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2020年1月19日 (日)

(フォーラム)「妖精さん」どう思う?@朝日新聞

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今朝の朝日新聞の7面が、一面全部充てて「(フォーラム)「妖精さん」どう思う?」という特集を組んでいます。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14332432.html

26184472_1_20200119085401 最近バズっている「働かないおじさん」を、「妖精さん」と名付けた朝日新聞の昨年の記事の拡大版、というか、ネット上ではすでに公開されていたものが紙面に載ったものですが、立教大学の中原さんとわたくしのインタビュー記事がかなりの分量掲載されています。私のは、ご覧の通り、『日本の雇用と中高年』(ちくま新書)のエッセンスになっています。

記者は53歳。年功賃金制度の下で約30年勤めてきましたが、「働かないおじさん」に対する若者世代の冷たい視線におびえてしまいます。どう受け止めればいいのか、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)研究所長の濱口桂一郎さんに聞きました。(浜田陽太郎)
       ◇
 確かに年功賃金によって、貢献度に比べて報酬が高過ぎる中高年社員が生まれやすい状況はある。でも「既得権にしがみつき、けしからん」と、世代間の対立をあおるのは非生産的です。
 中高年の中には、そうして高い処遇を受ける「得な人」も、リストラされ再就職もままならない「損な人」もいる。若者の間にも新卒で正社員になれた「得な人」もいれば、非正規の仕事しかない「損な人」もいる。日本は「得」と「損」の差が大きいことが問題なのです。
 日本は年功序列や終身雇用を前提とした「メンバーシップ型社会」として発展してきました。1922年、呉海軍工廠(こうしょう)の技術将校が、年齢と家族数で賃金を決める生活給を提唱したのが出発点とされています。これが戦後、「電産型賃金体系」として確立しました。
 一方、欧米は「ジョブ型社会」。まず職務があり、それをこなせる人をその都度採用する。仕事がなくなれば整理解雇されます。
 私が提案するのは「ジョブ型正社員」。これまでの正社員のようにムチャクチャに働かされることなく、職務や職場、労働時間が「限定」された「無期雇用」の労働者です。欧米の普通の労働者と同じです。職務がある限りは解雇されません。非正規社員のように、たとえ職務があっても雇用契約の更新が保証されず、常に雇い止めのプレッシャーにさらされることはなくなります。更新拒否を恐れてパワハラ、セクハラ被害に泣き寝入りすることもありません。ただし、仕事がなくなれば整理解雇されるという点で、これまでの「正社員」とは違います。
 「60歳定年で非正規化し、70歳まで継続雇用」という、これまでの延長線上の対応では難しい。60歳の前後で働き方が途切れないよう一部のエリートを除き、40歳ごろからジョブ型正社員として専門性を高めるキャリア軌道に移しておくのです。
 日本の大卒が「社長を目指せ」とエリートの期待を背負って必死に働かされ、モチベーションを維持できるのは、30代くらいまででしょう。それ以降は出世にしばられない「ホワイトなノンエリートの働き方」を考えた方が幸せでしょう。
 欧州では公的な制度が支えている子育てや教育費、住宅費などは、日本では年功賃金でまかなわれています。ジョブ型正社員の普及を目指すなら、社会保障制度の強化が必要です。雇用の改革に向けて、社会保障を含めた「システム全とっかえ」の議論を、慎重かつ大胆に行うべきでしょう。 

ちなみに、紙面の下の方には、「まさに自分が妖精さんなので何も言えないですが」という50代男性、「若い頃は頑張ったものだ、と言われて10倍近い給与をもらっていきますが、本当にそれなら当時支払われるべきでは? 世代間のモヤモヤで転職を考えることもあります」という20代女性、「中高年社員を妖精と呼ぶ若い人に言っておく。貴君らの背後にはもっと若い連中が迫っていることを忘れるなよ」という80代男性、「昔は妖精じゃなくて妖怪と言った。若い時はああなりたくはないと思ったが、年をとったら自分がそうなってしまった」という60代男性など、いろんな人のコメントが載ってて、これがなかなか面白い。

 

 

2020年1月18日 (土)

受動喫煙対策の求人明示義務

今日は超トリビアどんですが、

例によって焦げすーもさんのつぶやきにこたえて、

https://twitter.com/yamachan_run/status/1218379419175145473

受動喫煙対策、求人に明示義務 厚労省:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42972410X20C19A3EE8000/ …
→この前、電話質問を受けるまで知らんかったな。 

11021851_5bdc1e379a12a_20200118204701 これも、一昨年に出た拙著『日本の労働法政策』の労働安全衛生法政策の最後のところに時間切れ気味ながらこう記しておきました(p503)。

・・・また、今回の法律とは別に関係省令等により、従業員の募集を行う者に対しては、どのような受動喫煙対策を講じているかについて、募集や求人申し込みの際に明示する義務を課すことにしている。

