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ILO結社の自由委員会勧告

一昨日のILO理事会で結社の自由委員会勧告が採択された、と連合のHPに載っていました。これが古賀事務局長名の談話です。

http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2006/20060330_1143684844.html

その中で、「国家の運営に従事しない公務労働者への団体交渉権および協約締結権の付与」と「国家の名において職権を行使することのない公務労働者にはストライキ権を保障すること」が求められた、と書かれています。

この原文がようやくILOのサイトにアップされたので見てみると、それぞれ、英語では、

ensuring that public employees not engaged in the administration of the State have the right to bargain collectively and to conclude collective agreements;

ensuring that those public employees who are not exercising authority in the name of the State can enjoy the right to strike;

http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/gb/docs/gb295/pdf/gb-8-1.pdf

フランス語では、

s’assurer que les travailleurs du service public qui ne sont pas commis à l’administration de l’Etat ont le droit de négocier collectivement et de conclure des accords collectifs;

s’assurer que les travailleurs du service public qui n’exercent pas d’autorité au nom de l’Etat jouissent du droit de faire grève;

http://www.ilo.org/public/french/standards/relm/gb/docs/gb295/pdf/gb-8-1.pdf

となっています。

まあ、訳語の選択も宣伝のうちではあるのでしょうが、「国家の運営」とか言われるとすごくハイレベルの政策決定者みたいな感じがしますが、これはアドミニストレーションを意図的に訳した感じです。確かに、ハーバー・サイモンの名著『経営行動』の原題は「アドミニストラチブ・ビヘイビア」ですし、アメリカのエグゼンプション対象者の一つにアドミニストラチブ・エンプロイーというのがありますが、ここで言ってるアドミニストレーションというのは「行政」ということでしょう。素直に「行政事務に従事しているんじゃない公共部門の被用者」というのとはかなり受ける印象が違います。

わたしには、こういうILOの勧告の発想のもとにあるのは、ヨーロッパ大陸型の2層制ないし3層制の公務法制にように思われます。日本も戦前はそうでしたが、官吏(ドイツではベアムテ、フランスではフォンクショネール)というのは公法上の任用関係で、団体交渉権やスト権は制約されていますが、その下で働く雇員(ドイツではアンゲシュテルテ)とか傭人(ドイツではアルバイター)とかは私法上の雇用契約関係で、労働基本権があるのは当然という世界です。そうすると、一つの組織を捉えても、その上の方と下の方の間に横に線を引いて、下の人には団体交渉権もスト権もありよ、というのは自然なのでしょう。

ところが、日本は占領下でアメリカに一番下っ端までぜーんぶ公務員という法制を押しつけられてしまい、以来半世紀にわたってそれを変えずに守り続けてきたわけで、そうすると、どこかで横に線を引こうと思ってもできない、線引きは縦にしかできない(現業と非現業とか、もっとも今までの「非現業」は病院や学校まで入っていて広すぎましたが)、わけです。

(実は、厳密に言うと、地方公務員については「単純労務職員」という形でアルバイターは別よという思想の名残があります。もっとも、それが何であるかは、政令が廃止されて法制上は不明なんですが)

日本の公務員法制をヨーロッパ大陸型にすべきだ、というのであれば、これは大変重要な問題提起でありますし、私はむしろ賛成なのですが(別に下の人は首切り自由になるわけではなく、解雇権濫用法理や就業規則変更法理が適用されるわけです)、連合は、あるいは日本の公務員労組は、そこまで踏み切る覚悟をもって労働基本権を主張しているのかな、というのが、疑問の残るところではあるんですね。

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