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2019年10月21日 (月)

ジョブとメンバーシップと奴隷制再掲(稲葉振一郎『AI時代の労働の哲学』に触発されて)

9784065171806_w 毎月HRWatcherを連載しているWEB労政時報の髙橋さんより、「講談社選書メチエの『AI時代の労働の哲学』に、濱口先生の『日本の雇用と労働法』が参考文献として挙げられておりました」とのご連絡をいただき、早速読んでみました。稲葉振一郎さんのなかなかの意欲作です。

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000324960

タイトルは今風に売れ線狙いで「AI時代の」と謳っていますが、中身はむしろ哲学と歴史から労働とは何かを深く沈潜して考えようとするもので、とりわけ第2章での議論が、古めかしいが故に現代の問題を考えるのにふさわしい枠組みになっています。

 2 労働と雇用
 雇用・請負・委任(1)
 雇用の二極
 資本主義と雇用
 雇用・請負・委任(2)
 リスクと労働
 資本家の労働
 労働と財産
 産業社会論(1)
 産業社会論(2)

で、そこに私の本も出てくるんですが、その文脈が「奴隷制と自由な契約」なんですね(p51)。

・・・かつての奴隷・奉公人はメンバーシップ型雇用の原型に当たるわけですが、奴隷にもさまざまなタイプがありました。家事労働や危険な肉体労働に酷使され、消耗品扱いをされる者もいれば、主人のビジネスのアシスタントとして重要な意思決定にコミットし、場合によっては解放奴隷として主人の仕事や家を継承する者もいる。そのような幅の広さは、現代のメンバーシップ雇用にも引き継がれている、といえるでしょう。

ジョブ型の幅広さは、ある意味でそれ以上です。高度専門職の雇用は、請負どころかむしろ委任にさえ近づく一方で、定型化された単純作業は取り替えがいくらでも可能な没個性的な商品、いわばコモディティとして取り扱うことができます。つまりここでもまた外部か可能で、やはり請負に近づきますが、かといって委任に近づくことは決して考えられません。あくまでそれを「使用」する権利は雇い主の方に保持されるからです。・・・・

いやいや、これくらいきちんと概念の広がりをわきまえて使ってくれる人ばかりならいいんですけどね。

というか、この一節を読みながら、そういえば似たような話をブログに書いたような記憶が出てきました。検索してみると、こんなのがあったんですね

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-53fc.html (ジョブとメンバーシップと奴隷制)

世の中には、ジョブ型雇用を奴隷制だと言って非難する「世に倦む日々」氏(以下「ヨニウム」氏)のような人もいれば、

https://twitter.com/yoniumuhibi/status/283122128201609216

本田由紀とか湯浅誠とか、その亜流の連中が、そもそも正規労働を日本型雇用だと言ってバッシングし、正規雇用を非正規雇用の待遇に合わせる濱口桂一郎的な悪平準化を唱導している時代だからね。左派が自ら労働基準法の権利を破壊している。雇用の改善は純経済的論理では決まらない。政治で決まる問題。

https://twitter.com/yoniumuhibi/status/290737267151077376

資本制の資本-賃労働という生産関係は、どうしても古代の奴隷制の型を引き摺っている。本田由紀らが理想視する「ジョブ型」だが。70年代後半の日本経済は、今と較べればずいぶん民主的で、個々人や小集団の創意工夫が発揮されるKaizenの世界だった。創意工夫が生かされるほど経済は発展する。

それとは正反対に、メンバーシップ型雇用を奴隷制だと言って罵倒する池田信夫氏(以下「イケノブ」氏)のような人もいます。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51870815.html(「正社員」という奴隷制)

非正社員を5年雇ったら正社員(無期雇用)にしなければならないという厚労省の規制は、大学の非常勤講師などに差別と混乱をもたらしているが、厚労省(の天下り)はこれを「ジョブ型正社員」と呼んで推奨している

・・・つまりフーコーが指摘したように、欧米の企業は規律=訓練で統合された擬似的な軍隊であるのに対して、日本の正社員はメンバーシップ=長期的関係という「見えない鎖」でつながれた擬似的な奴隷制なのだ。

もちろん、奴隷制とは奴隷にいかなる法的人格も認めず取引の客体でしかないシステムですから、ジョブ型雇用にしろメンバーシップ型雇用にしろ、奴隷制そのものでないのは明らかですが、とはいえ、それぞれが奴隷制という情緒的な非難語でもって形容されることには、法制史的に見て一定の理由がないわけではありません。

著書では専門的すぎてあまりきちんと論じていない基礎法学的な問題を、せっかくですから少し解説しておきましょう。

近代的雇用契約の源流は、ローマ法における労務賃貸借(ロカティオ・オペラルム)とゲルマン法における忠勤契約(トロイエディーンストフェアトラーク)にあるといわれています。

労務賃貸借とは、奴隷所有者がその奴隷を「使って下さい」と貸し出すように、自己労務所有者がそれを「使って下さい」と貸し出すという法的構成で、その意味では奴隷制と連続的な面があります。しかし、いうまでもなく最大の違いは、奴隷制においては奴隷主と奴隷は全く分離しているのに対し、労務賃貸借においては同一人物の中に存在しているという点です。つまり、労働者は労務賃貸人という立場においては労務賃借人と全く対等の法的人格であって、取引主体としては(奴隷主)と同様、自由人であるわけです。

この発想が近代民法の原点であるナポレオン法典に盛り込まれ、近代日本民法も基本的にはその流れにあることは、拙著でも述べたとおりです。

このように労務賃貸借としての雇用契約は、法的形式としては奴隷制の正反対ですが、その実態は奴隷のやることとあまりかわらないこともありうるわけですが、少なくとも近代労働法は、その集団的労使関係法制においては、取引主体としての主体性を集団的に確保することを目指してきました。「労働は商品ではない」という言葉は、アメリカにおける労働組合法制の歴史を学べばわかるように、特別な商品だと主張しているのであって、商品性そのものを否定するような含意はなかったのです。

労務賃貸借を賃金奴隷制と非難していた人々が作り出した体制が、アジア的専制国家の総体的奴隷制に近いものになったことも、示唆的です。

一方、ゲルマンの忠勤契約は日本の中世、近世の奉公契約とよく似ていて、オットー・ブルンナー言うところの「大いなる家」のメンバーとして血縁はなくても家長に忠節を尽くす奉公人の世界です。家長の命じることは、どんな時でも(時間無限定)、どんなことでも(職務無限定)やる義務がありますが、その代わり「大いなる家」の一員として守られる。

その意味ではこれもやはり、取引の客体でしかないローマ的奴隷制とは正反対であって、人間扱いしているわけですが、労務賃貸借において最も重要であるところの取引主体としての主体性が、身分法的な形で制約されている。妻や子が家長の指揮監督下にある不完全な自由人であるのと同様に、不完全な自由人であるわけです。

ドイツでも近代民法はローマ法の発想が中核として作られましたが、ゲルマン的法思想が繰り返し主張されたことも周知の通りです。ただ、ナチス時代に指導者原理という名の下に過度に変形されたゲルマン的雇用関係が強制されたこともあり、戦後ドイツでは契約原理が強調されるのが一般的なようです。