その後、本書刊行以後の2019年5月に職業安定法施行規則が改正され、募集や求人申込みの際に明示すべき義務として、「就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項」が追加されました。そして2019年7月、労働基準局長名で「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(基発0701第1号)が発出され、労働安全衛生法の努力義務と健康増進法の措置義務等とを一体的に示しています。監督官の皆様は了知しているはずですよね。

 

 

 

 

2020年1月17日 (金)

借金肩代わりの就活サービスって・・・・

ちょっと気になる記事がビジネスインサイダーにありました。

https://www.businessinsider.jp/post-205808 (“奨学金を肩代わり”就活サービス「Crono Job」。大学生の2人に1人が「借金」している現状変える)

求職者の奨学金返済を肩代わりする求人プラットフォーム「Crono Job」は、同名の求人サイトの掲載企業に就職が決まると、借り入れ中の奨学金を企業が代わりに返済してくれるサービスだ。貸与型奨学金・民間教育ローンの利用者であれば誰でも登録でき、新卒・中途は問わない。
企業による返済は、入社後に一括で肩代わりするか勤続年数や評価に応じて段階的に行うかが、企業によって決められている。すでにDMM、ドリコム、CAMPFIRE‎など8社が契約しており、約100名の求職者が登録している。

いやちょっと待て、それって、労働契約と金銭消費貸借契約をリンクさせるって事だよね。

まえにも本ブログで紹介したことがありますが、2003年に職業安定法が改正されるまでは、こういう規定が存在していたのです。

(兼業の禁止)
第三十三条の四 料理店業、飲食店業、旅館業、古物商、質屋業、貸金業、両替業その他これらに類する営業を行う者は、職業紹介事業を行うことができない。

なぜこんな規定があったのか。

おらぁ、貸した金、利子付けて返せゃ。返せねえなら体で返してもらおうか・・・。 

という世界があったからですね。そんな野蛮な世界はもうなくなったから(ほんまかいな)という理由でこの規定は17年前に削除されたのですが、ほんまかいな。

今回のビジネスモデルはもちろんこれとは違い、この人材ビジネス自体が金貸しになるわけではありませんが、そのあっせんで当該借金を背負った学生さんを雇う会社は、単に「仕事してくれたから給料払うよ」というだけの立場ではなく、「貸した金返せや」と言える立場になるわけです。DMMとかが。

うん、確かに現行法上どこにも問題はないといえばないのですが、なんだかとても胸騒ぎがするのは心配のしすぎでしょうか。

 

飯塚健二『「職場のやっかいな人間関係」に負けない法』

51klb82a5tl 飯塚健二『「職場のやっかいな人間関係」に負けない法』(三笠書房)をお送りいただきました。

https://www.mikasashobo.co.jp/c/books/?id=100280100

こんなメソッドがあったのか! 
ベルギーで開発された、人の「行動特性」を知る画期的なツール――
「iWAM(アイワム)」をベースに提案する人間関係の戦略
“出しゃばり”人間には → 「お先にどうぞ戦略」
“猪突猛進”人間には → 「目標共有戦略」
“心配性”人間には → 「不安言語化戦略」
“頑固一徹”人間には → 「問答法戦略」
“優柔不断”人間には → 「偉い人がいっている戦略」
“歯に衣着せぬ”人間には → 「ビシッと対処する戦略」

かわす、受け流す、立ち向かう――職場の「あの人」にもう振り回されない法 

まあ、人間関係術ということでしょうか。

 

EU経団連が中国との関係見直しを提言

Unice 欧州委員会が協議を開始したEU最低賃金という案について、欧州労連はもちろん賛成してますが、経営側はどう言っているかなと思って、欧州経団連(ビジネス・ヨーロッパ)のサイトを見に行ったら、そちらへのコメントはまだ出ていませんが、昨日付で「EUは中国との関係を抜本的に見直すべき」という意見書をアップしていました。これがなかなか興味深い。

https://www.businesseurope.eu/publications/eu-should-fundamentally-rebalance-its-relationship-china

意見書本体は160ページに及ぶ大部の冊子ですが、

https://www.businesseurope.eu/sites/buseur/files/media/reports_and_studies/2020-01-16_the_eu_and_china_-_addressing_the_systemic_challenge_-_full_paper.pdf

要するに何を言っているかというと、

Systemic challenge and market-distorting practices must be addressed 

近年の中国の国家主導経済体制に対して、市場を歪めると批判しているんですね。

European business wants to build a stronger and fairer economic relationship, but systemic challenges prevent European companies from untapping this economic potential. The obstacles created by China’s state-led economy lead to market distortions in China, in the EU and in third countries. We call on the EU to reconsider how it engages with China, so that it can seize the opportunities and mitigate the distortions and challenges created by China’s state-led economy. 

