失業構造の変容だって?
内閣府の「今週の指標」というコラムで、失業理由から見た失業構造の変容というたいそうなタイトルの分析が載っています。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2006/0403/711.html
ごく短いものですから、どこまで真剣に書かれたものなのかよくわからないところもあるのですが、要するに、若年層の「仕事に就けない理由」が最近、条件にこだわらないが仕事がないんだというマクロ経済な要因から、希望する種類・内容の仕事がないという構造的なものにかわってきたんだと、そして、ここがすごいんですが、若年失業者の探している雇用形態で、正規の職員・従業員が、平成11年から平成17年の間に、62.8%から60.4%に下がっていることから、
「若年層は雇用形態よりも、むしろ仕事の内容への「こだわり」といった要因により「希望する仕事がない」と回答する者が増加しているのではないかといった可能性も考えられる」とか、さらには、
「このように失業構造の変容の背景には、若年層を中心として、雇用形態のミスマッチというよりも、仕事の内容のミスマッチが拡大した可能性が考えられる。・・・若年層が仕事の「魅力」を感じられなくなったために拡大したのか、といった観点から、よりミクロなレベルで的確に把握することが必要となっている」
というすさまじい結論を導いています。
極めてマクロ歴史的に趨勢を見れば、若者が仕事の中味にこだわってきたから云々という社会学的分析にも一定の正しさがあるだろうなとは思いますが、この6年の「構造改革」の中で、景気が悪いからでも、正社員になりにくいからでもなく、若者の意識が変わってきたから失業構造が変わったんだなんてよく言えるなあ、というのが正直な感じです。
特にすごいのが、平成11年から平成17年の間に、正社員志向が1.4%下がり、非正社員志向が0.7%上がったことをもって、雇用形態のミスマッチじゃないんだという結論に持っていこうというところ。これって、そこまで言える数字なんでしょうかね。この間の非正規比率の上昇を考えたら、むしろ実態よりも意識において正規志向が強く残っているという印象があるのですが。
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おじゃまします。(自分のブログは今お休み中ですが、そのうちまたはじめます。)
政府の報告なんてあてにならないもの、という感覚をもつわたしですが、この記事でとりあげられた報告にはびっくりです。
統計をとればふつう2-3%は誤差が出るでしょうに、何を言っているんでしょう(~_~)。
なお、近年の風潮なのかどうか、わかりませんが、「やりたい職種がない」という理由を失業者が選ぶ動機についてはどうでしょうか。
「やりたい仕事をやったほうがいい」という風潮にあわせた可能性は? あるいは、一度職場に入れば正社員・派遣・アルバイトを問わず過労死・過労自殺等のリスクがあるのなら、せめて自分にあったいい仕事で、ということでは? わたし自身も経験しましたが、ちっとも成熟とか洗練がなく、中産階級の常識からかけ離れてゆくばかりの低賃金の職はイヤというのを遠まわしに「自分には合わない」と言っている場合も含まれるのでは?
そういった点を考えると、たいへんおかしい報告です。
投稿: ワタリ | 2006年4月 6日 (木) 21時46分
ワタリさん、いつもコメント有り難うございます。ですが、
>政府の報告なんてあてにならないもの
というのはちょっと。「報告」はあてにしてください。データまでインチキだと思われては立つ瀬がありません。問題は、それを使っていかに変な結論をでっち上げているか、なんですから。
この「分析」でいえば、1%内外なんて誤差の範囲ということだけでなく、仮にその数字に意味があるとすれば、その6年間に、15歳~34歳層で、正社員が76%から67%に激減し、非正規労働者が23%から32%に激増しているという数字と睨み合わせて、どういう結論を導くべきかなんですよ。現実がこれほど変われば、失業者の希望だって実現可能性を考えればそれに合わせて動くはずで、にもかかわらず、正社員志向が1%強しか減っておらず、非正社員志向が1%弱しか増えていないというデータにこそ、意味があるわけです。
ま、内閣府の一官僚としては、結論先にありきなのかも知れませんが、あまりにも見え透いた操作で、ちょっと呆れたというところです。
投稿: hamachan | 2006年4月 7日 (金) 09時38分