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2019年12月13日 (金)

桜井英治『贈与の歴史学』

102139 一見、労働問題とは関係がなさそうな本に見えますが、なかなか興味深い一節があります。

http://www.chuko.co.jp/shinsho/2011/11/102139.html

贈与は人間の営む社会・文化で常に見られるものだが、とりわけ日本は先進諸国の中でも贈答儀礼をよく保存している社会として研究者から注目を集めてきた。その歴史は中世までさかのぼり、同時に、この時代の贈与慣行は世界的にも類を見ない極端に功利的な性質を帯びる。損得の釣り合いを重視し、一年中贈り物が飛び交う中世人の精神を探り、義理や虚礼、賄賂といった負のイメージを纏い続ける贈与の源泉を繙く。角川財団学芸賞受賞。 

日本中世史としても、モースの流れを汲む社会学としても、大変面白い本ですが、実は最後の「第4章 儀礼のコスモロジー」に、労働力価格の硬直性に関わるこういう記述があり、いろいろと考えさせられました。

・・・労働と贈与の関係に関連してもう一つ注目されるのが労働力価格の問題である。中世には、物の価格と労働力・サービス価格とではその決定メカニズムが根本的に異なっていたことが明らかになってきている。物の価格は基本的に需要・供給バランスによって決定されており、その点では現代とあまり変わらないのに対し、労働力・サービス価格は硬直的で需要・供給バランスの影響をほとんど受けなかったのである。・・・

・・・このような現象は短期的にも現れ、例えば建築職人の一日の労働時間は、昼夜の長さに規定されて夏に長く、冬に短くなるが、賃金は一年を通じて常に一定だった。同じ賃金を払っているのに、夏は冬よりも長時間職人を働かせることができたわけだから、中世には実質的な労働力価格は夏に下落したのである。従って雇い主にとっては、建築工事を行うなら夏が断然有利だったことにもなる。

私たち現代人の常識からすれば、建築工事が集中すれば労働力需要が増加するから、賃金も上昇してよさそうなものだが、中世にはそういうことは起こらなかった。労働力価格は需要・供給バランスの影響を受けなかったからである。ところが、建築資材の方は工事の集中に伴って、夏になると価格が上昇した。物の価格は労働力価格とは違って、需要・供給バランスの影響を受けたからである。・・・

・・・ではなぜ中世の賃金は需要・供給バランスの影響を受けなかったのだろうか。私は、中世における賃金支給がしばしば「酒直」「禄」といった贈与名目で行われていたことに注目している。つまり、中世段階では労働力が未だ完全な商品化を遂げておらず、それゆえに賃金も厳密な労働時間を考慮せず、一種の贈与(若しくは労働という贈与に対する返礼)として支払われるにとどまったのではないかということである。・・・

なるほど、と思うと同時に、いやいや「私たち現代人の常識」も、それほど完全に労働力が商品化されていないぞ、という気もします。

大の月も小の月も、28日の2月も、一定の月給制というのは、実は時間給レベルの労働力価格が上下しているってことですし。

そもそも、サービス残業を始めとする日本労働者の時間給意識の乏しさには、なにがしか「給与」の「贈与」的性格が影を投げかけているようにも思えます。

さらに、次の一節は、近代的な古代と前近代的な中世という世界史的なテーマに触れていますね。

・・・ただし、労働力の商品化という現象は未開から文明への過程でただ一度起こった跳躍というわけではなかった。なぜなら、中世人の知らなかった時間給を古代人は知っていたからである。少なくとも律令法では昼の長さに応じて、夏は「長功」、春と秋は「中功」、冬は「短功」というように、季節ごとに異なる賃金を支給するよう規定しており、古代にはーたとえそれが中国からの直輸入だったとしてもー中世とは違って時間給の発想があった。それが中世に入るとなぜ消えてしまったのか、そしていつどのように復活して現在に至るのか、そこに刻まれているのは決して単線的ではない、よりダイナミックな、そしてときに“繰り返される”歴史であろう。

中世イエ型社会の延長線上の我々は、もしかするとチャイナ式律令体制下の古代人よりも時間給意識が乏しいのかも知れません。

 

 

退職代行、法的にグレー@『日経新聞』

今朝の『日経新聞』2面に、「退職代行、法的にグレー 業者に交渉権なく トラブル増加 「団交」うたい労組に衣替えも」という渋谷江里子記者の「真相深層」記事が出ています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53289420S9A211C1EA1000/

自分の代わりに退職の意思を伝える退職代行サービスを巡るトラブルが増えている。人手不足で職場での負担は重くなり転職したい人が増えている。料金は1回数万円と安くないが、需要をとらえ、代行業者は急増している。ただ法的にはグレーな存在で利用者が責任を問われるリスクもある。安易な利用は禁物だ。・・・・

 この記事の中に、わたくしのコメントも載っています。

・・・・労働組合は2人以上の労働者で構成するなど条件を充たせば組織できる。労組の衣をまとった代行業者は「本来、法律が想定した組合ではない」(労働政策研究・研修機構の浜口桂一郎所長)。

それでも形式上は団交を要求できる。浜口氏は企業の「団交拒否を(代行業者が)不当労働行為として訴えるなら労働委員会の審査が必要だが、退職代行だけでそうはならないだろう」とみる。業者の要求が退職だけなら、応じる企業が多いのが実態だからだ。・・・

 

 

 

EUとイギリスとリベラルとソーシャルと(再掲)

イギリスの総選挙で保守党が大勝し、労働党のコービンが批判されているようですが、ここに至るイギリス政治のねじれのそのまたねじれの構造について、コービンが党首になったときのエントリが依然として通用するように思われますので、再掲しておきます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-0183.html (EUとイギリスとリベラルとソーシャルと)