近年、香港や台湾など、政治的自由の問題が話題になっていますが、中国の経済体制の問題がEUでここまで深刻になっているというのも、念頭に置いておくべきことなのでしょう。

Unicechina なお、親切なことに中国語のサマリーまで用意してあります。

https://www.businesseurope.eu/sites/buseur/files/media/reports_and_studies/2020-01-16_the_eu_and_china_-_executive_summary_chinese_translation.pdf

 

2020年1月16日 (木)

EUが最低賃金について労使団体に第一次協議

一昨日(1月14日)付けで、欧州委員会が最低賃金に関する労使団体に対する第一次協議を開始したようです。

https://ec.europa.eu/social/BlobServlet?docId=22219&langId=en (First phase consultation of Social Partners under Article 154 TFEU on a possible action addressing the challenges related to fair minimum wages)

これは、なまじEU労働法を知っている人にとっては却って驚くべき話です。なぜなら、EU運営条約は明文の規定で以て賃金をEUの権限から排除しているからです。

とはいえ、これは政治的な案件なのかも知れません。

ブレグジットで、何でも反対するイギリスはもう何も言わなくなるという状況もあるのかも。

もう少し情報を調べてみる必要がありそうです。

 

2020年1月15日 (水)

短時間勤務有期雇用教職員(最年少准教授)の懲戒解雇

例の最年少准教授(短時間勤務有期雇用教職員)に対し、雇用主である国立大学法人東京大学が懲戒解雇の処分を下したようです。

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z1304_00124.html

東京大学は、大学院情報学環 大澤昇平特任准教授(以下「大澤特任准教授」という。)について、以下の事実があったことを認定し、1月15日付けで、懲戒解雇の懲戒処分を行った。
<認定する事実>
 大澤特任准教授は、ツイッターの自らのアカウントにおいて、プロフィールに「東大最年少准教授」と記載し、以下の投稿を行った。
(1) 国籍又は民族を理由とする差別的な投稿
(2) 本学大学院情報学環に設置されたアジア情報社会コースが反日勢力に支配されているかのような印象を与え、社会的評価を低下させる投稿
(3) 本学東洋文化研究所が特定の国の支配下にあるかのような印象を与え、社会的評価を低下させる投稿
(4) 元本学特任教員を根拠なく誹謗・中傷する投稿
(5) 本学大学院情報学環に所属する教員の人格権を侵害する投稿
大澤特任准教授の行為は、東京大学短時間勤務有期雇用教職員就業規則第85条第1項第5号に定める「大学法人の名誉又は信用を著しく傷つけた場合」及び同項第8号に定める「その他この規則によって遵守すべき事項に違反し、又は前各号に準ずる不都合な行為があった場合」に該当することから、同規則第86条第6号に定める懲戒解雇の懲戒処分としたものである。 

その東京大学短時間勤務有期雇用教職員就業規則も添付されておりまして、

https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400130020.pdf

(懲戒の事由)
第85条 短時間勤務有期雇用教職員が次の各号の一に該当する場合には、懲戒に処する。
(5) 大学法人の名誉又は信用を著しく傷つけた場合 

(懲戒)
第86条 短時間勤務有期雇用教職員の懲戒は、戒告、減給、出勤停止、停職、諭旨解雇又 は懲戒解雇の区分によるものとする。
(6) 懲戒解雇 予告期間を設けないで即時に解雇する。  

というわけで、事業所内部における法的根拠は上記の通りですが、いうまでもなく大澤氏にはこれを不当解雇として訴える権利があります。

その場合の参照条文は労働契約法のこれですが、

(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 

懲戒処分としても解雇としても、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるかどうかが問題になるわけですが、

実は、大澤氏はテニュアのある常勤准教授ではなく、短時間勤務有期雇用教職員ですので、今回の解雇は労働契約法16条の解雇ではなく、次の17条の方になります。

(契約期間中の解雇等)
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。 

おそらく圧倒的に多くの方々(労働法関係者を除く)の常識に反すると思われますが、有期契約労働者の期間途中解雇は無期契約労働者の解雇よりも(理屈の上では、上だけでは)難しいのです。後者は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性があればいいのに、前者は「やむを得ない事由」が必要なんですから。それがそうなっていないのはなぜかというのは、雇用システム論を小一時間ばかり論ずる必要があるので、ここではパスしますが。

もひとつ、労働行政関係者であればここで思いだしておかなければならない規定がありますね。労働基準法20条1項但し書きです。

(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。 

今回の懲戒解雇は「「大学法人の名誉又は信用を著しく傷つけた場合」という「労働者の責に帰すべき事由に基いて」「予告期間を設けないで即時に解雇する」ものですから、本条3項により19条第2項が準用されます。

(解雇制限)
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。 

つまり、今回の懲戒解雇は、それが即時解雇であるがゆえに労働基準監督署の認定を受ける必要があります。まあ、労働法学者が何人もいる東京大学ですから、そこは抜かりはないでしょうが。

ちなみに、なぜかブログが閉鎖されている労務屋さんが、ツイッターで本件にコメントしていますが、

https://twitter.com/roumuya/status/1217346484024168448

ということで懲戒処分を行うことは正当としても、解雇は重きに失するのではないかというのが私の印象です。あくまで過去の判例などをもとにした検討であり、私の価値観は一切含まれておりませんのでどうかそのようにお願いします。 

