フォト
2019年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

2019年7月22日 (月)

労働組合は8勝2敗

Mainimage 昨日の参議院選挙で、立憲民主党と国民民主党に分かれた比例区の連合推薦候補者は10名中8名が当選し、2名が落選したようです。立憲民主党は5名中5名全員当選に対し、国民民主党は5名中3名当選2名落選と明暗を分けました。参院比例区は組織内候補者の名前を書かせる各労働組合の力量が試される選挙であるとともに、政党自体への風の吹き工合にも大きく左右されるので、必ずしも各産別の力量それ自体ではない面もありますが、その順位はやはり意味を持つでしょう。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/25th_sangiin/

現時点ではまだ最終得票数は出ていないのですが、とりあえず現時点の得票数順位で。

田村麻美(国 UAゼンセン) 259,467票

礒崎哲史(国 自動車総連) 258,345票

浜野喜史(国 電力総連) 256,259票

石上俊雄(国 電機連合) 192,124票 落選

岸真紀子(立 自治労) 157,848票

水岡俊一(立 日教組) 148,309票

小沢雅仁(立 JP労組) 144,751票

吉川沙織(立 情報労連) 143,472票

田中久弥(国 JAM) 143,343票  落選

森屋隆(立 私鉄総連) 104,339票

どちらも、その政党内では労働組合議員が1位から5位を独占しているのですが、政党自体の絶対的な得票数の違いが響いています。

 

                                                                        

                                                                        

                                                                        

                                                                        

                                     

 

2019年7月20日 (土)

日本労務学会のレビュー研究会

Logomark 日本労務学会のレビュー研究会というのに呼ばれて、ゲスト報告をすることになりました。

https://kokucheese.com/event/index/573524/ (創造的回顧 -日本の人事労務研究のレビュー研究会)

2020年に日本労務学会の設立50周年を迎えるのに際し,日本における人事労務研究の蓄積を振り返りつつ、今後の新しい研究成果の誕生の呼び水となるような研究会を公開形式で開きたい。特別に編成された5つの研究チームの成果報告と,ゲストによる問題提起・話題提供を通じ,日本労務学会ひいては学界全体の研究活動を活性化することを目指している。
本研究会の性質を踏まえ,非学会員による参加も積極的に歓迎したい。また,本研究会での議論の成果を発展または変奏させたものを,2020年7月に開催される予定の日本労務学会第50回記念大会へのプログラムにも反映させていきたい。

2019年9月15日(日)
早稲田大学14号館4階403教室  

定員140人

第一部 13:00-15:20
経済学の視点から(報告:勇上和史(神戸大学)ほか コメント:松繁寿和(大阪大学))
心理学の視点から(報告:坂爪洋美(法政大学)ほか コメント:石川淳(立教大学))
経営学の視点から(報告:江夏幾多郎(名古屋大学)ほか コメント:上林憲雄(神戸大学))

第二部 15:30-17:45
社会学の視点から(報告:池田心豪(JILPT)ほか コメント:佐藤厚(法政大学))
労働調査の視点から(報告:梅崎修(法政大学)ほか コメント:白木三秀(早稲田大学))
労働法政策の視点から(ゲスト報告:濱口桂一郎(JILPT所長))

日本労務学会50周年準備委員会
白木三秀(早稲田大学)
上林憲雄(神戸大学)
梅崎修(法政大学)
江夏幾多郎(名古屋大学)  

 

 

2019年7月19日 (金)

周燕飛『貧困専業主婦』

603844_xl JILPT研究員の周燕飛さんが『貧困専業主婦』(新潮選書)を出版しました。本書は周さんがここ数年来やってきた貧困専業主婦に関する研究の、一般向けの集大成になっています。

https://www.shinchosha.co.jp/book/603844/

「100グラム58円の豚肉をまとめ買いするために自転車で30分をかける」「月100円の幼稚園のPTA会費を渋る」――勝ち組の象徴とも思われていた専業主婦の8人に1人が貧困に直面している。なぜ彼女らは、自ら働かない道を選択しているのか? 克明な調査をもとに研究者が分析した衝撃のレポート。

この研究の出発点は、本ブログでも紹介したこのディスカッションペーパーですが、

https://www.jil.go.jp/institute/discussion/2012/12-08.htmlディスカッションペーパー 12-08 専業主婦世帯の収入二極化と貧困問題)

その後、子育て世帯全国調査を繰り返す中で、さらに研究を深めていって、昨年はJILPTから出版した『非典型化する家族と女性のキャリア』の中の第4章「貧困専業主婦がなぜ生まれたのか」を書いていますし、今年は英文誌Japan Labor Issuesの6月号と7月号に、「Poverty and Income Polarization of Married Stay-at-home Mothers in Japan」を書いています。これが本書の英文要約版になっているので、関心のある方はどうぞ。

https://www.jil.go.jp/english/jli/documents/2019/015-02.pdf (Part I: Historical Perspectives of Japanese Full-time Housewives)

https://www.jil.go.jp/english/jli/documents/2019/016-02.pdf (Part II: What Drives Japanese Women to Be Full-time Housewives despite Poverty?)

さて、周さんの研究が世間の注目を集めたのは、世の常識、というか、経済学でもダグラス・有沢の法則(本当は中村隆英さんが発見したそうですが)として知られていた金持ち世帯ほど専業主婦が多いという常識に反する実態を見いだしたためです。

英文誌から切り取ってそのデータの図を示すと、

Figure1

若干くねくねしていますが、豊かな世帯の方が専業主婦率が低く(リッチなダブルインカム)、貧しい世帯の方が専業主婦率が高いのですね。

で、本書には個々のケースの聞き取りが載っていて、これがいろんな意味で興味深いのです。詳しくは是非本書を買い求めの上じっくり読んでいただきたいのですが、「家庭内の問題を抱えるため今は働けない」とか「心身共に健康を害してこぼれ落ちる」とかの例が上がっています。

