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2021年12月 9日 (木)

『季刊労働法』275号(2021冬号)

275_h1 『季刊労働法』275号(2021冬号)の案内が労働開発研究会のHPにアップされています。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/9835/

特集は「AIと労働法」で、謳い文句は:

現在進行形の第四次産業革命。AI等の自動化技術によって経済的・社会的活動の在り方が大きく変容しつつあります。それに伴う問題――AIによる労働代替による雇用の喪失、少数の高度人材とその他多数の者との間の格差の拡大、人間の労働を前提とする社会保障システムの機能不全、請負的就労の拡大による労働法的保護の縮小等――。冬号の特集では、以上の問題について検討します。

そのラインナップは以下の通りですが、

AI 技術の労働分野への応用と法的課題―現状の技術水準と将来の展望を踏まえて― NTT 社会情報研究所 亀石 久美子 池田 美穂 下條 秋太郎 折目 吉範 情報通信総合研究所・同志社大学 岡村 優希

AI 時代の労働法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎

AI 社会における個別的労働関係法制の課題 岡山大学准教授 土岐 将仁

AI技術と集団的労働法上の課題 ―集団的利益調整の位置付けと不当労働行為制度の解釈に着目して― 情報通信総合研究所主任研究員・同志社大学研究員 岡村 優希

AI 社会に向けた社会保障法上の課題 大阪大学教授 水島 郁子

AI 時代における労働法実務の課題 弁護士 城塚 健之

わたくしも一篇寄稿しております。

それに続くのは

日弁連シンポジウム

「テレワーク」という働き方に関するシンポジウム

日本経済団体連合会 新田 秀司 労働政策本部長

日本労働組合総連合会 冨田 珠代 総合政策推進局総合局長

弁護士(第一東京弁護士会) 末 啓一郎(使用者側弁護士)

弁護士(大阪弁護士会) 大浦 綾子(使用者側弁護士)

弁護士(東京弁護士会) 新村 響子(労働者側弁護士)

弁護士(東京弁護士会) 竹村 和也(労働者側弁護士)

弁護士(東京弁護士会) 菅 俊治 (司会)

いやぁ、これはなかなか読むのが楽しみなメンツが揃っています。

それ以外にも面白そうなのが目白押しで、

■論説■

なぜ、「経済法」による保護なのか? ―フリーランスガイドライン等の近時の政策文書への疑問として― 中央大学大学院 後藤 究

ジェンダーをめぐる職場の現代的課題 日本女子大学ほか非常勤講師・弁護士 黒岩 容子

覆水盆に返らず ―団交権保障三題噺 北海道大学名誉教授 道幸 哲也

労働市場における「雇用」仲介サービス事業の法規制 ―「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会報告書」の検討を踏まえて― 西南学院大学教授 有田 謙司

ILO100号条約第3条の成立 :1951年同一報酬委員会の審議(上) 明治大学名誉教授 遠藤 公嗣

■イギリス労働法研究会 第38回■

18世紀北アメリカにおける黒人奴隷制の展開(2・完) ―アメリカ独立革命が奴隷制に与えた影響と深南部における奴隷制の維持・拡大 駒澤大学准教授 向田 正巳

■アジアの労働法と労働問題 第46回■

インドの2020年労使関係法の意義 神戸大学名誉教授 香川 孝三

■判例研究■

チェック・オフの実施における組合員の個別的同意の要否 アートコーポレーション事件(東京高判令和3年3月24日労働判例ジャーナル112号48頁、横浜地判令和2年6月25日労判1230号36頁) 神戸大学大学院後期課程 劉 子安

労働審判における審判内容の限界と口外禁止義務 国(口外禁止条項)事件(長崎地判令和2年12月1日労判1240号35頁) 弁護士・札幌学院大学特別任用准教授 加藤 正佳

■重要労働判例解説■

ICカードによる記録から直ちに労働時間を認定することはできないと判断された例 柏労基署長〔調理師〕事件・東京地判令和2・11・27労経速2445号14頁 LEX/DB25568208 富山県立大学 教養教育センター 大石 玄

身だしなみ基準に基づく指導及び人事考課に関する損害賠償請求 大阪市(旧交通局職員ら)事件・大阪高判令和元・9・6労判1214号29頁 全国市長会 戸谷 雅治

タイトルだけからの想像ですが、後藤究さんの論文は、わたしの季労272号のフリーランスと団体交渉と問題意識が重なっているような気がします。

 

山川隆一編著『不当労働行為法』

10221325_61723d26d691b 山川隆一編著『不当労働行為法~判例・命令にみる認定基準~』(第一法規)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/104342.html

○先例となる判例や命令をもとに不当労働行為の認定基準を解説しているため、経験が浅い弁護士も「どのような行為が不当労働行為に当たるのか」を理解することができる。
○「どのような行為が不当労働行為に当たるのか」を理解することにより、労使との交渉や申立てにおいて、根拠をもって適切な事件対応ができるようになる。

というわけで、まことにスタンダードなテキストです。執筆は編者の山川隆一さんのほか、池田稔、石崎由希子、小西康之、島村暁代、鈴木みなみ、土岐将仁といったメンツで、若手研究者と実務家の組合わせです。冒頭近くの

2 不当労働行為の基本的要件
(1)労組法上の労働者(労組法3条)

では、山川さん自らファミマとセブンの中労委命令について解説しています。

なんですが、その先を漫然と読んでいたら、

・・・以上のほか、出版社との間で翻訳書1冊を出版して印税の支払を受ける契約を結んだ著作者につき、出版社の事業の遂行に不可欠な労働力としてその恒常的な確保のためにその組織に組み入れられていたということはできず、労組法上の労働者該当性のその他の判断要素に照らしても、労組法上の労働者ニは該当しないとした裁判例がある(大月書店事件・福岡高判平成27/12/16)・・・

という記述をみて、そんなのがあるのかといささかびっくりしました。

103380 調べてみると、これはこの本の翻訳者なんですね。

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b103380.html(ウォール街を占拠せよ)