日本の場合、近世以来の「奉公」の理念もありますが、むしろ戦時中の国家総動員体制と終戦直後のマルクス主義的労働運動の影響下で、「家長」よりもむしろ「家それ自体」の対等なメンバーシップを強調する雇用システムが大企業中心に発達しました。その意味では、中小零細企業の「家長ワンマン」型とはある意味で似ていながらかなり違うものでもあります。

以上を頭に置いた上で、上記ヨニウム氏とイケノブ氏の情緒的非難を見ると、それぞれにそう言いたくなる側面があるのは確かですが、そこだけ捕まえてひたすらに主張するとなるとバランスを欠いたものとなるということが理解されるでしょう。

ただ、ローマ法、西洋法制史、日本法制史といった基礎法学の教養をすべての人に要求するのもいかがなものかという気もしますし、こうして説明できる機会を与えてくれたという意味では、一定の意味も認められないわけではありません。

ただ、ヨニウム氏にせよ、イケノブ氏にせよ、いささか不思議なのは、理屈の上では主敵であるはずのそれぞれジョブ型そのものやメンバシップ型そのものではなく、その間の「ほどほどのメンバーシップとほどほどのジョブ」(@本田由紀氏)からなる「ジョブ型正社員」に異常なまでの憎悪と敵愾心をみなぎらせているらしいことです。

そのメカニズムをあえて憶測すればこういうことでしょうか。

ヨニウム氏にとっては、(イケノブ氏が奴隷と見なす)メンバーシップ型こそが理想。

イケノブ氏にとっては、(ヨニウム氏が奴隷と見なす)ジョブ型こそが理想。

つまり、どちらも相手にとっての奴隷像こそが自分の理想像。

その理想の奴隷像を不完全化するような中途半端な「ジョブ型正社員」こそが、そのどちらにとっても最大の敵。

本田由紀さんや私が、一方からはジョブ型を理想化していると糾弾され、もう一方からはメンバーシップ型を美化していると糾弾されるのは、もちろん人の議論の理路を理解できない糾弾者のおつむの程度の指標でもありますが、それとともに理解することを受け付けようとしないイデオロギー的な認知的不協和のしからしむるところなのでもありましょう。

あらぬ流れ弾が飛んでこないように(いや、既に飛んできていますが)せいぜい気をつけましょうね。

結論としては、まことに表層的な情緒論を振り回すヨニウム氏やイケノブ氏と違い、稲葉振一郎さんがローマ法、西洋法制史、日本法制史といった基礎法学の教養をきちんと踏まえて議論を展開しているところが立派である、ということになりましょうか。

 

給特法改正案による公立学校教員専用の1年単位の変形労働時間制の条文復元

10月18日にいわゆる給特法、正式には「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の一部改正案が国会に提出されました。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/10/18/1421396_03.pdf

指針の策定の条文はそのまま読めばわかるのですが、

(教育職員の業務量の適切な管理等に関する指針の策定等)
第七条 文部科学大臣は、教育職員の健康及び福祉の確保を図ることにより学校教育の水準の維持向上に資するため、教育職員が正規の勤務時間及びそれ以外の時間において行う業務の量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針(次項において単に「指針」という。)を定めるものとする。
2 文部科学大臣は、指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

その前の公立学校教員専用の1年単位の変形労働時間制を設ける部分は、これはもう法制執務の専門家でないと解読できないような代物なので、

第五条中「、」とあるのは「」の下に「第三十二条の四第一項中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは」とあるのは「次に掲げる事項について条例に特別の定めがある場合は」と、「その協定」とあるのは「その条例」と、「当該協定」とあるのは「当該条例」と、同項第五号中「厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、同条第二項中「前項の協定で同項第四号の区分をし」とあるのは「前項第四号の区分並びに」と、「を定めたときは」とあるのは「について条例に特別の定めがある場合は」と、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得て、厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、同条第三項中「厚生労働大臣は、労働政策審議会」とあるのは「文部科学大臣は、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるもの」と、「厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、「協定」とあるのは「条例」と、同法」を加え、「同項」を「同法第三十二条の四第一項から第三項まで及び第三十三条第三項」に改め、「、」と、「」の下に「から」を加え、「第三十二条の五まで、」を「、第三十二条の三の二、第三十二条の四の二、第三十二条の五、」に改める。

これを少しずつ読み解いていきましょう。

まずもって、この給特法改正案でもって改正された給特法の規定はこうなります。

(教育職員に関する読替え)
第五条 教育職員については、地方公務員法第五十八条第三項本文中「第二条、」とあるのは「第三十二条の四第一項中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは」とあるのは「次に掲げる事項について条例に特別の定めがある場合は」と、「その協定」とあるのは「その条例」と、「当該協定」とあるのは「当該条例」と、同項第五号中「厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、同条第二項中「前項の協定で同項第四号の区分をし」とあるのは「前項第四号の区分並びに」と、「を定めたときは」とあるのは「について条例に特別の定めがある場合は」と、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得て、厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、同条第三項中「厚生労働大臣は、労働政策審議会」とあるのは「文部科学大臣は、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるもの」と、「厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、「協定」とあるのは「条例」と、同法第三十三条第三項中「官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)」とあるのは「別表第一第十二号に掲げる事業」と、「労働させることができる」とあるのは「労働させることができる。この場合において、公務員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならない」と読み替えて同法第三十二条の四第一項から第三項まで及び第三十三条第三項の規定を適用するものとし、同法第二条、」と、「から第三十二条の五まで」とあるのは「、第三十二条の三の二、第三十二条の四の二、第三十二条の五、第三十七条」と、「第五十三条第一項」とあるのは「第五十三条第一項、第六十六条(船員法第八十八条の二の二第四項及び第五項並びに第八十八条の三第四項において準用する場合を含む。)」と、「規定は」とあるのは「規定(船員法第七十三条の規定に基づく命令の規定中同法第六十六条に係るものを含む。)は」と、同条第四項中「同法第三十七条第三項中「使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により」とあるのは「使用者が」と、同法」とあるのは「同法」と読み替えて同条第三項及び第四項の規定を適用するものとする。

