フランスの労働時間制度もアウト
欧州司法裁判所に敵なし、っていうか。
今度はフランスの労働時間制度がEU労働時間指令違反だという判決が出た。2005年12月1日、昨日付の判決だ。
Abdelkader Dellas(Case C-14/04)
今回問題になったのは、待機時間を3分の1の労働時間に換算するというフランス独特の制度。待機時間を全然労働時間に勘定しないスペインとドイツについては、有名なSIMAP事件判決とJeager事件判決で指令違反とされていたが、たとえ労働時間に勘定しても実時間の3分の1しか勘定しないのではだめだという厳しいお言葉が下されたわけである。
原告のデラスさんは、障害者福祉施設に勤務する教師で、この制度に基づく賃金支払に合意しなかったため解雇されたらしい。それでCGTなどの組合も訴訟に参加している。
フランスのデクレ2001‑1384は、夜間の待機時間については、最初の9時間は3時間として勘定し、それを超える1時間ごとに半時間として勘定するという仕組みになっている。
これは、労働密度が低いからという理由でこういう制度設計になっているのだが、賃金についてそういう理由で換算するという話であればそれはEU指令の関知しないことであるが、安全衛生法規たる労働時間指令についてはそういうわけにはいかない。
使用者の場所にいることが義務づけられている限り、労働時間は労働時間であって、労働時間と休息期間の中間概念などというものは指令上に存在しないのだ。
待機時間中に非活動時間があるからといって、そんなことは何の関係もない(completely irrelevant)とまで断言している。
なるほどフランスの法定労働時間はEU指令のそれよりだいぶ短い。しかし、どんどん換算していったら、EU指令の上限48時間を超えてしまうのだから、そんなのは言い訳にならない。それに、こんなのを認めたら1日ごとの休息期間や週休の規定も守られなくなってしまう。
したがって、そういうフランスの労働時間法制は指令違反であると、欧州司法裁判所は明確に判示した。
さて、これでフランスも足下に火がついた。早く労働時間指令の改正案を成立させなければ、違反状態が続くことになる。
イギリスのオプトアウトを批判している暇はだんだんなくなってきたぞ。
ここまで確立した判例を変えられるのは、立法府による立法だけ。待機時間のうち非活動時間は労働時間にあらずと、早く指令に書き込んでしまわないと、この手の奴はぞろぞろ出てくる。
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