実際にどんな格差が生じているかというと、

「食」格差-2割は食糧不足が常態化

「健康」格差-子供は6人に1人が病気か障害

「ケア」の格差-貧困・低収入と育児放棄

「教育」格差-人並みの教育をさせてあげられない

この中でいちばんショッキングなのは児童虐待や育児放棄の割合でしょう。

6438 本書はもちろん、研究者としての周燕飛さんの顔で書かれていますが、最後のあとがきでちらりと1人の働く母親としての顔を垣間見せています。

アメリカ滞在から帰国後、3歳の子供が待機児童となり、認可保育所にも認証保育所にも入れず、ベビーホテルを見に行ってその余りの惨状に、仕事を辞める覚悟もしたときに、土壇場で認証保育所に入れたというエピソードを示しながら、

・・・今もその時に救ってくれた東京都認証保育所には感謝の気持ちでいっぱいです。しかし、世の中には、私と似たような状況に陥り、専業主婦を選んだ、あるいは選ぶことを余儀なくされた女性は数知れません。・・・

と綴っています。

 

 

 

 

今野晴貴・藤田孝典編『闘わなければ社会は壊れる』

454642 今野晴貴・藤田孝典編『闘わなければ社会は壊れる 〈対決と創造〉の労働・福祉運動論』(岩波書店)をお送りいただきました。

https://www.iwanami.co.jp/book/b454642.html

多くの人々が十分な社会保障・福祉を受けることなく,日々の暮らしにも困窮している.雇用と労働をめぐる環境は悪化の一途を辿り,ブラック企業による被害は後をたたない.一人ひとりの生活を守りつつ,社会全体の変革をめざす運動を生み出すことが求められている.労働と福祉,それぞれの領域から提起する,本当の闘い方.

中身は以下の通りです。

はじめに  今野晴貴・藤田孝典
 第一部 福祉運動の実践をどう変革するか?
  1 みんなが幸せになるためのソーシャルアクション――福祉主体の連帯と再編を求めて ……………藤田孝典
  2 ソーシャルビジネスは反貧困運動のオルタナティブか?――新しい反貧困運動構築のための試論 ……………渡辺寛人
  3 不可能な努力の押しつけと闘う――個人別生活保障の創造へ …………………後藤道夫
 第二部 「新しい労働運動」の構想
  4 新しい労働運動が,社会を守り,社会を変える ……………今野晴貴
  5 年功賃金から職種別賃金・最賃制システムへの転換――新しい賃金運動をめざして ……………木下武男
 第三部 ポスト資本主義の社会運動論
  6 経済成長システムの停滞と転換――ポスト資本主義に向けて ……………宮田惟史
  7 福祉国家論の意義と限界――七〇年代西独「国家導出論争」を手がかりにして ……………佐々木隆治
おわりに  今野晴貴・藤田孝典

このメンツからわかるように、基本的にPOSSEに関わりのある活動家や研究者による本です。なので、同感するところも、同感できないところもあります。

第2部の労働に関する部分はその認識枠組みに概ね同感です。それに対して第1部の福祉の話については、恐らく湯浅誠さんらを念頭に置いているのだと思いますが、「対決を避けた運動」を批判し、「敵対性を意識した運動」を称揚する議論には、まさにその湯浅さんが自らの経験から感じたであろう陥穽が待ち構えているように思います。

この点については、本ブログでも何回か取り上げてきました。たとえば湯浅誠氏が自らの経験から語るこれなんか、百万言を費やすよりもこの問題の本質を語っています。この辺は、広い意味での「政治」をどう捉えるかということとも関わる気がします。マックス・ウェーバーのいう、堅い木の板にぐりぐりと穴を空けるような辛抱強い作業だと思えるかどうか。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-3bac.html (湯浅誠氏がさらに深めた保守と中庸の感覚)

原則的な立場は大事です。問題は、原則的なことを言っていれば原則的なことが実現するわけではない、という点にあります「ぶれずにある立場を堅持していれば、いずれ理解される」と言って、30年40年と同じことを言い続けている人がいます。しかし、言い続けてきた30年分40年分、世の中が言っていることに近づいてきているかというと、必ずしもそうでないという場合があります。世の中には、反対の立場から30年40年原則的なことを言い続けている人もいるからです。その際の問題点は「原則的な立場を堅持するかどうか」ではなく、「原則的な立場に現実を少しでも近づけるための、言い方ややり方の工夫をする必要がある」という点にあります。工夫が足りないことの結果として自分の見解が広く理解されなかったことの結果責任の自覚なく、「聞き入れないあいつらがわかってない」と言っているだけでは、さらに多くの人たちから相手にされなくなっていくだけで、その逆にはならないでしょう。

 あたりまえのことしか言っていないと思うのですが、実際にはそのあたりまえが通用しない局面があります。現実的な工夫よりは、より原則的に、より非妥協的に、より威勢よく、より先鋭的に、より思い切った主張が、社会運動内部でも世間一般でも喝采を集めることがあります。そうなると、政治的・社会的力関係総体への地道な働きかけは、見えにくく、複雑でわかりにくいという理由から批判の対象とされます。見えにくく、複雑でわかりにくいのは、世の利害関係が多様で複雑だからなのであって、単純なものを複雑に見せているわけではなく、複雑だから複雑にしか処理できないにすぎないのですが、そのことに対する社会の想像力が低下していっているのではないかと感じます

 テレビや新聞の断片的な情報と、それを受け取った際の印象で自分の判断を形成し、それがきわめて不十分な情報だけに依拠したとりあえずの判断でしかないという自覚がなく、各種の専門家の意見に謙虚に耳を傾けることもなく、自分と異なる意見に対して攻撃的に反応する。ツイッターでもブログでも、テレビのコメンテーターから中央・地方の政治家から、そして社会運動の中にも、このような態度が蔓延しており、信頼感と共感は社会化されず、不信感ばかりが急速に社会化される状態、他者をこきおろす者が、それが強ければ強いほど高く評価されるような状態、より過激なバッシングへの競争状態です

容易に転換しそうにないこの風潮をどうすれば変えることができるのか、私にはまだよくわかりません。ただ少なくとも、このような局面で社会運動が採るべき方向性は、バッシング競争で負けないためにより気の利いたワンフレーズを探すことではなく、許容量を広く取って理解と共感を広げていくために、相手に反応して自分を変化させ続けていくこと、政治的・社会的な調整と交渉に主体的にコミットすること、そして自分という存在の社会性により磨きをかけていくことではないかと思います。それが、私の考える「社会運動の立ち位置」です。