いやいやこれまた素人さんには全然読めない条文ですね。

これは給特法で地方公務員法を読み替えている条文なので、これで読み替えられた地方公務員法の条文はこうなります。

(他の法律の適用除外等)
第五十八条 ・・・
3 労働基準法第三十二条の四第一項中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは」とあるのは「次に掲げる事項について条例に特別の定めがある場合は」と、「その協定」とあるのは「その条例」と、「当該協定」とあるのは「当該条例」と、同項第五号中「厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、同条第二項中「前項の協定で同項第四号の区分をし」とあるのは「前項第四号の区分並びに」と、「を定めたときは」とあるのは「について条例に特別の定めがある場合は」と、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得て、厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、同条第三項中「厚生労働大臣は、労働政策審議会」とあるのは「文部科学大臣は、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるもの」と、「厚生労働省令」とあるのは「文部科学省令」と、「協定」とあるのは「条例」と、同法第三十三条第三項中「官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)」とあるのは「別表第一第十二号に掲げる事業」と、「労働させることができる」とあるのは「労働させることができる。この場合において、公務員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならない」と読み替えて同法第三十二条の四第一項から第三項まで及び第三十三条第三項の規定を適用するものとし、同法第二条、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三、第三十二条の三の二、第三十二条の四の二、第三十二条の五、第三十七条、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第六項から第八項まで、第四十一条の二、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定、労働安全衛生法第六十六条の八の四及び第九十二条の規定、船員法(昭和二十二年法律第百号)第六条中労働基準法第二条に関する部分、第三十条、第三十七条中勤務条件に関する部分、第五十三条第一項、第六十六条(船員法第八十八条の二の二第四項及び第五項並びに第八十八条の三第四項において準用する場合を含む。)、第八十九条から第百条まで、第百二条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定(船員法第七十三条の規定に基づく命令の規定中同法第六十六条に係るものを含む。)は、職員に関して適用しない。ただし、労働基準法第百二条の規定、労働安全衛生法第九十二条の規定、船員法第三十七条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、地方公共団体の行う労働基準法別表第一第一号から第十号まで及び第十三号から第十五号までに掲げる事業に従事する職員に、同法第七十五条から第八十八条まで及び船員法第八十九条から第九十六条までの規定は、地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)第二条第一項に規定する者以外の職員に関しては適用する。
4 職員に関しては、労働基準法第三十二条の二第一項中「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は」とあるのは「使用者は、」と、同法第三十四条第二項ただし書中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは」とあるのは「条例に特別の定めがある場合は」と、同法第三十九条第四項中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより」とあるのは「前三項の規定にかかわらず、特に必要があると認められるときは、」とする。

うぎゃあ、これまた労働基準法を地方公務員法で読み替えている規定なんですね。でも、ようやくここまで来ました。これであと一段階進むと、ようやくめざす何段階ものカギカギ条文でぐちゃぐちゃに読み替えられた労働基準法の条文が姿を現すのです。それは地方公務員法自体が結構読替をやっているので相当膨大なので、ここでは今回の給特法の改正に係る1年単位の変形労働時間制のところだけ読み替え後の条文を挙げておきますね。

第三十二条の四 使用者は、次に掲げる事項について条例に特別の定めがある場合は、第三十二条の規定にかかわらず、その条例で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該条例(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月を超え一年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
三 特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第三項において同じ。)
四 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を一箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)
五 その他文部科学省令で定める事項
2 使用者は、前項第四号の区分並びに当該区分による各期間のうち最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間について条例に特別の定めがある場合は、当該各期間の初日の少なくとも三十日前に、文部科学省令で定めるところにより、当該労働日数を超えない範囲内において当該各期間における労働日及び当該総労働時間を超えない範囲内において当該各期間における労働日ごとの労働時間を定めなければならない。
3 文部科学大臣は、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴いて、文部科学省令で、対象期間における労働日数の限度並びに一日及び一週間の労働時間の限度並びに対象期間(第一項の条例で特定期間として定められた期間を除く。)及び同項の協定で特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度を定めることができる。
4 第三十二条の二第二項の規定は、第一項の協定について準用する。

はい、見事に過半数組合又は過半数代表者との協定が姿を消し、条例で1年単位の変形労働時間制がやれるという条文が姿を現しました。

あれ?1項読み替え忘れているんじゃないかと思ったあなた。なぜ第4項だけ「協定」が残っているんだ、これも「条例」に読み替えないといけないんじゃないかと思ったあなた。まだまだ考えが浅いです。

労働基準法第32条の2第2項とはこういう規定なんです。

2 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

上記のとおり、今回の教員専用変形労働時間制は、厚生労働省の権限を総て文部科学省に読み替えているのですが、条例は届け出なくてもいいよ、という趣旨で、わざとここだけ協定のままにしているんですね。なかなかディープな世界です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年10月18日 (金)

周燕飛『子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2018(第5回子育て世帯全国調査)』

Chou JILPTの調査シリーズとして、周燕飛さんの『子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2018(第5回子育て世帯全国調査)』が出ました。

https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/192.html

記者発表資料も公表されているので、そちらの方がわかりやすいと思います。

https://www.jil.go.jp/press/documents/20191017.pdf

主な事実発見は:

■母子世帯の貧困率は5割超え、13%が「ディープ・プア」世帯

可処分所得が厚生労働省公表の貧困線を下回っている世帯の割合は、母子世帯では51.4%、父子世帯では22.9%、ふたり親世帯では5.9%となっている。可処分所得が貧困線の50%を満たない「ディープ・プア(Deep Poor)」世帯の割合は、母子世帯が13.3%、父子世帯が8.6%、ふたり親世帯が0.5%である

■子どもが小さい家庭よりも、子どもが大きい家庭の母子世帯は困窮している

母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど、経済的困窮度が高い。暮らし向きが「大変苦しい」と回答した母子世帯の割合は、末子が「0~5歳」層では21.4%、「6~11歳」層では23.0%、「12~14歳」層では27.9%、「15~17歳」層では29.4%となっており、末子の年齢上昇とともに、経済的困窮を感じている世帯の割合が上昇傾向にある。

■父親の就業時間が60時間超えの場合、母親のフルタイム就業率が顕著に低下

ふたり親世帯の場合、夫の週あたり就業時間が60時間を超えると、妻のフルタイム(FT)就業率が顕著に低下する。夫の週あたり就業時間が60時間以下であれば、妻のFT就業率がおおむね4割前後で推移しているのに対して、60時間を超えると、妻のFT就業率が3割に急落している

■離別父親の44%は子どもとの交流が「全くない」

過去の1年間、非同居父親と子どもとの面会や会話等交流の頻度は、「年に数回以上」の割合は、母子世帯の離別父親が37.3%、ふたり親世帯の単身赴任父親が93.8%である。離別父親の44.2%は子どもとの交流が「全くない」状態であり、そのうち離婚5年以上の離別父親の半数以上(51.6%)が子どもと交流なしの状態である。

■母子世帯では娘よりも息子は学業不振が深刻

小中高校生の第1子が学校での学業成績が「(まあまあ)良好」(4点以上)である割合は、母子世帯33.0%、父子世帯36.7%、ふたり親世帯46.0%である。ふたり親世帯の場合、4点以上の良い学業成績を挙げている子どもの割合は、小学生も中高生も、男子(息子)も女子(娘)も同じく4~5割程度となっている。一方、母子世帯の場合、娘は息子より学業成績が明らかに良い。その差は小学生の段階では5ポイントほどであるが、中高生の段階になると18ポイントまでに広がっている。

■「金銭的支援」の拡充を望むふたり親世帯が増加し、全体の8割弱に

育児と就業を両立する上で、拡充してほしい公的支援についてたずねると、「児童手当の増額」、「乳幼児医療費助成期間の延長」、「職業訓練を受ける際の金銭的援助」、「年少扶養控除の復活」といった「金銭的援助」の拡充を望む保護者がもっとも多く、そのいずれかを選択した保護者の割合は、母子世帯79.2%、父子世帯76.9%、ふたり親世帯78.6%となっている。ふたり親世帯は「金銭的支援」を選ぶ割合が、前回調査より5ポイントも上昇し、母子世帯と並ぶ8割前後の水準となっている。

さて、周さんは既にご案内している11月5日の労働政策フォーラム(女性のキャリア形成を考える─就業形態・継続就業をめぐる課題と展望─)で、「子育て女性の就業状況─子育て世帯全国調査結果から─」という報告をする予定です。