96958a9e9381959fe3e09ae1808de3e0e2eイギリス労働党の党首に左派のコービン氏が選ばれたというニュースが話題になっています。いやもちろん、ヨーロッパで。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM12H3R_S5A910C1FF8000/?dg=1

同氏は反緊縮や格差是正を訴え、党員らの6割近い支持を得た。1990年代以来中道路線を取ってきた同党の大きな転換となる。キャメロン首相率いる保守党の市場経済を重んじる経済政策や欧州連合(EU)離脱の是非を巡る交渉にも影響は及びそうだ。

・・・労働党はこれまで親EU路線を党是としてきたが、コービン氏は「ギリシャ支援などを巡りEUに改革が必要なのは明らかだ」と独自の見解を見せる。最近では、EUの前身である欧州共同体(EC)を巡る1975年の英国民投票で加盟継続に反対票を投じたことを明らかにした。コービン氏のEUに対する懐疑的な姿勢が、労働党支持者のEU離脱への姿勢を強めるのではないかと懸念する向きも出ている。

イギリス政治とEUとの関係はなかなかに複雑ですが、リベラルとソーシャルという軸で見ると、大きくこのように描けると思います。

かつて、創設当時のEECは名前の通り市場統合のみを目指す経済共同体であり、その頃は保守党がEECに入りたがって、労働党はイギリス流の福祉国家に悪影響があるのではないかと疑って批判的でした。ソーシャルなイギリスとリベラルなヨーロッパという構図。

ところがサッチャー政権下で労働運動が徹底的に叩かれ、福祉が大幅に切り下げられるようになると、イギリスの左派はEC,EUを頼るようになります。逆に、保守党からすると、EC、EUがやたらにソーシャルな政策を押しつけてくるのが気にくわない。リベラルなイギリスとソーシャルなヨーロッパの時代。イギリス保守党の反EUは、これを受け継いでいる。今でもキャメロン首相は、EUの社会条項からの脱退を訴えていたりする。

ところが経済危機以降のEUは、むしろギリシャをはじめとする加盟国に緊縮を押しつけてくるリベラルの側面が強くなり、、欧州全体として反EU感情が高まってきている。今回の労働党の党首選もそれの現れで、リベラルなEUに対する左派の反発といえます。

複雑なのは、ソーシャルなヨーロッパに反発する保守党とリベラルなヨーロッパに反発する労働党の異なる反EU政策が国内政治的に同期化している点で、それぞれの党内の「そうはいっても」というリアリズムとのせめぎ合いが興味深いところです。

も一つ、EU離脱国民投票時のこのエントリも。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-e515.html (EUはリベラルかソーシャルか?)

今日(もう昨日ですが)はイギリスのEU離脱国民投票で世界中大騒ぎでしたが、EU労働法政策などというタイトルを掲げている本ブログからすると、いろいろと感じるところがありました。

もともとEEC(欧州経済共同体)は名前の通り市場統合を目指すもので、ほとんどソーシャルな面のないリベラルなもの。

かつて労働組合がえらく強かった頃のイギリスは、保守党政権時代に勝手にECに加入したのはおかしいといって、1975年に労働党政権が国民投票をやり、離脱票が少なかったので残った経緯があります。ソーシャルなイギリスがリベラルなECを嫌がってた時代。ちなみに、いまのコービン労働党首はこのときの離脱派。

ところが、サッチャーが政権について、労働組合は徹底的にたたきつぶす、最低賃金から何から労働法護法は廃止する、福祉も住宅も教育も片っ端から叩く。ぼこぼこにぶん殴られた労働組合は泣きながらEUに駆け込んで、助けてくれと言い出す。「社会なんて存在しない」というサッチャーにとって、市場統合以上の余計なことにくちばしを入れたがるソーシャルなEUは邪魔者。いわゆる「ソーシャル・ヨーロッパ」の時代。

その後労働党政権になり、EUのソーシャルな労働法も持ち込まれる。これがイヤだという、反ソーシャル・ヨーロッパのリベラルUKという文脈も、一応細々とあって、日経新聞あたりに載る離脱派のEUの規制がどうのこうのというのはこの話。でもそれはメインじゃない。