 世界各地の蜂起に呼応し、資本主義の中枢を震撼させた占拠運動。 新たな民主主義を創造する運動の担い手自身が綴るドキュメント。

さすがにこういう本の翻訳者を労働者とは呼びにくいでしょうが、でも技術翻訳や膨大な資料の翻訳なんかだと、労働者性を認めることもあり得るようにも思われます。

 

オーディオブックがAmazonに出ているな

Amazonの拙著のコーナーに、まだ出ていないオーディオブックが早くも登場していますな。

https://www.amazon.co.jp/Audible-%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%96%E5%9E%8B%E9%9B%87%E7%94%A8%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B-%E6%AD%A3%E7%A4%BE%E5%93%A1%E4%BD%93%E5%88%B6%E3%81%AE%E7%9F%9B%E7%9B%BE%E3%81%A8%E8%BB%A2%E6%A9%9F/dp/B09N6ZF1RL/ref=tmm_aud_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=

 

 

2022年 北陸経済研究所 新春講演会

Hokuriku

野村浩子『異なる人と「対話」する本気のダイバーシティ経営』

9784532324445_obi308x452 野村浩子『異なる人と「対話」する本気のダイバーシティ経営』(日本経済新聞出版社)をお送りいただきました。

https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/32444

「わからない」を「わかりたい」に変えるには?
メルカリ、キリンHD、東急電鉄、ソニーグループ、サントリーHD......
「多様性」に挑む人たちの実録・風土改革! !

女性、シニア、外国人、障がいのある人、性的少数者(LGBTQ)、子育てや介護を担う人など
多様なメンバーと協働する必要性は増しているが、旧態依然とした"昭和的価値観"をもつ層の
理解を得られず、頭を悩ます経営者、管理職も少なくない。

本書は、ダイバーシティ推進に向けて組織内のコミュニケーション改革に挑む人たちの取り組みを
「対話」のあり方に焦点を当てて、ベテランジャーナリストがまとめたもの。
各社の事例、登場する人々の言葉から、組織をよりよくしたいと日々苦心する人たちの背中を
押す温かいメッセージとさまざまな工夫が感じられる一冊。

 

2021年12月 8日 (水)

本日の欧州委員会議に出されたようだが、まだ公表されず

某紙新年号のネタという個人的な理由もあって待ちわびているEUのプラットフォーム労働条件指令案ですが、本日の欧州委員会議のアジェンダにはちゃんと載っているので、これで承認されたのではないかと思うのですが、現時点ではまだ公表されていないようです。

https://ec.europa.eu/transparency/documents-register/api/files/OJ(2021)2400?ersIds=090166e5e58ade58

ここに、

Item 9 : Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions: Better working conditions for a stronger social Europe: harnessing the full benefits of digitalisation for the future of work 

Item 10 : Proposal for a Directive of the European Parliament and the Council on improving working conditions in platform work 

というのが載っていますので、指令案自体と、おそらくその政策的解説にあたるコミュニケーションがもうすぐ公表されるはずです。

さて、これとは全く別件ですが、この本日の欧州委員会議のアジェンダには、ちょっと興味をそそられる提案も載っていて、

Item 14 : Communication from the Commission to the European Parliament and the Council on measures within the Commission’s powers which the Commission can adopt when it determines, pursuant to the Regulation of the European Parliament and of the Council on the protection of the Union and its Member States from economic coercion by third countries, that the Union takes response measures to counteract a third country measure of economic coercion

Item 15 : Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on the protection of the Union and its Member States from economic coercion by third countries 

EU加盟国に対する第三国からの経済的強制に対抗する措置をとる規則案というのも提案しているようですが、これって例の中国やロシアに対する奴ですよね。

2021年12月 7日 (火)

『週刊東洋経済』12月11日号

13478_ext_01_0 『週刊東洋経済』12月11日号が「定年格差」を特集していまして、その中に「脱・“働かないおじさん”紙1枚で「職務」に値段がつく ジョブ型導入が始まった」というパートがあって、さらにその中の「職務以外はやらなくていい? ジョブ型で問われる管理職のいす」という小さなコラムみたいなところに、なぜか私がちょびっとだけ登場しています。

https://str.toyokeizai.net/magazine/toyo/

そこに載ってる表には「?」なところもあるんですが、まあメインじゃないんで。

 

 

明日欧州委がプラットフォーム労働のメディアセミナーをやるらしい

Blobservlet_20211207132901 欧州委員会雇用総局のホームページに、明日12月8日に、プラットフォーム労働の労働条件に関するオンラインメディアセミナーをやるからふるって応募せよという案内が載っていまして、

https://ec.europa.eu/social/main.jsp?langId=en&catId=88&eventsId=1935&furtherEvents=yes

The European Commission’s Directorate-General for Employment, Social Affairs and Inclusion (DG EMPL) invites journalists to take part in a media seminar on improving working conditions in platform work. The online event will present and explain the Commission initiative with high-level speakers, policy experts, and representatives from digital platforms and workers.

ふむ、いろいろあるようですが、やはり明日には予定通りプラットフォーム労働指令案を提案するようですね。

これで某紙新年号の解説記事は書けそうで、私的にはまずはめでたい。

かつ、予想通りプラットフォーム労働者の労働者性について推定規定や立証責任の転換が規定されるということになると、ウーバーはじめグローバルに活動している企業ですから、EU域外への影響も大きいでしょう。とりわけ日本での議論にどういう影響を与えることになるか、しばらく目を離せません。

 

2021年12月 6日 (月)

EUの閣僚理事会が最低賃金指令案に合意

Ciglerkralj_veja 本日、EUの立法府の一つである閣僚理事会が、最低賃金指令案について合意したというニュースが流れてきました。

https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2021/12/06/council-agrees-on-mandate-for-negotiations-on-a-eu-framework-on-adequate-minimum-wages/

The Council today agreed its position on a Commission proposal for an EU law on adequate minimum wages in the EU. Fair wages that provide for a decent standard of living are one of the principles of the European Pillar of Social Rights. To improve working and living conditions, this draft law establishes a framework to promote adequate levels of statutory minimum wages, to promote collective bargaining on wage setting and to improve the effective access to minimum wage protection of those workers who are entitled to a minimum wage.