つまり、この資料シリーズはそのための学習指定文献(笑)になりますので、ご参加されようと思う方々は是非ダウンロードして目を通しておくとよろしいかと思います。

https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20191105/index.html

 

Women

 

秋元樹『労働ソーシャルワーク』

480479 秋元樹『労働ソーシャルワーク』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.junposha.com/book/b480479.html

日本のソーシャルワークとその研究の悲劇は近年「労働」をいずこかへ置き忘れてきたことであり、日本の「労働」、労働組合とその研究の悲劇は「ソーシャルワーク」の目を全く持たずにきたことだろう。
その「ツケ」は日本の労働者が負うことになった。

本書は1970年代末から2000年のはじめにかけて日本のソーシャルワークおよび労働の研究・実践コミュニティに
アメリカの現場から送り続けられたメッセージの記録である。

かつては「社会政策」という一つ屋根の下のいたはずの労働と福祉が、いつの間にか疎遠になり、別々の道を歩み続けてきて、ようやく近年になって両者のつながりが重視され始めていますが、本書の著者である秋元さんは1970年代からアメリカに照準を合わせて、この問題を問い続けてきたのですね。

序章 労働者福祉論のススメ
第1章 「労働ソーシャルワーク」とは何か
第2章 失業
第3章 「働く貧乏人」
第4章 「生活できる賃金を」
第5章-Ⅰ 仕事か命か/労災・職業病
第5章-Ⅱ “NPO” COSH(労働安全衛生会議)の組織と活動
第6章-Ⅰ 職場における差別・人権
第6章-Ⅱ セクシュアル・ハラスメント
第7章 「先進国」における児童労働
第8章 障害を持つ労働者の雇用と労働組合
第9章-I 高齢労働者と国家政策
第9章-Ⅱ アメリカの労働組合は中高年組合員のために何をしているか
第10章 労働者の抱える問題と労働相談
第11章-I 資本は勝手に動いてよいわけではない
第11章-Ⅱ 労働問題紛争の国境を越えた新たな解決モデル/NAALC(北米労働協力協定)
第12章-I あるソーシャル・ユニオン―LOCAL1199
第12章-Ⅱ 労働組合とソーシャルワーク
補章 ごく普通の働く労働者の抱える悩み・問題―500人インタビュー調査(日本) 

最後の12章の「労働組合とソーシャルワーク」の冒頭にこういう言葉があります。なかなかじわりときます。

労働組合とソーシャルワークはときには極めて類似しているように見える。ときには極めて異なっているように見える。

両者は人間、特に社会の下層の人々にかかわり、その問題解決、地位向上に努める。少なくとも歴史的にはそうであった。そして、後には双方とも、「中流」、より所得の高い階層にまでその翼を伸ばす。両者はしばしば同じ「言葉」すら用いる-尊厳、社会的正義、公正、平等・差別、人権、福祉の増進、大義、社会変革。であるが故に、両者は今日までその歴史の中にあってしばしば同じゴールに向かって協働してきた。社会立法の制定はその典型である。しかし、両者はときには厳しく対立、敵対してきた。1910年代らか20年代の厚生資本主義における経験はその典型例である。ソーシャルワーカーは会社側スパイとしてすら働いた。・・・・

 

 

2019年10月17日 (木)

『ウォッチング労働法 第4版』

L24310 『ウォッチング労働法 第4版』(有斐閣)をお送りいただきました。第3版が2009年ですから、労働法の本にしては珍しく10年ぶりの改訂ということになります。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641243101?top_bookshelfspine

さてこの本、土田、豊川、和田という大御所の編著ですが、今回は多くの若手研究者が執筆陣に加わっています。

土田 道夫 (同志社大学教授),豊川 義明 (弁護士・関西学院大学教授),和田 肇 (名古屋大学名誉教授)/編著
天野 晋介 (首都大学東京准教授),石田 信平 (専修大学教授),金井 幸子 (愛知大学准教授),坂井 岳夫 (同志社大学准教授),篠原 信貴 (駒澤大学教授),本庄 淳志 (静岡大学准教授),山川 和義 (広島大学教授),山本 陽大 (労働政策研究・研修機構研究員)

こういう面々がどういうトピックを取り上げているかは、本屋でめくってみてください。

ちなみに、山本陽大さんが書いている31番目の項目「労働組合」は、設例の冒頭の記述に思わず吹き出してしまいました。

Y研究所は、雇用・労働問題について調査・研究を行う民間シンクタンクであり、Z労働組合はY研究所の企業内労働組合である。・・・

ふむ、雇用・労働問題を調査研究している「民間の」シンクタンクって、一体どこにあるんでしょうか・・・・?

も一つ、やはり山本さんが執筆している34番目の項目「労働協約の変更と終了」の設例の冒頭は、

Y社は、東京都N区に甲事業所を構える学術書の出版社である。Y社甲事業所には、従業員の80%が加入するX労働組合と、従業員の5%が加入しているZ労働組合がある。・・・・

ふむ、「学術書の出版社」ねえ。「ここ数年で売り上げが激減し、年間数千万円の営業赤字を出し続け、累積赤字も増加し続けた」。いやいや、なんでもありません。

 

 

2019年10月13日 (日)

日本労働法学会第136回大会@立命館大学

さて、昨日予定されていた諸学会は超大型台風で中止延期を余儀なくされたようですが、来週の土日に予定されている日本労働法学会第136回大会は、(多分)予定通り立命館大学衣笠キャンパスで開催される予定です。

https://www.rougaku.jp/contents-taikai/136taikai.html

<1日目・土曜日>
受付開始 11:15〜
個別報告 12:00〜13:00
第一会場 *明学館MG202(2階)
テーマ「ドイツ法における管理職労働者に関する解雇規制」
報告者:稲谷 信行(京都大学)
司 会:村中 孝史(京都大学)
第二会場 *明学館MG301(3階)
テーマ「家事使用人の労働条件保護はどのようになされるべきか
――台湾における家事労働者への労働法適用をめぐる議論の検討をとおして」
報告者:根岸 忠(高知県立大学)
司 会:浜村 彰(法政大学)

第三会場 *明学館MG401(4階)
テーマ「イギリス最低賃金法の研究――全国一律額方式の実現とその後」
報告者:藤井 直子(大妻女子大学)
司 会:浅倉 むつ子(早稲田大学名誉教授)

ワークショップ 第1部13:20~15:20 第1部15:40~17:40
第一会場 *明学館MG202(2階)
テーマ「労働法学は労働法の歴史から何を学ぶか?」
司 会:石田 眞(早稲田大学名誉教授)
報告者:濱口 桂一郎(労働政策研究・研修機構),石井 保雄(独協大学)