むしろ21世紀になってから、EUは再び市場統合を旗印に自由市場主義を各国に強制する傾向が強まる。具体的には下記『社会政策』学会誌に書いた一節を参照のこと。

・・・ところが皮肉にも、これがEU全体の緊縮財政志向をもたらし、とりわけ南欧諸国における労働法、労使関係の空洞化をもたらしている。
 危機がもっぱら金融危機であった2009年頃までは、破綻した金融機関の救済や企業や労働者への支援、そして大量に排出された失業者へのセーフティネットなどのために多額の公的支出が行われ、それが加盟各国の財政赤字を拡大させた。ところが、その不況期には当然の財政赤字が、金融バブルの拡大と崩壊に重大な責任があるはずの格付け機関によって、公債の信用度の引下げという形で、あたかも悪いことであるかのように見なされるようになった。
 しかも、ここにヨーロッパ独自の特殊な事情が絡む。いうまでもなく、共通通貨ユーロの導入によって、「安定成長協定」という形で加盟国の財政赤字にたががはめられてしまっていることである。本来景気と反対の方向に動かなければならない財政規模が、景気と同じ方向に動くことによって、経済の回復を阻害する機能を果たしてしまうこのメカニズムは、自由市場経済ではなく協調的市場経済の代表格であるドイツの強い主張で導入され、結果的に市場原理主義の復活を制度面から援護射撃する皮肉な形になってしまっている。そしてドイツ主導で進められた財政規律強化のための財政協定が2013年1月に発効し、各国の財政赤字はGDPの0.5%を超えない旨を各国の憲法等で規定し、これを逸脱した場合には自動修正メカニズムが作動するようにしなければならず、これに従った法制を導入しない国にはGDPの0.1%の制裁金を課するという仕組みが導入された。
 このように事態がドイツ主導で進められる背景には、経済危機に対してドイツ経済が極めて強靱な回復力を示し、ドイツ式のやり方に他の諸国が文句を言いにくいことがある。しかしながら、ドイツの「成功」をもたらしたのは、危機からの脱却のために政労使がその利益を譲り合うコーポラティズムである。労働側は短時間労働スキーム(いわゆる緊急避難型ワークシェアリング)により雇用を維持するとともに、さまざまな既得権を放棄することで、ドイツ経済における労働コストの顕著な低下に貢献した。これにより、他の諸国と対照的に、ドイツの失業率はむしろ低下傾向を示した。
 このドイツ型コーポラティズムの「成果」がEUレベルでは緊縮財政を強要する権威主義的レジームを支え、ドイツにおける協調的市場経済の「成功」が結果的に他国におけるその基盤となるべき雇用と社会的包摂への資源配分を削り取っているというのが、現代ヨーロッパの最大の皮肉である。

 もっとも典型的なギリシャを見よう。債務不履行を回避するための借款と引き替えに強制されたのは、個別解雇や集団解雇の容易化だけでなく、労使関係システムの全面見直しであった。2010年の法律で有利原則を破棄し、下位レベル協約による労働条件引下げを可能にするとともに、賃金増額仲裁裁定の効力を奪い、2011年には従業員の5分の3が「団体」を形成すれば企業協約締結資格を与えることとした。これにはさすがにILOが懸念を表明するに至った。 ・・・

ギリシャのシリザとか、スペインのポデモスとか、南欧諸国の反EU運動は基本的にこれに対する対抗運動。リベラルなEUに対して各国のソーシャルな仕組みを守ろうというリアクション。そして、イギリスの反EUの気持ちの中にも結構これが大きい。イギリスはユーロ圏じゃないので直接関係ないのだが、労働党支持層の中でもEU残留に熱心になれないひとつの背景。

そして、どの国にもあるけれども特にイギリスに強い「ヨーロッパはドーバー海峡の向こう側、俺たちはヨーロッパじゃない」ナショナリズムがこれら錯綜するリベラルとソーシャルのぐちゃぐちゃとない交ぜになったのが今日(昨日)の結果なのでしょう。

(追記)

欧州労連のコメントを紹介しておきます。

https://www.etuc.org/press/brexit-vote-eu-must-take-action-improve-workers-lives

“This is a dark day for Europe, for the UK and for workers. It must be a wake-up call for the EU to offer a better deal for workers.

“There is deep disillusionment across Europe, not only in the UK. Austerity, cuts in public spending, unemployment, the failure of Government’s to meet people’s needs, the failure of the EU to act together are turning people against the EU. Workers want an EU that takes action to improve their lives.

“The EU needs to act decisively to ensure this is not the start of the break-up of the European Union, and does not damage jobs and workers’ rights.

“The European Union must start to benefit workers again, to create a fairer and more equal society, to invest in quality jobs, good public services and real opportunities for young people.

“The ETUC stands with the British TUC in saying that British workers should not pay the price for Brexit.

“The ETUC will continue and strengthen its fight for a fairer and more social Europe.”

今日は闇の日だ、欧州にとっても英国にとっても労働者にとっても。これはEUが労働者にもっと良い条件を提示せよという警鐘だ。

イギリスだけじゃなくヨーロッパじゅうに深い幻滅が広がっている。緊縮財政、公共支出の削減、失業、人々の必要に応えられない政府、これら全てがEUへの反発に転化している。労働者はEUが彼らの生活を改善するための行動を起こすことを求めている。

EUはこれが欧州連合の解体の出発点ではなく、雇用や労働者の権利を損なうことのないよう断固として行動する必要がある。

EUは再び労働者の利益のために、より公正で平等な社会を作りだし、質の高い仕事、良い公共サービス、若い者の真の機会に投資すべきだ。

ETUCはイギリスのTUCとともに英国労働者は英国離脱の代償を払うべきではないと主張する。

ETUCはより公正でよりソーシャルなヨーロッパへの闘いを続け強める。

(参考)

ちなみに、頭の中が80年代のサッチャー対ドロール時代のまま化石化してしまった人の「初歩的な事実誤認」の実例:

https://twitter.com/ikedanob/status/746734748702146560

初歩的な事実誤認が多い。そもそもEUが各国に「緊縮財政」を求める権限はない。ましてEUを「新自由主義」などという人はいない。その逆の過剰規制が問題だったのだ。

最近20年間のヨーロッパはまったくわかりません、と正直に言えばいいのに。

(おまけ)

なんだか労務屋さんの感想も、EUの規制がががが・・・・という話に集中してますね。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20160627#p1

報道などをみると英国人にとってはこうした規制を強要されることがかなり耐え難いことだったということのようです。・・・

保守党の一部ではそこを強調する議論が多かったのは確かですが、国民の選択の決め手としてはどうでしょうか。基本的には上で書いたように「メインじゃない」と思われます。

今回の結果は上の本文で書いたように、自由な統合市場という面で残留派である保守党の中に(大英帝国の残影を追う)ナショナリズムの側面が強く、他方EU規制を求め守るという面で残留派である労働党の中に(コービン党首を始めとする)そもそも市場主義的なEUへの懐疑派が根強いことなどが、二重三重に絡まり合った結果というべきでしょう。