闘わなければ社会は壊れるかも知れませんが、闘い方を間違えればもっと社会は壊れるでしょう。

最近藤田さんがやらかした、(ワンフレーズ的思考停止の典型である)「年金返せデモ」への称揚など、その一つの例だと思われます。

リバタリアン的立場からすれば最も正しい「年金返せ」(=再分配的要素のある公的年金など廃止して保険料を払い戻し、全部個人の貯蓄でやれ)を、目の前の政府批判のために叫んでしまってその意味内容をこれっぽっちも考えないような愚かな「闘い方」に未来などあろうとは思えません。

まあこれはそもそものスタンスの問題なので、収斂はしがたいでしょう。

一方、認識枠組みのレベルで同意しがたいのが第3部の経済学めいた議論です。正直、こういう議論が社会を辛抱強く改善していくための作業に対してどういう意味があるのか理解できません。

経済成長と国民生活の向上とは両立しうるか? 否

経済成長と社会福祉の向上とは両立しうるか? 否

そんな両立論ではなく、資本主義を超えたアソシエーションを目指さなければならない

せっかくの福祉や労働の議論を、そういう全部資本主義が悪いんや社会主義にすれば全部解決や話に集約してしまおうという(実は戦後長いあいだけっこう有力だった)発想に未来があるとは思えないのです。

堅い木の板に辛抱強く穴を空けるのが性に合わない人にはとてもありがたい話でしょうけど。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-9979b9.html (無知がものの役に立ったためしはない)

 

2019年7月18日 (木)

『2019年版 日本の労働経済事情』

Keidanren 例によって、讃井暢子さんより『2019年版 日本の労働経済事情』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=549&fl=

本書は、人事・労務部門の初任担当者に向けて、わが国の労働市場の動向、
働き方改革関連法(時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金等)や
2019年6月5日に公布された改正女性活躍推進法等をはじめとする重要な労働法制、
そして人事・労務管理に関する基本事項等について、図表を用いてわかりやすく解説しています。
実務担当者はもとより、新任の管理職やマネージャーにも幅広くご活用いただけます。

○○おもな内容○○
Ⅰ 労働市場の動向・雇用情勢・賃金と労働時間
 失業率・求人倍率、雇用形態別労働者、労働時間と労働生産性 等
Ⅱ 労働法制
 働き方改革関連法の全体像、労働基準法(時間外労働の上限規制、年5日の年休取得義務化 等)、
 労働契約法/パートタイム・有期雇用労働法/労働者派遣法(同一労働同一賃金 等)、
 労働安全衛生法、労働施策総合推進法(パワーハラスメント防止対策)、女性活躍推進法 等
Ⅲ 人事・労務管理
 人事・労務管理における重要テーマ(ダイバーシティ・インクルージョン、仕事と介護の両立支援 等)、
 人材育成、人事評価 等
Ⅳ 労使関係
 日本の労使関係の変遷、春季労使交渉 等
Ⅴ 労働・社会保険
 医療保険制度、介護保険制度、年金制度の体系、雇用保険制度 等
Ⅵ 国際労働関係
 グローバル化の進展、ILO(国際労働機関) 等

 

 

 

悪質クレームを許さない by UAゼンセン

UAゼンセン(正式名称は全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が「悪質クレームを許さない」という動画をホームページ上にアップしています。短いですが、最近話題のカスタマー・ハラスメントの問題を大変見事に表現していて、多くの人にみてもらいたい作品になっているので、こちらにリンクを張っておきます。

https://uazensen.jp/claim_cm/

 

2019年7月17日 (水)

岩崎仁弥他『リスク回避型就業規則・諸規程作成マニュアル』『社内諸規程作成・見直しマニュアル』

51fsyfgorll__sx351_bo1204203200_ 特定社会保険労務士の岩崎仁弥さんより、『リスク回避型就業規則・諸規程作成マニュアル』(7訂版)と『社内諸規程作成・見直しマニュアル』(3訂版)をお送りいただきました。どちらも1000ページ近い大冊です。

https://www.amazon.co.jp/7%E8%A8%82%E7%89%88-%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E5%9B%9E%E9%81%BF%E5%9E%8B%E5%B0%B1%E6%A5%AD%E8%A6%8F%E5%89%87%E3%83%BB%E8%AB%B8%E8%A6%8F%E7%A8%8B%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB-%E5%B2%A9%EF%A8%91-%E4%BB%81%E5%BC%A5/dp/4539726811

★あらゆる時代の流れを網羅した就業規則のスタンダード!
★働き方改革法施行を受け、全面改訂!
採用、異動、服務規律、労働時間、休暇、賃金、休職及び復職、
解雇、退職、安全衛生、災害補償といった労働関係の中で考えられるステージごとに、
複雑な法令体系を解きほぐしながら、就業規則の規程例とその作成のポイント、
個別規程例、労使協定・書式例を豊富に提示。

https://www.amazon.co.jp/3%E8%A8%82%E7%89%88-%E7%A4%BE%E5%86%85%E8%AB%B8%E8%A6%8F%E7%A8%8B%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%83%BB%E8%A6%8B%E7%9B%B4%E3%81%97%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB-%E5%B2%A9%EF%A8%91-%E4%BB%81%E5%BC%A5/dp/4539726633/ref=pd_lpo_sbs_14_t_0?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=P88Q3M0HGENYDQSWX6N7

◎時代の流れに対応した、社内規程のスタンダード!
◎「働き方改革法」を踏まえた堂々の3訂版! CD-ROM付き。

企業にとって必須というべき21のモデル規程と、
その策定や見直しをするうえで必要となる視点やポイントを、
根拠となる法律や指針等を示しながら解説する。

3訂版では、「働き方改革法」の成立等を受け、内容を見直しているほか、
“規程そのものの作り方"の解説もさらに充実したものとなり、
見栄えよく・誤解のない規程を作成するためのノウハウが詰まったものとなっている。