テーマ「割増賃金をめぐる最近の法律問題――最近の最高裁判決を素材に」
司 会:浜村 彰(法政大学)
報告者:渡辺 輝人(弁護士)
コメンテーター:小鍛冶 広道(弁護士)
第二会場 *明学館MG301(3階)
テーマ「労働契約法20条に関する最高裁二判決の検討」
司 会:細川 良(青山学院大学)
報告者:沼田 雅之(法政大学),井川 志郎(山口大学)
テーマ「顧客等によるハラスメントと法的課題」
司 会:古川 景一(弁護士), 川口 美貴(関西大学)
報告者:松井 健(UAゼンセン政策労働条件局長), 大塚 達生(弁護士)
第三会場 *明学館MG401(4階)
テーマ「ギグエコノミー下の就労者に対する法的保護について」
司 会:水口 洋介(弁護士)
報告者:菅 俊治(弁護士),川上 資人(弁護士)
コメンテーター:本久洋一(國學院大學)
テーマ「働き方の多様化と労働法・経済法の役割」
司 会:荒木 尚志(東京大学)
報告者:桑村 裕美子(東北大学),多田 敏明(弁護士)
第四会場 *明学館MG402(4階)(13:20~15:20)
テーマ「解雇規制の在り方を考える
――解雇無効ルールと金銭解決ルールの比較――」
司 会:土田 道夫(同志社大学)
報告者:大内 伸哉(神戸大学)
コメンテーター:小西 康之(明治大学),徳住 堅治(弁護士), 山口 浩一郎(上智大学名誉教授)
懇親会 18:00~20:00

(以上、敬称略)
<2日目・日曜日>
受付開始 8:45〜
大シンポジウム報告 9:30~12:00
統一テーマ:「労働契約における規範形成のあり方と展望」
報告:
1.野田進(九州大学名誉教授)
「本シンポジウムの趣旨」
2. 大澤 彩(法政大学)
「契約内容規制と契約当事者間の交渉力不均衡――民法・消費者法と労働法――」
3. 皆川 宏之(千葉大学)
「ドイツ法における普通取引約款規制と労働契約」
4. 龔 敏(久留米大学)
「イギリスにおける労働契約の内容規制」
開催校挨拶・総会(学会奨励賞審査結果報告) 12:00~12:20
休憩・昼食 12:20~13:00
総会(学会奨励賞審査結果報告以外の議題) 13:00~13:30
特別講演 13:35~14:25
毛塚勝利会員「戦後労働法学の批判と継承——日本労働法学の自画像をどう描くか」
大シンポジウム報告・討論 14:30~18:30
報告:
5. 本庄 淳志(静岡大学)
「労契法7条による契約上の規範形成と制約のあり方」
6. 高橋 賢司(立正大学)
「労働契約上の合意と一方的決定に対する制約法理」

415835 初日のワークショップはいろいろと面白そうなテーマがあって、私も自分が報告者でなければほかの会場にを聞きに行きたいようなのもあるんですが、一応、第1会場の第1部で、「労働法学は労働法の歴史から何を学ぶか?」というなんだかやたらにでかいテーマで報告しなければいけないので、もしそういうテーマに関心があるような奇特な方がおられれば、聞きにきていただければ幸いです。

427925 報告者のうち、私は昨年『日本の労働法政策』を、石井さんは『わが国労働法学の史的展開』を上梓し、そして司会の石田さんは自ら1章執筆されている『戦後労働立法史』が古稀記念論集として刊行されていまして、これらの本を読まれた方々にとっては、その歴史観の絡み合いが見どころかもしれません。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-df2d.html (石井保雄『わが国労働法学の史的展開』 )

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-c238.html(島田陽一・菊池馨実・竹内(奥野)寿編著『戦後労働立法史』)

 

霞が関のワークライフバランス

超大型台風が刻一刻と迫る中で、永田町と霞が関の間でこういう一幕があったようですが、

https://www.sankei.com/politics/news/191012/plt1910120002-n1.html (森裕子議員、質問通告遅れる? 省庁深夜残業か 本人は否定)

事実関係はこの記事以上のことはわかりませんが、一般論として言えば、いままで彼らにもワークライフバランスがあるなどと考えられもしなかったさまざまな職業の人々が、実は自分たちも守るべき生活というものがあるのだ、滅私奉公が当たり前ではないのだと声を上げ始めたということ自体は、世の中が少しずつでも良い方向に向かい始めたしるしとして評価してしかるべきだと思います。少なくとも、「保育所落ちた、日本死ね」を評価する側の人であるならば。

 

 

2019年10月10日 (木)

第106回労働政策フォーラム「女性のキャリア形成を考える」

来る11月5日、TKPガーデンシティPREMIUM神保町で第106回労働政策フォーラム「女性のキャリア形成を考える-就業形態・継続就業をめぐる課題と展望─」を開催します。基調講演は、このたび労働関係図書優秀賞を受賞された脇坂明さん、研究報告は最近『貧困専業主婦』を刊行した(今朝の朝日新聞にもでかでかと載っていましたね)周燕飛さんです。

事例報告は3社、というか2社1団体を予定しているんですが、現時点では三州製菓さんと他2社を予定となっています。

パネルディスカッションは不肖私がコーディネータをやりますが、さてどういう方向に転がっていきますか。

Women

2019年10月 9日 (水)

経営法曹会議編『続 解雇・退職の判例と実務』

08271809_5d64f34c73b7f 本日、経営法曹会議の創立50周年記念パーティがあり、そこで経営法曹会議編『続 解雇・退職の判例と実務』(第一法規)をいただきました。

https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/103694.html

解雇、雇止めなど、弁護士の関心が高い実務上の重要論点を収録。テーマごとに、近年の実務動向や重要判例を解説する。経営法曹会議の全国の会員が執筆を担当。

内容は以下の通りですが、冒頭のまえがきを大阪の松下守男さんが書かれていて、これがなかなか壮大な構図を掲げています。

・・・それは、半世紀以上にわたって使ってきた日本独特の雇用システム(20世紀型雇用システム)が新たなものに変わっていくための試行錯誤の日々であったということができます。

この20年のうちに、なじみの雇用システムが、いまだその姿は見えてこないものの、ヴァージョン・アップしようとしているのではないでしょうか。現在の「働き方改革」も大きくはこのような流れの中に位置づけて考えるのが適当であると思われます。・・・

 

解雇権濫用法理……………………………………勝井 良光

採用内定・試用期間………………………………西脇 明典

有期労働契約における雇止め……………………杉原 知佳

退職の意思表示……………………………………三上 安雄

退職勧奨,希望退職………………………………小鍛冶 広道

定年,定年後再雇用………………………………岡崎 教行

無断欠勤・行方不明………………………………木村 恵子

問題社員への対応…………………………………山田 洋嗣

能力不足・勤務成績不良…………………………平越 格

メンタルヘルス不調………………………………増田 陳彦

労働能力低下,アスペルガー症候群,障害……爲近 幸恵

休職…………………………………………………川端 小織

労災,打切補償……………………………………山中 健児

懲戒処分の手続の相当性…………………………永原 豪

私行上の非行と懲戒処分…………………………今津 幸子

セクハラ,パワハラ,マタハラ…………………竹林 竜太郎

企業組織変動………………………………………田中 勇気

労働契約承継………………………………………高仲 幸雄

グループ企業間の出向・転籍……………………野口 大

整理解雇……………………………………………冨岡 俊介

 

 

2019年10月 8日 (火)

小田勇樹『国家公務員の中途採用』

71zrirsqful 小田勇樹さんより『国家公務員の中途採用 日英韓の人的資源管理システム』(慶應義塾大学出版会)をお送りいただきました。

http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766426328/

 独自に収集した海外の職歴データを基に、キャリアパスの実態や組織業績への影響を分析。民間任用者の有効活用策を国際比較から探り、「働き方改革」時代の公務員の人材登用に示唆を与える。