なんにせよ、これを持ち出して

・・・そこでEU出羽出羽とEUがきわめて素晴らしいように語ることのヤバさというのが今回のbrexitの教訓かなあと、まあそんなことを考えたわけです。

というのは、いささか・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

2019年12月12日 (木)

鈴木孝嗣・長谷川崇『あなたの会社に「ドラマクイーン」はいませんか?』

Dramaqueen 鈴木孝嗣・長谷川崇『あなたの会社に「ドラマクイーン」はいませんか?-残念な管理職への対処法-』(労働新聞社)をお送りいただきました。

https://www.rodo.co.jp/book/9784897617916/

本書は、ドラマクイーン、ナルシスト、ブレイマーなど、異常な言動をとる「残念な管理職」(その行動の多くは、パワハラに該当する可能性があります)の特徴を概観し、部下としての対処法を解説します。共著者の一人である特定社会保険労務士の鈴木氏が「残念な管理職」の実態分析と対応策を整理し、産業医として数多くの会社の現場を見てきた精神科医(医学博士)の長谷川氏が、異常な言動をとる管理職について、精神医学的な視点から分析を行っています。 

ドラマクイーンという言葉は本書で始めて知りましたが、「ドラマのヒロインのように芝居がかった行動をとる人、物事に対してオーバーリアクションをとる人、些細な事柄をさも大事のように誇張して語る人」のことだそうです。

そういうのが自分の上司に来たりしたらたまりませんね。本書にはそういう実例がいっぱい載っていて、そういう人々に対してどのように対処したらいいのか懇切丁寧に解説しています。

試し読みできるところからいくつかの例を:

会社幹部によるビジネスミーティングの席上、製品販売の入金が1週間後ろ倒しになったことを、会社倒産の危機でもあるかのように大げさに騒ぎ立て、担当部長を「給与泥棒」呼ばわりし、「今すぐ客のところに行って、集金できるまで帰ってくるな!」などと声を荒げ、延々と叱責する。

会社の業績が(赤字ではないものの)目標を達成できないことが見えてきた段階で緊急会議を招集した経営幹部が、「君たち一人一人がきちんと責任を果たさないからこうなった。こんなことでこれからどうやっていくつもりだ!?」と、涙目で絶叫する。悲劇のヒーローは自分で、駄目な部下たちのせいで自分は責任をとらざるを得ない、ということをアピールするワンマンショーになっている。

・・・・

仕事をするために会社に来ているのに、興奮して絶叫し続ける上司の三文芝居を見続けるほどこちらは暇ではない。。「早く職場に戻って、あの仕事、この仕事、それに部下への指示もしなければならないのに・・・」と思うと、拷問のような時間を耐えて黙り込むことに限界が来て、反論の一つもしたくなるかも知れないが、これにはそれなりの対処法があるので、第2章を参照していただきたい。

 

 

2019年12月11日 (水)

副業・兼業の労災認定

昨日開かれた労政審労災保険部会で、副業・兼業の場合の労災認定について、賃金額だけではなく、負荷についても通算するという方向でほぼ合意されたようです。会議に出された資料はこれですが、

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000574648.pdf

論点1 見直しの方向について【79-1-1】
複数就業者について、それぞれの就業先の負荷のみでは業務と疾病等との間に因果関係が見られないものの、複数就業先での業務上の負荷を総合・合算して評価することにより疾病等との間に因果関係が認められる場合、新たに労災保険給付を行うことが適当。
論点2 認定方法について【79-1-2、80-2-1】
○ 複数就業先の業務上の負荷を総合・合算して評価して労災認定する場合についても、労働者への過重負荷について定めた現行の認定基準の枠組みにより対応することが適当。ただし、脳・心臓疾患、精神障害等の認定基準については、医学等の専門家の意見を聴いて、運用を開始すべき。
○ 現行、脳・心臓疾患や精神障害の労災認定に当たっては、複数就業先での過重負荷又は心理的負荷があったことの申立があった場合、労働基準監督署がそれぞれの就業先での労働時間や具体的出来事を調査している。このため、それぞれの就業先での業務上の負荷を総合・合算して労災認定する場合であっても、このプロセスは維持すべき。

で、これはあくまでも公法上の労災保険の認定基準の話であって、そのもとになっている使用者の労災補償責任ではないと、明確にそこを切り離しています。

論点3 労働基準法上の災害補償責任について【79-1-1】
○ それぞれの就業先の負荷のみでは業務と疾病等との間に因果関係が見られないことから、いずれの就業先も災害補償責任を負わないものと整理することが適当。
○ なお、一の就業先における業務上の負荷によって労災認定できる場合は、現行と同様、当該就業先における労働災害と整理することとし、当該就業先に災害補償責任があり、他の就業先には災害補償責任はないこととすべき。

ここが、使用者側が負荷の通算にネガティブであった理由なんですね。うちの会社だけなら安全配慮義務違反だといって裁判起こされるようなことはないのに、よその会社と合算して責任の半分はあるやろ、と言われたらたまらない、ということです。そこは別だと。国の管轄する労災保険制度で面倒見るだけだと。

 

 

 

2019年12月10日 (火)

中途採用率の公表義務化の出どころ

労務屋さんが、今労政審で審議されている法改正事項のうち、あまり注目されない方、というか、あまり深刻でない方、大して影響を与えそうでなさそうな方、というべきか、中途採用率の公表義務化について、そもそも論的にいろいろいじっておられます。

https://roumuya.hatenablog.com/entry/2019/12/10/133013 (中途採用率の公表義務化)