わたしは解雇相当と思いましたが、それは当初の民族差別的発言それ自体というよりも、いったん反省したような発言をしながら、その後東大の部局や教員を誹謗中傷するような発言を繰り返したことが悪質と判断されたものと思われます。

名古屋と大阪でもやります

 

Nagoya1

 

Osaka

2020年1月14日 (火)

石井知章・及川淳子編『六四と一九八九』または「進歩的」「左派」の「歴史修正主義」

487699 石井知章・及川淳子編『六四と一九八九 習近平帝国とどう向き合うのか』(白水社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.hakusuisha.co.jp/book/b487699.html

1989年に起きた一連の出来事が、急速に歪められ、忘却されつつある。その中心にあるのが六四・天安門事件である。
従来、「民主化の第三の波」(ハンチントン)や「国家超越的な共同社会」(M・ウォルツァー)への動きと理解されてきた〈一九八九〉は、いつのまにか「新自由主義革命」として矮小化されつつある。「民主化」ではなく「新自由主義」の確立がこの画期を特徴づけるというのだ。
果たしてそうなのだろうか――。本書はこの疑問から出発している。
「新自由主義革命」と事態を捉えた場合、30年後に緊迫化した香港情勢はどう理解すればいいのだろうか。また「紅い帝国」(李偉東)として世界に君臨しつつある習近平体制と民主化という視角なしに果たして対峙できるのか。
本書は、アンドリュー・ネイサン、胡平、王丹、張博樹、李偉東、矢吹晋、石井知章、及川淳子という、これ以上望めない世界的権威が六四と一九八九という歴史的事件に挑んだ。
その中核にあるのは、危機に瀕しているデモクラシーと市民社会の擁護である。過去のものとして暴力的に忘却されつつある両者をいかに恢復するか。その答えが六四・天安門事件にあるのだ。現代のはじまりとしての一九八九へ。 

本書もまた、あまりにも時宜に適したこの時期に世に問われる運命の本ですね。奥付の発行日2020年1月10日というのは、台湾の総統選挙で蔡英文氏が地滑り的勝利を収めた1月11日のその前日です。

本書の中身自体は、昨年6月に明治大学で開かれた国際シンポジウムの報告集ですが、まさに香港と台湾の市民がノーを突きつけている中国共産党の独裁体制を徹底して分析しているこの本ほど、今この時に読まれるべき本はほかにあり得ないという唯一の本といえましょう。

序章 「六四と一九八九」  石井知章
第一章 習近平と天安門の教訓  アンドリュー・J・ネイサン(大熊雄一郎訳)
第二章 「六四」が中国を変え、世界をも変えた  胡平(及川淳子訳)
第三章 天安門事件の歴史的意義  王丹(大熊雄一郎訳)
第四章 三十年後に見る天安門事件  張博樹(大熊雄一郎訳)
第五章 天安門事件が生んだ今日の中国  李偉東(大熊雄一郎訳)
第六章 趙紫陽と天安門事件ーー労働者を巡る民主化の挫折  石井知章
第七章 「一九八九年」の知的系譜ーー中国と東欧を繋ぐ作家たち  及川淳子
第八章 新全体主義と「逆立ち全体主義」との狭間で  矢吹晋
終章 「六四・天安門事件」を読む  及川淳子
あとがき  石井知章 

もちろん、本書の最大の読みどころは、中国から亡命して言論活動を続けている在外中国知識人による諸論考ですが、心中の炎を秘めつつ冷静な筆致を失わないそれらに比べて、序章とあとがきで編者の石井知章さんがほとんど噴出まぎわにまで至っているある種の「進歩的」「左派」に対する憤怒の思いが興味深いです。彼によれば、岩波の『思想』誌などに集うそういう「進歩的」「左派」は、習近平体制に対する「忖度」で、1989年問題に対する「沈黙」を繰り返しているというのです。その文章がどれくらい激情的かというとですね、

・・・だが、これは原因と結果の順番をまったくはき違えた深刻なる思想的倒錯であり、歴史的事実をあからさまにねじ曲げる本末転倒であるといわざるをえない。なぜなら、このポスト1989で創出された政治経済システムにおいて、まっさきに「新自由主義」体制を導入したのは、「社会主義体制」が崩壊した東欧ではなく、むしろ「血の弾圧」によって専制的権力の基礎をより盤石なものとした「現存する社会主義」、すなわち、ほかでもない一党独裁国家そのものとしての中国だったからである。・・・

・・・これらの言説は、汪暉や柄谷行人らによって推し進められた、いわば「日中間共同イデオロギー戦略の創出」とでも呼ぶべき知的作業の一環として理解できる。それは、習近平という「唯一の所有者」(マルクス)の政治的意志を密かに「忖度」しつつ、しかも「脱政治化」することに見事に成功しているという点において極めて象徴的である。これらはいずれも、「事実」を「事実」として認めることのできない、日本の歪んだ「進歩的」知識人たち、そしてシニシズムの言説に依拠してしか社会的には一言も発言できない、中国国内の「新左派」知識人たちの基本的性格をまざまざと示すものである。・・・

