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「請負労務」に関するメモ

現段階での私の考えを箇条書き的にまとめてみました。最後のところはまだまだ熟成不十分ですが、いろいろとご批判をいただければと思います。

1 法的認識

・請負は古来から存在する労務提供契約の一類型。民法上は雇用、委任と並列。雇用との違いは、指揮命令の有無については裁量労働など不明確化している面もあり、究極的には危険負担の有無。

・商法上の商行為としての請負は、「作業または労務の請負」。後者は請負人自身の労務ではなく、その支配下にある者の労務の提供であり、労務供給請負と呼ばれた。

・作業請負には、請負人個人で作業を遂行するもの(個人請負)、請負人が下請負人にさらに作業を分割して請け負わせるもの(重層請負)、請負人がその雇用する労働者を指揮命令して作業を行わせるもの(ここでいう「請負労務」)に分かれる。

・この広い請負の中から、労務供給請負を労働者供給事業として括りだし、禁止したのが職業安定法。

・いわゆる請負4要件は、労務供給請負と請負労務の区別をしようとしたものだが、それを請負と労供・派遣の区別と呼んでしまった。本来いずれも請負人が危険負担するという意味で請負であり、その区別は現実には微妙。

・この4要件のため、請負といえば労供・派遣ではないという認識が広がる。「偽装請負」という表現もその現れ。概念が混乱している。正確には、確かに請負ではあるが労務請負的性格が強いものというべき。

・戦前の労働法制は、請負(請負労務も労務供給請負も含めて)による就労者に対しても、工場法を適用し、工場主と直接雇用関係のない請負就労者に対する工場主の責任を認めていた。

・戦前の労働者災害扶助責任法は、元請負人に扶助責任を負わせた。これを労基法は受け継ぐが、建設業のみ。

・安衛法は建設業、造船業について元方責任を規定。これらは請負の現実の姿に対応した法制。2005年改正も同様。

・ 請負4要件によって作られた「請負であれば労働法と関係がない」という発想からの脱却が必要。広い請負の中のどこにどういう問題があり、どういう対応をすべきかというアプローチへの転換が必要。

2 歴史的認識

・工業化の初期は親方職工が仕事を請け負い、子分に分担させる「内部請負制」が一般的。ここでは、工場と個々の職工の間に雇用関係が存在するが、雇用管理、賃金管理は親方が担う。いわば雇用と請負の混在形態。

・20世紀初頭から生産工程の直接管理化が進み、親方に代わる職長は雇用管理、賃金管理を直接になわず、査定に関わるのみ。雇用としての純粋化。

・一方独立性の高い工程や補助的工程は親方が独立業者として請け負う形になり、請負としての純粋化。これが空間的にも独立すると立派な下請中小企業となる。

・とはいえ、実際には労務供給請負も多く、これが多くの弊害をもたらしたため戦後職安法による禁止となった。請負4要件で厳しく締め上げ、それまでの請負人夫が直用の臨時工となった。

・しかし禁止が行きすぎて事業活動が困難になったため、占領後に緩和。これで社外工が増加し始める。

・造船業、鉄鋼業などでは、社外工を供給する請負業者を協力会社として系列化。構内下請中小企業として、それなりに安定した形になる(中小企業としての格落ちの雇用の安定、能力開発等々)。

・60年代から事務職場に事務処理請負業という名目で労供が展開。80年代に労働者派遣法として法認される。

・かつてはパートタイマーを主たる非正規労働者としていた電機産業にその代替として業務請負業が本格的に参入するのは90年代。独立性の高い工程を請け負う系列業者ではなく、労務供給的性格の強い全国的独立業者。

・ 2003年改正で製造業への労働者派遣が解禁。

・作業請負としての業務独立性が高く、企業としての組織従属性が高い協力会社化の方向と、労務請負としての業務従属性が高く、企業としての組織独立性が高い派遣会社化の方向の2つの道がある。

3 雇用政策としての課題

・雇用政策としての問題点は何か?

・企業側では、技能の蓄積・伝承が困難になることが、製造業の競争力維持の観点から問題。

・労働者側では、若者のキャリア形成が困難(勤続を重ねても賃金が上昇せず、技能が評価されない)であり、将来の見通しが立たないことが問題。

・従って、解決の方向は何らかの形での「請負労務のキャリア化」に求めるべきである。

・第1の選択肢は、請負労務による就労者を就労先の正規労働者として採用し、そのキャリアパスに乗せる道。しかし、外部的柔軟性が全く失われるので、それに値する選別された優秀な一部しか可能でない。

・第2の選択肢は、請負事業者を協力会社として系列化し、企業グループ内でのキャリアパスを用意する道。会社別人事管理としての格差を維持し、一定の外部的柔軟性を維持しつつ、それなりのキャリアを提供する。今後の景気動向にもよるが、相当部分はこれで対応可能ではないか。

・第3の選択肢は、企業組織としての独立性を維持し、派遣専業会社として、その中でのキャリアパスを用意する道。この場合、派遣会社内でのキャリア形成が可能なように、常用派遣型である必要がある。また、派遣料金が技能水準に応じた形で設定されるような業界としてのルール形成が必要となろう。

・これらに乗らないカジュアル労働力需要は、できるだけ(今さらキャリア化の必要性の薄い)定年退職後の高齢者で賄うようにするか。

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