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2006年4月14日 (金)

教育基本法改正案における「職業」

教育基本法の改正案というのが出ていましたので、「職業」や「労働」といったものがどんな風に取り扱われているのかという関心から見てみました。これが現行法と対照表にしていて、わかりやすいです。

http://seijotcp.hp.infoseek.co.jp/education.html

第2条第2号に「職業および生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」というのが新たに盛り込まれています。今さらながらと言えばそうですが、改めてこういう規定が明文で設けられることの意味はやはりそれなりにあるのだろうと思います。キャリア教育の根拠規定ということになるのでしょう。

一方で、現行第7条(社会教育)では、「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない」となっていて、「勤労の場所」で行われる教育、すなわち企業内教育訓練というものが、教育の重要な柱の一つとして明確に位置づけられていたのですが、改正案(第12条)では「個人や社会の多様な学習に対する要望に応え、社会において青少年および成人などに対して行われる教育は・・・」となっていて、逆に生涯学習としての職業教育訓練という視点が薄れているようにも見えます。

まあ、最近のはやりで、企業内教育なんて古めかしいものじゃなく、労働者個人の自己啓発でいくんだから、という発想なのかも知れませんが、そういう単純なものでもないだろうという気もします。それに、最近注目されているデュアルシステムも、特に教育政策の観点から見れば、企業内教育と学校の職業教育の結合ということになるはずですから、この扱いはちょっと気になるところです。

それから、まあこれは労働問題というよりジェンダー問題ですが、第5条(男女共学)が削除されています。

あれ?と思ったのは、第5条(義務教育)です。現行(第4条)では「国民は、その保護する子女に、9年の普通教育を受けさせる義務を負う」となっているのですが、これが「国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負うこと」と、9年という年限が外されています。9年に限ることなく、例えば高校レベルまで義務教育にすることも(別に法律で定めれば)可能ということなのですが、しかし、この文言からすると、それは普通教育でなければならないと言うことになるのでしょうか。

実は、この規定は憲法第26条第2項第1文そのものなんですね。今までは9年という限定をはめていましたが、それをとると。だから、これは憲法論にもなるんですが、一体、普通教育じゃない職業教育も含めて義務教育とすることは、憲法違反なんでしょうか。

これは、実はかつて現実にあった議論のようです。終戦直後、ドイツのように、18歳までデュアルシステムによるものも含めて義務教育とするという意見もあったのですが、憲法の義務教育は普通教育という規定を理由に否定されたという話があります。しかし、それはなんだか本末転倒のような感じがします。

高校の義務化を考えなくても、たとえば義務教育である中学校に職業教育を導入するのは憲法違反、教育基本法違反なのか、と言う問題は、今でも発生しうるわけですよね。

最近、中学高校一貫教育というのが増えてきていますが、たとえば、中学校と職業高校の中高一貫教育で、高校レベルの職業教育を中学レベルに前倒しするというのも憲法違反なんでしょうかね。まあ、実際には中高一貫というのは受験勉強の前倒しのために使われていて、職業高校との一環という例はないようですが、それは逆に差別じゃないかという感じもするし、それこそ「職業および生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う」というのであれば、その辺も考えてもいいんじゃないかという気がしないでもありません。

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» 「新教育基本法案」へのツッコミ本番。 [成城トランスカレッジ! ―人文系NEWS & COLUMN―]
昨日、急いで「現行教育基本法と「教育基本法改正案」の比較 」を作りましたので、役立てば幸いです。 さて、ネット上を巡回してみると、特に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」部分を中心に、「法案」へのツッコミが少しずつ行われているようなので、まとめていきたいと思います。皆様からの「自分もツッコミしたよ」TB大歓迎です。 ... [続きを読む]

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