内部育成か、中途採用か――。

日本を含め、各国で導入が進んでいる民間出身者の中途採用。
では、彼らはどのような仕事を、どのポストで行っているのだろうか。組織の業績を高めているのだろうか。
職務基準による採用・育成の問題点を指摘し、「成功する民間登用」へのカギを探る。

先日本ブログで紹介した小熊英二さんの『日本社会のしくみ』は概ね現段階の日本型雇用システム論のもっとも良い概説書になっていますが、その中で(本人もいうように)他の論者があまり言及しない公的部門の人事管理をかなり詳しく取り上げ、その影響を論じている点が一つの特色でした。

その公的部門の人事管理に焦点を絞って、キャリアシステムとポジションシステムというモデルを使って分析しているのが本書です。キャリアシステムとは、キャリア早期に採用した職員を内部育成し、上級職の職位を内部昇進者で閉鎖的に充足する公務員制度であり、ポジションシステムとは、組織に空位が生じると組織内外での公募を通じて任用を行い、上級職の職位に対して外部からの中途採用もあり得る公務員制度です。

というとわかるように、これは雇用システム論でいうメンバーシップ型とジョブ型に対応した概念ですね。

本書はこの枠組みを用いて、建前上はポジションシステムである韓国とイギリスの実態を調べ、韓国が現実には開放型職位のほとんどを政府内出身者を充て手織り、キャリアシステムと変わらない運用実態であることを示します。

我々のような労働問題に関心を持つ立場からすると、近年日本でも拡大しつつあるとされる国家公務員の中途採用を含む働き方改革をめぐって論じられている第9章が興味深い部分です。

第9章 日本の国家公務員制度の変化と働き方改革の動向
 1 日本の国家公務員制度に対する分析視角
 2 中途採用経路の増加
 (1) 人事院規則1-24に基づく中途採用
 (2) 任期付職員法に基づく中途採用
 (3) 任期付研究員法による採用
 (4) 経験者採用試験
 (5) 官民人事交流
 (6) イギリスにおける中途採用との比較
 3 昇進管理の変化
 4 給与システムの変化
 5 職務区分のあり方
 6 近年の公務員制度改革の影響
 7 日本型雇用と働き方改革
 8 働き方改革の方向性
 9 霞が関における働き方改革
 10 働き方改革と最大動員システムの行く末

このうち、とりわけ「9 霞が関における働き方改革」は、ここだけでも是非立ち読みする値打ちがあります。

近年の公務員制度に関する諸改革は、外観上さまざまな試みがなされているようにも捉えられるが、その基盤には日本型雇用システムの働き方が根幹の大前提として存在しており、枝葉の部分に手が加えられてきた。・・・・

・・・また、取組み事項の中の「機動的人員配置による業務負荷集中の回避」は注目に値する。柔軟な人員配置による生産性の向上は、職務の定めがない日本型雇用システムの特色を活かしたもんである。余裕のある職員を負担の大きな業務の応援に充てることで、組織全体の業務負担の平準化がなされており、最大動員システムの特徴が存分に発揮されている。日本型雇用システムを脱却する働き方改革の一環でありながら、日本型雇用システムを基盤とした取組みであるといえる。本取組みの成果は短期的視点から見れば大変評価すべきものである。ただし、長期的視点から見た場合、このような形で執務形態の日本型雇用システムへの最適化が強化され、最大動員による生産性が極限まで高められると、システムからの脱却がさらに困難となることは間違いない。・・・・

・・・日本型雇用システムの延長線上の改革という特徴がより顕著に表れている事例としては、総務省行政管理局によるオフィス改革が挙げられる。・・・・本事例はフリーアドレスの実現により、職場のフロアー全体を大部屋化しており、究極の大部屋主義ともいえる環境を構築している。・・・・大部屋主義化による業務の効率化は、日本型雇用システムの「あいまいな職務区分」をベースとした最大動員システムの進化形である。

このパラドックスはなかなかしんどいものがありますね。

 

 

 

 

 

2019年10月 7日 (月)

鶴光太郞編著『雇用システムの再構築に向けて』

08128 鶴光太郞編著『雇用システムの再構築に向けて』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8128.html

日本の雇用システムの根幹にある無限定正社員システム。その歴史、人事管理、賃金、労働時間はどうなっているか。打破する方策は?

131039145988913400963_20191007114901 さて、このタイトルを見て、なんだかどこかで見たようなタイトルだなあ、と思ったのですが、何のことはない、私の10年前の新書のサブタイトルでしたな。

さて、「再構築」されるべき「雇用システム」とは、いうまでもなく雇用契約の無限定性で特徴付けられる日本型雇用システムです。

RIETIのホームページに、鶴さんの紹介文が載っていますが、これが本書のメッセージを余すところなく伝えています。

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/archives/070.html

大企業を中心に働き方改革の「うねり」は更に勢いを増しながら広がっている一方で、企業間で働き方改革の取り組みに差もでてきています。その背景の一つには、これまでの日本的といわれてきた雇用・人事システムに対しての捉え方、課題、必要な改革についての大局的な視点が欠けていることが挙げられます。こうした認識の下で、本書では、日本の雇用システム全体をどのように再構築するべきかを鳥瞰しつつ、雇用システムの歴史的側面、人事管理システム、賃金システム、労働時間システム、教育システムについて、分析・提言を行っています。

今までの鶴さん編著のシリーズと同様、RIETIの労働市場制度改革プロジェクトの成果ですが、その完結編に当たるということです。

中身は以下の通りですが、

はじめに  鶴 光太郎

第1章 日本の雇用システムの再構築---総論  鶴 光太郎

第2章 日本の雇用システムの歴史的変遷---内部労働市場の形成と拡大と縮小   林真幸・森本真世

第3章 「新時代の日本的経営」の何が新しかったのか?---人事方針(HR Policy)変化の分析---  梅崎修・八代充史

第4章 転勤・異動・定年後雇用の実態  鶴 光太郎・久米功一 ・安井健悟 ・佐野晋平

第5章 ダイバーシティ経営と人事マネジメントの課題---人事制度改革と働き方の柔軟化  佐藤博樹

第6章 賃金プロファイルのフラット化と若年労働者の早期離職  村田啓子・堀雅博

第7章 雇用形態間の賃金格差 安井健悟 ・佐野晋平・久米功一・鶴 光太郎

第8章 日本型『同一労働同一賃金』改革とは何か?---その特徴と課題  水町勇一郎

第9章 労働者の健康向上に必要な政策・施策のあり方:労働経済学研究を踏まえた論考  黒田祥子・山本勲

第10章 労働時間法制改革の到達点と今後の課題  島田陽一

第11章 ”大学での専門分野と仕事との関連度”が職業的アウトカムに及ぼす効果---男女差に注目して---  本田由紀

第12章 寺院・地蔵・神社の社会・経済的帰結---ソーシャル・キャピタルを通じた所得・幸福度・健康への影響 伊藤高弘・大竹文雄・窪田康平

鶴さんの総論を初めとして、おおむね必要な各分野にわたって的確な各論が配置されているのですが、正直最後の第12章はなんだかよくわかりませんでした。いや、中身はなかなか面白いのですが、それが「雇用システムの再構築」とどう結びつくのかがよくわからなかったということです。

ついでながら、このプロジェクト自体には私は全く関わってはおりませんが、一度話を聞きたいというご依頼があり、虎ノ門の大同生命ビルに行ってお話しをさせていただいたことはあります。

 

 

 

2019年10月 3日 (木)

水町勇一郎『詳解 労働法』

457194 とてつもなく分厚いのが送られてきました。水町勇一郎さんの超絶テキスト『詳解 労働法』(東大出版会)です。

http://www.utp.or.jp/book/b457194.html

働き方のルールを定めた労働法制のすべてが分かる概説書.歴史的な経緯・成り立ちや理論的な考え方・筋道に根差して労働法の全体像を分かりやすく解き明かし,実務の世界で起こるさまざまな問題も解決に導く.「働き方改革」がはじまる時代に不可欠な知識を網羅した,働く人すべてに必携の決定版.