・・・そこでこの「中途採用率の公表義務化」がどれほどの有効性を持つかといえば、まあやって悪いたあ言わないもののたいした意味はないというところではないでしょうか。・・・
・・・となると転職・中途採用がしやすい環境づくりをすること自体は望ましいことだし必要なことだろうとも思います。企業間移動がやりやすい方が円滑な対応が可能になることはただそれが中途採用率の公表義務化かと言われればそうでもないんじゃないかと思うわけで(いやもちろんやって悪いというわけではないが)。

いやまあ、そうなんですが、ご承知の通り、これは今年6月の成長戦略実行計画に、例の70歳就業機会確保と並んで明記されちゃっているんで、やらないわけにはいかないわけです。

で、70歳の方は、これはもういずれそういう話になるとみんな分かっていた話ではありますが、中途採用率の公表ってのはいったいどこから湧いてきたんだろうか、と思って若干さかのぼっていくと、これも70歳就業と同様、官邸の人生100年時代構想会議から来た話のようです。

この人づくり革命基本構想の中に、第5章リカレント教育の最後のところに、こういう記述が出てくるんですね。

(企業における中途採用の拡大)

内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省 が連携して、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置し、中途採 用を拡大する。 なお、「年齢にかかわりない多様な選考・採用機会拡大のための指針」を 活用し、中途採用の促進に向けた経済界の気運を醸成する

リカレント教育の文脈で中途採用というのもよくわからないところがありますが、どんな議論があったのだろうかと思ってみていくと、昨年3月の第6回会議がリカレント教育の話で、そこで日本総研の高橋進さんがこう言っていたんですね。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai6/gijiroku.pdf

○高橋氏 資料3をご覧いただきたいと思います。

大企業でも終身雇用はなくなっているのが現実であり、企業内教育にのみ人 材育成を期待するのは限界があります。教育機関、産業界、行政が連携してリ カレント教育の取組を進めることが必要だと思います。

雇用保険特会を活用して、教育訓練給付について、給付内容を拡充するとと もに、土日・夜間・通信課程など社会人が利用しやすい講座を充実すべきだと 思います。

リカレント教育の実践性を高めるためには、産業界の参加が不可欠です。インターンシップを取り入れるなど、企業参加型のプログラムの策定を行うべき だと思います。このため、産業界の全面的な協力が必要です。また、プログラ ムの開発と同時に、就職について大学における企業とのマッチング機能が不可 欠です。こうした取組を東京だけではなく全国に広げることが重要だと思いま す。

子育て女性だけでなく、企業の研究者、技術者についてのリカレント教育が 大きな課題だと思います。新卒社員を囲んで社内勉強会を開いたというような 笑えない話も聞きます。バイオ、化学、データサイエンス、情報処理などの分 野の学会と連携してプログラム開発を進めるべきです。

リカレント教育の提供体制を確保するため、企業出身の実務家教員の育成が 必要です。本人にとっても新しいキャリアにつながるものであり、教育経験の ない企業で働く実務家教員候補、彼らに対する教授方法の研修なども実施すべ きだと思います。

リカレント教育を受けた人たちが活躍するためには、需要側である企業の人 材採用の多元化が進むことが必要です。特に、大企業において中途採用が進ん でいません。例えば、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置する など、総理のリーダーシップを含めて何らかの仕掛けを考えるべきではないか と思います。

最後に、20代、30代のうちからキャリアの節目節目でキャリアコンサルティ ングを企業内で実施することが必要だと思います。将来のキャリアパスを考え る習慣をつけるべきだと思います。また、転職の成功事例の見える化、副業・ 兼業の推進により、転職の環境整備を図るべきだと思います。  

なるほど、リカレント教育を受けた人の受け皿としての中途採用という発想だったんですね。でも、それってどれくらいの人々に共有されている認識なんでしょうか。

 

 

第107回労働政策フォーラム「職場のパワーハラスメント」

Jilpawahara

2019年12月 9日 (月)

佐藤博樹,藤村博之,八代充史『新しい人事労務管理 第6版』

L22144 佐藤博樹,藤村博之,八代充史『新しい人事労務管理 第6版』(有斐閣)をお送りいただきました。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641221444

ほぼ2年間隔がデフォルトになりつつある労働法に比べるとまだ改訂の間隔は大きいですが、それでもほぼ4年ごとの改訂というのは、この分野の変化の激しさを物語っているといえるでしょう・

日本企業の実態を踏まえて人事労務管理を解説する好評定番テキスト。労働法制の改正に加え,働き方改革等,多様な人材が活躍できる職場づくりへの対応など,雇用環境が大きく変化しつつある中,今後を展望するためにも必須となる基礎的な理解を得られる一冊。 

目次は次の通りで、第5版とそれほど変わっていませんが、第5章が「労働時間管理」から「労働時間と勤務場所の管理」になり、「勤務場所の柔軟化と多様化」という節が新設されているのは、時代を示していますね。

第1章 企業経営と人事労務管理──人事労務管理の機能と担い手
第2章 雇用管理──人と仕事の結びつき
第3章 職能資格制度と職務等級制度──人事制度と昇進管理
第4章 賃金管理──給与決定の仕組み
第5章 労働時間と勤務場所の管理──労働サービスの供給量と供給のタイミングの管理
第6章 能力開発──能力を高める意義と方法
第7章 非正規従業員と派遣労働者──コンティンジェント・ワーカーの活用
第8章 従業員の生活支援──企業の福利厚生制度
第9章 労使関係管理──労働者の利益をいかに守るか
第10章 人事労務管理の変遷と展望──歴史的・国際的な位置づけ
終 章 幸せな職業人生を送るために

