教訓
本田先生にこんなことを申し上げるのは大変心苦しいのですが、
社会科学は経験科学です。確実な根拠と的確な論理展開によって正しい結論に至るものであって、その逆ではありません。
政治的に正しい結論が不確実な根拠や不適切な論理展開を治癒するものではありません。
(スターリン治下のソ連では違ったかも知れませんが)
この間の本田先生とのやり取りにおいて、「非正社員でも生計をたて家族をもてる程度の均衡処遇」や「非正社員であってもキャリア展望をもてるくらいの職業に向けての準備を初期教育訓練および継続教育訓練」が政策論として適切かどうかという議論は一切行っていません。
「可能な限り法によって企業があまりにもあまりなことをすることを抑制していかなければならない。企業の温情に期待するのではなく、企業以外の主体がある種強い姿勢で向かっていく必要がある」というご意見がどの程度適切であるかという議論も一切行っていません。
それらはそれとして大いに議論したい論点ではあります。しかし、今回のやり取りの論点は、そういうサブスタンスではありません。もっと大事なことです。およそ社会科学(以外でもそうでしょうが)の研究者であるならば、当然持っているべき「根拠への問題意識」を欠いておられた点にあるのです。
ちょっとくだけた説明を。どんな名探偵だからといって、「こいつが犯人だと分かっている」んだからと、いい加減な証拠と穴だらけの推理で犯人を挙げるわけにはいかないでしょう。少なくとも先進国の推理小説ならば。
<追記>
稲葉先生から、もとのエントリーの表現につきご指摘があり、修正いたしました。ご不快の念を抱かれた皆様には心からお詫びいたします。
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この間の濱口先生がおっしゃってきたことはまことにごもっともなんですが。
「学部卒業程度の学歴しか持たない低学歴の役人風情が、アカデミックな研究の訓練を受けた方にこんなことを申し上げるのは大変心苦しいのですが」という言わずもがなのいやみはよしましょうよ。
飯田君の言い草じゃありませんが、ベストアンドブライテストがアカデミックキャリアを目指すというわけではないのですから。「入院」という語もございますし。
実際少なからず大学人は意外にそういう引け目を企業人や官僚に対して覚えているものです。その引け目を直撃するだけですよ。
投稿: いなば | 2006年8月25日 (金) 01時33分
ご指摘を受け修正いたしました。
投稿: hamachan | 2006年8月25日 (金) 09時48分