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2006年3月27日 (月)

春の欧州理事会

先週末の23,24日、毎年恒例の春のブリュッセル欧州理事会が開催されました。これがその結論文書です。

http://ue.eu.int/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/ec/89013.pdf

雇用政策については、2010年まで毎年200万人以上の雇用を創出するという目標を掲げています。そのために、

(1)就業へのライフサイクルアプローチ、職業生涯を通じた速やかな雇用移動の促進、経済における総実労働時間の増大、人的資本への投資の改善、

(2)積極的・予防的措置への移行、賃金雇用への求職の奨励、

(3)低技能・低賃金の者、とりわけ労働市場の周辺部にいる者に焦点を当てる、

といった政策が並んでいます。無業者をできるだけ労働市場に引き入れるとともに、キャリア展望のない周辺的労働者をより中心部に統合していくというインクルージョン型雇用政策に変わりはないわけですが、今年の特徴は人的資本への投資、つまり教育訓練の強調でしょうか。教育訓練がリスボン改革アジェンダの中心だとまで云っています。

燃えさかるパリの炎を横目に、若者対策としては早期退学を2010年までに10%減らすことが挙げられており、学校を退学して失業している若者に対して、2007年末までに6ヶ月以内に就業、徒弟制、訓練その他の就業能力向上措置を与えられるべきこと、2010年までには4ヶ月以内に、という数値目標が掲げられています。

ところで、上の「総実労働時間の増大」という言葉にぎょっとしたかも知れません。ここでの意味は、世の中で働いている時間をできるだけ増やすようにしようよ、ということで、早期引退じゃなくってもっと長く働くとか、家事育児負担で家庭に引っ込むんじゃなくって仕事をするとか、それもできればパートタイムよりフルタイムの方がいいとか、そういう意味ですので、何も燃え尽きるまでハードワークしろと云ってるわけではありません。

ただ、それを「労働時間の増大」という表現で打ち出してくるところは、何とはなしに雰囲気の変化があるのかなあという感じもします。少なくとも、時短はそれ自体では全然正義ではない、という潮流の変化はあるような気がします。

それとも若干関係するのでしょうが、今年の結論文書はフレクシキュリティ、つまりフレクシビリティとセキュリティをバランスさせるという概念を正面から打ち出しています。各国はこのフレクシキュリティの考え方に基づき、労働市場と社会政策の改革を進めよ、と述べています。ただ、じゃあ、具体的にどういう方向がフレクシキュリティなのかというと、それは明確にはされていません。今後欧州委員会が各国や労使と共に、フレクシキュリティの共通原則を探求すると書かれています。

多分、ドビルパン首相にとっては、若者は採用後2年間首切りOKよというのは、自分なりのフレクシビリティとセキュリティを結合した会心の策だったんでしょうね。2年たったら安定するんだからそれまで我慢すればいいじゃないか、と。それがここまで炎上するのですから、フレクシキュリティといってもそう簡単ではない。

あと、ここで何回か紹介したグローバル調整基金について、2007年1月からの施行を求めました。

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