51qwbvni66l__sx354_bo1204203200_

 

2019年7月16日 (火)

『POSSE』 vol.42

9784906708802_600 『POSSE』 vol.42をお送りいただきました。ありがとうございます。今号の特集は「ストライキが変える私たちの働き方」です。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784906708802

日本では久しく忘れ去られていたストライキという闘い方が、にわかに注目を集めている。
図書館司書、私学教員、保育士、自動販機ベンダー……さまざまな業種の労働者たちが、自らの労働条件を改善するために、ストライキを武器に闘いはじめた。
そして彼ら彼女らのストライキは、SNSやメディアを通じて社会的な注目と支持を集めている。
なぜ、いま、ストライキが支持されるのか。現代のストライキは、過去のストライキと何がどう異なるのか。21世紀におけるストライキの意義を改めて問う。

と言うことで、練馬区立図書館非常勤司書をはじめ、例のキリンビバレッジなど自動販売機関係のユニオン、正則学園など私立学校関係のユニオンなどの事例が紹介された上で、浅見和彦さんと今野晴貴さんがやや理論的な考察をしています。

◆特集「ストライキが変える私たちの働き方」
練馬区立図書館・非常勤司書のストライキ闘争に迫る――彼女たちのパワーの源泉はどこにあるのか? 三澤昌樹(練馬区立図書館専門員労働組合特別執行委員)

自販機産業ユニオンの挑戦――順法闘争とストライキで業界改善へ 本誌編集部

学校×ストライキ――教育現場を取り戻すための闘い 本誌編集部

全労働者を結集するストライキを――ストライキは「伝染」する 須田光照(全国一般東京東部労働組合書記長)

サービス業時代の「新型ストライキ」とは――社会連帯型ストライキが生み出す共感と交渉力 浅見和彦(専修大学教授)

今日のストライキ その特徴とは何か? 今野晴貴(NPO 法人POSSE 代表)

実を言うと、ストライキなど労働争議に関わるテーマは、もう何十年にもわたって労働法や労働問題の議論のホットな舞台からは消えています。教科書には昔からのことが書かれていますが、また昔の労働争議の歴史研究みたいなのは細々とありますが、あるいは中国や韓国など外国の労働争議も話題になったりしますが、この現代日本でストライキがホットなテーマとして取り上げられるということ自体、長らく絶えて久しかったのです。

今回のPOSSEの特集が、それを変えるものであるのかどうか、改めて図書館の奥にほこりをかぶったかつての労働争議論を紐解いてみることも必要かも知れません。

 

 

『はじめよう!SOGIハラのない学校・職場づくり』

457293 大月書店編集部の岩下結さんより『はじめよう!SOGIハラのない学校・職場づくり 性の多様性に関するいじめ・ハラスメントをなくすために』(大月書店)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b457293.html

「ホモネタ」やアウティング(暴露)、男女別制服の強要など、性的指向や性自認(SOGI)にかかわるハラスメントは深刻な人権侵害となります。
基本的なとらえ方から、事例も多数紹介した初の入門書。

そもそもSOGIって何?LGBTとどう違うの?という基本からわかりやすく説明しています。冒頭には「マンガで考える「これってSOGIハラ?」」もあり、まずは若者たちを主たる対象においていることが窺われます。

はじめに
マンガで考える「これってSOGIハラ?」

パート1 基礎から知る「SOGIハラってなに?」
 1「SOGI」ってなんだろう
 2 SOGIの視点で多様な性をとらえる
 3「SOGIハラ」をどう防ぐか

パート2 学校で起こるSOGIハラと支援のありかた――そのとき、あなたにできること
 はじめに
 1 あなたにできること(1)──想像する
 2 あなたにできること(2)──聴く
 3 あなたにできること(3)──変えていく
 おわりに

パート3 これってSOGIハラ?事例集
 はじめに
 1 差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
 2 いじめ・暴力・無視
 3 望まない性での生活の強要
 4 不当な入学拒否や転校強制、異動や解雇
 5 だれかのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)
 6 その他

パート4 SOGIハラのない学校・職場づくりに必要なこと

巻末資料

パート3の不当な入学拒否云々の中にこんな事例が:

トランスジェンダーの私は、通名と、性別を記載しない履歴書で就職活動を行い、首尾よく内定が決まりました。きっと会社の方も理解があるのではないかと思い、内定後の面談で、実は戸籍上の性別が女性であるということをカミングアウトしたのですが、そのとたんに「今回の話はなかったことに」と言われ、内定を撤回されてしまいました。とても落ち込みましたが、小さい会社でしたし、訴えたりはせず、あきらめて次を探すことにしました。

こういうふうに表に出ない事例が結構多いのでしょう。

 

 

 

中国における権威主義の影と国家-労働関係@BJIR

Bjir 英国労使関係雑誌(British Journal of Industrial Relations )の2019年6月号にJude Howell と Tim Pringleの「Shades of Authoritarianism and State–Labour Relations in China」(中国における権威主義の影と国家-労働関係)という大変興味深い論文が載っています。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/bjir.12436

 Attempts to analyse authoritarianism in China tend towards a static focus on the state that is homogeneous across time. We argue for a more nuanced approach that captures the dynamism and contours of state–civil society relations, and state–labour relations, in particular, in authoritarian states. Taking state–labour relations as a bellweather, we conceptualize ‘shades of authoritarianism’ as a framework for better understanding the complexities and evolution of state–society relations in authoritarian states. We illustrate this through the case of China, distinguishing different shades of authoritarianism in the Hu-Wen era (2002–2012) and in the current regime of Xi Jinping

中国における権威主義を分析する試みは時を通じて同質的な国家に静態的な焦点を当てる傾向がある。我々は権威主義国家における国家と市民社会の関係、とりわけ国家と労働の関係の動態と輪郭をつかむよりニュアンスに富んだアプローチを唱える。主導部として国家と労働の関係をとりあげると、我々は権威主義国家における国家と社会の関係の複雑さと展開をよりよく理解するための枠組みとして「権威主義の影」を概念化する。我々はこれを中国のケースを通じて明らかにし、胡錦濤-温家宝時代(2001-2012)と現在の習近平体制における異なった権威主義の影を区別する。