理事会は本日、EUの十分な最低賃金に関する欧州委の提案に対するそのポジションに合意した。まっとうな生活水準を提供する公正な賃金は欧州社会権基軸の原則の一つである。労働生活条件を改善するために、この指令案は十分な水準の法定最低賃金を促進し、賃金決定における団体交渉を促進し、最低賃金の権利のある労働者に最低賃金保護への効果的なアクセスを改善するための枠組みを構築する。

Work should pay. We cannot accept that people who put all their energy in their job, still live in poverty and cannot afford a decent standard of living. This law will be a great step forward towards this goal.

仕事はペイするものでなければならない。我々は仕事に全精力を注ぎこんでいる人々がなお貧困のうちに暮らしまっとうな生活水準を維持できないことを受け入れることができない。この法はこの目的への大いなる第一歩である。

なお、もう一つの立法府である欧州議会はすでに先月意見をまとめていますので、これからはこの二つの立法府の間ですり合わせが行われることになります。

この調子でいくと、来年のそう遅くない時期にEUの最低賃金指令が採択される可能性が高まってきました。

 

 

 

 

労働協約は合法的なカルテル

21hyoushi12gatsu 最近、『改革者』の表紙にどこかで見たような顔を発見することが多いのですが、12月号の表紙にでかでかと載っているのは、古川景一弁護士の顔ですね。

http://www.seiken-forum.jp/publish/top.html

12月号特別インタビュー
地域拡張適用、三十二年ぶりに実現─ 労働協約の機能を社会にひろげる ─ 古川景一
インタビュアー熊谷謙一 

連合OBで今は日本ILO協議会の熊谷謙一さんがインタビューしています。中身は言うまでもなくUAゼンセンの労働協約の地域的拡張適用の話で、既にいろいろ報じられていますが、その中で古川さんがこう述べているところが、紹介する値打ちがあります。

熊谷 労働協約は労使双方にメリットがある制度ですが、使用者側にはそれをどう伝えようとされているのですか。

古川 一言で言えば「合法的なカルテルである」ということです。この言葉は私が作ったのではなく、ドイツの労働組合の人たちがいっている言葉でして、使用者側だけで談合したり、カルテルを結んだりすれば、それは独占禁止法違反です。しかし日本の独占禁止法は、憲法と労働組合法に基づく団体交渉と労働協約については、よほど特別な事情がない限り独占禁止法にあたらないと、公正取引委員会が3年前に見解を公表しています。団体交渉はオープンで行われます。労使協定もオープンにされます。いずれも民主的な手続を経ています。だから合法的なカルテルだということです。・・・

熊谷 つまり使用者側のメリットとしては、労働条件ノ切り下げによる過当な競争が発生してしまうことを合法的なカルテルで防ぐことですね。・・・

これ、百万回繰り返す値打ちがあります。

安いニッポン、そんなにダンピングしてどこへ行く、というデフレ日本において、労使が主導権をとってそれなりに高い日本を実現していく最も正しい道が、この合法的なカルテルなのですから。

 

 

 

 

まだ給特法の下にあると思い込んでいる国立学校への鉄槌

略して「給特法」といいますが、実は正式名称は17年前に変わっているんです。

1971年に制定されたときから2003年までは「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」でしたが、2004年に国立学校が非公務員型の独立行政法人になったことにより、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」となり、国立学校はこの法律の適用から外れて、純粋の民間の私立学校と同じ法的地位になっています。

ところが、そういうことが分かっていないまま漫然と日を過ごしていたために、こういう事態に立ち至ったようです。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/146988(未払い残業代8億7千万円 国立大18法人に労基署勧告)

Fae8254eefeceffe1ef31db020cd27fc_1 小中高校などを運営する全国56の国立大学法人のうち、埼玉大や高知大など20法人で、付属校に勤務する教員の時間外労働に対する割増賃金の未払いがあったことが5日、共同通信のアンケートで分かった。うち18法人が労働基準監督署から是正勧告を受けていた。未払いの残業代を明らかにした14法人の総額は計約8億6990万円に上った。
未払いがあったのは他に山形大、筑波大、京都教育大、長崎大など。
11月に勧告を受けて未払い額を算出中の三重大と、アンケートに金額を明らかにしなかった5法人を含めると、全体額はさらに増える。

もちろん、設置形態の如何を問わず、大学教授については(一定の要件の下に)専門業務型裁量労働制が適用されていますからいいのですが、小中高の教師はいかなる意味でも裁量労働制ではないので、当然こういうことに相成るわけです。 

まあ、しかし、こういうことになってしまうのにはやはり理由があって、それは現行法の建付けを全く理解しないまま、文部科学省のおかしな屁理屈をそのままオウム返しにするようなレベルの低い判決を出してしまう裁判官がいるからなんですね。

先日の埼玉県の給特法裁判の判決で、さいたま地裁は原告教師の訴えを退けました。現行法規定を前提にする限りその判断は正しく、超勤4項目以外の残業は給特法ではなく労基法37条が適用されるという原告の解釈は無理があります。しかし、この判決が正しいのはその結論のみであって、延々と書いている理屈づけは全て間違っています。曰く:

https://www.call4.jp/file/pdf/202110/678384c33434330ec38d7c82a13c81bf.pdf

ア すなわち,教員の職務は,使用者の包括的指揮命令の下で労働に従事する一般労働者とは異なり,児童・生徒への教育的見地から,教員の自律的な判断による自主的,自発的な業務への取組みが期待されるという職務の特殊性があるほか,夏休み等の長期の学校休業期間があり,その間は,主要業務である授業にほとんど従事することがないという勤務形態の特殊性があることから,これらの職務の特質上,一般労働者と同じような実労働時間を基準とした厳密な労働管理にはなじまないものである。例えば,授業の準備や教材研究,児童及び保護者への対応等については,個々の教員が,教育的見地や学級運営の観点から,これらの業務を行うか否か,行うものとした場合,どのような内容をもって,どの程度の準備をして,どの程度の時間をかけてこれらの業務を行うかを自主的かつ自律的に判断して遂行することが求められている。このような業務は,上司の指揮命令に基づいて行われる業務とは,明らかにその性質を異にするものであって,正規の勤務時間外にこのような業務に従事したとしても,それが直ちに上司の指揮命令に基づく業務に従事したと判断することができない。このように教員の業務は,教員の自主的で自律的な判断に基づく業務と校長の指揮命令に基づく業務とが日常的に渾然一体となって行われているため,これを正確に峻別することは困難であって,管理者たる校長において,その指揮命令に基づく業務に従事した時間だけを特定して厳密に時間管理し,それに応じた給与を支給することは現行制度下では事実上不可能である(文部科学省の令和2年1月17日付け「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」〔文部科学省告示第1号〕においても,教育職員の業務に従事した時間を把握する方法として,「在校等時間」という概念を用いており,厳密な労働時間の管理は求めていない。甲82)。このような教員の職務の特殊性に鑑みれば,教員には,一般労働者と同様の定量的な時間管理を前提とした割増賃金制度はなじまないといわざるを得ない。
 そこで,給特法は,このような見地から,教員に対し,労働時間を基準として一定の割増賃金の支払を使用者に義務付ける労基法37条の適用を排除し,その代わりに,前記のような教育的見地からの自主的で自律的な判断に基づく業務に従事することで,その勤務が正規の勤務時間外に行われることもあり得ることを想定して,その労働の対価という趣旨を含め,時間外での職務活動を包括的に評価した結果として,俸給相当の性格を有する給与として,教職調整額を支給するものと定めたものということができる。
イ ところで,労基法37条は,使用者に時間外労働への割増賃金の支払を義務付けて,時間外労働に従事する労働者への補償を行うとともに,使用者に経済的な負担を課すことで,時間外労働を抑制することを目的とした規定であるが,この規定の適用が排除されることによって,教員に無定量な時間外勤務が課され,教員の超過勤務の抑制という給特法の制定趣旨に反する結果を招来しかねないことになる。そこで,給特法は,教育職員に対して正規の時間勤務を超える勤務を命じることができる場合を,政令の基準に従って条例で定める場合に限定し(同法6条1項),これを受けた平成15年政令及び埼玉県の給特条例は,前記の場合を超勤4項目に該当しかつ臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る旨を定めて,これにより,教育職員へ無定量な時間外勤務が課されることを防止しようとしている。
ウ このように,給特法は,教員の職務の特殊性を踏まえ,一般労働者と同じ定量的な労働時間の管理にはなじまないとの判断を基礎として,労基法37条の適用を排除した上で,時間外で行われるその職務を包括的に評価した結果として,教職調整額を支払うとともに,時間外勤務命令を発することのできる場合を超勤4項目に限定することで,同条の適用排除に伴う教員の勤務時間の長期化を防止しようとしたものである。
このような給特法の構造からすると,同法の下では,超勤4項目に限らず,教員のあらゆる時間外での業務に関し,労基法37条の適用を排除していると解することができる。

もしこの理屈が正しいのであれば、まったく同じ職務を遂行している私立学校や国立学校の教師についても全く同様の法制度が適用されていなければおかしいはずですが、もちろんそのようにはなっていません。

給特法という法律は、いかなる意味でも教師という職種の特殊性に着目した法律ではなく、もっぱら公立学校に勤務する地方公務員であるというその身分にのみ着目した法律であり、それゆえ私立学校の教師は歴史上一度も給特法が適用されことはなく、また国立学校教師はその経営形態の変更に伴って、その職務内容はいささかも変更がないにも関わらず給特法の適用下から非適用に移行したのです。

そんなことは立法経緯を一瞥すれば中学生でも分かりそうなことなのに、この裁判官は漫然と実定法上なんら根拠のない「教員の職務の特殊性」を振り回して恬然としているのですから、国立学校の皆様方が、自分たちがもう20年近くも前から給特法の適用下にはなくなっているという重大な事実に全く盲目であったことも、むべなるかなというしかないところです。

 

 

 

 

 

2021年12月 5日 (日)

『ワイズ ガバメント』

9784502388514_430 重松博之監修、野中郁次郎・鈴木寛・山内康英 編著『ワイズ ガバメント―日本の政治過程と行財政システム』(中央経済社)をお送りいただきました。

https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-38851-4

重松元会計監査院院長・野中郁次郎先生を中心に学会、官界の最前線で活動している研究者・実務家を集結し、日本の官僚機構・政治システムの構造・問題点を財政面から探求した。 

執筆者は上の編著者に加えて、公文俊平、牧原出、泉田裕彦、東信、亀井孝文といった方々で、その分野もさまざまであるため、正直全体のまとまりがあまり感じられず、それぞれに面白いなと感じるところがいろいろありながらも、まとまった感想というのは言いにくいという印象です。

私の関心範囲からすると、牧原さんの書かれた第4章「行財政における調整」がこの間の政権交代を通じて二省間調整や総合調整がどのように推移してきたかを描き出していて興味深いのですが、人によってはいま話題の主の泉田裕彦さんによる第5章「自治体経営と政策プランの実践」が面白いかも知れません。またアメリカやドイツの公会計の仕組みの解説も役に立ちます。

しかしここでは、畑違いのわたくしに本書を送っていただいた公文俊平さんの第2章「日本の財政の現状とマクロ経済理論」を紹介しておきます。この章は、正直言うと本書の中でどのように位置づけられるのかはよくわからないのですが、マクロ経済理論なるものが、①1929年の世界大恐慌、②1970年代の石油危機と1980年代のスタグフレーション、③2008年の金融危機といった大きな経済的事件を契機に、その原因を先行する経済モデルの理論的な誤りとして解釈し、それに代わる理論的な代替案として自らのモデルを提起する形で、モデルの交代が行われてきたと述べます。