あとがきでは、石井さんはこういう「進歩的」「左派」をつかまえて「歴史修正主義」とまで罵倒しています。でも、それはまったく同感です。

 

 

 

 

 

2020年1月11日 (土)

OECDは団体交渉を断固お勧め

Oecdnego なぜかOECD東京センターの日本語ホームページにはまだ載ってないのですが、昨年11月OECDは「Negotiating Our Way Up : Collective Bargaining in a Changing World of Work」という報告書を発表しました。表題は何とも訳しにくいのですが、我々の前途を交渉で高めていこう、みたいな感じでしょうか。副題は文字通りで、変化する労働の世界における団体交渉、ですね。

https://www.oecd-ilibrary.org/docserver/1fd2da34-en.pdf?expires=1578720194&id=id&accname=guest&checksum=AAE2689D9E55FEBDBD5547DC25A2D2B2

OECDといえば、1990年代には新自由主義的な政策を唱道する奴らみたいに思われていましたが、その後21世紀にはどんどんソーシャル志向になっていき、遂に団体交渉をほめたたえる報告書を出すに至りました。

この270ページに及ぶ報告書は、またじっくり読んでいただくとして、ここではエグゼクティブ・サマリーだけちらりと見ておきましょう。

https://www.oecd-ilibrary.org/sites/c0bde291-en/index.html?itemId=/content/component/c0bde291-en

Co-ordination in wage bargaining is a key ingredient for good labour market performance  

Wage co-ordination across sectors and bargaining units is a particularly important dimension of collective bargaining. Bargaining systems characterised by a high degree of wage co-ordination across bargaining units are associated with higher employment and lower unemployment for all workers, compared to fully decentralised systems. This is because co-ordination helps the social partners to account for the business-cycle situation and the macroeconomic effects of wage agreements on competitiveness. ・・・

賃金交渉の調整はよき労働市場パフォーマンスの重要な要素だ

業種や交渉単位を超えた賃金調整は団体交渉のとりわけ重要な次元である。交渉単位を超えた高水準の賃金調整で特徴づけられる交渉システムは完全に分権化されたシステムに比べ、高水準の雇用と低い失業率の傾向がある。これは調整が労使団体に景気循環の状況と賃金協定の競争力に対するマクロ経済的影響を考慮することを助けるからだ。・・・

Collective bargaining systems and workers’ voice arrangements also matter for job quality 

This publication also explores the link between collective bargaining systems, workers’ voice arrangements, and the non-monetary aspects of job quality. In particular, it analyses social partners’ engagement in occupational safety and health, working time, training and re-skilling policies, management practices, and the prevention of workplace intimidation and discrimination. The quality of the working environment is higher on average in countries with well-organised social partners and a large coverage of collective agreements.  ・・・

団体交渉システムと労働者の発言のしくみは仕事の質にも重要だ

本報告書は、団体交渉システム、労働者の発言のしくみと、仕事の質の非貨幣的側面との関係も探求した。とりわけ、労働安全衛生、労働時間、職業訓練政策、経営慣行、職場のいじめや差別の防止への労使団体のかかわりを分析した。労働環境の質は、労使団体がよく組織され、労働協約の適用範囲が広い国々においてより高い。・・・

Collective bargaining and workers’ voice play an important role in preventing inequalities in a changing world of work, but they need to adapt  

As innovation, globalisation and population ageing transform the world of work, collective bargaining, when it is based on mutual trust between social partners, can provide a means to reach balanced and tailored solutions to issues of common concerns. It can ensure that all workers and companies benefit from the current transformations. ・・・・ 

団体交渉と労働者の発言は変化する労働の世界における格差の防止において重要な役割を果たすが適応する必要がある

技術革新、グローバル化、人口の高齢化が労働の世界を変える中で、団体交渉はそれが労使団体の相互信頼に基づくならば共通の関心事項に対するバランスの取れた解決策にたどり着く手段を提供しうる。それはすべての労働者と企業が今日の転換から利益を得ることを確保しうる。・・・

Making the most of collective bargaining and workers’ voice to address old and new labour market challenges  

This publication argues that, despite undeniable difficulties, collective bargaining and workers’ voice remain important and flexible instruments that should be mobilised to help workers and companies face the transition and ensure an inclusive and prosperous future of work. The need for co-ordination and negotiation mechanisms between employers and workers is heightened in the changing world of work. Whether considering key issues such as wage inequality, job quality, workplace adaptation to the use of new technologies, or support for workers displaced by shifts in industries, collective bargaining and workers’ voice can complement public policies to produce tailored and balanced solutions. The alternatives to collective bargaining are often either state regulation or no bargaining at all, since individual bargaining is not always a realistic option as many employees are not in a situation to effectively negotiate their terms of employment with their employer. ・・・ 

