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2006年1月 5日 (木)

間接差別再論

昨日のエントリーに続いて、もう少し間接差別の話をしたいと思います。

実は、今回の建議にいたる審議会の議事録では、家族手当や世帯主要件の問題について、使用者側委員がそれは労使の話し合いの積み上げの結果なのだから、変えるにしても労使で変えるべきもので、法律で禁止すべきものなのかといった議論をし、労働側委員の方は自分たちも今改めようとしているんだと反論するという場面があります。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/10/txt/s1028-1.txt

それを受けて提示されたたたき台では、対象基準として身長・体重とコース別の全国転勤要件、昇進の転勤経験要件の3つが挙げられ、世帯主要件は落ちた形になりました。今回の建議もそれをそのまま取り入れています。

労働問題はまず第一義的に労使間の合意形成を基本として取り扱うべしという大前提からすれば、労働側自体が必ずしも意見が一致していないようなことを、天下り的に法律で規制しようというのは適切ではないということになるでしょう。この考え方からすれば、この判断は当然ということになります。

一方、差別禁止というのは人権問題であり、労使交渉で決めるべき筋合いのものではないという考え方に立てば、これには疑問が呈されることになるでしょう。

これは実は性差別にとどまらない大問題につながるのですが、ここでは男女間の間接差別に絞って、考えてみます。

実は、既存の裁判例をベースにできるところから対象にしていくというアプローチをとるのであれば、一番やりやすいのは実はこの世帯主要件だったはずです。厳密に間接差別法理を認めたと言えるかどうかは別にして、世帯主と非世帯主で賃金に差をつけたものを違法だとした裁判例もあるわけですから。しかし、そうはならなかったわけですね。

さらにいえば、EUの男女均等指令でも、もともと間接差別とは家族手当とか世帯主要件のことだったわけで、一番根っこのものをあえて抜かしてしまったような嫌いもあります。(欧州委の原案では、間接などという言葉はなく「性別又は婚姻上・家族上の地位に基づく差別」を禁止するとなっていたのを、「直接、間接、特に婚姻上・家族上の地位」云々と間接差別の例示に修正したのです)間接差別は禁止しているけれども、世帯主要件はいいんだというのは、かなり奇妙な印象を与えることは確かでしょう。

これはやはり、この問題を本気で追求していくと、そもそも生活保障給的な賃金制度そのものが間接差別ではないのかという大問題にぶち当たってしまうからなのでしょう。

この問題にとどまらず、最近の労働法政策の難題は何らかの形で賃金制度の在り方如何という問題に関わっているように思われます。その意味で、こういう個別領域ごとの政策制度論と並行して、賃金制度論をきちんと展開する必要がありますね。

これは自分自身への勉強の目標です。

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