コラムにも、44ページに「転勤と勤務地限定制度」というのが設けられています。

コラムといえば、79ページに「ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用」というのもあり、

・・・一般に、メンバーシップ型は評判が悪い。学会でもセミナーでもメディアでも、ゼミの学生の卒論でも、みなジョブ型がよいという。メンバーシップ型は常に『悪玉』である。・・・

と書かれていますが、いやあそうかな。

このコラム、それぞれのメリット、デメリットを挙げた上で、こう締めくくっています。

・・・ここから明らかなように、メンバーシップ型とジョブ型の違いは単に賃金を仕事で決めるかどうかという違いにとどまらず、人事権や、根源的には、その前提となる雇用保障の問題を内包している。しばしば職能給から職務給への転換が主張されるが、そのためには、まず人事制度を『メンバーシップ型』から『ジョブ型』に転換しなければならない。そして、それには外枠である『雇用』に関する考え方を変えなければならないのである。

も一つ、今日的なトピックを扱っているコラムが173ページの「部下育成とハラスメント」です。

・・・このハラスメント、特にパワハラが人材育成に悪い影響を与えている。部下育成のために上司が少し強い言葉で指導すると、その部下は『パワハラをされた』と感じ、社内のハラスメント委員会に訴え出る。上司としては、嫌がらせをしたつもりは全くないのに、部下からハラスメントだといわれ、、愕然とする。すると、『この程度のことでパワハラだと言われるのなら、指導するのは最小限に止めておこう』と考え、指導した方がいい局面でも指導に二の足を踏む。これは、部下にとって大きな損失になりかねない。・・・・

これも、さらに深く考えると、スキルをまったく持たずにまっさらの状態で入ってきた若者を、上司や先輩がびしびし鍛えて成長させるという、メンバーシップ型人事システムだからこそ起こる話なんですね。始めからその仕事ができる人間を採用するジョブ型社会では、そいつが仕事をできるように成長させる義務はないので、指揮命令に従わない奴や仕事ができない奴は契約違反にすぎないので、普通解雇するだけの話。成長させる義務もないのに余計なお節介をしていれば、それは嫌がらせ以外の何物でもない。そういうジョブ型社会の常識をそのままメンバーシップ型社会に持ってくると、いろいろと矛盾が生じるわけです。

 

 

2019年12月 7日 (土)

パワハラ罪はない、が、暴行罪、傷害罪はある

なんだか、同じことを繰り返し言っているような気がしますが、とはいえやはり言い続ける必要がありそうです。

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12145-489198/ (楽天元社員 パワハラで労災)

「パワハラで労災」というから、暴言で精神障害かと思いきや、さにあらず。

ネット通販大手の楽天に勤務していた40代男性が、両手足のまひなどの後遺症を負ったのは上司による暴行のパワハラ行為が原因だとして、渋谷労働基準監督署が労災認定していたことが5日、分かった。認定は6月20日付。

だから、なんでもかんでもハラスメントと言えばいいと思うな!と何回言えば・・・。

刑法上のれっきとした犯罪である強制わいせつを、企業の措置義務の対象でしかないセクハラなどというなまぬるい馬鹿げた用語法がマスコミにはびこっているから、

刑法上のれっきとした犯罪である暴行、傷害を、企業の措置気味の対象でしかない(いや、まだ措置義務としても法が施行されていない)パワハラなどという、あたかもこの暴行障害犯を免罪するかのごとき馬鹿げた用語法に疑問を持たずに記事を書くのでしょう。

〇〇ハラといえばいかにもその行為を批判しているかのように思い込む薄っぺらい脳みその記者がこういう記事をはびこらせると、世間の感覚が狂っていく一方です。

いやもちろん、暴行傷害に当たらないパワハラであっても、場合によっては刑法上の犯罪である自殺教唆として書類送検されたりもしますが、それはやはり「異例」なのです。

https://www.sankei.com/affairs/news/191207/afr1912070006-n1.html (パワハラで自殺教唆疑い 兵庫県警、三菱電機30代社員を書類送検)

三菱電機の新入社員だった20代男性が今年8月に自殺したのは上司の暴言によるパワーハラスメントが原因だったなどとして、兵庫県警三田署が自殺教唆の疑いで、男性の教育担当だった30代の男性社員を書類送検していたことが7日、捜査関係者などへの取材で分かった。書類送検は11月14日付。職場でのパワハラが自殺教唆容疑で捜査されるのは異例とみられる。

まあ、もとをたどれば、刑法上のれっきとした犯罪である暴行、傷害、恐喝等々を、いかにも可愛げな子供の遊びめいた「いじめ」などという生ぬるい言葉で語り続けてきたことの延長線上なのかもしれません。

 

倉重公太郎編集代表『改訂版 企業労働法実務入門』

Kurage 本日、倉重公太郎の労働法実践塾でちょびっとだけお話をしましたが、その際、この本を直接お手渡しいただきました。

なんでも、先月職場あてに送ったのですが、分厚すぎるという謎の理由で返却されてきてしまったとのことです。

本書は、5年前にお送りいただいた『企業労働法実務入門』の改訂版で、企業で初めて人事労務を担当する人に、これだけはという知識をまとめた本です。

労働法ってなに?
人事部の役割と実務
採用に関する諸問題
就業規則と労働契約
賃金
労働時間
休憩・休日・休暇
人事
懲戒処分
ハラスメント
労災・安全衛生
メンタルヘルス
雇用契約の収量
非正規雇用管理
同一労働同一賃金
労基署対応
労働組合
人事関連の法律で知っておくべきもの
社会保険・労働保険の基礎知識
用語集 

