無能者差別禁止法
平家さんの「2006年福祉宇宙の旅」に対しても、何かコメントを思いながらそのままになっているのですが、少し休んで補給をされるとのことなので、本格的なコメントはその上でということにしたいと思います。
http://takamasa.at.webry.info/200608/article_27.html
その代わりに、ある意味でここでの議論と通じるものがある面白い記事をあるところで山形さんが紹介していたので、ぷらぷらと考えてみます。
http://www.freakonomics.com/blog/2006/08/26/important-new-legislation/
(via) http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20060828#c1156741004
要は、アメリカの障害者差別禁止法のパロディで無能者差別禁止法なるものが制定されたぞうという世界を描いているんですが、こういう記事を読んで腹を抱えて笑っている経済学者の払った税金もまたフードスタンプなど福祉に回っているわけで、(もちろん経済学ネタとしてからかっている分にはいいのですが)マクロには本当はどっちが合理的なのか?という問いはなかなか難しいところもあるのですね。
エセ歴史家の視点からすると、戦時中の日本はまさにこれに似た政策をやったわけで、そのなごりがある意味で戦後もずっと続いてきたわけですが、無能な者を企業の中に抱えている社会と、企業の外に放り出して福祉で食わせている社会と、どっちを選ぶかというのは、経済学者の一時の慰みにしておくにはもったいない社会科学的含意があります。もとの記事ではこういうトンデモ法律を作ったのはクリントン大統領だということになっていて、それでまた保守派の皆さんは大受けするということなんでしょうけど、今までの福祉をやめてワークフェアにするんだと最初に言い出したのがクリントン政権であることを考えると、この記事は(恐らく書いた人の想定以上に)真に迫っている面がありますね。
一点だけ労働法学者としてつまらない指摘をしておくと、この問題がこういう記事になるのはアメリカが障害者についてクォータ制をとらず、差別禁止政策をとっているからなんですね。だから、最後にあるように、却って無能者の割合を下げる云々という話になる。そういう特殊アメリカ的要素を取り除いて、日本やヨーロッパ的な雇用政策、社会政策の枠組みでこの記事をモディファイすると、無能な奴らでも雇っといてくれよという政策(「無能者雇用促進法」ないし「無能者雇用確保助成金」!?)になって、ちょっと言葉はえぐいけど、一体どこが面白いの?ということになる。
(社会生物学者なら、蟻の生態を引いて、2-6-2の法則を持ち出されるかも知れませんが)
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