂いて稼ごうということは普通はやってない。だから、労働市場法制としては文句をつけていないわけです。

まあ、いろいろと知恵の回る奴がいるんだなあ、という感じです。

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キャドマン判決をめぐるお粗末な記事

昨日紹介した3日の欧州司法裁判所判決ですが、イギリスの新聞はなんだかとんでもなく混乱しているようです。

まず、ガーディアン紙、

http://money.guardian.co.uk/discrimination/story/0,,1887145,00.html

「長期勤続に高い賃金は違法と判決」って、をいをいどこにそんなこと書いてんだよ。判決文読んでんのか?「何千もの使用者は賃金体系を変えなければなるまい」「公務にも大きな影響」。どうしてそうなるの?立証責任は今まで通り労働者側にあるという判決なんだぜ。法務官意見はそれをひっくり返す内容だったから、その通りの判決になれば大騒ぎになる話ではあるけれど。まさか、判決前に法務官意見に基づいて予定稿を書いておいて、それをそのまま記事にしたとか?よく分からないけどなんだかお粗末な感じ。

次にタイムズ紙、

http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2-2387750,00.html

こっちは、勝ち負けは間違っていないけれど、判決が論じていない話をおもてに持ってきている。「お母さんは同一賃金の権利を失う」って、どこにそんなことが書いてある?少なくとも判決文の中にはない。キャドマンさんが談話の中で、女性は子供を持つ決断をするために勤続年数が短くなるのに云々と言ってるだけ。この日本ですら妊娠出産を理由とした不利益取扱いは許されないということになったのに、何が悲しくてお母さんを差別しなくちゃいけないのさ?

いやあ、しかし、イギリスを代表するクオリティ・ペーパーの司法記事の水準の低さには驚く。こんなもんかね。日本の司法記者は立派なもんだよ。

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ドーア先生

昨日も都内某所で某・・・・・

いや、はっきり言いましょう。連合の中で、ドーア先生を囲む意見交換会に出席。

ドーア先生から、近著『誰のための会社にするか』を踏まえて、「静かなる株主革命か、経営者革命か」と題して問題提起、その後フリーディスカッション。

ドーア先生が言われる準共同体企業から株主所有物企業への「静かな株主革命」はどこまで本当か、というか、企業労使の共同体意識は崩壊してきたのか、というと、そうではないのではないか、むしろ、同じ釜の飯意識が強く残り、崩れていないために、かえって労使協同でコスト削減に走り、それが株主利益の重視につながった、という道筋ではないか、というのが稲上先生の見立て。

それを煽った元凶が二つのニッケイ、つまりニッケイ連とニッケイ新聞だというツッコミもあったが、この辺労務屋さんのご意見も聞きたいところ。

私は、むしろ90年代前半期のリベラルな考え方、つまり生産者重視から生活者重視へ、とか企業のインサイダーより株主オンブズマンをもてはやすような雰囲気がかなり効いているのではないかと思う。このリベサヨ感覚が、いつのまにかネオリベ思想に推移し、気がつけば株主絶対になっていた。それをバックしているのは、企業労使連合から排除された「下流」の正社員へのルサンチマンであって、そういうのが城繁幸の本などに飛びつく。

城氏は東大法学部を出て富士通に入り人事担当になったエリートさんだからね。日本的雇用慣行を潰せといって潰しても生きていける。そういうのにうかつに憧れるノンエリートが一番ひどい目に遭うんだが、かっこよく見えるんだろうなあ、これが。

ま、しかし、ニッケイ新聞さんも最近反省してきたようだし、日本経団連が今年出した新たな政策方向は注目すべき。そもそも、ニッケイ連は株主価値至上主義を唱えてはこなかったはずで、喚いているのはむしろ学者や官僚が多かったというところが面白いところではなかろうか。実際、構造改革や規制緩和のアドボケイトは官僚上がりがやたらに多いんだよな。

(追記)