そして日本の財政赤字の原因について、「企業の労働分配率の低下が、企業の内部留保と銀行の国債購入を通じて、日本の人口構成の変化がもたらした社会保障費の増額をファイナンスする結果になっている。社会的な所得再分配の観点からすれば、これは企業の内部留保が、国債を通じて徴税を補完する機能を果たしてきたということになる」と、大変皮肉な見方をしています。

その他、クルーグマンの自己批判だとか、MMTが貨幣内生説の最新のバリエーションだとか、たぶんいろいろと面白そうなことも書かれていますが、私の能力を超えるのでこれくらいにしておきます。

 

 

 

2021年12月 4日 (土)

高木郁朗『戦後革新の墓碑銘』

595602 高木郁朗著・中北浩爾編『戦後革新の墓碑銘』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.junposha.com/book/b595602.html

「戦後革新」は昔の夢なのか!?

1945
年8月15日に始まる日本現代史の形成に大きな役割を果たした「総評・社会党ブロック」の

シナリオを書いた著者による自伝的「戦後革新」史。

「戦後革新」には総評というかたちで労働組合が中軸的な位置を占めてきたし、リベラル勢力の結集という点でも連合に参加する労働組合への期待が大きかった。つまり戦後革新といえ、リベラルといえ、その中軸には「労働」がすわっていた。

高木さんとは、直接お目にかかったことは数えるほどしかありませんが、その関わってこられたいろんな枠組みとは結構接触が多かったという関係です。

しかし改めてこうしてその一代記を通読してみると、ほぼ二回りほどの年齢差が、いかに大きいものであるかを感じます。貧しい少年時代から安保闘争、三池闘争の学生時代、社会党スタッフとして成田委員長のゴーストライターを務め、国労の反マルセイ運動に関わるといった波乱の人生行路は、私にとっては歴史時代です。国鉄分割民営化、社会党新宣言、連合の結成、そして村山内閣というあたりになると自分自身の記憶とも交叉してきますが、逆に高木さんの記述の筆致がなんだかもやがかかったような感じが漂ってきます。

21世紀のいまの観点からあれこれを批評することに何の意味があるのかという声が聞こえてくるような気もしつつ、こういう途しかなかったのかなあ、というつぶやきがこぼれてくるような、そんな「墓碑銘」なのでしょうか。

読んでいくと、本筋ではないところにいくつも記憶に残るような小さなエピソードがころがっています。

その一つに、連合結成に至る全段階で、総評の全国金属と新産別の全機金が合併して金属機械になったのに高木さんがかかわった話がありますが、その中で「争議屋」平沢栄一全金書記長が、「僕は総評の全電通よりも同盟の金属の方に親近感を感じるんだよ」と語ったというエピソードがあり、それがのちに同盟のゼンキン連合と合体してJAMの結成につながるわけですが、この台詞は、前に紹介した桝本純さんのオーラルヒストリーに出てきた「総同盟的なるものと民同的なるもの」を思い出させるものでした。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/02/post-ba9276.html

・・・で、桝本さんの言いたいのは、連合結成は決して同盟の勝利なんかではなく、実は民同的なるものの勝利であり、総同盟的なるものの敗北なんだということ。
そして、やたらにイデオロギーで喧嘩していた全国金属と全金同盟がJAMとして元のさやに納まったら、実は似たような体質であったことがお互いに分かった云々という笑い話みたいなことがおこるわけです。

もひとつ、これは本当にトリビアなネタですが、太田薫さんの死後、壊れかかっていた太田さんの自宅の書庫の整理をした際に、

・・・書庫に入ってびっくり仰天した。労働問題に関する著作や資料はほとんどない。主なものは、労働省編『資料労働運動史』の何年かの版が一冊と、ドイツ社会政策学派のA・ワーグナーの著作が一冊だけだった。後は大量の歴史小説・時代小説のヤマだった。・・・いったい太田さんは労働問題の勉強をどうやってしたのだろうという疑問もわいた。・・・

まあ、太田薫本人に言わせれば、労働問題は書庫の中で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ、ということなのかもしれません。

 

 

 

2021年12月 2日 (木)

中野慶『小説 岩波書店取材日記』

1197 中野慶『小説 岩波書店取材日記』(かもがわ出版)をお送りいただきました。

http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/sa/1197.html

実在する版元を舞台にした実験的ユーモア小説。吉野源三郎の志を受け継ぎ、理想の職場をめざした人々の夢と葛藤と。新人の女性コンサルタントがその軌跡を探索するユーモアあふれるストーリー。名著が次々登場し、戦後の日本を映し出します。

太めの帯に「リアルすぎるユーモア小説です」とあるのですが、そのリアルさがおそらく岩波書店関係者にとってはひしひしと感じられるようなものなのだろうな、と想像はされるのですが、いささか楽屋話に満ち満ちていて、部外者にとってはやや疎外感も感じられ、ユーモア小説として楽しめるのかといわれると、うーん、という感じではあります。

中野慶というのはペンネームで、本名は大塚茂樹さん。1957年生まれ。岩波書店の編集者として単行本や現代文庫を担当する。2014年早期退職して著述業、とのことですが、その匂いは全編に満ちています。第1日目に主人公が岩波書店を訪問した時に、階段の上から降りてきた老人I先生がケインズの本を書いた経済学者だとか、長らく残業代のない一律年功賃金だったことに、この社の月刊誌に載った論文の「やりがいの搾取」だとか、おそらくニヤニヤすべきポイントはあちこちにあるのでしょう。

ちなみにこの出版社の残業代問題は、編集という本来的に高度プロフェッショナルな職種と、そうでもない職種とを、まさに日本型雇用の典型として等しく同じ社員として一律平等に扱わねばならないことの一つの帰結だったのでしょうが、その出版物の紙上で残業代ゼロを批判することとの微妙なずれは、しかしながら公然と語られるものではなかったことは、本書におけるさりげなさそうな記述ぶりにもちらりと現れていますね。