労働法の解説部分もまことに丁寧に人事労務1年生に噛んで含めるように説明されていますが、特に今回増補された序章で、労働法とは何か、そして人事部の役割と実務が先輩が後輩に伝えるように書かれています。

また、最後の方の「労基署対応」の章も、ほかの労働法の本には出てこないような章ですね。

 

2019年12月 6日 (金)

第23回倉重公太朗の労働法実践塾

倉重公太朗さんのツイッターに案内が出ていました。

https://twitter.com/kurage4444/status/1194795909797707776

12月7日の労働法実践塾は【雇用改革のファンファーレ編】と【企業労働法実務入門編】豪華2本立てです。第1部は堅柔多様なメンバー①濱口桂一郎氏、②荻野勝彦氏、③田代英治氏、④森本千賀子氏、⑤豊田圭一氏とこれからの【働く】の変化について、トークセッションをします。 

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土田道夫編『企業法務と労働法』

9784785727505 土田道夫編・「企業法務と労働法」研究会著『企業法務と労働法』(商事法務)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=9998367

企業の中で多岐にわたって生じる課題を労働法の観点から検討、解説
本書では、民法・会社法・倒産法・知的財産法・独占禁止法などの企業法と労働法が交錯する問題、さらには、コンプライアンス、ダイバーシティ、「働き方改革」などの先端的論点を取り上げ、ケーススタディを用いて法的な考え方を解説する。加えて、企業法務として紛争予防の観点からとるべき対策も示す。 

と言うことですが、実は本書、土田シューレの顔見世興行にもなっています。

なぜかリンク先の目次に執筆者名が書かれていないのですが、小畑史子さんと上田達子さんを除いて、全員同志社で土田門下で育った若手労働法研究者たちです。

第1部 理論編

企業法・企業法務と労働法 土田道夫

CSR(企業の社会的責任)・コンプライアンスと労働法 小畑史子

第2部 実務編

債権法改正と労働法 岡村優希

会社法と労働法1―事業取得型M&A(合併・会社分割・事業譲渡) 岡村優希

会社法と労働法2―株式取得型M&A土田道夫

会社法と労働法3―取締役の責任 天野晋介

倒産労働法 山本陽大

知的財産法と労働法1―営業秘密の管理・競業避止義務 河野尚子

知的財産法と労働法2―職務発明・職務著作 土田道夫

独占禁止法と労働法 河野尚子

グローバル人事―国際労働関係法1 土田道夫

グローバル人事―国際労働関係法2 土田道夫

コンプライアンス体制の構築と労働法 石田信平

企業の情報管理 坂井岳夫

女性の活躍―ダイバーシティ人事 上田達子

パワー・ハラスメントへの対応 上田達子

「働き方改革」と労働法務―労働契約法20条/パートタイム・有期雇用労働法) 篠原信貴

この中で一番若い岡村さんが、「債権法改正と労働法」のケース2で、食品宅配サービスのスマートフォンアプリによる配達パートナーが報酬を引下げられたという、(なんとも今日的な)事案を取り上げています。

設問1 X4は、Y2社に対して、手数料・その他費用を控除しない金額での報酬支払を請求できるか。

設問2 X4は、Y2社に対して、本件不利益変更前の水準での報酬支払を請求できるか。

設問3 仮に、本件不利益変更の際に、アプリにおいて、変更後の条件を表示させた上で、「承諾する」と「承諾しない」のボタンが表示され、前者を選択しないと新規の受注ができない扱いとされた場合において、X4が「承諾する」ボタンを選択したとき、設問2の場合とどのような差異が生じうるか。

いやあ、なかなか難しい問題を放り込んできます。岡村さんの回答は是非本書で。

 

『季刊労働法』2019年冬号

267_hp 『季刊労働法』2019年冬号(267号)の案内が既に労働開発研究会のサイトに載っていました。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/7312/

第1特集は「ILO100周年・その役割と展望」ということですが、JILPTからILOに転職した戎居さんも一本書いています。

●2019年で創設100周年を迎えたILO。日本の労働法制にも影響を与えてきたILOの節目を送るにあたり,ILOの今後の役割,課題を展望します。各論として,エンフォースメントと国際労働基準の関係,人権とILOといったテーマを論じます。 

◎特集 ILO100周年・その役割と展望

未批准条約の効果―日本労働法に与えた影響 ILO駐日代表 田口晶子

使用者は何処に? ILO事務局本部上級法務官 野口好恵

個別的労働・雇用関係法の実現方法におけるILOの役割と展望 ILO国際労働基準局・労働法務官 戎居皆和

未批准条約の意義と可能性―中核的労働基準の111号条約を例に 弁護士 大村恵実

非典型雇用とILO 早稲田大学名誉教授、現IDHE-ENS-Paris-Saclay客員研究員 鈴木宏昌

第2特集は「雇用によらない働き方」で、ちょうどいまウーバーイーツ・ユニオンが注目されている中で、時宜にあった特集です。

●このところコンビニ店主の労組法上の労働者性(中労委命令),業務委託契約の濫用などが争点となったベルコ事件,また「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」など,個別法,集団法を問わず「雇用類似の働き方」「労働者性」がビビッドな形で問題になるケースが増えています。第2特集では,こうした問題を取り上げます。 

◎第2特集 「雇用によらない働き方」の論点

個人就業者をめぐる議論に必要な視野と視座とは~「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会中間整理」を読みつつ 労働法学研究者 毛塚勝利