正確に言うと、通産省やら何やらの新しがり屋の薄っぺら官僚やアングロサクソン出羽の守学者と一緒になって、株主重視のコーポレートガバナンスだの市場の規律だのと喚いていたのは、ニッケイ連ではなくって、ケイダン連の方。ニッケイ連が最後頃に出したコーポレートガバナンスの報告書は、株主と労働者のバランスを取ろうとした苦心の作でしたが、あんまりまともに顧みられなかったようです。

その後、労働省が厚生省に合併されたように、ニッケイ連もケイダン連に併合されて、なんだかじわじわとその色を失って来つつあるようではありますね。どうなることやら。

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ものの分かっている経営法曹

前から、厚生労働省の事務局なんぞよりも日本経団連の方がよっぽど物事が分かっていると書いてきていますが、また同じ様な感を強く持ちました。

経営側に立って労働裁判に携わっている弁護士の集まりである経営法曹会議が出している『経営法曹』という雑誌の最新号(150号)で、労働契約法と労働時間法に関する座談会をやっているのですが、その後者の方で、ある使用者側弁護士の方(西修一郎氏)がこう発言されているのです(83ページ)。

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・・・現行でも管理監督者を取っても、管理監督者が過労死するケースがありますから、現実に労働基準監督署は管理監督者について、会社が「私どもは時間外を払わないので、時間管理はしません」というのは許さないので、それは拘束時間という意味では、管理監督者の時間管理をしなさいと、こういうことは現行でも言われるわけで、これは裁量労働でも同じです。

結局、賃金対象労働時間ではないが、安全配慮義務という観点から、拘束時間は結局は管理せざるを得ないですね。だからそういう意味で拘束時間という言い方を私はしますが、それを考えればエグゼンプションをどうやっても、どういう制度をやっても、拘束時間を管理するという制度は、結局は残るのです。制度というか、そういう方法はやらなければならない。

・・・結局、早い話が、最終的に拘束時間をどうするかということを決めるか、決めるのは辞めて安全配慮義務と言うことで限度があるじゃないかと、こう考えるか。そういう問題であろうと思っております。

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全くその通りであって、経営側はここまで物事の本質が分かっているのに、なんでお莫迦な規制改革音頭の連中に引きずられているのだろうと不思議でならないわけですが・・・。

「自律」だなんだというくだらない戯れ言にいつまでもつきあっていると、まじめな話、いままで本当は管理監督者ではなかったのに「管理職」ということでお目こぼしされていた管理監督はしていないけれども職能資格は高い高給ホワイトカラー層が、「働き方は自律的じゃないじゃないか」と事実正しい指摘をされて、残業手当を払わなければならなくなってしまうという悲喜劇すら生じかねないんですが、そういうお覚悟はあるのかなあ、と。

安全配慮義務はだれに対してもあるわけですから、きちんと法律上で拘束時間を定めて、それをきちんと守っていたんだという反論ができるようにするのか、そういうのなしに、死んだからカネ払えといわれても反論できないような状態にしてしまうのがいいのか、これは経営側として正念場なんですがね。

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年功賃金は差別とはいえない

5月22日のエントリーで紹介した欧州司法裁判所法務官意見が出されたキャドマン事件の判決が10月3日付で出されました。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&Submit=Submit&alldocs=alldocs&docj=docj&docop=docop&docor=docor&docjo=docjo&numaff=&datefs=&datefe=&nomusuel=&domaine=PSOC&mots=&resmax=100

(前のエントリーはこちら)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_7079.html

結論から言うと、怖れられていた判例変更は行われなかったということです。曰く、

>一般論として言えば、賃金決定基準として勤続期間を用いることは、労働者がその任務をよりよく遂行することを可能にする獲得した経験に報償するという合法的な目的を達成するのに適切であるから、労働者がその点に深刻な疑いを引き起こすような証拠を提出しない限り、使用者は特定の職務に関して勤続期間を賃金決定基準として用いることがその目的を達成する上で適切であることを特段立証する必要はない。