ちなみに、終わり近くに、

・・・新しい労働社会を提起する一冊の問題意識に、国友さんは影響されている。・・・・

という1行が出てきますが、拙著も読まれたようです、ご苦労様ですね。

 

 

【GoTo書店!!わたしの一冊】張博樹『新全体主義の思想史 コロンビア大学現代中国講義』

07275x400労働新聞に月一回で連載している【GoTo書店!!わたしの一冊】ですが、今回は張博樹『新全体主義の思想史 コロンビア大学現代中国講義』(白水社)です。

https://www.rodo.co.jp/column/117797/

 先月の本欄では、柯隆『「ネオ・チャイナリスク」研究』を取り上げた。最近のますます全体主義化する中国の姿を捉えるには、経済面だけでなく思想面からのアプローチも必要だろう。

 著者の張博樹は、中国社会科学研究院を解雇され、現在コロンビア大学で現代中国を講じている言葉の正確な意味でのリベラル派中国知識人だが、そのリベラル派から新左派、毛左派、紅二代、ネオナショナリズムに至るまで、現代中国の九大思潮を、時にはそのインチキなロジックを赤裸々に分析しながら描き出した大著である。

 著者を含むリベラル派については、訳者の石井知章、及川淳子らによる紹介がかなりされてきているし、妙にポストモダンめいたレトリックを駆使して中国共産党政権を必死に擁護する汪暉ら新左派についても、なぜか日本のポストモダン派にファンが多いようで、やはり結構翻訳されている(そのお筆先みたいな研究者もいるようだ)。しかし、それ以外の種々様々な思想ないし思想まがいについては、これだけ包括的に描き出したものはほかに見当たらない。そして、本書に描かれた、時に精緻めかした、時にやたらに粗雑な「左派」という名のロジックの数々を読み進んでいくと、何だか似たようなロジックを日本語でも読んだ記憶があるなという感想が浮かんでくる。

 それは、意外に思われるかもしれないが、『正論』、『WILL』、『hanada』などのいわゆる右翼系オピニオン雑誌によく出てくるあれこれの論説とよく似ていて、「そうか、中国の左翼というのは日本の右翼の鏡像みたいなものなんだな」ということがよく分かる。もちろん、それは不思議ではなく、普遍的な近代的価値観を欧米の文化侵略として目の仇にし、「万邦無比の我が国体」をひたすら褒め称えるという点では、日本の右翼と中国の左翼は全く同型的であって、ただどちらもそれがストレートに表出するのではなく、それぞれにねじれているのだ。

 日本の右翼は、本音ではアメリカ占領軍に押し付けられた憲法をはじめとする近代的価値観が大嫌いだが、(本当はそっくりな)中国共産党と対決するために、アメリカの子分になって、アメリカ的価値観に従っているようなふりをしなければならない。自由と民主主義のために共産主義と闘うといっているうちは良いが、ことが国内の個人の自由にかかわってくるとそのズレが露呈する。

 一方、中国の左翼は、本音は中華ナショナリズム全開で、欧米の思想なんて大嫌いなのだが、肝心の中国共産党が欧米由来のマルクス主義をご本尊として崇め奉っていることになっているので、論理めちゃくちゃなマルクス神学のお経みたいな議論をやらざるを得なくなる。

 それにしても、本書に出てくる張宏良の「中国の夢は三大復興であり、それは中華民族の偉大な復興、社会主義の偉大な復興、東方文化の偉大な復興」だという言葉は、我が大日本帝国において戦時中一世を風靡した「近代の超克」論を彷彿とさせる。現代中国の今の気分は中華版大東亜共栄圏なのかもしれない。

なんだかポストモダン派をdisっているみたいですが、考えてみればポストモダンの大先輩は戦時中に「近代の超克」を唱えた京都学派の皆さまであったと考えれば、別に不思議でもないような。

 

 

2021年12月 1日 (水)

EUプラットフォーム労働指令案をめぐる水面下の暗闘

EUにおけるプラットフォーム労働をめぐる政策の推移についてはこれまでも随時紹介してきましたが、欧州委員会の週間予定表によれば、来週の12月8日にプラットフォーム労働者の労働条件指令案が提案されることになっています。

が、やはりこの問題はそうスムーズには行かないようで、水面下でいろいろと暗闘があるようです。

メディアの性格はよく知らないのですが「BRAVE NEW EUROPE」(オルダス・ハックスリをもじってるようです)というネットメディアに、「Gig Economy Project – Open letter to EU Commission: Don’t ‘water down’ plans to regulate platform work」という記事が載っていて、ベルギー、スペイン、ポルトガル、ドイツ、イタリアの労働相が連名で、この指令案をちゃんと提出しろというオープンレターを出したとか。

https://braveneweurope.com/open-letter-to-eu-commission-dont-water-down-plans-to-regulate-platform-work

その背景として、ウーバーなどのプラットフォーム企業が懸命に指令案を出さないようにロビイングしているようです。

このオープンレター、欧州労連のホームページにも載っていますね。

https://www.etuc.org/en/document/open-letter-president-european-commission-ursula-von-der-leyen-ambitious-european

全く個人的な都合で言えば、欧州委員会がこの指令案を来週12月8日に出してくれることを前提に、その紹介記事を某紙新年号に書く予定なので、先延ばしされると大変困るんです。

2021年11月27日 (土)

当面のイベントいくつか

新日本法規財団無料セミナー 日本型雇用の課題とこれからの雇用社会~昭和的働き方から脱却せよ~

https://www.sn-hoki.co.jp/seminar/seminar1754972/

 2021年11月29日[ライブ配信]

■倉重 公太朗(倉重・近衛・森田法律事務所)
■白石 紘一(東京八丁堀法律事務所)
■濱口 桂一郎(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
■芦原 一郎(弁護士法人キャストグローバル) 

