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2006年7月25日 (火)

規制改革会議の契約・時間法制意見

宮内会長の村上ファンド問題でだんまりを決め込んでいるのかと思いきや、我らが規制改革・民間開放推進会議は先週末付けで「労働契約法制及び労働時間法制の在り方に関する意見」なるものを出していたんですね。

http://www.kisei-kaikaku.go.jp/publication/2006/0721/item060721.pdf

意見の対象は6月27日に出された事務局素案の現段階の最終版。細かいことは直接読んでいただければいいのですが、特に労働契約法制については「予測可能性の低さが問題点として指摘されているが、・・・強行規定によるルールの明確化は、予測可能性を一般に高めるものの、柔軟な対応を困難にする」からできるだけ避けるべきだという姿勢が貫かれています。

一部少数派組合が猛反対している過半数組合や過半数代表者の合意による不利益変更についても、「過半数組合や過半数代表者が就業規則の変更に同意していない場合であっても、就業規則変更の合理性が一概に否定されるわけではない。したがって、過半数組合等との合意は、合意推定(就業規則の合理性推定)のための十分条件とはなり得ても、必要条件とはならないことを明確にすべきである」と、多数であろうが少数であろうが、労働者の意見なんか聞いていられるかという姿勢ですかね。

解雇のところも、「解雇が労働協約や就業規則に定める解雇事由に該当するといえる場合には、労使自治(当事者の取決め)を尊重する観点から、原則として解雇を有効とする考え方を明確にすべきである」と大変勇ましい論陣を張っています。労働側がなお反対している解雇の金銭解決は諸手を挙げて賛成かというとさにあらず、「金銭的解決の額が恒常的に高い水準にとどまり、正社員としての雇用が企業にとって大きなリスクとなることで、使用者がかえって採用に消極的になったり、これまで解雇が判例上有効とされていたような場合にまで金銭的解決が事実上強制されることがないよう、適切な配慮が払われるべきである」と、解雇者に払うカネももったいないという感じですかね。

有期労働についても、いっとき「検討の視点」では、労働者の請求があれば更新の際無期契約になるというやや急進的な案が提示されて、使用者側が何事と色めき立ちましたが、現在の素案では常用雇用への応募機会の付与義務にとどめられていて、一応収まっているんですが、我らが規制改革会議からすると大変ご不満のようで、「妥当性を欠く」と非難しています。

労働時間のところで、割増の引上げの問題点を指摘しているのは、そこはその通り、珍しく意見が合いますが、それにしても「確かに、アメリカでは、週40 時間を超える場合における割増率が5割と日本のそれを上回っているが、一方では全労働者の約40%がこうした規制の適用を除外されているという事実にも目を向ける必要がある。したがって、割増賃金の引上げを図る場合には、一方で適用除外の範囲を大幅に拡大することが必要になるものと考える」などと、白々しくもよくぞ言えるもんだと思いますね。そういう言い方をするんであれば、ホワイトカラーエグゼンプションを実現するために、アメリカに倣って50%に引き上げるんだから、中小企業は甘んじて受け入れろとか、言うてみろってもんです。ご都合主義もここまで来ると偉大なもんですね。

ホワエグは飛ばして、その次に書いてある管理監督者の範囲の明確化というところが、実は非常に問題をはらんでいます。そして、これが通達の問題であるだけに、またぞろ厚生労働省の木っ端役人を呼びつけて、さんざんぱら殴りつけてどうこうしようという話になりかねず、この点は注意してみていく必要があるように思われます。ここは、要するに、物理的な労働時間規制を適用除外してもかまわないほど経営者に近い「管理監督者」とは誰かという問題と、残業手当を払わなくてもいいくらいの給料を貰っているフツーの管理職といわれる労働者は誰かという問題が意識的にか無意識的にかごっちゃになっていて、それがホワエグ問題の源泉ともなっているわけですが。

<追記>

労務屋さんもこの意見書にコメントされています。読み比べると、感覚のおなじところ微妙に違うところがにじみ出ていて面白いですよ。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060726

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