つまり、年功賃金を取っている側に立証責任があるんではなく、それがけしからんという側に立証責任があるということですね。多分、ヨーロッパ中の労使双方が胸をなで下ろしているんではないかと思います。

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クローズアップ現代もややピンぼけ

昨日、NHKのクローズアップ現代が「“働き方革命”がホワイトカラーを直撃する」と題して、いわゆるホワイトカラーエグゼンプションの話題を取り上げていましたが、例によって残業代がなくなるという話と過労死するまで働かされるという話がつながらないままつながったように語られるという30分で、ピンぼけ症候群はNHKまで広がっているということを改めて確認させられた番組でした。

大体、労働側から長谷川さんを出すんなら、経営側は紀陸さんだろうと思うのですが、多分悪役で出るのは嫌だということなんでしょうか、奥谷禮子氏が好きなこと言ってる。彼女が経営側右代表だと思うのはヤメレ。この人材派遣会社社長(ついでに、何で番組では「人材コンサルタント」なぞと辛淑玉みたいな肩書きにしとるんだわいな)は、規制改革会議では水を得た魚かも知れんが、労政審では経営側の中で完璧に浮いとるぞ。求職者との打ち合わせがいろんな時間に入ってくる、って、それのどこが「自律」やねん。ヒマな時間にカネ払いとない、ってだけやろが。NHKのアフォ記者も少しは突っ込め。

まじめな話、まともな経営者からすれば、時間ではなく成果に応じて給料を払いたいという話と、社員の健康を大事にして、在職死亡をできるだけなくしたい、メンタルヘルスを改善したいという話とは何ら矛盾する話ではなく、両方追求しなければならない課題のはず。カネ勘定からしても、社員に過労死されたら1億円が飛んでいく。人間を使い捨てにする一部の経営者に引きずられるんじゃなく、どうしたらそれが実現できるのかをまじめに考える方向に誘導するような、そういう番組作りに心がけていただきたい、というのが感想。

あと、ついでに苦言。労働側も、残業割増の引上げなどという、経営側が絶対に呑まない無理な要求をいつまでも掲げてもしょうがない。はっきり言って、大企業はどんなに引き上げても大丈夫、中小企業が潰れる。大企業だけエグゼンプトで儲けられて、中小企業は残業代で潰すような案を経団連が呑めるわけはない。大体、残業代上げたら残業が減るのか増えるのか。所得効果と代替効果のどちらが大きいか分からんぞ。

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労働法グリーンペーパー差し止めをUNICEが画策?

今月18日に欧州委員会が「労働法の将来」についてのグリーンペーパーを発表する予定だということは前にも書いてきましたが、その内容に使用者団体のUNICEが反発して、出さないようにしろと言っているらしいです。らしいというのは、UNICEのHPにはそんなことは何にも出てこないからですが、EurActivというEU情報にえらく詳しい業界紙(紙じゃないけど)にその辺の消息が載っています。消息どころか、まだ公表もされていないそのグリーンペーパーの案文がそのまま載っけられているから面白い。こういうことをやるのは、UNICEの圧力で潰されたり修正させられることを恐れた雇用社会総局の役人のリークに違いありません。

http://www.euractiv.com/en/socialeurope/unice-seeks-labour-law-green-paper/article-158453

これがそのグリーンペーパーの案文です。

http://www.euractiv.com/29/images/Green_paper_Labour_Law_Draft_25-09-2006_tcm29-158454.pdf

問題意識は、現在日本で議論されている問題と大変近いのです。労働市場に参入しやすいようにと、解雇保護が薄い柔軟な雇用形態を導入していくと、ますます分断された労働市場になっていってしまうのではないか、これを縮小するように既存の労働法の枠組みを再検討するべきではないか、自営業者と労働者の定義とか、派遣労働者の明確化とか、いろいろと盛りだくさんですね。

これが本当に18日にこの形で発表されるのか、期待して待っていましょう。

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厚生年金70歳本格支給へ?

