ドイツの『福祉から雇用へ』の担い手
4日のエントリーで『積極的な最低生活保障の確立』(第一法規)を紹介しましたが、個人的にいうと、一番関心を持って読んだのは布川日佐史先生のドイツ編です。というのは、ドイツでは例のハルツ改革で、ワークフェアへの改革を実行し、その関係で、社会扶助(生活保護)を担当する自治体と、職業紹介を担当する連邦雇用庁の連携の仕組みをいろいろと模索してきているからです。
布川先生のパートを読むと、この仕組みをどうするかは、政治的なものも絡んでジグザグしたようですね。社会民主党は連邦雇用庁主導を方針とするのに対して、キリスト教民主・社会同盟は自治体主導が方針で、政治的な対立があったようです。
もともと、社会民主党政権のもとで、連邦雇用庁がジョブセンターを設け、そこに自治体の専門職員を受け入れて、就労可能な要扶助者に対して、労働市場への参入支援と生活支援を一手に行うという、労働行政主導型で構想されたのですが、連邦参議院で与野党逆転したため、野党の意見を入れて、連邦雇用庁と自治体(郡及び市)の双方を実施主体とし、それを「一つの手による援助」とするため、連邦雇用庁と自治体が契約によりジョブセンター内に「労働共同体」を設立し、これが生活保障と就労支援を一手に担うこととされたんですね。
また、併せて、キリスト教民主・社会同盟の強い要求で、全国に69のオプション自治体を認可し、自治体が連邦雇用庁の権限と義務を担うという実験も行われているそうです。労働共同体とどっちが効率的かを判断するんだとか。もっとも、自治体の方も、積極的な郡と消極的な市で温度差があるようです。
昨年の総選挙と、それに伴う政権交代により、近く69だけでなく全国の自治体がオプションを選択できるように法改正するらしいので、方向性としては、就労支援も含めて自治体主導という方向に行くみたいですね。
ちなみに、日本でも、2004年12月の社会保障審議会福祉部会生活保護の在り方専門調査会(ちなみに、布川先生もこのメンバーです)の報告に基づき、2005年度から生活保護受給者等就労支援事業が開始されています。実施要綱(通達)は、
で、事務連絡は、
ですが、基本的には福祉事務所主導で、職安に就労支援の要請をして、両方のコーディネーターからなるチームを設けて、ナビゲーターとか、トライアル雇用とか、訓練講座とかの支援をするということのようです。
日本では、職安を民営化せよとなどいう声の方がかまびすしいのですが、公的に必要な機能ということからすると、この福祉行政との関係こそが重要な機能でしょうね。
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