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労働を中心とする福祉国家の構想

講演メモです。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/researchcenter.html

題名だけ見るとなんだか連合さんの御用達みたいですが、中味はだいぶ違います。

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EUの労働法政策」カテゴリの記事

コメント

一般の聴衆の方々を対象とする場合には特に大きな問題ではないと思いますが,いくつか政治学的方面からのコメントを.

先生がヨーロッパとおっしゃる場合には,特にEU内の主要国であるフランスやドイツなどを念頭におかれていると思いますが,これら大陸ヨーロッパにおける福祉国家の拡大過程においては,労働組合と同時にキリスト教政党,特にカトリック政党が重要な役割を担ったことにも留意すべきだと思います(特にドイツやオランダ).たとえば先生が例に挙げられた

>擬制的労務サービス業の主体はあくまでも家族共同体(「家計」)なのであって、その首長たる成人男子労働者については自己調整的労働市場にゆだねてあえて介入は行わないが、その妻や子どもについては就業制限や労働時間規制によって労働力供給を制約するという政策です。次に、成人男子労働者が一時的(疾病、 失業)または恒常的(障害、老衰)に労働不能に陥った場合に、その家族共同体成員の生活を維持するための給付を企業と成人男子労働者の強制拠出によって行おうとする社会保険制度が作られます

という男性正規労働者の雇用安定や家族主義,社会保険制度の重視などの福祉国家原理はキリスト教政党が強い大陸諸国ではその中心ではありましたが,アングロモデルだけではなく,福祉国家の発展においてキリスト教政党の貢献が小さい北欧においてもそれほど強固なものではないように思えます.また後で触れられている若年者の失業者の高止まりや女性,中高年労働者の労働市場からの退出といった特徴もドイツ,フランスもしくは一時のオランダでは一般的ですが,たとえばスウェーデンではそれほど著しい現象ではありませんし.

逆にカトリック的な原理が強いがゆえに大陸諸国の福祉制度は,労働組合や社会民主主義政党が主な担い手となった労働の脱商品化に関しては,北欧諸国ほどの発達は見せてはいないと思います.もちろん特にアメリカとの比較では大陸諸国の福祉制度はより脱商品化を志向していたといえると思いますが,脱商品化という一次元の指標で大陸諸国とアングロサクソン諸国を比較するのは必ずしも適当ではないと思われます.あるいは企業内での“脱商品化”についての判断の違いかもしれませんが.私が主に依拠しているエスピンアナセンはかならずしも解雇規制などを脱商品化の基準としては考えていなかったと記憶しています.

個人的な感想ですが,エスピンアナセンが保守主義型福祉国家と呼ぶ大陸諸国の福祉制度の問題点は,基本的には労働者が雇用を得なければ(つまり自分を商品化しなければ),健康保険や失業保険,長期的には年金などのさまざまな給付を得られないにもかかわらず,このような労働者の保護そのものが企業側の重い社会保険負担を生むために厳格な解雇規制とあいまって,特に生産性の低い若年低学歴の労働者の雇用の拡大を妨げている点だと思いますので,アングロサクソン型と大陸型を商品化という概念だけで区分することは難しいと思います.

投稿: 政治学者の卵 | 2006年9月 7日 (木) 08時37分

専門家からの鋭いご指摘恐縮です。
仰るとおり、ここでヨーロッパといってるのは主として大陸諸国です。エスピンアンデルセンのいう保守主義レジームですね。彼の理論では、北欧社民主義が一番脱商品化していて、保守主義はその次だというんですが、労働面から見るととてもそうは見えないわけです。北欧はアクティベーション志向でむしろ(ある意味で)商品化を促進している。
おそらく、これは社会政策から見るか、労働政策から見るかという視点の違いと、「商品化」「脱商品化」という言葉の多義性から来るものだろうと思います。私としては、聴衆が労働関係者であることから、意識的に違うもの言いを試みていますが、政治学者のお立場からの率直なご批判を頂ければさいわいです。

投稿: hamachan | 2006年9月 7日 (木) 10時01分

確かにアナセン(というか福祉を研究する政治学者全般)は労働政策よりも社会政策に重点を置いてますね.おそらくは福祉制度を研究する政治学者の関心が,租税および社会保険を通じた財の直接的な再分配にあるからだと思います.

他方,企業や金融,労働や雇用などの生産レジームを比較する政治学の研究者の間では大陸型とアングロサクソン型の対比のほうが一般的かもしれません.なので,労働に重点をおいて話される場合には,こちらのほうが好対照なのかもしれませんね.

投稿: 政治学者の卵 | 2006年9月 7日 (木) 10時22分

ここで軸になっているのは、90年代前半にEUが出した社会政策見直しですが、この時北欧は(デンマーク以外は)加盟国ではなく、天敵イギリスと向かい合う独仏等がEUの政策形成の中心であったため、大陸型モデルをどういう方向に変えるか、というのが主たる問題意識になっており、北欧型のアクティベーション社会を目指すというのが大きな方向付けになっています。
それをより「脱商品化」の方向へ、と言ってしまっては、話がつながらなくなるところから、「2つの脱商品化」という風に、私なりに概念を工夫してみたわけです。

投稿: hamachan | 2006年9月 7日 (木) 10時42分

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