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2006年9月 6日 (水)

技能検定のこれから

厚生労働省の「技能検定職種等のあり方に関する検討会」が「「人財立国・日本」の基盤整備-技能・ものづくりが尊重される社会の実現に向けて-」と題する報告書を取りまとめました。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/09/h0905-1.html

技能検定制度は、ドイツやスイスの仕組みを見習って、1958年の職業訓練法で導入された制度です。ヨーロッパでは中世ギルドの徒弟制で職人試験があり、これの伝統を受け継いで熟練工の検定制度が確立していますが、日本の徒弟制は雑用やらせて仕事は見よう見まねで、技は教えられるものじゃない、盗むものだ、てなもので、技能検定という考えはありませんでした。

当時の労働官僚たちは、ヨーロッパ諸国のように、技能士の資格を有することで労働協約上の高賃金を受けられるような、企業横断的な職種別労働市場の形成を目指していたんですね。私のいう「近代主義の時代」です。ところが、実際には企業内で技能検定はかなり普及しましたが、年功制の下ではそれが賃金や昇進などの処遇に結びつくという形にはなりませんでした。日本的な形で落ち着いてしまったわけです。

この報告書は、「技能の高度化・複合化等の変化や、産業・人材の動向等に的確に対応するため、企業、業界団体等のニーズを踏まえつつ、検定職種、内容等の見直しを図る」こと、「そうした変化に一層柔軟かつ迅速に対応する等の観点から、検定職種整備等における民間活力の一層の活用を図る」ことなどを提唱していますが、このブログでの関心事項からすると、次の「若年者のキャリア形成を巡る問題や、パート、派遣労働者、フリーター等の増加等を踏まえ、多様な労働者の適切なキャリア形成を図る観点からの取組」が興味深いところです。

いくつか面白い提言がありますが、まず、「学校教育段階からキャリア形成を睨んだキャリア教育の充実を図り、その中で技能検定等の職業能力評価制度を活用していくことが重要」と述べ、「検定取得を含むキャリア教育を単位として認定する」ことも提示しています。

パート、派遣、フリーターのキャリア形成支援については、パート向け社内検定とか期間従業員の正社員登用試験といった例を挙げて、そういう取り組みを促進すべきとしています。「年長フリーター等については、職業能力評価基準の知見も活用しつつ、経験能力を適切に評価できるような手法の開発・普及に努める」というのも重要な点です。

このブログでも何回も取り上げている製造業の派遣・請負労働者の増加について、「今後とも技能継承上の問題や品質管理上の問題を生じさせないためにも、サプライ側(ベンダー側)とユーザー側とが、長期的視点に立って、職業能力評価制度の活用を含めた能力向上に取り組むことが重要」と的確な指摘をしており、「このため、業界団体等に、業界横断的な職業能力評価制度の構築に向けた自主的取り組みを促す」べきとしています。ここで例としてあげられているものは、下請協力会社のケースですが、協力会社向けの社内検定制度を設けているというもので、これをサプライ側とユーザー側に応用できるのではないかといっています。また、ある派遣・請負業者では、募集した労働者の養成訓練のために企業内訓練校を設けると共に機会保全等の技能検定取得を奨励しているということです。

もともと企業横断的なシステムとして考えられ、実際には企業内システムとして用いられてきた技能検定というしくみを、非正規労働者の能力開発という政策課題に対応する形でモデファイしながら展開させていければ望ましいですね。

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