本論文では、胡・温時代の「開かれた権威主義」(open authoritarianism)と習時代の「封じ込め型権威主義」(encapsulating authoritarianism)を、さまざまな観点から比較検討し、その違いを浮き彫りにしています。労働問題に関心のある方々だけにとどまらない興味深さを示しているように思われます。

 

 

 

2019年7月15日 (月)

日雇派遣問題への新たな視角

大内伸哉さんがブログ「アモリスタ・ウモリスタ」で「日雇派遣規制の見直し」について論じています。

http://lavoroeamore.cocolog-nifty.com/amoristaumorista/2019/07/post-570a80.html

 ・・・・いったん作ったものでも,おかしいものであれば,迅速に廃棄することが必要です。「直接雇用のみなし」にはいろいろな考え方の違いがあり意見が分かれるのはわかりますが,「日雇派遣」は論理的におかしい規制というべきなので,この時期の見直しは遅すぎたほどです。

現行日雇派遣法制が矛盾に満ちており、見直すべきであるという点については全く同感であり、今までもその旨のことは何回か書いてきています。

https://www.jpc-net.jp/paper/zokunihonjinji/20160315zokunihonjinji.pdf (日雇派遣規制の矛盾(『生産性新聞』2016年3月15日号))

ただ、一方世界的な新たな就業形態の進展とそれに対する法的対応の状況を踏まえて考えると、日雇派遣問題を日本の派遣法規制という枠内だけで考えること自体があまりにも狭隘に過ぎるという感もあります。もちろん、日雇派遣を目の敵にする人々が、ややもすると派遣という働き方を目の敵にする古びた発想でもって論ずる傾向があったために、日雇派遣規制も派遣規制のまことにできの悪い出来損ないみたいな形になってしまってしまっているわけですが、そこに現れていた問題とは、実は近年世界共通に表れてきつつあるオンコールワーク、オンデマンドワークといった問題であったように思われるのです。

この件については、一昨年にWEB労政時報に小文を書いていますので、この問題をまじめに考えようという方のためにお蔵出しをしておきたいと思います。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/article.php?entry_no=75705 (日雇派遣の歴史的位置)

 今から10年前の時期に、日本の労働市場法政策において注目され話題となった就業形態に「日雇派遣」があります。それまでの構造改革への熱狂が一段落し、格差問題が大きな問題になっていった時期に、派遣労働者の中でもとりわけ日雇派遣で働く人たちにテレビや新聞が着目し、ネットカフェに寝泊まりしている姿など彼らの窮状を集中的に報道したことが、社会に対し非常に大きな影響を与えました。グッドウィルやフルキャストといった日雇派遣会社の名前を思い出す方もいるでしょう。
 
 最初は規制緩和の方向で始められた労政審の審議も風向きが変わり、2007年12月の中間報告では日雇派遣の一部規制強化が打ち出されました。そこでは、日雇派遣は契約期間が短く、仕事があるかどうかが前日までわからない、当日キャンセルがあるといったことや、給与からの不透明な天引きや移動時間中の賃金不払い、安全衛生措置や教育が講じられず労災が起きやすい、労働条件の明示がされていないといった問題点が指摘されていました。そこでこの時点で省令改正がされ、日雇でも派遣先責任者の選任義務や派遣先管理台帳の作成記帳義務を課し、派遣元事業主が定期的に日雇派遣労働者の就業場所を巡回し就業の状況を確認することを義務づける等しました。
 
 日雇派遣形態そのものの規制については、2008年7月の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」で、危険度が高く、安全性が確保できない業務、雇用管理責任が担い得ない業務を禁止し、専門業務など短期の雇用であっても労働者に特段の不利益が生じないような業務のみ認める方向が打ち出され、同年9月の労政審建議では「日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者について、原則、労働者派遣を行ってはならない」とした上で、「日雇派遣が常態であり、かつ、労働者の保護に問題ない業務等について、政令によりポジティブリスト化して認めることが適当」としました。これを受けて同年11月に労働者派遣法改正案が国会に提出されましたが、折からのリーマンショックで、多くの派遣労働者が派遣会社の寮を追い出されて住むところを失うという状況があらわになり、同年末から2009年始にかけていわゆる「年越し派遣村」が設立され、派遣制度に対する風当たりはさらに強くなりました。
 2009年の総選挙で民主党政権が誕生すると、あらためて労働者派遣法の審議が始められ、2010年4月により規制を強化した改正案が国会に提出されましたが、日雇派遣については自公政権時の法案と変わっていませんでした。しかし、政治状況から同法案が塩漬けになり、2012年3月に野党の自公両党と合意して登録型派遣の原則禁止の削除など修正可決した際、禁止の例外としてさらに「雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合」を加え、具体的には60歳以上の高齢者、昼間学生、労働者自身かその配偶者が年収500万円以上の者を適用除外としました。この規定は2015年9月に労働者派遣法が全面的に改正されたときにも触れられず、現在も適用されています。
 一方この間、日雇派遣の原則禁止を見越して多くの業者は日雇派遣から日々紹介への業態転換を図り、現在では実質的に同様の業務が日々紹介として行われています。有料職業紹介事業には手数料規制など派遣事業にはない規制があるとはいえ、対象者に制限がないのでやりやすいことは確かでしょう。とりわけ、日雇で働くために年収500万円以上要件をクリアしているかどうかを証明させる面倒くささを考えれば業者が日々紹介に流れていったことはよく理解できます。しかし、形態が日雇派遣から日々紹介に変わっても、指摘されていた「契約期間が短く、仕事があるかどうかが前日までわからない、当日キャンセルがある」といった問題点に変わりはありません。これは、たまたま日雇派遣という形で現れた問題を、もっぱら労働者派遣という側面に注目して派遣法の法的手段を使って対応しようとしたことの結果と言えます。
 
