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雇用保険制度の見直し開始

労働政策審議会の雇用保険部会が雇用保険制度の見直しに関する審議を開始しました。第1回目の資料がHP上にアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/03/s0303-5.html

2月にまとめられた雇用保険基本問題研究会の「雇用保険制度の在り方に係る議論の整理」というのが議論の出発点のようです。これは、まさに「議論の整理」であって、一定の政策方向を打ち出しているというわけでは必ずしもありませんが、そうはいっても、議論の大枠はここまでよという一定の設定は若干されています。

その中からいくつか、議論の焦点になりそうなトピックを拾ってみましょう。

どういう人々に適用すべきかという問題については、前回改正の際から公務員への適用問題が論点になり、また最近は公務員制度改革の関係で、能力主義の導入や労働基本権問題などとも絡めて議論がされていますが、ここでは「公務員制度の在り方に係る議論、諸外国の法制度をふまえつつ、将来に向けて検討していくべき課題ではないか」とやや距離を置いた姿勢になっています。

それよりもむしろ興味深いのは、(1)非典型労働者(週所定労働時間20時間未満or雇用見込み期間1年未満)への適用拡大、(2)いわゆるマルチジョブホルダー(個々の就業では適用要件を充たさない者)、(3)非雇用の働き方(テレワーク、在宅就業、請負契約で就業する者)、(4)65歳以上の者・・・といったこれまで制度的に対象外にしていた者について、適用対象にするか、するとすれば、何をもって「失業」と捉えるのか、「離職前賃金」「被保険者資格取得」は何か、労使折半の保険料負担はどうするのか、等々といったかなり本質的な議論の出発点になる論点を示していることです。突っ込んでいくと大変な議論になりそうなものばかり・・・。

基本手当の在り方については、生活の安定と再就職促進という2つの目的を両立させるという正しい問題設定から、定率制だけでも定額制だけでもダメというまあ当然の結論を維持しているわけですが、支給期間が一定期間を超えた場合に給付率を逓減させる案とか、給付制限をもっと厳しくすることなどが提示されています。英独仏のような手厚い失業扶助は難しいと、先回りして釘を刺していますが、これはむしろ生活保護制度との関係で論じるべきことでしょう。まあ、よそ様の局の制度に嘴を挟むようなことは言いにくいのでしょうが。

あといろんな手当についても論点が示されていますが、最近の特別会計改革との関係でいうと一番重要なのは財政運営の在り方と雇用保険3事業に関するところです。昨年12月24日の閣議決定「行政改革の重要方針」において、「労働保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特別会計にて経理するものとし、労働福祉事業及び雇用保険3事業については、廃止も含め徹底的な見直しを行うものとする。また、失業給付事業における国庫負担の在り方については、廃止を含め検討するものとする」と書かれているだけに、これにどう対応するかというのが重要な課題になるわけです。

この論点整理では、「保険料負担は労使の共同連帯による保険制度として引き続き労使折半とすることが適当」とした上で、「国庫負担は原則として廃止し、雇用保険では労使が共同連帯で負担すべき範囲を定め、それ以上の負担については、国庫負担を行うという考え方もあるが、どうか」と提起しています。例えば、「雇用が急激に悪化し、労使の保険料だけでは給付ができなくなった場合、国庫が負担するという考え方はどうか」というわけです。これと積立金の問題、急激な雇用悪化時の対応の在り方論なども絡んで、ここは大きな論点ですね。

ターゲットにされている3事業については、現実には「我が国の雇用対策において中心的な役割を果たしており」、「雇用保険制度によって引き続き実施していく必要があるのではないか」というのがまあ関係者の本音であるわけですが、とはいえ特別会計改革で「廃止も含め徹底的な見直し」を求められている以上、現状維持というわけにもいきません。そこで、「失業等給付の付帯事業であるという原点に立ち返り、失業なき労働移動の支援等雇用のミスマッチ縮小のための雇用対策や、人口減少社会を見据えた仕事と家庭の両立支援、高齢者の雇用支援等、できる限り失業を発生させないようにする対策」に集中し、失業予防や再就職促進に直結しない雇用福祉事業は総ざらいして抜本的に再編するという方向が示されています。まあ、何かと批判を浴びているのは最後の雇用福祉事業であって、雇用安定事業や能力開発事業は労使ともうかつに廃止されては困るはずですから、労政審ではそういう方向になるんだと思うのですが、この辺は政治の方がどういう方向に動いていくのかとも絡みますから、どうなるか注目していく必要があるでしょう。

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