古くて新しい労働市場の課題に取り組むために団体交渉と労働者の発言を最大限に活用しよう

本報告書は否定しがたい困難にもかかわらず、団体交渉と労働者の発言が重要で柔軟な手段であり続け、変化に直面する労働者と企業を助け、包摂的で繁栄する労働の未来を確保するために動員されるべきだと主張する。使用者と労働者の間の調整と交渉のメカニズムの必要性は変化する労働の世界の中で高まっている。賃金格差、仕事の質、新技術の活用への職場の対応、産業転換による離職者への援助などの重要問題を考える際に、団体交渉と労働者の発言はバランスの取れた解決を生み出す上で公共政策を補完しうる。団体交渉の代替案はしばしば国家による規制か全く交渉なしになる。というのは、多くの被用者はその雇用条件について使用者と有効に交渉できるような状況にはないので、個別交渉は必ずしも現実的な選択肢ではないからだ。・・・・

 

マクロ世界史の時代区分と日本

Chikuma ちくま新書と言えば、私も『日本の雇用と中高年』を出しているんですが、そこが創業80周年記念ということで『世界哲学史』全8巻を刊行するんだそうです。

http://www.chikumashobo.co.jp/special/world_philosophy/

わたくしは哲学史に口をはさむ気は全くありませんが、そのラインナップを見て思ったことがあります。全8巻は古代2巻、中世3巻、近代2巻、現代1巻という構成ですが、各巻の中に西洋、中洋、東洋、それに日本もまんべんなく配置されています。で、その日本の章なんですが、

古代2巻に日本の章はありません。第3巻の中世Ⅰに「日本密教の世界観」が初めて登場、第4巻の中世Ⅱに「鎌倉時代の仏教」がでてきます。

そして第6巻の近代Ⅰに「江戸時代の「情」の思想」、第7巻の近代Ⅱに「「文明」と近代日本」が載っています。

いや、各巻に載っている世界各地の哲学の中に置けばまさに同時代の日本の哲学なので何の違和感もないのですが、これらだけを取り出して日本の歴史の中に配置したら、

なにぃ、平安時代が中世だって!?

なにぃ、江戸時代が近代だって!?

という違和感を引き出してしまうでしょう。

グローバルな視点から見れば、当然平安時代は中世であり、江戸時代は近代なのに、日本史の感覚ではそれが奇妙に見えてしまうということは、そっちの感覚がゆがんでいるということなのでしょうね。

200803000220 という話は、知っている方は知っている通り、すでに井上章一さんが『日本に古代はあったのか』(角川選書)でるる論じています。

https://www.kadokawa.co.jp/product/200803000220/

たまたま『世界哲学史』という企画があったのでそれをネタにしましたが、これはすべての分野で日本も含めたマクロ世界史を叙述しようとしたら起こることでしょう。同時代の世界史と時代区分がことごとく食い違う日本史学というのは、やはりどこか歪んでいる感じがします。

2020年1月 9日 (木)

梅崎修・池田心豪・藤本真編著『労働・職場調査ガイドブック』

9784502321917_240 梅崎修・池田心豪・藤本真編著『労働・職場調査ガイドブック―多様な手法で探索する働く人たちの世界』(中央経済社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.biz-book.jp/労働・職場調査ガイドブック―多様な手法で探索する働く人たちの世界/isbn/978-4-502-32191-7

質的・数量的分析の手法をコンパクト&わかりやすく解説。手法ごとに執筆者が実際に行った調査の内容や経験談を紹介。情報の集め方や職場見学の留意点など便利な知識が満載。新しい時代の労働・職場調査の教科書。 

編著者の3人もよく存じ上げていますが、中の各章を執筆している方々の多くもいろんなところでお付き合いのある方が多く、日本の労働研究者の中堅から若手の人々が、それぞれに方法論と、それを使った研究を紹介しているという感じの本になっています。

各章の執筆者名はありませんが、大体こういう構成になっています。

序章労働・職場調査のすすめ
[第1部質的情報を使いこなす]
第1章企業の競争力や生産性を解明する:聞き取り調査(職場)
第2章制度の成り立ちを把握する:聞き取り調査(制度)
第3章職場を通じた「コミュニティ」を捉える:インタビューに基づく事例研究
第4章職場の内側から調査する:エスノグラフィー・参与観察
第5章仕事の実践を記述する:エスノメソドロジー
第6章仕事人生に耳を傾ける:ライフヒストリー
第7章労働の歴史を掘り起こす:オーラルヒストリー
第8章資料の中に人々の思いを探る:テキスト分析
第9章一緒に課題に取り組む:アクションリサーチ
第10章働く人の学びを捉える:質的データからのカテゴリー析出
[第2部数量的に把握する]
第11章制度の仕組みと機能を明らかにする:企業・従業員調査
第12章働く人々の価値観を捉える:社会意識調査
第13章働く人々の心理を捉える:心理統計・OB(Organizational Behavior)
第14章職業人生を描く:経歴・パネル調査
第15章働く人々の空間移動:人文地理学
第16章労働市場の姿を描く:マクロ労働統計の使い方
[第3部調査の道具を身につける]
文献の調べ方/歴史資料/調査倫理/職場見学(工場見学)/文化的コンテンツの利用法/白書・業界誌などの活用/海外調査/レポート・論文・報告書の作成/産学連携プロジェクトの運営/研究会を組織する/データ・アーカイブの活用法  