 実をいえば、こういった問題点は近年、イギリスを始めとして世界的に拡大しているオンコール労働、とりわけ「ゼロ時間契約」と呼ばれる新たな就業形態の問題点を、やや先取り的に現していたものということができます。これは、あらかじめ労働時間を定めることなく、呼び出しがあれば行って働くという契約ですが、一定時間の就労を保障するわけではなく、呼び出しがなければいつまでも待ち続けなければならず、まさにその不安定さが問題となりました。特にイギリスの労働組合TUCはゼロ時間契約の廃止を訴え、野党労働党の公約にも盛り込まれました。
 欧米のゼロ時間契約を見てから、あらためて日本の日雇派遣や日々紹介を見てみると、就労時間以外の待機時間に当たる部分を、日本では派遣会社や紹介会社の「登録」という曖昧な状態におくことによって、同じような効果をもたらしていることがわかります。どちらも、情報通信技術の発達のおかげで、いつどこにいても携帯電話による呼び出しが可能になったことを利用した新たな就業形態であり、その歴史的位置はほぼ同じようなものではないかと思われます。経済のデジタル化に伴う新たな就業形態が話題となる今日、日雇派遣・日々紹介についても新たな視点からの議論が求められるのではないでしょうか。

そして、実はこの問題が近年EUでも大きな議論となり、今年5月には新たな指令「透明で予見可能な労働条件指令」として成立に至っているのです。

この指令については、指令案の段階で『季刊労働法』2018年春号(260号)で「EUの透明で予見可能な労働条件指令案」としてかなり詳しく紹介していますが、改めてきちんと(日本へのインプリケーションにも含めて)論じなおす必要があるのかもしれません。

ポピュリスト右翼の敗北は必ずしも社会民主主義左翼の勝利にあらず

Sheribermanfinal 例によってソーシャル・ヨーロッパから、最近のデンマークの選挙結果を素材にしたシェリ・バーマンさんのエッセイ「ポピュリスト右翼の敗北は必ずしも社会民主主義左翼の勝利にあらず」(A defeat for the populist right isn’t always a win for the social-democratic left)を。

https://www.socialeurope.eu/populist-right-social-democratic

 The populist right and the social-democratic left may contest for the support of the popular classes but, Sheri Berman argues, it’s not a simple zero-sum game.

ポピュリスト右翼と社会民主主義左翼は大衆階級の支持を求めて争っているが、それは単なるゼロサムゲームではない。

最後の2パラグラフを紹介しておきましょう。

 Parties succeed when the issues on which they have an advantage are at the forefront of debate: populists do well when attention is focused on immigration, green parties do well when attention is focused on the environment and social-democratic parties do well when attention is focused on economic issues and, in particular, on the downsides of capitalism and unregulated markets—assuming they have something distinctive and attractive to offer on the economic front. (This has not been the case for many social-democratic parties for too long but many authors at Social Europe are trying to rectify that.)

政党は彼らが優位を持つ問題が議論の正面にあるときに成功する。ポピュリスト政党は移民問題に焦点が当たっているときにうまくいく。みどりの党は環境問題に焦点が当たってるときにうまくいく。社会民主主義政党は経済問題、とりわけ資本主義と規制されない市場のマイナス面に焦点が当たっているときに、なにがしか特色があり魅力的だとすればみなされてうまくいく。(多くの社会民主主義政党にとってあまりにも長い間そうではなかったが、ソーシャル・ヨーロッパの多くの筆者たちはそれを直そうとしている)

What the Danish elections should remind us is that politics is largely a struggle over agenda-setting. Defeating populism requires removing the issues on which populism thrives from the forefront of debate. But for the social-democratic left to succeed, it must do more than neutralise the fears populists exploit. It must also focus attention on the myriad economic problems facing our societies—and convince voters it has the best solutions to them.

デンマークの選挙が我々に思い出させるべきことは、政治とは何よりもアジェンダセッティングをめぐる闘争であるということだ。ポピュリズムを打倒するのに必要なのは、ポピュリズムがそれを取り上げることによってポピュリズムが力強く成長してきた論点を議論の正面にあって繁栄してきた問題を議論の正面から取り除くことだ。しかし社会民主主義左翼が成功するためには、ポピュリストがうまく活用してきた恐怖を中和化させるよりももっとしなければならないことがある。我々の社会が直面している無数の経済的問題に焦点を当て、その最善の解決策があると有権者を説得することだ。

 

2019年7月13日 (土)

小熊英二『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』

9784065154298_obi_w 小熊英二さんより『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』(講談社現代新書)をお送りいただきました。新書でありながら600ページという常識外れの分厚さにまず目を剥きましたが、中身を読み始めて、これはいったい何という本だ!と叫んでしまいました。どういうことか?というと、私の様々な議論や本と、ほぼ重なるような内容の本になっていたからです。

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000321617

正直言って、この著者名とこのタイトルから想像される中身とは相当に異なっています。もし本書が学術出版であれば、内容を正確に伝えるタイトルをつけるとしたら、『詳説 日本型雇用システムの形成史』となるはずです。そう、私がいくつかの本で、序説であったり傍論であったりしながら割と簡略に叙述してきた事柄を、(ページ数が増えることを全く顧慮することなく)元の研究成果をかなり詳細かつ緻密に追いかけながら、あれこれの論ずるべきことをほぼ取り落しなくややゆったりとした筆致で描き出しているのです。

「日本社会のしくみ」は、現代では、大きな閉塞感を生んでいる。女性や外国人に対する閉鎖性、「地方」や非正規雇用との格差などばかりではない。転職のしにくさ、高度人材獲得の困難、長時間労働のわりに生産性が低いこと、ワークライフバランスの悪さなど、多くの問題が指摘されている。
しかし、それに対する改革がなんども叫ばれているのに、なかなか変わっていかない。それはなぜなのか。そもそもこういう「社会のしくみ」は、どんな経緯でできあがってきたのか。この問題を探究することは、日本経済がピークだった時代から約30年が過ぎたいま、あらためて重要なことだろう。(中略)
本書が検証しているのは、雇用、教育、社会保障、政治、アイデンティティ、ライフスタイルまでを規定している「社会のしくみ」である。雇用慣行に記述の重点が置かれているが、それそのものが検証の対象ではない。そうではなく、日本社会の暗黙のルールとなっている「慣習の束」の解明こそが、本書の主題なのだ。 ――「序章」より

