労政審に「検討の視点」提示
先週11日の労働政策審議会労働条件分科会に、「労働契約法制及び労働時間法制に係る検討の視点」が提示されたようです。現在まだ厚生労働省のHPにはアップされていませんが、連合のHPに丸ごと載っているので、こちらにリンクを張っておきます。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/roudoukeiyaku/data/dai54/siryou.pdf
内容的には、去年の労働契約法制研究会報告と今年の労働時間法制研究会報告の中味を若干変えつつ集約した形になっています。山のように論点があるんですが、ぱっと目についたのは、労働条件変更のところが就業規則の変更によるものだけになっており、研究会報告の目玉の一つでもあった「雇用継続型契約変更制度」が煙のように消えてしまっていることです。まあ、変更解約告知方式にせよ、一方的変更権制度にせよ、いろいろと問題点が指摘されてはいましたが、あっさり消しちゃうとはね、という感じです。
逆に、就業規則変更の際の合理性推定について、報告にあった過半数組合なら合理性を推定という案に加えて、労働者の3分の2以上の「特別多数労働組合」だったら合理性を推定という案も提示しています。一般的拘束力は4分の3ですけれどね。
解雇の金銭解決については、報告でかなり細かい制度設計を提示していましたが、ここでは一転して「これを円満解決できるような仕組みが必要ではないか」とか「その場合、どのような論点があり、それを解決するためにどのような手法があるのか整理する必要があるのではないか」と、もういっぺん元に戻って議論し直すような書き方になっています。
報告書の中の、使用者側からの申し立ての要件については、あらかじめ個別企業労使間で解決金の基準を定めたおいた場合に限るなどと、なかなか興味深い提案がされていたのですが、労使とも受け入れがたかったということでしょうか。
それから、有期契約については、「有期労働契約が更新されながら一定期間(又は一定回数)を超えて継続している場合において、労働者からの請求があったときには、次の更新の際、期間の定めのない労働契約が締結されることとなるような方策が考えられないか」と、大変踏み込んだ提案がされています。正直言って、報告では現在の告示を若干進める程度の案になっていただけに、これは「想定外」でしたね。
ここまでが労働契約関係ですが、いずれももっと突っ込んで論じる必要のあるものばかりです。また、ここでは省略しましたが、労働契約の展開の所も重要な論点は多いはずです。
このあとは労働時間関係なのですが、もういろいろと書いてきたことなのですが、「自律的労働時間制度の創設」とか言ってますねえ。しかし、使用者側は本当にそんなものを求めているのかしら。どうも違うんじゃないかと言う気がして仕方がないんですけど。
同じ連合のHPに最近の労政審の議事概要がアップされていますが、使用者側は要するにこういうことを言っているわけです。
「労働時間を賃金に反映するのがふさわしくない働き方も、出てきていると思う。」
「同じ仕事でも、時間内で終わる労働者もいれば長時間の時間外労働の末ようやく仕上げる労働者もいる。しかし、現行の労働時間法制では、後者の労働者の方が手にする賃金が高くなってしまう。」
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/roudoukeiyaku/data/20060315dai52kai.pdf
これに対して労働側は「労働者が生んだ成果は、昇給や昇進に反映されるべきであり、成果主義・能力主義だから時間外労働の割増賃金支払が不要だというのは、理解が間違っている。」と反論していますが、そうでもなかろうと言う気がしますが。
いずれにしても、ここで労使の間で問題になっているのは、賃金と労働時間のリンクをどうするかという問題であり、最後は労使の間でどういう妥協をするかということになるはずのものであって、事務局側の問題意識とはかなりずれが生じているように思われます。
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