第1部 ジョブ型雇用の誤解とメンバーシップ型雇用の矛盾(40分)[講師]濱口桂一郎氏
    昨今流行している浅薄な「ジョブ型」論の誤解を暴いた上で、日本的なメンバーシップ型雇用が様々な労働法分野で矛盾をもたらしている姿を描き出します。

第2部 雇用改革のファンファーレ(40分)[講師]倉重公太朗氏
    日本経済低迷の根幹にあるのは、閉塞的な日本的雇用システムにあるのではないかという指摘も多くされるようになってきました。雇用の流動性が低く、働きがいが見いだせない中で、企業として、個人として、ひいては日本の雇用社会として、どのような方向性を目指すべきなのか。これからの雇用社会について、考え、ディスカッションできればと思っております。以前は解雇規制の「か」の字を出しただけで議論にならない程でしたが、真剣に未来のために何をすべきなのか、堂々と語っていきたいと思います。是非、一緒に考えましょう。

第3部 人事と“市場”の接続へ向けて(40分)[講師]白石紘一氏
    日本型雇用の一つの特徴として、内部に閉じた労働市場がありました。もっとも、最近では、労働市場はもちろんのこと、資本市場においても、雇用・労働に対する外部からの注目が高まっており、人事としても、外部への情報発信を一層心掛ける必要が出てきています。本セミナーでは、昨今、具体的にどのような制度が設けられているのかなどをご紹介します。

第4部 パネルディスカッション「日本型雇用の何が残り、何が変わるか」(45分)
    [モデレーター]芦原一郎氏 [パネリスト]濱口桂一郎氏、倉重公太朗氏、白石紘一氏
    筋書きのないパネルディスカッションです。時間の許す限り、視聴者の皆さんの意見や感想、質問なども積極的に取り入れていきたいと思います。パネラーと視聴者が、日本型雇用の実態と問題点、あり方について、具体的なイメージを共有し、今後の企業経営や組織運営のヒントをできるだけたくさん得られるように運営したいと思います。 

明治大学国際労働研究所 設立記念講演会

https://www.isc.meiji.ac.jp/~itls/report/

2021年12月4日(土) 午後4時から6時
1. 主催者挨拶 石井 知章(明治大学国際労働研究所代表)
2. 記念講演
 〇 テーマ「デジタル時代の労働法のフロンティア」
 〇 講師 濱口 桂一郎 氏(労働政策研究・研修機構労働政策研究所長)
 〇 コメンテータ 山崎 憲 氏(明治大学経営学部准教授)
 〇 講演要旨
  ▼ デジタル時代の労働社会の行方
  ▼ フリーランス問題の歴史と現状
  ▼ 諸外国やEUのフリーランス問題への対応状況
  ▼ 人工知能(AI)の採用から労働者管理への利用がもたらす問題 

 

 

 

2021年11月26日 (金)

『POSSE』49号

2a2a7d089ed62cd5d2cb 『POSSE』49号をお送りいただきました。

https://info1103.stores.jp/items/619467621bfe19110afc7602

◆特集「ケアの市場化の果てに」

「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」。2021年秋、岸田首相がそう言って掲げた「新しい資本主義」が注目されている。そこには、「公的部門」で働く人々への「分配」も含まれている。
 しかし、2000年代以降、ケアや公共サービスの職場をここまで歪めてきたのは、その責任を国や自治体から営利企業に開放した「市場化」そのものにほかならない。同時に、自治体の内部さえも市場の論理に侵食されていった。この根幹に手をつけず、「分配」だけで何が変わるというのだろうか?
 この20年間で市場がケアにもたらした変化を直視することが必要だ。特にケアワーカーたちの労働の現場では、一体何が起きてきたのか。低賃金、長時間労働、非正規雇用、サービスの質の劣化、利用者の虐待、事業撤退、「ブルシットジョブ」、外国人労働者……。保育、介護、教育、児童相談所、保健所などさまざまな分野から検証していく。そこから、ケアをめぐる新しい労働運動を構想していきたい。

座談会 ケアの市場化の20年と、崩壊する介護・保育の現場―労働の視点から福祉現場を再生する展望を描く
小林美希(ジャーナリスト)×松田貴弘(京都民医連事務局長)×後藤道夫(都留文科大学名誉教授)×三浦かおり(介護・保育ユニオン共同代表)

なんですが、冒頭のこの座談会のトーンにはかなり異論があります。

ケアの市場化がけしからんという言い方は、あたかも市場化以前は全てが公的サービスで賄われていたかの如き印象を与えますが、そうではありません。とりわけ最大の問題である高齢者介護の領域においては、官から民へという風にものごとを捉えること自体がごまかしであって、むしろ、家庭の中に美風として私的(プライベート)なことだと押し込められていたことが、そうではなくて公的(パブリック)なことなんだ、だから(サービス提供者は官民様々であっても)公的なサービスとして行われるべきなんだという大きなシフトが起こったことに着目すべきです。それ以前の日本の介護をごく一部の公的サービスで捉えること自体が間違いで、表に出てこない「恍惚の人」の地獄絵図こそが介護保険を作り出したというのは、この分野を研究した人であれば周知のことだと思うのですが、どうもそこの認知が歪んでいるように思われます。介護保険の20年がいろいろと問題だらけであることは確かですが、それ以前がバラ色だったかのように描くのはいかがなものかと思いますよ。

とはいえ、ほかの記事は結構読みでがあります。特に、上林さんの議論はもう何回も紹介していますが、

ブルシットジョブに喰われるエッセンシャルワーク―公務労働のリアル
上林陽治(公益財団法人地方自治総合研究所委嘱研究員)

やはり何回も読まれる必要があります。

 

 

機微に触れる個人情報の漏洩

5sy4ret_400x400 悲報学部卒の弁護士の堀新さんが、最も機微に触れる個人情報を漏洩しているようでありますな。

https://twitter.com/ShinHori1/status/1464105419534602240

学生時代、学科の数年上の先輩で、卒業後に法学部にも再入学してから旧労働省に勤務してた先輩がいて、ある時コンパで「学科の卒論は、ぎりぎりになった頃に、酒を飲んで一気に一晩で書いた。後で読み返したら意味がわからない内容になっていた」という話をしてくれた。濱口桂一郎さんである。