本書がそういう内容のものになった事情は、あとがきに書かれています。もともとは、日本の戦後史を総合的に、つまり政治、経済、外交、教育、文化、思想などを連関させ、同時代の世界の動向と比較しながら歴史を描くという構想だったようです。

ところが、研究を進めていくうえで、「カイシャ」と「ムラ」を基本単位とするようなあり方を解明しなければならないと考え、

・・・「日本社会の仕組み」としか表現のしようのないもの、つまり雇用や教育や福祉政党や地域社会、さらには「生き方」まで規定している「慣習の束」が、どんな歴史的経緯を経て成立したのかを書きたい

と変わったようです。それであれば、それは本書の副題「雇用・教育・福祉の歴史社会学」にぴったりと符合します。しかし、本書の内容はそういうものにもなっていません。なぜなら、小熊さんによれば

・・・ところが、雇用慣行について調べているうちにこれが全体を規定していることが、次第に見えてきた

からです。そこで、

・・・最初に書いた草稿はすべて破棄し、雇用慣行の歴史に比重を置いて、全体を書き直すことになった。

「比重を置いて」、というよりも、これはもはや、日本型雇用システムの形成史に関する、現在の時点の知見の相当部分を包括的に取り入れたほとんど唯一の解説書になっています。小熊さん自身はそういうつもりはなかったようですが、社会政策とか労働研究といった分野の研究者が、細かなモノグラフは書くけれどもこういう骨太の本を書かないものだから、これから長い間、日本型雇用システムの関する定番の本になってしまう可能性が高いように思われます。

目次は以下の通りですが、まさに『詳説 日本型雇用システムの形成史』であることがお判りでしょう。

 第1章 日本社会の「3つの生き方」
第2章 日本の働き方、世界の働き方
第3章 歴史のはたらき
第4章 「日本型雇用」の起源
第5章 慣行の形成
第6章 民主化と「社員の平等」
第7章 高度成長と「学歴」
第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ
終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか

ちなみに、このうち第2章と第3章は、欧米社会の雇用システムについて120ページ以上を費やして論じています。下手をするとそれだけで新書一冊になるような分量です。ここは、私も最近JIL雑誌に書いた「横断的論考」でごく簡単に考察したところですが、そのトピックをここまでねちっこく追及する小熊さんの執念深さには脱帽します。

日本型雇用システムを下手に論じる人の陥りがちな落とし穴は、ややもするとある政治勢力や社会勢力に一方の在り方を重ね焼きして非難の対象とし、それに反する歴史的事実は無視するという傾向ですが、小熊さんは極めて丁寧に様々な勢力の動きをフォローしており、歴史叙述としては(当たり前と言えば当たり前ですが)安心できます。

逆に言うと、その叙述の大部分は、私にとっては既視感のあるところが大きいのですが、最後のところで、私の変に世に普及してしまった図式に対する異論が提示されています。

・・・日本の雇用慣行を語る際には「ジョブ型」「メンバーシップ型」あるいは「初めに職務ありき」「初めに人ありき」といった類型がよくつかわれてきた。これは日本の慣行を理解する際に便利な図式化ではあるが、主として企業の労務担当者の視点からの類型であって、一面的なものと言える。

企業の労務担当者から見れば、アメリカもドイツも、どちらも「ジョブ型」「初めに職務ありき」の社会のように見える。企業を横断した職務市場や技能資格があるため、どちらも経営の裁量だけでは賃金や人事配置を決められないからだ。

しかし労働者の視点から見れば、話は違う。専門職団体が認可した専門学位や技能資格があれば、どの企業でも同じ賃金になる社会のほうが、よほど「初めに人ありき」で「メンバーシップ型」だと映るだろう。

というわけで、小熊さんは2類型ではなく「企業のメンバーシップ」「職種のメンバーシップ」「制度化された自由労働市場」の3類型を唱えます。日本は「企業のメンバーシップ」が支配的な社会であり、ドイツは「職種のメンバーシップ」、アメリカは「制度化された自由労働市場」が支配的な社会だというのです。

実は、それには私はほぼ全面的に賛成です。ただ、話は日独米の3社会だけでは終わらないでしょう。他の労働社会もそれぞれに特殊性があり、それぞれに類型化していくと類型はどんどん増えてしまいます。

これは、本書でも引用されている拙論「横断的論考」で、イギリスやフランス、さらにはオランダやスウェーデン等も含めてあれこれ(ごく簡略に)考察したところですが、限られた紙幅の中で分かりやすく説明するという状況下であれば、最初の2類型がある意味一番間違いのない類型化なんじゃないかと考えているところです。

もちろん、私にも600ページを超える新書を書かせてくれる奇特な編集者がいれば、もう少し詳しく突っ込んでみてもいいんですけど。

(参考)

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/04/pdf/002-010.pdf (この国の労働市場-横断的論考(『日本労働研究雑誌』2018年4月号))

Ⅰ ジョブ型社会の多様性
日本の雇用システムをメンバーシップ型とか 「就社」型と定式化し,欧米諸国のジョブ型ない し「就職」型と対比させる考え方は,ごく一部の 人々を除き,多くの研究者や実務家によって共有 されているものであろう。 ところが,日本以外の諸国を全て「ジョブ型」 に束ねてしまうと,その間のさまざまな違いが見 えにくくなってしまう。常識的に考えても,流動 的で勤続年数が極めて短いアメリカと,勤続年数 が日本とあまり変わらぬドイツなど大陸欧州諸国 はかなり違うはずだ。そこで,世界の雇用システ ムを大きく二つに分けて,日本に近い側とそうで ない側に分類するという試みが何回か行われてき た。ところが,そうした議論を見ていくと,まっ たく矛盾する正反対の考え方が存在することがわ かってくる。 ・・・

Ⅱ 欧米諸国の人事管理

Ⅲ 雇用システム形成史からの考察

(余計なお世話)

一点だけ余計なお世話ですが間違いを指摘しておきます。407ページに、1951年に労働省婦人年局が「男女同一労働同一賃金」という書籍(正確にはパンフレット)を出したとありますが、役所の名前は婦人年局です。労働組合の場合は青年婦人部ですが。

