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予告編:労働法の進化

今年、欧州委員会は「労働法の進化」に関するグリーンペーパーを発出する予定です。これは2006年予定表にちゃんと載っています。一体これは何をしようとしているのか、今までちらちらと出てきた情報をもとに、ちょいと予告編を覗いてみましょう。

じつは、「労働法の進化」というタイトルの文章は既に書かれて、欧州委員会に提出されています。

http://www.europa.eu.int/comm/employment_social/labour_law/publications_en.htm

これは欧州委員会雇用社会総局の労働法・労働組織課の刊行物ですが、そのてっぺんに「労働法の進化(1993-2003)」ってのがあります。これは欧州委員会の依頼に基づいて、各国報告書に基づき、フィレンツェ大学のシラーナ先生が2004年5月にまとめられた論文ですが、派遣労働、経済的従属労働、ファミフレ、有期、パート、さらには団体交渉や非差別といろんなテーマを取り上げています。これはこれだけで読んでも大変興味深いものですし、実際、一昨年の東大の院のゼミではこれも教材にして読んでいきましたが、EUが単にお勉強の材料を提供するためだけにこんなものを作ってくれるわけはないので、これは今後の政策展開に向けた布石という意味があったわけです。

それは昨年2月に出された新社会アジェンダにおいて、労働法の進化に関するグリーンペーパーを発出して、経済的従属労働者や有期労働など新たな労働パターンの趨勢を分析し、労働市場における効率的なトランジションを促進するより安定的な環境を提供することを図っていく云々、と書かれてあったことで明らかになりました。これだけでもイマイチ何をしようとしているのかよくわかりかねるところもありますが、今年、2006年になってもう少し詳しい予告編が出されました。

http://www.europa.eu.int/comm/atwork/programmes/docs/wp2006_roadmaps.pdf

これは2006年のロードマップという奴です。この178ページ目に、労働法の進化グリーンペーパーの説明が載っています。でも、あんまり詳しくもないですね。上述の専門家グループの報告書と、オランダ議長国が開催した会議の結果を基に、EUにおける労働法の現在の趨勢と将来の展望について関係者に広く協議を行うということぐらいしか書かれていません。どういう政策オプションを考えているのか、どのような規制的ないし非規制的手段を検討しているのかという問いに対して、いやあ協議文書ですから、結果次第ですねえ、規制的手段も非規制的手段も両方考えられます・・・って、何も言ってないに等しいぞ、こら。

ところが、これとつながってくる話が、今年の1月終わりにヴィラッハで行われた非公式雇用相理事会です。ここでは「フレクシキュリティ」という言葉がキーワードになりました。これはフレクシビリティ(柔軟性)とセキュリティ(安定性)を組み合わせた用語で、今年前半の議長国オーストリアは、このキーワードを中心に政策展開を試みたいと思っているようなのです。ここでは、ジョブ・セキュリティからエンプロイメント・セキュリティへといった議論もなされたようで、6月にまとめをしたいようなのですが、そこにこの労働法の進化に関する問題提起がストンと入ってくるという仕組みのようです。

その意味で、これは雇用戦略の一つの柱でもあるし、リストラに対する政策という意味もありますし、非常に広がりのある話になるだろうと思われます。

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