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2006年1月25日 (水)

公務員の労働基本権

私の尊敬する労務屋さん(日本のリーディング企業の労務管理担当者の方です)のブログで、公務員の労働基本権のことが話題になり、諸外国はどうなっているんだというご指名がかかりました。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060120

私は、諸外国の話の前に、まず日本の仕組みを説明した方がいいかなと思い、以下のようなコメントを書き込みました。

『諸外国の話の前に日本の制度について一言だけ。
公務員といっても、いわゆる現業と非現業は位置づけが違います。
現業は地公労法が適用され、労働組合法に基づいて団体交渉を行い、労働協約を締結し、紛争は労働委員会で処理されます。
違うのは、スト権がないのと、金の出所が税金なので、協約が条例に反する場合に締結後10日以内に条例改正を付議しなければならないということです。
身分は地方公務員ですが、民間でもできる事業に携わる職員は、公権力の行使に関わる本来の公務員とは労使関係上の扱いは異なっているのです。

私はそもそも、労働基本権といえばすぐスト権と反応するのはいかがなものかと。
労働組合を作る目的は団体交渉で賃金や労働条件を決めることにあるので、その意味では現業公務員は民間に属するのです。
民間でも電力事業はスト権が制限されていますし。

財政民主主義論はスト権奪還闘争華やかなりし時期に最高裁が示したもので、まあ通説になっていますが、物事の出来方の経緯からすると、必ずしもぴったりするわけではありません。』

もう一つ付け加えておいた方がいいかなと思うのは、法律上非現業といっても、公立学校や公立病院の職員は民間でも同じ事業を行っているものですから、本当は現業なんですよね。これが非現業に分類されていたのは、「センセイ」といわれるような人が下賤な現業なんてとんでもないということだったのかどうかよくわかりませんが、独立行政法人という制度ができて、どのみち民間と同様の扱いになりました。

もっとディープな話をすると、そもそも公権力行使に携わる本来的公務員とはどこまでをいうのか、という問題があります。実は、日本の公務員制度は、戦前はドイツ型で、上層部は公法上の官吏身分であったのに対して、下の方は民法上の雇傭契約で国や市町村に雇われているだけだったのです。これに二種類あって、雇員というのは事務職員、傭人というのは肉体労働者ですが、どっちも官吏ではなく、民法の雇傭契約が適用されていました。ですから、もし戦後公務員制度改革がなくて、労働法改革だけがされていれば、今公務員と呼ばれている人々のかなり大部分は、労働基準法と労働組合法が適用されていたはずです(いわゆる非現業の中でですよ)。

ところが、アメリカの公務員制度はこれとは全く違っていて、行政機能を担う者は上から下まで全部公務員なんですね。占領軍はこれを日本に押しつけたわけです。この経緯を見ると面白くて、日本政府側は、なんでタイピストまでスト権禁止なんだと言ってる。日本側は身分論で考えているけれど、アメリカ側は機能論で考えている。結局、アメリカ型になったわけですが、そうすると、日本側の仕事は非現業だけど気分は労働者という人たちにとっては本来あるべき労働基本権を奪われたということになってしまったわけです。ちなみにドイツは頑固にいまでも官吏、事務職員、労務者の3区分でやってます。

まあ、これもそういうやり方で60年やってきたわけですから、いまさら戦前に戻せといってできるものでもないのでしょうが、公務員の労働基本権問題というこのねじれにねじれた問題の根源は、違った法文化をむりやり挿し木したことにあるのではないかというのが、私の個人的見解です。

P.S.なお博物士さん(労働法の研究者の方です)もご自分のブログでこの問題にコメントしておられます。

http://d.hatena.ne.jp/genesis/20060124

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コメント

濱口先生、ぶしつけなお願いにもかかわらずご教示をいただきありがとうございました。労働基準法がわざわざこの法律は公務員にも適用されると定めていることや、公務員の国籍条項が管理職は日本国籍の人のみとされていることなどとも関係がありそうですね。これからもいろいろ教えてください。

とんでもありません、こちらこそ今後とも宜しくお願いします。
早速、今日のエントリーで、労務屋さんも関わられた多様就業型ワークシェアリングの話を取り上げています。ふざけすぎという印象を持たれましたら、お詫びいたします。

http://jp.wsj.com/US/Economy/node_188907

http://www.cnn.co.jp/usa/30001955.html

「(CNN) 米中西部ウィスコンシン州のウォーカー知事が提示した予算削減策に同州の公務員らが一斉に反発している問題で、公務員側を支持するリベラル系政治団体「ムーブオン・オーグ」などが主催する抗議デモが26日、全米50州で行われた。」

偶然アメリカの公務員のストライキのニュースに接触いたしました。

地方分権との絡みもあり、興味深い問題ですね。

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