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2006年8月31日 (木)

谷垣禎一氏の政権構想

8月17日のエントリーで紹介した谷垣禎一氏の政権構想が、氏のホームページ上で公開されました(自民党総裁を目指す立場なので、「財務相」という肩書きはつけません)。

http://www.tanigaki-s.net/seisaku.html

http://www.tanigaki-s.net/seiken-kousou.html

まず、総論は「絆の社会の再構築」。小泉改革は「創造的破壊」だったと一応褒めた上で、「破壊のあとには創造が必要」と、ブレア流。「改革が目指す先は、決して効率性だけを追求する弱肉強食の一面的な冷たい社会であってはなら」ず、「「古いもの=悪、新しいもの=善」という単純な図式にとらわれるべきではない。私たち日本人が綿々と受け継いでいる価値観を大切に育みながら、新しい価値観を取り入れ、両者をうまく調和していく」というのです。

その鍵は「絆(きずな)」。いい言葉を見つけましたね。「皆が隣人の優しさや温もり、「絆」を感じながら、生きがいをもって活動する。改革の先には、こうした「絆」の社会を築いていくべきではないだろうか」。よほどの偏屈でない限り、これは賛成でしょう。

具体論として、「最も力を入れるべきことは、「人」をつくることである」と、これもブレア流。その中味は実にいいことが書いてあります。思わず全文引用しちゃいますね。

「我々はこれまで信頼できる社会システムを構築することで、こうした日本人の特質をうまく引き出すことによって社会や経済を発展させてきた。しかしながら、90年代の経済の低迷、それに伴うリストラなど働き方の変化、求められる人材像の変質、日本をとりまく状況の変化、国際競争の激化は、多くの日本人の自信を失わせ、これまでの働き方にも教育の在り方にも疑問が投げかけられるようになった。

 だからといって欧米流の教育や働き方をそのまま移植すればいいとは私は考えない。我々はここで一旦立ち止まり、本来存在する日本人の素晴らしい本質を最大限に引き出し、その魅力を最大限高めるべきではないか。

 例えば、技術や能力を磨き、人と人とがお互いに競争し、あわせて協調することを通じて、各々が持つ個性が伸び伸びと発揮され、元気な日本が実現する。資源のない日本にとって、勤勉でよく働き、チームワークが得意で応用力に優れた国民性は貴重な財産であり、これを今後とも育んでいかねばならない。」

そうなのよ、そうなのよ(「日本人の素晴らしい本質」とかの非科学的発言は目をつぶってね。正確には日本人が社会的に作り上げてきた性質なんであって、別にDNAに書いてあるわけじゃない)。

教育については、「漢字や九九の学習で行われているような徹底的な反復学習を義務教育全体にわたって行」う「読み書きソロバン世界一プロジェクト」や、「社会人を含む多様な教員を採用し(「絆学校」)、逆に教員も社会に出て実社会の経験を積む(「先生修行制度」)」ことを提唱しています。

ここからが労働社会政策に大いに関わる部分です。

まず、「社会の支え手を増やす」という観点から、女性と高齢者が働き続けられる社会を訴えています。これはまさにEUの雇用政策、社会政策がここ10年あまり提起してきたことであり、OECDも最近熱を入れている点です。その影響が強く表れていて、特に高齢者の雇用に重点が置かれています。具体的には、「定年制の廃止を見据えて70歳までの雇用確保措置を徹底し、企業の雇用インセンティブを高めるため、年功型賃金を改めて貢献度に応じた賃金体系を広めるべき」とか、「企業が退職間近の社員の能力開発費用を積極的に増加させた場合に法人税を軽減(教育訓練費の増加に関する法人税額の特別控除制度を拡充)」するとか、「高年齢者の能力開発のための各種助成制度も思い切って拡充する」といった政策によって、「60歳から64歳までの高齢者の労働力率(働いている方の割合)を、今後20年間で、男性で現在の70%から85%に、女性で40%から60%に引き上げていきたい」という数値目標を提示しています。