日経の記事ですが、

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061004AT3S0301803102006.html

「厚生労働省は2007年4月から、厚生年金の受け取りを本来の65歳から66歳以降に遅らせた場合、遅らせた期間に応じて8.4―42%を受取額に上乗せする方向で検討に入った」そうです。

正確に言うと、「増額率は66歳ちょうどになった月から受け取る場合の8.4%が最低。申請して、受け取りを1カ月遅らせるごとに0.7ポイントずつ増える。最も期間が長くなるのは70歳ちょうどから受け取る場合。69歳までは給与のみで生活し、70歳から引退して年金を受け取ると、増額率は42%。65歳時に受け取れた厚生年金が月3万円とすると、70歳時に受け取る年金額に加え、増額された4万2600円が上乗せされて支給される」ということなのですが、今後支給水準が引き下げられていくことを考えれば、その低い65歳支給開始の場合の受取額よりも「増額」するということであって、むしろ70歳支給開始の場合の受取額を基準に考えれば、それより早く受給開始すると相当に減らされるという意味だと考えた方がいいかもしれません。

「新制度の導入で高齢者の就労を促し、少子化による労働力不足に対応する」のが目的だと言っていますので、まさに70歳現役社会、70歳原則支給開始に向けた動きと評することができるかも知れません。これはまさに、近年のEUやOECDの雇用・社会政策が目指している方向であるわけで、これからいろいろと抵抗は強いでしょうが、結局はそういう方向に行くしか道はないように思います。平均寿命が極端に延びてしまった以上、人生のうち働く期間の割合を減少するに任せ、ただ貰うだけの人生をいたずらに長引かせるわけにはもう行かないということなのですから。

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国交省への偽装請負

読売によると、「地方労働局が「偽装請負」で国交省事務所など立ち入り」したそうです。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061004i306.htm?from=main3

正確に言うと、「地方整備局ごとにある「関東建設弘済会」など八つの社団法人は、設計などの業務を国交省から請け負い、民間コンサルタント会社から出向した技術者を、地方整備局の出先事務所で働かせていた」のですが、「実際には事務所側が技術者に対し指揮、命令しており、労働者派遣法違反の「偽装請負」の疑いがあるという。また、出向の形態をとりながら、実質的には、職安法で禁じられている労働者供給事業にあたる疑いもあ」ると報じています。

これは、建設弘済会と国交省だけの関係で見れば、偽装請負を解消してきちんとした労働者派遣にすればいいという話になりそうですが、そもそもこの請負と称して派遣で働いている労働者は民間コンサルタント会社の技術者だということなので、実は鉄道弘済会というのは単なるトンネル組織に過ぎないようですね。つまり、民間企業の労働者を形式的に自分のところに出向させたことにして、国交省に派遣しているわけですから、実態は二重派遣ということになり、まさに職安法が禁止する労働者供給事業に該当する疑いが濃いということになります。

役所には、労働法は自分のところには適用されないという間違った認識がけっこうあるので(確かに重要な労働法制は公務員を適用除外していることが多いのですが)、インチキな派遣や請負をやってもいいのだという風に考えているとしたら、そうではないということを示したという意味で、これは頂門の一針といえましょうか。

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偽装請負に業務停止命令

サンケイによると、大阪労働局が業務請負会社のコラボレートに、業務停止命令と改善命令を出したようです。

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/e20061003005.html

硬軟両様の、これは硬派の方ですね。この会社は有名な(悪名高い?)クリスタルグループの中核会社で、あちこちで問題を起こしていたようです。少し前の朝日の記事でも、

http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/K2006092904070.html

近く業務停止命令を出すというリークをしていました。

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期間超え派遣の是正指導

日経新聞によると、厚労省は「派遣社員を労働者派遣法で定められた上限期間(原則1年)を超えて正社員並みに働かせ続けている悪質なケースに対し、2007年度から是正指導を強化する方針を固めた。法律違反であることを企業側に周知徹底し法令順守を求める。派遣社員の告発などを基に全国の労働局を通じて対象企業を個別調査、違法性が高ければ是正を指導する」とのことです。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061003AT3S2202A02102006.html

