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2006年1月10日 (火)

日本経団連のエグゼンプション提言

一昨日のエントリーで、「そろそろ、経営側も戦略を考え直すべき時期」と書きましたが、実は昨年6月の日本経団連のホワイトカラーエグゼンプションに関する提言は、厚生労働省の研究会の議論よりもよほどまともなところがあります。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/042/teigen.pdf

 ここでは、上記厚生労働省の研究会よりも労働時間規制の本質について深く検討された見解が示されています。すなわち、まずホワイトカラー特に知的労働者層の労働時間概念について、「考えること」が一つの重要な仕事であり、「労働時間」と「非労働時間」の境界が曖昧であると指摘し、賃金計算の基礎となる労働時間については、出社時刻から退社時刻までの時間から休憩時間を除いたすべての時間を単純に労働時間とするような考え方を採ることは適切ではないとする一方、労働者の健康確保の面からは、睡眠不足に由来する疲労の蓄積を防止するなどの観点から、在社時間や拘束時間を基準として適切な措置を講ずることとしてもさほど大きな問題はないとして、「労働時間の概念を、賃金計算の基礎となる時間と健康確保のための在社時間や拘束時間とで分けて考えることが、ホワイトカラーに真に適した労働時間制度を構築するための第一歩となる」という考え方を示しています。これは極めて重要な指摘であるにもかかわらず、厚生労働省の研究会ではあまり正面からきちんと検討されていない点です。
 次に、ホワイトカラーの労働には、仕事の成果と労働時間の長さが必ずしも合致しないという特質があるため、労働時間の長さではなく、役割・成果に応じて処遇を行っていく方が合理的であり、労働者にとってもその方が、公平感が保て、モチベーションも上がると指摘し、賃金と労働時間の長さとを関連させている現行の労働時間法制には大きな限界があり、ホワイトカラーについては、こうした労働時間と賃金の直接的な結びつきを分離することが急務であるとしています。これはエグゼンプションの本質がどこにあるかを明確に語っており、「自律的な働き方」にこだわる厚生労働省の研究会よりも事態を的確につかんでいるように思われます。
 もっともその後は、「労働時間にとらわれず、納得のいく仕事、満足のいく仕事をしたい、自由に自分の能力を発揮したい、仕事を通じて自己実現をしたいと考える者もいる」と「自律的な働き方」論に移り、「自己の裁量で労働時間を弾力的に運用できる制度が必要」という議論になってしまっているのですが。そして、現行裁量労働制の問題点を指摘して、新たにホワイトカラーエグゼンプション制度を創設することを提起しているのですが、その対象者の要件として、①業務要件:法令で定めた業務、又は労使協定・労使委員会決議で定めた業務、②賃金要件:月給制又は年俸制であること、及び年収400万円以上(労使で業務を定める場合は年収700万円以上)を示しているのです。この要件は、割増賃金の適用除外の要件としてはもっともですが、「自律的な働き方」の担保としては緩やかに過ぎることは明らかでしょう。せっかく、労働時間概念について的確な指摘をしていながら、政策提言としてはそれが生かされておらず、上記研究会報告と同様の落とし穴にはまってしまったように見えます。
 「自律的な働き方」論でいけば、「必要があるときには集中して働くが、時間的に余裕のあるときは休暇をとったり、労働時間を短くしたりでき」る方が「本人の疲労感も少なく、逆に達成感や満足感は高くなる」はずですから、労働者への健康への配慮措置をあれこれと論ずる必要はなさそうなものですが、日本経団連の提言でもこの健康確保措置に一節を割いて論じているというのは、上の対象者が全て自律的な働き方をできるわけではないということを暗黙のうちに認めているからでしょう。
 日本経団連も、実体的労働時間規制の適用除外としてのホワイトカラーエグゼンプションという誤った認識枠組みに足が引っかかって、賃金計算の基礎となる時間と在社・拘束時間の切り離しという的確な状況認識が生かされなくなってしまっているようです。

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