こういう労働力率の数値目標はいいのですが、定年制の廃止とか、年功型賃金を改めるとかというところについては、もう少し検討の要がありそうです。そもそも、60歳を超えて年功賃金を適用しているところなどほとんどないでしょう。何歳くらいまでは年功制が効果的かという人事労務問題についてはいろいろ蓄積もあるので、何でもかんでも成果主義がいいという風にいってるかのようにとられない方がいいように思います。

もちろん、一方で、「必ずしも雇用という形にとらわれる必要はない」とし、ボランティアやシルバー人材センターにも言及しているので、多様な参加の形を考えておられるんでしょうが。

また、「同時に、個性や能力、性別や年齢に応じた多様で柔軟な教育を受ける機会が提供されなければならない」と、リカレント教育訓練にも目配りしています、「大学は何も若者だけを対象にした教育機関ではない」という言葉は、このままでは少子化でどんどん潰れていく大学としてはよく聞いておく必要があるでしょう。

少子化対策については「若者が置かれている労働環境をみれば、安定した仕事に就いているが深夜まで働くことを余儀なくされるものがいる一方で、家族を養っていけるだけの経済力が得られない不安定な雇用にしか就けない者がいる。これでは結婚からは遠ざかるばかりである」と述べて、「長時間労働をいかに減らしていくか、安定した雇用機会をいかに提供するかという労働問題の解決が少子化への対応の第一歩である」とまあ穏当な発言です。

ホントのところ、前にもここで書いたように、長時間労働者の方が結婚してはいるんですけどね。結婚しちゃうと、長時間労働者の方が性頻度は低くなるけれど、結婚もセックスもできないのはビンボな若年非正規労働者なんですから。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_cade.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_913c.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_c922.html

そういう若者を念頭に置いて、「格差意識への対応」を打ち出しています。小泉政権として、「格差の拡大はない」と内閣府の御用役人が分析しちゃってるので、「私は格差が現実に存在しているかどうかという議論に立ち入るつもりはない。問題は、「勝ち組」「負け組」といった言葉に象徴されるように、人々の意識に社会を二極分化、対立の構図でとらえる意識が見られ、そして、多くの人が自分の置かれた立場に自信をなくし、自らが社会的に不当な立場に置かれていると思っていることなのだ」と、見事な問題設定の切り返し。そして「バブル崩壊による雇用悪化のしわ寄せを最も受けたのは、「若年者」である」「フリーター、ニートといった問題にみられるように格差の固定化は人々の生きる意欲を低下させるものであり、それを防ぐことは重要な課題である」と述べ、「新卒者だけでなく、就職氷河期に希望する就職に恵まれなかった世代も含めて、「フリーター25万人常用化計画」を打ち出しています。これはまさに適切な政策です。「フリーターがフリーターのまま幸せになれる社会」なんて構想よりもね。

谷垣氏はさらに進んで、「パートや派遣といった非正規労働と正規労働の労働条件の均衡を図ること」や「労働市場の流動化を進めること」にも言及しています。もちろん、「個人単位で能力・キャリアが評価される社会の仕組み、年金のポータビリティを高めるといった制度的問題の手当」は必要ですが、うかつに流動化促進論をぶつと、大事な「絆」がどうなるかも考えないといけません。「人と人とがお互いに競争し、あわせて協調する」ようなチームワークには、一定の定着性が必要です。

地域の活性化は出馬する3氏が一番競っているところですが、ここではパス。

社会保障と財政について、「消費税を社会保障のための財源と位置づけ、2010年代半ばまでのできるだけ早い時期に、少なくとも10%の税率とする」点も、新聞等でさんざん報道されているのでこれだけにしておきます。

憲法やアジア外交、靖国問題も、特にコメントしません。まあ穏当なところでしょう。

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コメント

先の政治闘争

「売春×」vs「売春○」

とはフェイズが大分違うんでしょうけど、
報道によると「何とかチルドレンw」の
若頭ちゃんが優勢のようですね。まあ、
霞ヶ関の機能を有効利用するのは、谷垣
さんなのかなあ、という気はするんです
けど

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