正確に言うと、上限は2003年改正で3年までになっていますが(製造業についても既に今年3月契約分からは3年上限となっています)、いずれにしても派遣というのは臨時的なニーズに対応する雇用形態だからという理屈付けから、上限が規制されているわけです。では実際はどうなっているかというと、結構上限を超えて派遣労働者として就労させているケースが多いようで、まあ、だから今回是正指導に踏み切るということなんでしょう。

実は、この点は事前面接の禁止と並んで、規制緩和サイドが緩和を強く要求している点でもあるんですね。守っていないけど、守れといわれるのも嫌だということですかね。ただ、これはそもそも派遣労働という労働形態をどういうものとして位置づけるかがこの20年間揺れ動いてきたことの現れという面もあります。もともと1985年に労働者派遣奉加できたときには、専門的技術的で特別な雇用管理をする職種だけだから派遣でいいんだという理屈付けをして、いわゆるポジティブリスト方式、すなわち政令で定める仕事しか派遣でやれないという仕組みにして派遣を認めた経緯があります。この時は法律上上限規制というのはなかった。

ところが、1999年改正で普通の仕事でも派遣でやっていいというふうにして(といってもそれまでもファイリングと称して一般事務を派遣してたんですが)、その代わり臨時的なニーズに応えるものだから認めるんだという理屈付けにして、上限を1年にしたわけです。それを2003年改正で3年にした。

実際は、派遣という形で長期就労するケースも多く、それをコンプライアンスということで断ち切ってしまう方向への是正指導が好ましいのかどうかは議論の余地があるでしょう。法律上は、期間が終わりかけたら、派遣先が派遣労働者に直接雇用を申し込む義務というのを課していますが、これが使われているという話はほとんど聞いたことがありません。上記規制緩和サイドは、この規定もなくしてしまえと主張しています。どうも、この規定を正社員として雇い入れろという規定だと思いこんでいる向きもあるようですが、そういうことはありません。直接雇用であれば有期契約で申し込むことも十分可能なので、そんなに変な話でもないと思うのですがね。

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社会保険庁を完全民営化?

産経新聞の一面トップ記事です。

http://www.sankei.co.jp/news/061002/sei003.htm

「現在の法案を今臨時国会で審議未了、廃案とした上で、年内に案をまとめて新法案を来年の通常国会に提出。平成20年度の新会社発足を目指す」のだそうです。「厚労省が悪質未納者への強制徴収業務や年金特別会計の管理など年金運営の責任を持ち、新会社には保険料徴収や給付、年金相談といった実務業務のみを委託する」ということになると、むしろ市場化テストでいう民間事業者の行う公共サービスという感じに近くなりますね。「民間の生命保険会社や損害保険会社にも実務業務への参入を許し、新会社と市場競争させる」というのは明らかにそっちの発想です。

安倍政権は当面はやはり小泉政権を受け継いでポピュリスト的リベラル路線全開で行くみたいですね。

(追記)

安倍首相も国会の代表質問への答弁でそういう方向を示唆したようです。

http://www.asahi.com/politics/update/1002/006.html

>社会保険庁改革関連法案について、「すべて公務員でやらなければならないかどうかも含めて、国会で十分に議論していただきたい」と語り、法案を作り直して再提出することも視野に、徹底改革の考えを強調した。

>中川秀直自民党幹事長が「社会保険庁職員を国家公務員のまま存続させる案では、解体的出直しにならない」と指摘。首相は「業務改革、職員の意識改革、組織改革を強力に推進し、解体的出直しを実現しなければならない」と応じ、新組織の職員をすべて「非公務員」とすることも辞さない姿勢を示した。

だそうです。まあ、今の世の中の雰囲気からするとそういうことになるんでしょうかね。実際のところ、強制徴収業務や特別会計の管理を厚労省が行うのである限り、制度の運営自体は十分可能ではあるでしょう。

