EU道路運送労働時間規則の改正に欧州議会が最終合意
最近、日本では、タクシー業界の規制緩和が長時間労働をもたらしているという批判がかなり強くなってきているようです。もともと道路運送業というのは長時間労働になりやすい性質があるのでしょう。日本でもむかしの2・9通達、27通達時代から、道路運送業の労働時間については特別の規制対象になってきていますし、そのもとになったILO条約でも、67号条約、153号条約とわざわざ条約が設けられてきています。
EUでも、すでに1969年に道路運送に関する社会立法の調和に関する規則が制定され、1985年には改正されてきています。これは運転時間、休息期間を規制するほか、最低年齢や歩合給の原則禁止などが規定されています。ちなみに所管は労働社会総局ではなく、運輸総局です。かつて、私がブリュッセル在勤中、日本から運輸関係労組の方々がお見えになった際、いつもつきあっている労働総局でなく、運輸総局の所管なので、運輸省からのアタッシェの方にお願いしてアポイントを取って貰ったことがあります。
そのEUの道路運送規則の改正について、2月2日、欧州議会が最終的にゴーサインを出したというニュースが出ました。これは欧州議会のプレスリリースです。
「運転時間が短いほど事故も少ない」という題のこの発表で、今年の5月から適用される新規則の内容が確定したようです。
まず、デジタルタコグラフの装着が義務づけられることで、時間のごまかしが困難になるということです。
休息期間については、欧州議会は最低連続12時間を主張していましたが、最終的に最低連続11時間という理事会側の主張に歩み寄ったようです。まあしかし、それだけあれば、睡眠不足でうつらうつら運転で事故になるという危険は少ないということでしょう。
加盟国によるミニマムチェックのところはごちゃごちゃしているんですが、2008年からは労働日の最低2%、2010年からは最低3%、ミニマムチェックをするということで合意したということです。これをさらにもとの資料でみると、このチェックのうち少なくとも15%は道路上で、少なくとも30%は事業場で行うこと、2008年からはそれぞれ30%、50%となること、さらに、道路上でのチェックは、随時様々な場所で行い、チェックポイントを避けることが困難なように道路網の広範な部分をカバーせねばならず、地理的バランスを考慮してランダムローテーションで実施することというような細かい注文がついています。
違反に対する罰則については、理事会側はこれは加盟国の専権事項であってEUレベルで決めることではないと主張していたようですが、欧州議会側が強硬に主張して、指令の附則として例示列挙と言うことでつけることになったようです。例えば、運転時間の上限の違反については20%オーバー、休息期間についても20%オーバー、休憩時間については33%オーバーが罰則の対象となるということらしい。
最近の道路運送業界をめぐるいろいろな動向をみていると、今回の改正内容もそうですが、現行の道路運送規則の規制内容も、結構参考になるところが多いように思います。
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