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男女雇用均等指令の統合に政治的合意

12月8日の雇用社会相理事会は、労働時間指令の合意に失敗しただけというわけではない。ちゃんと指令案1本に合意するという仕事もしている。

これは男女機会均等・均等待遇指令案。といっても、中味はこれまで制定されたり改正されたりしてきた男女雇用均等関係の6つの指令を一本に統合するというもので、新たな中味はほとんどない。

http://register.consilium.eu.int/pdf/en/05/st14/st14878.en05.pdf

http://register.consilium.eu.int/pdf/en/05/st14/st14878-ad01.en05.pdf

統合される指令とは、男女同一賃金指令、男女均等待遇指令(改正を含む)、職域社会保障制度男女均等待遇指令(改正を含む)及び挙証責任指令。

職域社会保障、つまり企業年金などは賃金の後払いだからこっちにはいるが、法定社会保障制度は加盟国の制度だから別扱いのままである。というか、欧州司法裁判所の判決で、企業年金で男女別支給開始年齢はダメということになっているのに対し、公的年金はそうじゃないから。

新たな中味はほとんどないのだが、実はある規定が消えている。挙証責任指令に規定されていた間接差別の定義だ。2002年の男女均等指令改正による定義に統一されているのである。それぞれどういう規定かというと、

1997年の挙証責任指令では「外見上は中立的な条項、基準又は慣行が、一方の性の著しく高い比率の成員に対し不利益を与える場合、当該条項、基準又は慣行が適当かつ必要であり、性別に関わりのない客観的な目的によって正当化されえない限り、間接差別が存在するものとする」と、量的な要件が含まれているのに対して、

2002年改正指令では「当該規定、基準又は慣行が適法的な目的により客観的に正当化されかつその目的を達成する手段が適当かつ必要であるのでない限り、表面上は中立的な規定、基準又は慣行がある性別の人に他の性別の人と比較して特定の不利益を与える場合」と、そういう要件は含まれていない。

これは、2000年の人種・民族均等指令や一般雇用均等指令で採用された間接差別の定義なのだが、もともとは労働者の自由移動に関する事件の判決で欧州司法裁判所が示した基準である。確かに、人の自由移動を阻害するかどうかという問題であれば、第1号でも不利益を被るものであればまずいわけだから、量的な要件を外すというのは理解できる。しかし、これが人種・民族、思想信条から年齢・障害に拡大され、ついには男女差別にまで適用されるということになると、量的な要件を全く外していいのか疑問がないわけではない。

しかし、理事会でも各国から疑問の声はあったものの、欧州議会も拡大する方向であったこともあり、2002年改正で上記のような規定となったわけである。

事実上、これで挙証責任指令の定義はその上に上書きされてしまったようなものであったが、今回の統合指令案でそれが明確なものとなった。

ところで、間接差別の問題は日本でも現在労働政策審議会雇用均等分科会でホットなテーマになっているが、EU労働法の歴史の中では、これだけ始めの頃のイメージから拡大していったものも珍しい。一番最初に、1976年に男女均等待遇指令に「直接であれ間接であれ」という一句が盛り込まれたときには、念頭に置かれていたのは婚姻上又は家族上の地位に関連した理由に基づく差別であった。妻であるから手当がないとか、世帯主だけ手当を出すとかいうたぐいである。

ところが、1980年に、イギリスのパートタイマー差別が女性に対する間接差別だという判決が出て、その射程がぐっと広がってしまった。これは、当時イギリスのサッチャー政権が、パートの均等待遇を含むEU労働政策をブロックしていたことに対する司法からの一撃という面もあったのだが、本来の趣旨からするとかなりの拡大で、本当にそれでよかったのかどうかはなんともいえない。

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