どれくらい分厚いかというと、物理的には拙著『日本の労働法政策』とほぼ同じくらいなんですが、

Image0_20191003090301

ページ数が、拙著が1074ページに対して、水町本は1429ページと、4割くらい多い。

いやいやそんなことよりも、中身も凄い。

目次は下にコピペしておきますが、これは世間の普通の労働法テキストとそれほど変わりません。

でもね、冒頭の第1章労働法の歴史の、第1節労働法生成の前史の最初のところが、こういう文章で始まるんですぜ。

・・・労働を統一した概念で捉えこれに国家が社会的な保護を与えるという近代的な意味での「労働法」は、産業革命後の資本主義経済の発展の中で生まれる。しかし、それ以前の社会においても、働くことに対して国家が規制を課すことがなかったわけではない。古代ローマにおける雇傭契約が奴隷の賃貸借に由来することと同様に、日本の古代から近世にかけての労働法は、人身売買または長期の人身拘束に対する規律を中心とするものであった。また、その下で、主人ト使用人(従者)との間の身分的または契約的な関係が形成され、法的な権利や義務が観念されることもあった。・・・・

そして、歴史叙述は「律令制下の労働関係」から始まり、そこで真っ先に参照されているのが、瀧川政次郎の『日本労働法制史研究』なんですな。これ、拙著の労働契約法政策の冒頭の所で参照している文献ですが、水町さん、そこまで目配りしてんだ、と。

そういうやや趣味的なトリビアは別としても、たとえば第10章非正規労働者の、パート、有期、派遣と来て、最後の第6節に「個人業務請負業者等をめぐる法的対応」という2ページばかりの節に、労働者性をめぐる諸問題を詰め込むだけでなく、JILPTの先日の雇用類似の働き方の者の数の推計値まで注で引用しているくらい、目配りが効いています。

第1編 総 論
第1章 労働法の歴史
 労働法生成の前史/戦前の労働関係と労働法/戦後の労働法制の確立と展開
第2章 「労働者」
 総説――「労働者」概念の意義と種類/労働基準法上の「労働者」/労働組合法上の「労働者」/労働契約(法)上の「労働者」
第3章 「使用者」
 総説――「使用者」概念の意義と種類/労働契約上の使用者/労働基準法上の使用者/労働組合法上の使用者――概要
第4章 強行法規
 労働関係を規律する法源(総論)/憲法,条約と労働法/労働法規の規制枠組
第5章 労働協約
 労働協約の意義と法的性質/労働協約の効力発生要件/労働協約の効力/労働協約の拡張適用(一般的拘束力)/労働協約の終了
第6章 就業規則
 就業規則の意義/就業規則の手続き――労基法上の作成・変更手続/就業規則の効力
第7章 労働契約
 労働契約の意義/労働契約の基本原則/労働契約の成立要件/労働契約の解釈枠組み/労働契約上の権利義務

第2編 個別的労働関係法
第8章 労働者の人権保障
 労働者の人権保障の経緯と背景/労働憲章/人格権の保護/内部告発の保護
第9章 雇用差別の禁止
 雇用差別禁止法制の状況/均等待遇原則(労基法3条)/男女賃金差別の禁止(労基法4条)/賃金以外の男女差別の禁止(男女平均取扱法理と男女雇用機会均等法など)/女性活躍推進法
第10章 非正規労働者
 日本における非正規労働者の状況/正規・非正規労働者間の待遇格差に関する学説・裁判例の展開/パートタイム労働者をめぐる立法――パートタイム・有期雇用労働法など/期間の定めのある労働契約をめぐる立法/労働者派遣をめぐる立法――職業安定法44条,労働者派遣法など/個人業務請負業者等をめぐる法的対応
第11章 労働関係の成立
 採用の自由/労働契約の成立と労働条件の明示/労働契約の締結過程――採用内定・採用内々定/試用期間
第12章 教育訓練
 教育訓練の概要と背景/教育訓練を命じる権利/教育訓練を受ける権利
第13章 昇進・昇格・降格
 人事考課(査定)/昇進・昇格・昇級/降格
第14章 配転・出向・転籍
 配転/出向・転籍
第15章 休職
 意義/法的規則
第16章 企業組織の変動
 合併/事業譲渡/会社分割/会社の解散
第17章 懲戒
 服務規律と「企業秩序」論/懲戒の意義と根拠/懲戒権の法的規制の枠組み/懲戒の種類/懲戒の事由
第18章 賃金
 賃金の形態と法制度/賃金請求権/賃金の法規制
第19章 労働時間
 労働時間規制の意義と展開/労働時間制度の基本的枠組み/労働時間制度の特則――労働時間の柔軟化
第20章 年次有給休暇
 年次有給休暇制度の意義と展開/年次有給休暇の権利の構造/年休権の発生/年休の時期の特定/年休の使途/年休取得に対する不利益取扱いと年休取得の妨害/年休権の消滅
第21章 労働安全衛生
 労働安全衛生法制の経緯と展開/労働安全衛生法の基本枠組み・性格/安全衛生管理体制/危険・健康障害の防止措置/機械・有害物等に関する規制/労働者の就業にあたっての措置/健康の保持増進のための措置/規制の実施方法
第22章 労働災害の補償
 労災補償制度の経緯と展開/労災保険制度――労災保険法による給付/労働災害と損害賠償――労災民訴/労災上積み補償制度
第23章 年少者の保護
 年少者保護の経緯/労働契約の締結に関する規制/賃金・労働時間に関する規制/安全衛生に関する規制/帰郷旅費
第24章 女性の保護(母性保護)
 女性保護政策の経緯と目的/危険有害業務・坑内業務の就業制限/産前産後の保護/育児時間/生理日の休暇
第25章 育児・介護等の支援
 育児介護休業法の意義と展開/育児を行う労働者の支援/介護を行う労働者の支援/育児・介護支援措置を理由とする不利益取扱いの禁止/育児・介護に関するハラスメントの防止措置義務/育児・介護支援措置に関する紛争解決制度/次世代育成支援――次世代育成支援対策推進法
第26章 外国人雇用
 外国人労働者の受入れ政策/外国人労働者への労働法等の適用
第27章 障害者雇用
 障害者雇用政策の経緯と展開/障害者雇用促進法の目的と枠組み/障害者雇用の促進/障害者差別の禁止
第28章 知的財産・知的情報の保護
 職務発明等と労働者の権利/労働者の秘密保持義務と競業避止義務
第29章 労働関係の終了
 解雇/辞職と合意解約/当事者の消滅/労働契約終了後の権利義務
第30章 高齢者・若者雇用
 高齢者雇用/若者雇用