本ブログでよく紹介している研究の手法でいうと、南雲智映さんによる第7章のオーラルヒストリーが、何回も紹介しているゼンセンの二宮誠さんの話をまとめた経験を取り上げています。

あと、鈴木誠さんが書かれている「歴史資料」では、彼が大学院修士課程時代に、面識のない三菱電機労組の吉村俊夫氏に電話をかけて、内部の歴史資料を見せてほしいと何回も頼み込んで遂に見せてもらった話を披露しています。

1月8日の日経新聞社説

昨日(1月8日)の日経新聞の社説が「日本的な雇用管理を断ち切るとき」というタイトルで、私の名前を引き合いに出して論じています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53950400X21C19A2SHF000/

・・・・労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎研究所長が日本の雇用契約を「空白の石版」と言うように、一般に企業は職務をはっきり定めずに人を雇ってきた。幅広く経験を積ませるためだが、高度な専門性を備えた人材は育ちにくい。職務を明確にした「ジョブ型雇用」を積極的に取り入れるべきだ。・・・・・

この引用部分は累次の拙著で繰り返し語ってきたことなのですが、実は、冒頭の文脈とは若干齟齬があるような気がします。

このままでは日本企業は、イノベーションや価値創造の担い手が先細りになる。人工知能(AI)やビッグデータ、ロボットなどが広がる第4次産業革命に、人材育成が適合していないからだ。・・・・ 

時系列的に言うと、1980年代の製造職場のデジタル化が進んだME時代には、日本的なメンバーシップ雇用の優位性が喧伝されたのに対して、1990年代末から2000年代の事務職場のデジタル化が進んだICT時代には、そのメンバーシップ型の不適合性が強調され、欧米型のジョブ型雇用が改めて見直された(けれども、企業の人事管理はあまり変わらなかった)わけですが、2010年代半ばから世界的に注目されている第4次産業革命といわれるAI時代には、専門職のデジタル化が進んでいき、そのジョブ型自体の基盤が揺らいでいくことになるので、この議論にはずれがあるのです。

もちろん、日本独自の文脈では(今さらながら)ジョブ型への移行を強調することに意義があるわけですが、世界的な文脈とはズレがあることは意識した方がいいと思います。

 

2020年1月 8日 (水)

労働政策レポート『年金保険の労働法政策』

Nenkin JILPTから労働政策レポートNo.13として『年金保険の労働法政策』を出しました。

https://www.jil.go.jp/institute/rodo/2020/013.html

研究の目的 年金制度改正の主たる論点である短時間労働者への適用拡大や受給開始時期の選択幅拡大等について、関連事項も含めて歴史的にその経緯の詳細を跡づけ、年金法政策と労働法政策との関連性を明らかにすること。 
主な事実発見 厳密な意味での新たな事実発見はない。厚生年金保険法には元々臨時日雇労働者の適用除外は存在したが、短時間労働者は適用除外されていなかった。1980年の課長内翰でこれが適用除外されたが、その背景には日経連の要望、雇用保険法の取扱い、健康保険法における被扶養者の扱い等があった。21世紀以降、非正規労働者の均等均衡処遇が労働政策の課題となる中で、短時間労働者への厚生年金の適用拡大が繰り返し試みられ、2012年改正で実現したがなお多くの中小企業が除外されており、その拡大が目指されている。

基本的に年金政策に関わる過去の文献の中から労働政策と関わりのある適用対象者の範囲の変遷とか受給開始年齢をめぐる経緯とかを取り出してきて記述したものですので、政策当局にとっては個別的には(おそらく)既知の事実の集積でしょうが、労働政策と社会保障政策の関係を歴史的にこうした形でまとめたものは私の知る限りほとんど存在しないので、政策論議の素材として政労使その他の研究者にとってはなにがしか有用なのではないかと思います。

