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2006年5月22日 (月)

労働法の職業レリバンス

一昨日届いた日本労働法学会誌が、労働法教育の今日的課題という小特集をやっていまして、これがしばらくここで話題にしてきた「職業レリバンス」の話と密接につながるので興味深いものがありました。

もっとも、学会誌に各先生方が書かれた文章はそれぞれの文脈がありますので、ここではそれらの内容とは一応別にして、職業レリバンスには4つのレベルがあるという点を挙げておきたいと思います。

まず第1は、アカデミックな労働法研究者を養成するという観点からの職業レリバンス。これは哲学であれ、経済学であれ、他のいかなるアカデミックな学問についても、ほぼ共通するものでしょう。

その次に、労働法は実定法ですから、法曹養成のための職業レリバンスという観点が当然あります。2年前に設置されたロースクールは、この職業レリバンスにもっぱら焦点を合わせて、そのための法曹養成教育を大学院レベルでやろうというものです。そうすると、これは同じ大学院レベルで第1の職業レリバンスとは必ずしも整合的でない要請が前面に出るということになります。研究者養成のために必要な比較法や法制史、基礎法学の学習がどうしても後ろに追いやられてしまい、いい研究者が育たなくなるのではないか、と危惧されるのもその関心からすればもっともです。とはいえ、ロースクール構想自体、そもそも司法試験受験ばかりに目がいき、現実社会への生き生きした感覚のない法曹が増えていることが問題だという問題意識から出発したわけですし、確かに、近年、「お前労働法わかってんのかよ」と言いたくなるようなトンデモ判決もないわけでもないということからすれば、ロースクールのために研究者養成がおかしくなったぞ、と言っていればいいわけでもないでしょう。

その次に、労働法は現実の企業や組織の中で、日々行われている労務管理や労使関係の現実を動かすためのツールであるという(私に言わせれば最も重要な)側面があります。役所で労働行政に携わる人間や、労働組合運動で活動している人々や、そして何より重要なのは、個々の企業の中で、人事部や労務部といったところで、日々労働法の対象となる事態を動かしている人々です。こういう人々への職業レリバンスという側面が、ロースクール構想ではすっぽりと抜け落ちてしまっているんですね。いや別にみんな大学院レベルに入れようなんて馬鹿な話ではなく、これはむしろ学部レベルの労働法教育というものの意義付けをどう考えるかということになると思うのですが、なんだかここが明確にされないまま、ロースクールじゃない法学部教育って何の意味があるのかについて、混乱しているのが実情のようです。

この第3のレベルの職業レリバンスを考える上では、他の法律学の学習よりも、労働経済学や労務管理論といった同じ対象を他のディシプリンでアプローチする学問分野の方がレリバンスがあるという点も重要でしょう。別の領域でこういう観点からいわゆる「学際」的に作られたのが「国際関係論」という奴ですね。そういう意味では、学部レベルでは「労働関係論」的アプローチもいいのではないか、と考えています。

このレベルのさらに基礎レベルに、より一般的な職業レリバンス、およそ労働者として、あるいは職業人としてこの社会の中に生きていくための労働法の職業レリバンスというのがあります。学校教育では高校までのキャリア教育の中での労働教育、また教育基本法第7条でもうじき消されることになっている「勤労の場所における」労働者教育に含まれるものですが、これの欠如が様々な問題を問題として提起することもできないままの現状につながっているという観点からすれば、極めて重要であることは明らかでしょう。

まあ、ここまできれいに4層構造になっているのは労働法くらいかも知れませんが、職業レリバンスというものを考える上での枠組みとして、一つの重要な参考にはなるのではないかと思います。

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