 

ポピュリスト時代の公共議論

Lukashochscheidt1250x250 例によって、ソーシャル・ヨーロッパからドイツ労働総同盟のホッホシャイト氏による「ポピュリスト時代の公共議論」を紹介。内容はアイデンティティポリティクスに傾斜する進歩派を批判し、経済的不平等に目を向けろという話で、ああ、またかというものかもしれませんが、ここまで欧州社会民主勢力が弱体化していく中で、長らくその支持勢力であった労働組合サイドの「なんとかしろよ」感がにじみ出ています。

https://www.socialeurope.eu/populist-age-union-perspective

 Public discourse in the populist age—a trade-union perspective by Lukas Hochscheidt

・・・・・To respond to the double attack from populists and a new generation of liberals, trade unions have to build their strategy on a different line of political conflict—a cleavage over inequalities. As Thomas Piketty, Branko Milanovic and many others have shown, social inequalities are structural and will continue to grow. The line of conflict opposing ‘haves and have-nots’ has a great advantage compared with the ‘progressives versus populists’ cleavage: instead of reducing politics to the pros and cons of liberal democracy, it enables a debate on how exactly democracy should work. Hence, it gives intermediary institutions, as vectors of collective interests, a raison d’être in the 21st century.

・・・・・ポピュリストと新世代リベラルからの二重攻撃に対処するために、労働組合はその戦略を政治的紛争の違うライン-不平等をめぐる断絶-に立脚させるべきだ。トマ・ピケティ、ブランコ・ミラノビッチらが示すように、社会的不平等は構造的で拡大傾向にある。「持てる者と持たざる者」を対立させる紛争ラインは「進歩派対ポピュリスト」の断絶と比べて大きな利点がある。というのも、政治をリベラル民主主義への賛成と反対に切り縮めるのではなく、民主主義がいかに実際に機能すべきかという議論を可能にするからだ。それゆえ、それは中間的機構に集団的利益のベクトルとして21世紀の存在意義を与える。

First, the material cleavage is socially inclusive: it addresses issues which concern society as a whole, such as inequalities of wealth and income. Therefore, it is the best remedy against what Mark Lilla calls ‘identity politics’—atomised societies shaped by small lobby groups which focus on minority interests alone. Representing working people on what unites them rather than what makes them different from one another, trade unions contribute to social integration and cohesion.

第1に、物質的断絶は社会包摂的で、富や所得の不平等といった社会全体にかかわる問題に取り組む。それゆえ、それはマーク・リラが「アイデンティティ・ポリティクス」と呼ぶもの、マイノリティの利益のみに焦点を向ける小さなロビー集団によって作られる原子化した社会に対する最善の処方箋となる。

Secondly, the material line of conflict is genuinely democratic: it highlights the fact that in a democracy the markets are subordinated to political decision-making. If there is a majority in favor of social progress—for instance, more worker participation at company level—the ‘invisible hand’ of the market cannot and will not stop a democratic majority. The inequalities cleavage also urges us to question the political influence of global business networks and to make them accountable for the downsides of globalisation.

第2に、紛争の物質的ラインは純粋に民主的であり、民主的社会においては市場は政治的意思決定に従属するという事実を明らかにする。もし社会の多数派が社会進歩-例えば、企業レベルにおける労働者参加の拡大-を望むなら、市場の「見えざる手」は民主的な多数派を止めることはできない。不平等の断絶もまた、我々にグローバルなビジネスネットワークの政治的影響力に疑問符を呈し、グローバル化の影の面に対して責任を追及させる。

Finally, the socio-economic cleavage is participatory and sustainable: by foregrounding class interests and structural disparities between labour and capital, it stresses the importance of intermediary institutions—simply because they are indispensable for the representation of aggregated collective interests. Therefore, it makes citizens engage with politics in a sustainable manner and enables comprehensive feedback, (re-)connecting decision makers and citizens.

最後に、社会経済的断絶は参加的であり、持続可能である。階級的利益と資本と労働の構造的不均衡を前景化することによって、それは中間的機構の重要性を強調する。集計された集団的利益を代表する上で不可欠だという単純な理由からだ。それゆえ、それは市民が持続可能なやり方で政治に関わり、包括的なフィードバックを可能にし、意思決定者と市民を(再)結合する。

The 21st century is about to establish new rules for the functioning of politics and the economy. Under the growing influence of populism, the construction of the public space is subject to change—and so are intermediary institutions. Stressing the inequalities cleavage, to repoliticise the institutional arena, is only one important step among many others.

21世紀は政治と経済が機能する新たなルールを樹立しようとしている。増大するポピュリズムの影響力の下で、公共圏の構築は変化に左右され、それは中間的機構である。不平等の断絶を強調し、機構のアリーナを再政治化する事は、他の何よりも重要な唯一のステップである。

 

2019年7月 9日 (火)

ジョブ型正社員再び@WEB労政時報

WEB労政時報に「ジョブ型正社員再び」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/article.php?entry_no=76340

 去る6月6日に内閣府の規制改革推進会議が「規制改革推進に関する第5次答申~平成から令和へ~多様化が切り拓く未来~」を公表し、これを受けて6月21日に規制改革実施計画が閣議決定されました。今回の項目には、兼業・副業を促進するために労働時間通算規定を見直すことや日雇派遣の年収要件の見直しなど、労働法的に議論のネタの多い項目もあるのですが、今回はジョブ型正社員の雇用ルールの明確化について取り上げます。
 このジョブ型正社員、具体的には勤務地限定や職務限定などの限定正社員とも呼ばれますが、2013年ごろに当時の規制改革会議から雇用ルールの整備が求められ、厚生労働省が多様な正社員という名称で有識者懇談会を開き、同懇談会の報告書に基づいて、パンフレットや事例集を作成配布するなど、その円滑な導入・促進を図っています。ただ、2013年の規制改革会議答申では「労働条件の明示等、雇用管理上の留意点について取りまとめ、周知を図る」ことを求めていたのに対し、今回は労働基準法の改正という立法対応を求めている点が一歩踏み出しています。・・・・

«道幸哲也『ワークルールの論点』