まえがき
第1章 前史:健康保険法等
 1 健康保険法
 2 健康保険法の適用拡大と「被扶養者」の登場
 3 船員保険法
第2章 労働者年金保険法から厚生年金保険法へ
 1 労働者年金保険法
 2 厚生年金保険法
 3 1947年改正
 4 社会保障制度審議会の設置
第3章 現行厚生年金保険法と国民年金法
 1 1953年改正
 2 1954年厚生年金保険法
 3 国民年金法の制定
第4章 被用者保険における非正規労働者の取扱い
 1 被用者保険と臨時日雇労働者
 2 1980年内翰
 3 1980年内翰の背景
 4 被扶養者の範囲
 5 複数就業者への適用
 6 非雇用就業者への適用
第5章 厚生年金基金と企業年金諸法
 1 退職金から企業年金へ
 2 厚生年金基金
 3 企業年金制度の見直しへ
 4 確定拠出年金
 5 確定給付企業年金
 6 厚生年金基金の廃止
第6章 1985年改正
 1 被用者の妻に係る議論
 2 基礎年金導入への道
 3 第3号被保険者の導入
 4 学生の取扱い
 5 厚生年金保険の適用対象
 6 老齢厚生年金の支給開始年齢
第7章 年金制度と高齢者雇用との関係
 1 1954年厚生年金保険法と60歳定年延長
 2 65歳への支給開始年齢の引上げと継続雇用政策-1989年の失敗
 3 65歳への支給開始年齢の引上げと継続雇用政策-定額部分
 4 65歳への支給開始年齢の引上げと継続雇用政策-報酬比例部分
 5 支給の繰上げ、繰下げ
 6 在職老齢年金
 7 21世紀の年金政策の動き
第8章 第3号被保険者をめぐる問題
 1 年金審議会意見
 2 女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会
 3 男女共同参画政策からの提起
 4 2004年改正
 5 運用3号問題
 6 その後の検討
第9章 育児期間等の配慮措置
第10章 非典型労働者への適用拡大
 1 前史
 2 2004年改正時の検討
 3 2007年改正案
 4 2012年改正
 5 2016年改正
第11章 2020年改正に向けて
 1 働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会
 2 70歳までの雇用就業機会の確保
 3 社会保障審議会年金部会
年表 

ちょうどこれから召集される通常国会で年金法改正案が審議されるので、その際に、この問題はそもそもどういう経緯でこうなっているんだろうと思ったときに、参照していただければ幸いです。今回の改正事項に入っていませんが、いろいろと話題になる第3号被保険者についても、かなり詳しくその経緯を述べています。

 

 

権丈英子『ちょっと気になる「働き方」の話』

491627 権丈英子『ちょっと気になる「働き方」の話』(勁草書房)をおおくりいただきました。ありがとうございます。

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b491627.html

少子高齢化の進行により改革が迫られる日本の労働問題。多くの人が労働市場に参加できる働きやすい環境づくりを進めるには、どのような壁があり、いかにすれば乗り越えられるのか。これからの働き方を考える上での課題を網羅、議論の全容を見渡す。働き方と社会保障を一体のシステムとして、根本からわかりやすく学び、教えるための入門書。  

「ちょっと気になる」シリーズの4冊目ですが、こちらは権丈(夫)ではなく権丈(妻)による、社会保障ではなく労働問題の本です。

上の書影を一見するとおなじみの「へのへのもへじ」ならぬ「へめへめしこじ」がとてもカラフルにほほえんでいます。なるほど。

本書は、第1章が働き方改革の概観、第2章以下がいくつかのトピックを取り上げて論じており、第2章が高齢者雇用、第3章が女性活躍、第4章がパートタイム、第5章がオランダですが、実は「ちょっと気になる」シリーズの一冊として、いちばんおいしいところは巻末の「知識補給」にたくさん詰め込まれています。25項目、約90ページ分。

【知識補給】
 同音異義語の同一労働同一賃金──本来の意味と日本での意味
 若年の雇用と政策
 最低賃金をめぐる議論の時代的推移
 障害者の就労と政策
 なぜだか2つもある生産性,どっちが正当?──物的生産性と付加価値生産性
 日本で高齢者,女性のWork Longerを実現するためには
 高齢者の就業率が高まった原因は?
 戦後日本の出生動向
 2つの出生率指標と出産タイミング
 出生率と学歴
 小さく産まれ大きく育った均等法と「間接差別」
 セクハラ,マタハラ,そしてブラック企業の年表
 雇用保険と積極的雇用政策
 保育所利用率の推移
 公的年金保険制度と被保険者数
 国民年金保険料の産前産後期間の免除制度にみる社会保険という助けあい制度の意味
 労使の交渉上の地歩(bargaining position)のアンバランス
 適用拡大は絶対正義!!?
 賃金を上げ,適用拡大を進めるのが成長戦略になるという話
 定年制はなぜ存在するのか?
 「くるみん」を取り巻く出来事
 Esping-Andersenの福祉国家の3つの類型と日本の家族政策
 ワーク・ライフ・バランス憲章のちょっとした進化
 日本のパートタイム労働者の特殊性
 パートタイム社会オランダの育児休業制度は日本とどこが違う? 

実は、この中で思わず引き込まれてしまったのが、p247からの「セクハラ,マタハラ,そしてブラック企業の年表」。

なんとこれ、1984年から2018年までの流行語大賞受賞語で働き方に関係しそうなものを表にしたものですが、見ていくと、ああ、これこの時代にはやったんだ、という思い出が噴きだしてきますよ。

 

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