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賃金不払残業への監督指導

昨年度の賃金不払い残業への監督指導による是正結果が公表されています。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1002-1.html

>是正企業数は1,524企業、対象労働者数は167,958人、支払われた割増賃金の合計額は232億9,500万円である。企業平均では1,529万円、労働者平均では14万円である。

業種別の状況は表になっていますが、

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1002-1d.html

職種とか職位別というデータはありません。まあ、現行労働基準法でいけば、きちんと残業手当を払わなければいけないのに払っていなかったものがこれだけに上るということですね。

このうち、どれだけが現在議論になっているホワイトカラー適用除外の対象になりうる人で、どれだけがそうでない人かは分かりませんが、ある程度は重なっているのであろうとは想像されます。逆にいえば、いつまでもこういう形でサービス残業摘発を受けるのは嫌だから、早くエグゼンプションを作ってくれという話にもなるんでしょうね。金融広告業あたりはそういうのが多そうです。

ただ、業種の広がりからいえば、エグゼンプトなど関係なく、要するに残業代を払っていないだけというのも結構多そうではあります。

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即戦力ってなあに?

JILPT研究員の岩脇千裕さんが、同機構HPのコラムに、「求人企業と求職者をつなぐ「言葉」の曖昧さ 」という題のエッセイを書かれています。

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum062.htm

問題の言葉は「即戦力」。特に新卒採用における「即戦力」という言葉です。曰く、

>新卒のほとんどは就業経験を持たない。彼らが全く教育訓練を受けずに職務に就くことは不可能だ。よって新卒に求める「即戦力」とは、「教育訓練に時間がかからない人」=「教育投資を最小限に抑えられる人」を指すと考えるのが適当だろう。では企業は、新卒にどのような能力が備わっていれば、教育に手間がかからないと考えるのだろうか。

>以上より「教育投資を最小限に抑える」方法には二つの方向性が考えられる。一つは、基礎能力の要求水準を上昇させることである。もう一つは、基礎能力に加え、特定職務に独自の能力も要求することである。

実際に彼女が行った調査から明らかになったのは、「特定職務に独自の能力を必須とする企業は稀であり、多くの企業が以前にもまして、あらゆる職務に共通する基礎能力を重視するようになったこと」でした。

このように、「求人企業の「言葉」の定義と求職者の「言葉」の定義との間にズレがあること」が、「求人企業と求職者との間にミスマッチが生じる」原因の一つだと、彼女は言うわけです。

しかし、これは単に求職者側の言葉の定義の問題というだけでは済まないように思われます。学生が「即戦力」という言葉をそういう風に理解してしまうのは、世間に無知であったからというよりも、なまじそういう考え方を煽り立てるマスコミや求人業界や一部の学者の言動をまともに受け入れすぎていたからだと言えないでしょうか。世の中はこんなにがらりと変わったんだ、それに対応して学生の心構えもがらりと変わらなければいけないんだ、という脅し文句(はっきり言って「こけおどし」)を、社会経験のない学生に振りまいてきた人々には責任はないのだろうか、ということです。

(なお、彼女のこの問題についての詳しい論文は以下のサイトで読めます)

http://homepage2.nifty.com/iwawaki/

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EU一般労使協議指令の実施状況

『生活経済政策』の10月号に、「EU一般労使協議指令の実施状況」を書きました。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/seikatsukeizai0610.html

中味は、連合総研の『DIO』に書いたものの要約版プラスアルファです。プラスアルファは、スウェーデンの法制、イギリスへの影響、及び新規加盟国への影響の3点ですが、個人的にはスウェーデンの法制についての記述が、労働者代表制の議論に一石を投じる内容になっているのではないかと思っています。日本にはスウェーデン屋さんは掃いて捨てるほどいるんですが、大体みんな福祉関係の方々で、正面から労働、それも労使関係システムについて論じている方は大変少ないんですね。

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