中身は全て忘れてしまったので、一切のお問い合わせには応じられませんので悪しからず。

(追記)

ついに怪物にされました・・・

https://twitter.com/jituwa_erojj/status/1464181804051492869

濱口桂一郎さん懐かしいです。会ったことありませんが某パソ通の議長で別板の住人であった私を自板に誘ってくれた。wikiもgoogleもないのに次から次へとチャット状態で知識を披露し、もう怪物だった。

 

 

2021年11月25日 (木)

芳野連合会長の注目すべき発言

連合のHPに、11月18日の記者会見の動画と文字起こしが載っています。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/rengotv/kaiken/20211118.html

例によってマスコミの皆さんは政治政局の話が大好きで、どの党がどうとかこうとか、そういう記事ばかりがデスク受けして載るんだろうな、というのはよくわかりますが、そういうのだけ見てたんではもったいないようなやり取りもちゃんと交わされています。

そのうち、最近はやりの「安い日本」の元凶という意味で、芳野会長が大変本質的なことにちらりと触れているところがあったので、ちょっと引用しておきますね。

・・・・あともう1つは先ほど少し触れた適正価格の問題ですが、おそらくこれまで労働組合としても物価が上がるということに対しては消極的だったかというふうに思います。前回の記者会見のときにも申し上げたかもしれませんが、私たちが消費者の立場で考えるのか労働者の立場で考えるのか、そこでまた変わってくると思います。私自身も、例えば良いもの安く買いたいと誰でもが思うことで、ただそれを通してしまうと、じゃあそこで物を作っている人たちの製品の価値もそうですし、物を作っている人たちの価値も下げてしまうということになるかと思うので、そこは私たち消費者もきちっとその物づくりをしている労働者のことも考えながら適正な価格できちっと買っていく。で、そこでは賃上げ、まあ賃金というと企業側はコストにはなりますが、賃上げも含めたその価格設定にして、そうすれば中小の人たちも給与が、賃金が上がりますから、そうなると消費にも回るということで、ある意味そういう好循環に持ってきたいっていう考え方です。日本全体がこう物価が上がっていくということになかなか理解を示すということは難しいのでどこまでできるかというのはありますが、適正価格はそういうことだというふうに思いますので、それは連合の中でもしっかり議論していきたいと思います。

ここはとても重要なことに触れているんですが、マスコミの方々にはあまり関心がなかったのか、そのままスルーされてる感じですね。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-6a801f.html(労働者が消費者意識を高めたら賃金が上がらなくなった件について@WEB労政時報)

・・・・・今から30年前、昭和から平成に変わった頃の日本では、(今では信じられないかも知れませんが)「高い日本」が大問題であり、それを安くすることが労使共通の課題であったのです。1990年7月2日、連合の山岸会長と日経連の鈴木会長は連名で「内外価格差解消・物価引下げに関する要望」を出し、規制や税金の撤廃緩和等により物価を引き下げることで「真の豊かさ」を実現すべきと訴えていました。同日付の物価問題共同プロジェクト中間報告では、政府、企業、労働組合、消費者が果たすべき役割の4本柱を次のように掲げていました。
1.公的規制の緩和・撤廃
2.市場原理の徹底・公正競争の促進
3.消費者重視の徹底、国民生活の質的向上に貢献する産業構造への転換
4.政府、企業、労働組合、消費者の連携・協力
 なるほど、賃金を、つまり生産要素の価格を引き上げることが第一義のはずの労働組合が、企業や消費者と連携して価格の引下げに向けて全力投球してくれるのであれば、その後の日本社会がその通りの道筋を辿っていくことに何の不思議もなかったことになります。
 当時の連合はなぜそういう発想だったのでしょうか。同中間報告には、「労働組合は、職業人の顔とともに、消費者の顔をもつ」とか、「企業に対しては、労使協議の場等を通じて、消費者の声を産業・企業に反映し、消費者の利益を重視する経営を目指すよう、促す」べきだとか、挙げ句の果ては「労働組合自らが消費者意識を高め、消費者に対しては物価引下げに必要な消費者意識や消費者世論の喚起に努めるべき」とまで言っていたのです。消費者にとって嬉しい「安い日本」は労働者にとって嬉しくないものではないのか、という(労働組合本来の)疑問が呈されることはなかったようです。
 マクロ経済面については、1993年8月の日経連内外価格差問題研究プロジェクト報告がこのようなバラ色の未来像を描き出していました。
「物価引下げ→実質所得向上→経済成長」
 物価引下げによる実質所得の向上は、当然、国全体の実質購買力の増加となる。1992年度の数字で考えれば、仮に3年で10%の物価が引き下げられれば、毎年約9兆円の実質所得の向上になるが、これは各年度の雇用者所得を約4%程度も引き上げるのと同じ数字になるということも認識すべきである。
 その結果は、国民は新しい購買力を獲得し、そこから商品購買意欲の高まりが生まれる。それにより、企業としても、新商品開発、新産業分野への参入など積極的な行動がとれるようになり、将来の市場動向の安定をみて、研究開発や新規設備投資を行いやすい環境となる。このように、個人消費と設備投資の拡大は、経済成長を大いに刺激することになる。
 その後の失われた30年のゼロ成長は、このもっともらしい経済学的論理回路が100%ウソであったことを立証しています。名目賃金も実質賃金も下がり続け、国民の購買力も縮小する中で、その商品購買意欲も(その貧しさに見合った形で)収縮していき、企業の研究開発や設備投資も欧米どころか中国など他のアジア諸国にも見劣りする水準にまで後退し、これら全てが日本の経済力の劇的な引下げに大きく貢献してきたことはもはや明らかでしょう。よくぞこんなバラ色の未来図を白々しくも描けたものです。・・・・・

«ジョブ型もメンバーシップ型も天使でもなければ悪魔でもない