第3編 集団的労働関係法
第31章 労働組合
 労働組合法制の経緯と枠組み/労働組合の類型と実態/労働組合の意義と要件/組合自治と法的規制/組合への加入・脱退・組織強制/労働組合の統制権/労働組合の組織の変動
第32章 団体交渉
 団体交渉の意義と機能/団体交渉の主体――「当事者」と「担当者」/団体交渉義務/団体交渉拒否の救済
第33章 団体行動
 団体行動の法的保護の枠組み/団体行動の正当性/正当性のない団体行動と法的責任/争議行為と賃金/使用者の争議対抗行為
第34章 不当労働行為
 不当労働行為制度の沿革と目的/不当労働行為の成立要件/不当労働行為の救済

第4編 労働市場法
第35章 雇用仲介事業規制
 雇用仲介事業規制の趣旨と経緯/職業紹介事業の規制/労働者の募集の規制/労働者供給事業の規制
第36章 雇用保険制度
 制度の背景と展開/制度の基本的枠組み/失業等給付/雇用保険二事業
第37章 職業能力開発・求職者支援
 背景と経緯/職業能力開発――職業能力開発促進法/求職者支援制度――求職者支援法
第38章 特定分野の雇用促進政策
 高年齢者の雇用促進――高年齢者雇用安定法/障害者の雇用促進――障害者雇用促進法/特定地域の雇用開発促進――地域雇用開発促進法/生活困窮者の自立支援――生活困窮者自立支援法/若者の雇用促進――若者雇用促進法

第5編 国際的労働関係法
第39章 適用法規と裁判管轄
 適用法規の決定/国際裁判管轄
第40章 国際労働基準
 国連条約/ILO条約

第6編 労働紛争解決法
第41章 行政による紛争解決
 企業内での紛争解決の意義と限界/行政による紛争解決制度の概要と経緯/都道府県労働局長による個別労働紛争の解決促進/労働委員会による紛争解決
第42章 裁判所による紛争解決
 裁判所による紛争解決制度の概要と経緯/労働審判/民事通常訴訟/保全訴訟/少額訴訟/民事調停

 

 

 

 

2019年10月 2日 (水)

有償ボランティアの労働者性@WEB労政時報

WEB労政時報に「有償ボランティアの労働者性」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/article.php?entry_no=76800

  去る9月27日に労政審雇用対策基本問題部会が開催され、いよいよ70歳までの就業機会確保対策の議論が始まりました。これは既に6月21日に閣議決定された成長戦略実行計画にかなり詳しいところまで明記されている政策ですが、そこに示されている70歳までの雇用就業メニューには、これまでの高齢者雇用就業政策の枠をはみ出すものも含まれています。
(a)定年廃止
(b)70歳までの定年延長
(c)継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)
(d)他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現
(e)個人とのフリーランス契約への資金提供
(f)個人の起業支援
(g)個人の社会貢献活動参加への資金提供
 (a)から(c)まではこれまでの高年齢者雇用確保措置(高年齢者雇用安定法9条)、(d)は再就職援助措置(同法15条)で、ここまでは雇用労働です。(e)は近年話題の雇用類似の働き方で、(f)はより独立性の高い自営業でしょうが、いずれも市場交換原理に基づく非雇用労働です。ここまでは就業機会の確保という言葉が当てはまります。
ところがこのリストには、その先の(g)に「社会貢献活動」という言葉が出てくるのです。いわゆるボランティアです。ボランティアまでが就業機会の確保に含まれるというのは、いささか違和感のある言葉遣いです。・・・・・

 

小野寺忠昭・小畑精武・平山昇『時代へのカウンターと陽気な夢』

N190930_2 一昨日、JILPT主催の労働政策フォーラム「労働時間・働き方の日独比較」が開催され、私も総括討論のパネリストとしてちょびっと登場したのですが、

https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20190930/index.html

その様子はアドバンスニュースで報じられていますが、

https://www.advance-news.co.jp/news/2019/09/post-2907.html

・・・パネルディカッションでは、佐藤教授をコーディネーターに、日独両国で注目されている「モバイル勤務」で意見交換。濱口桂一郎同機構研究所長が「日本では仕事と生活の境界が曖昧になり、長時間労働の歯止めが掛からなくなる可能性がある」と指摘。これに対して、デュベル氏は「健康管理上から労働時間の限度を決める必要はある」と述べたが、この日の主要テーマだった「日独比較」は時間切れに終わった。

Isbn9784784513659 実はこの場で、情況出版の服部さんから本を頂きました。それが小野寺忠昭・小畑精武・平山昇『時代へのカウンターと陽気な夢 労働運動の昨日、今日、明日 』(社会評論社)なんですが、

http://www.shahyo.com/mokuroku/gendai_shahyo/labor/ISBN978-4-7845-1365-9.php

23人の執筆陣が自らの運動体験を省みて、明日に向かって<陽気な夢>の弾丸を撃つ!自主生産と地域ユニオンによるコミュニティ型労働組合の形成へ。

正直、かつては若かった老人たちが昔の活躍ぶりを語り合っている感があって、副題に引っかけていうと、「昨日」の話が「今日」や「明日」につながっていないような感がありました。

いや、服部さんが言うように、「僕のような労働運動史好きからすると、これほど貴重な本は最近だと珍し」いのかもしれませんし、「かつての総評運動についてその担い手たちがどうかんがえているのか・・・是非ご見解をお聞かせ願いたい」という要望にもお応えしたいのですが、でも正直そこで語られる運動の周辺的過ぎて、あまりコメントが浮かんでこないんです。たとえば、東京総行動が重要な役割を担ってきたという文章がありますが、正直労働関係者の中でもほとんど知られていないのではないかと思います。

というだけでは何なので、本書の中のコラムで、ブログ・シジフォスの水谷研次さんが「減部に負けない『労働情報』」という小文を書かれていて、之がなかなか面白かったです。

 

 

 

AOTSシンポジウム「イギリス・フランスの労働契約と紛争解決制度」

海外産業人材育成協会(AOTS)が国際シンポジウムを開催するということなので、こちらでも紹介しておきます。

https://www.aots.jp/news/notice/2019-09-11/

イギリス・フランスの労働契約と紛争解決制度-日本との比較-

日本の雇用流動性は諸外国と比べ低いと指摘されており、それが企業の生産性や、非正規社員の正規雇用への転換に影響を及ぼしているともいわれています。雇用の流動性を高めるため正規雇用社員の雇用保護規制を諸外国並みに緩めるべきという意見と、日本の雇用慣行ではそれはなじまないという意見があり、議論になっています。
本シンポジウムでは、高い雇用の流動性が維持され、雇用・解雇法制が整備されている先進諸外国(イギリス・フランス)における労働契約の特徴と労働契約を変更・終了する場合の制度、及び解雇時の紛争解決方法を紹介します。イギリス・フランス・日本のそれぞれの労働慣行と労働法制の違いとその背景にある考え方を確認し、日本にこれらの国の制度を導入するべきか、導入する場合の問題点などを検討します。
皆様のご参加を心からお待ち申し上げます。

基調講演はイギリスとフランスの労働法教授、解説はイギリスが小宮文人さん、フランスが細川良さん、そしてモデレータが石田眞さんとのことです。

Aots

 

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