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2006年6月15日 (木)

わりといい素案(労働契約法)

いろいろとリークされていた「素案」ですが、厚生労働省のHPに掲載されています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0613-5a2.pdf

労働時間制度については今日は取り上げません。言うことは決まっているし。

新聞等ではあんまり注目されていない労働契約法制に関わるところが、結構細かい修正が入っていて、興味深いです。

一番大きく変わっているのが、就業規則変更に関連して、労働組合や労働者代表に関わるところです。ここは、昨年の契約法制研究会報告では労使委員会を活用するという形で書かれて色々と批判を浴びていたところですが、なかなか工夫の跡が見えます。

基本的には、就業規則の不利益変更について、過半数組合が合意している場合には個別労働者との間に合意があるものと推定することとし、ただしこの場合は労働者が当該変更が不合理であることを反証した場合にはひっくり返る。それに対して、事業場の3分の2を組織する特別多数労働組合が合意した場合には、「上記4の手続を経た過半数組合との間の合意と同様の効果を与えることとすることについて慎重に検討する」というもってまわった表現になっていますが、ざっくり言うと、個別労働者が反証してもひっくり返りうる推定ではなくて、頭っからそれでいくんだよということにしちゃうということでしょうか。だとすると、これはなかなか大胆な提言ですが、3分の2がいいかどうかは別にして、一定の合理性のある話ではあります。

で、問題は過半数組合がない場合、この点について、この素案は労使委員会とかいう前のいわゆる過半数代表のあり方に遡って検討を加えています。この点は大変好感が持てます。ま、各法令に規定されている過半数代表を全部いじるというまでのつもりはないのでしょうが、少なくとも労基法の規定する過半数代表について、民主的な選出手続によらなければならないことと、多様な労働者の利益を公正に代表することを要件とし、そうやって選出された「事業場のすべての労働者を適正に代表する者(複数)」について、上記の過半数組合との合意に準ずる法的効果を与えることを検討するという書き方になっていて、現在の過半数代表のいい加減さをそのままにして労使委員会を論じていた研究会報告よりはいいものになっていると言っていいのではなかろうか、と私は評価したいと思います。

3年前の基準法改正時からの持ち越し案件である解雇の金銭解決については、依然としてもわもわした書き方で、あんまり具体的なイメージにならないのですが、一点、これも研究会報告よりもいいものになっていると評価したい点として、有期労働契約における更新拒絶についても対象とすべきか、という一文が入っている点です。これは、研究会報告では、無効との取扱いの確立を先行させる必要があるとして却下されていた論点なのですが、本日のOECD雇用戦略に関するエントリーでも述べたように、実は有期労働にこそ一般的な金銭解決スキームが役立つのですね。この点は大変貴重な論点なので、今後の審議で消し去ることなく、最終報告まで持って行ってほしいと思います。

で、日経新聞とかがヘンな飛ばし記事を書いていた有期労働契約に関するところですが、4月の「検討の視点」で提示されていた一定期間又は一定回数更新された場合の扱いについて、具体的な案の形になっています。すなわち、例えば1年を超えて、あるいは3回程度を超えて更新されている場合、「労働者の請求があった場合、使用者は期間の定めのない契約の優先的な応募機会の付与を行わなければならない」というものです。あくまで応募機会の付与であって、自動的に無期契約になるとかそういう話ではありません。「検討の視点」では若干誤解を招く書き方になっていたのですが、これであれば制度として実現可能なものになっているように思われます。また、個別契約により決定されている労働条件についてのいわゆる変更解約告知に対する異議をとどめた承諾に対して解雇できないという規定の「解雇」に有期労働契約の更新拒絶を含めるという案も提示しています。

この他、個別には色々とまだ論点はありますが、総じて、思ったよりも(という言い方は失礼ですが)まともな、というかわりといい素案になっている印象です。いや労働契約法制に関する部分についてですが。

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