業務委託契約を利用した事業組織と労働者性・使用者性―ベルコ事件を契機として 岡山大学准教授 土岐将仁

再考・フランチャイズ契約と労働法―フランチャイジーの雇用類似の働き方 日本大学教授 大山盛義

その他の記事は以下の通りですが、

◎■論説■

民法(債権法)改正と労働法 同志社大学教授 土田道夫

労働契約法20条をめぐる裁判例の理論的到達点 労働政策研究・研修機構副主任研究員 山本陽大

◎■アジアの労働法と労働問題 第39回■

中国におけるプラットフォーム経済の発展と労働法の課題 中国西南政法大学准教授 戦東昇

◎■労働法の立法学 第56回■

管理職の労働法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎

◎■判例研究■

育児介護休業法に基づく短時間勤務措置を理由とする不利益取扱い ジャパンビジネスラボ事件(東京地判平30・9・11労判1195号28頁)専修大学教授 石田信平

間接差別法理の意義と可能性 国家公務員昇格等差別事件(東京地判平31・2・27)北海道教育大学教授 菅野淑子

◎■研究論文■

労働協約の法的規律に関する一考察(3・完)ドイツにおける社会的実力要件と交渉請求権の議論を契機として 京都女子大学准教授 植村新

新たな契約類型としての「ライフ・タイム契約(Life Time Contracts)」トレント大学(イタリア)法学部教授 ルカ・ノグラー訳・解説 井川志郎=岡本舞子=後藤究

◎■書評■

豊川義明著『労働における事実と法』基本権と法解釈の転回 評者 弁護士 宮里邦雄

◎■キャリア法学への誘い 第19回■

就職・採用とキャリア配慮 法政大学名誉教授 諏訪康雄

◎■重要労働判例解説■

修学費用貸付の返還請求と労基法16条 医療法人K会事件(広島高判平成29年9月6日労経速2342号3頁)社会保険労務士 北岡大介

就業規則の新設・変更と固定残業代合意の効力 阪急トラベルサポート(就業規則変更ほか)事件 (東京高判平成30年11月15日労判1194号13頁、原審:東京地裁平成30年3月22日労判1194号25頁)北海学園大学法学部教授・弁護士 淺野高宏 

私の連載は管理職の労働法政策です。

判例評釈に例のジャパンビジネスラボがありますが、つい先日高裁でひっくり返ったのは、タイミングとしてうーむですね。

 

 

2019年12月 4日 (水)

『生活経済政策』12月号

Img_month_20191204164101 『生活経済政策』12月号が届きました。特集は「年金改革の課題」です。やはり、年金法改正の決着が間近に迫ってくると、こういう特集をしたくなるのでしょうか。

http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/index.html

明日への視角
•あなたはヤングケアラー(子どもケアラー)を知っていますか/堀越栄子

連載 Brexit とソーシャル・デモクラシーの行方[3]
•デモクラシーの生き残り方—イギリス政治にみるレジリエン/今井貴子

特集 年金改革の課題
•2019年年金財政検証とその課題—特集の解題も兼ね/駒村康平
•雇用の変容に対応した年金制度とは—長く働き続けられるために/西村淳
•保険料拠出期間延長の論点/西沢和彦
•ライフコースの多様化と2019年財政検証の課題/丸山桂

書評
•ジャスティン・ゲスト著/吉田徹・西山隆行・石神圭子・河村真実訳『新たなマイノリティの誕生―声を奪われた白人労働者たち』/武田宏子
•山口慎太郎著『「家族の幸せ」の経済学―データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』/柳煌碩

私の関心事項からすると、西村さんの論文と、丸山さんの論文が的に嵌まってきます。

 

 

角田とよ子『認知症介護と仕事の両立ハンドブック』

9784818519053_400 例によって、経団連出版の讃井暢子さんより角田とよ子『認知症介護と仕事の両立ハンドブック』(経団連出版)をお送りいただきました。

http://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=557&fl=

介護は突然やってくるといわれます。「親が認知症と診断された。さぁ、どうしよう」という事態に直面したときに大切なのは、「仕事は続ける」と決意することです。「辞める」という選択肢がなければ、あとは、どのように両立するか、その方法の問題です。本書では、認知症とはどのようなものかを理解したうえで、プロジェクトとして介護に取り組むことを勧めています。仕事と介護をどのように両立させたらいいか、その方法を具体的に紹介するとともに、公的支援の仕組み、認知症予防、認知症患者の言動に対する受け答えの具体策などを詳述しています。

113218_xl 本書の「はしがき」は、有吉佐和子の『恍惚の人』から始まっています。1972年に刊行されたこの小説は、その時のベストセラーですが、当時中学2年生だった私にとっても、痴呆状態になった当時の祖母(父の母)を嫁(私の母)が世話をする姿をそのまま小説に映し出しているようで、大変印象深かった思い出があります。

それから半世紀近く過ぎ、専業主婦の嫁が介護するのが当たり前の社会から、仕事を持つ息子や娘が親の面倒を見なければならない社会に世の中は大きく変わり、認知症介護と仕事の両立というテーマの本が出るようになりました。

1 認知症の基礎知識
  〇認知症とは 〇早期発見・早期対応のポイント 〇病院の選び方、本人への受信の進め方 
2 介護をプロジェクトにする
  〇介護で仕事をやめてはいけない 〇認知症介護を5W2Hでイメージする 〇仕事と介護を両立させるには
3 実践 認知症介護
  〇認知症介護のヒント 〇認知症進行度の目安 〇高齢者施設と病院 
4 公的支援の仕組みと介護休業法
  〇認知症の人と家族を守る 〇障碍者支援制度 〇介護休業法の概要
5 認知症予防、症状改善Q&A
  〇認知症を予防したい 〇認知症かもしれないと思ったとき 〇MCI(軽度認知障害)とは  

 

 

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