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2021年3月 1日 (月)

雑誌『改革者』3月号に書評

21hyoushi03gatsu 政策研究フォーラムの雑誌『改革者』3月号に『働き方改革の世界史』の書評が載りました。

http://www.seiken-forum.jp/publish/top.html

評者は東洋大学の川上淳之さんです。

「新書で読める上級労使関係史講義」と評していただいています。

・・・・・本書は、その議論の内容を毎回ゴンパースやパールマンなどの著書を紹介する形式をとるため、時として扱われる内容が多くなり、読者として読みにくいと感じられるかもしれない。著者たちは、その点を配慮してか、本書を語りかけるような口調の講義形式で記述するなど、配慮をしている。その点で、読みやすくなるように書かれてはいるが、講義のつかみにあたる雑談部分は若干行き過ぎている箇所があるようにも感じられた。本書は、その内容で十分興味深いものである。  各章の持つ意味を考えながら読むためには、そこで紹介される制度の参照点として、第五章の日本の労使関係を先に読み準備することも勧めたい。・・・・・ 

 

2021年2月27日 (土)

EUがプラットフォーム労働者の労働条件指令に向けて第1次協議

Blobservlet 去る2月24日、欧州委員会がプラットフォーム労働者の労働条件に関して労使に対する第1次協議を開始しました。

https://ec.europa.eu/social/main.jsp?langId=en&catId=89&furtherNews=yes&newsId=9932

Today, the Commission launches the first-stage consultation of European social partners on how to improve the working conditions for people working through digital labour platforms.

この問題については、今までも結構いろいろ書いてきましたが、いよいよプラットフォーム労働者の労働条件指令に向けた動きが始まるようです。

というわけで、これから解説を書いていきますが、それが活字になって皆様の目に触れるようになる前に、来週水曜日、令和3年3月3日の3時からという超ゾロ目の縁起のいい日時にzoomで行う東京労働大学講座特別講座の「フリーランスの労働法政策」の最後のところで、この協議文書の内容、とくにこういう指令案にしたいという趣旨がにじみ出ているところの紹介をしたいと思います。

お申込みはこちらからどうぞ

https://www.jil.go.jp/kouza/tokubetsu/20210303/index.html

Freelance_20210227215201

 

 

2021年2月25日 (木)

『新しい労働社会』第12刷

131039145988913400963_20210225221501 『新しい労働社会-雇用システムの再構築へ』(岩波新書)が刊行されたのは2009年7月。もう12年近く前になり、日本の労働の世界もだいぶ変化がありましたが、なお読み継がれて本日第12刷が出ました。

昨年は「ジョブ型」「メンバーシップ型」という言葉が、いささか誤解にまみれた形で流行しましたが、この概念を定式化したのは本書でした。

改めてこの間本書を愛読していただいた読者の皆様に心より感謝申し上げます。

はじめに
 
序章 問題の根源はどこにあるか-日本型雇用システムを考える
 1 日本型雇用システムの本質-雇用契約の性質
  職務のない雇用契約
  長期雇用制度
  年功賃金制度
  企業別組合
 2 日本の労務管理の特徴
  雇用管理の特徴
  報酬管理の特徴
  労使関係の特徴
 3 日本型雇用システムの外側と周辺領域
  非正規労働者
  女性労働者
  中小企業労働者
 
第1章 働きすぎの正社員にワークライフバランスを
 1 「名ばかり管理職」はなぜいけないのか?
  マクドナルド裁判
  管理職と管理監督者
  スタッフ管理職
  (コラム)組合員資格と管理職
 2 ホワイトカラーエグゼンプションの虚構と真実
  ホワイトカラーエグゼンプションの提起
  政府の奇妙な理屈付けと経営側の追随
  労働側のまともな反論
  「残業代ゼロ法案」というフレームアップ
  (コラム)月給制と時給制
 3 いのちと健康を守る労働時間規制へ
  消えた「健康」の発想
  過重労働問題と労働政策の転換
  まずはEU型の休息期間規制を
 4 生活と両立できる労働時間を
  日本型「時短」の欠落点
  ワークライフバランスの登場
  普通の男女労働者のための基準
  (コラム)ワークシェアリングとは何をすることか?
 5 解雇規制は何のためにあるのか?
  恒常的時間外労働と整理解雇法理
  遠距離配転や非正規労働者と整理解雇法理
  生活との両立を守る解雇規制こそ必要
 
第2章 非正規労働者の本当の問題は何か?
 1 偽装請負は本当にいけないのか?
  偽装請負追及キャンペーン
  「偽装請負」とはそもそも何か?
  経団連会長の指摘
  請負労働の労働法規制
 2 労働力需給システムの再構成
  登録型派遣事業の本質
  労働組合の労働者供給事業
  臨時日雇い型有料職業紹介事業
  労働力需給システムの再構成
  (コラム)日雇い派遣事業は本当にいけないのか?
 3 日本の派遣労働法制の問題点
  「派遣切り」の衝撃
  EUの派遣労働指令
  業務限定の問題点
  「ファイリング」の無理
  製造業派遣禁止論の無理
 4 偽装有期労働にこそ問題がある
  登録型派遣事業禁止論の本質
  EUの有期労働指令
  有期労働契約をどう規制すべきか
 5 均衡処遇がつくる本当の多様就業社会
  均衡処遇の必要性
  職能資格制度における「均衡処遇」
  期間比例原則の可能性
  賃金制度改革の社会的条件
  (コラム)職能資格制度と男女賃金差別
 
第3章 賃金と社会保障のベストミックス-働くことが得になる社会へ
 1 ワーキングプアの発見
  ワーキングプアの発見
  プアでなかった非正規労働者像
  生活できない最低賃金
 2 生活給制度のメリットとデメリット
  生活給制度はいかに形成されたか
  生活給制度のメリット
  生活給制度のデメリット
  日本的フレクシキュリティのゆらぎ
  (コラム)家族手当の社会的文脈
 3 年齢に基づく雇用システム
  年齢差別問題の再登場
  年長若年者への年齢差別問題
  学卒一括採用システム
 4 職業教育訓練システムの再構築
  公的人材システム中心の構想
  企業内教育訓練体制の確立
  職業指向型教育システムに向けて
  日本版デュアルシステムの可能性
  (コラム)教育は消費か投資か?
 5 教育費や住宅費を社会的に支える仕組み
  生計費をまかなうのは賃金か社会保障か
  二つの正義のはざま
  教育費や住宅費を支える仕組み
  (コラム)シングルマザーを支えた児童扶養手当とその奇妙な改革
 6 雇用保険と生活保護のはざま
  雇用保険と生活保護の断層
  日本型雇用システムに対応した雇用保険制度のほころび
  (コラム)登録型プレミアムの可能性
  トランポリン型失業扶助
  生活保護の部分的失業給付化
  働くことが得になる社会へ
 
第4章 職場からの産業民主主義の再構築
 1 集団的合意形成の重要性
  「希望は戦争」という若者
  誰が賃金制度を改革するのか
  非正規労働者も含めた企業レベルの労働者組織の必要性
 2 就業規則法制をめぐるねじれ
  労働条件の不利益変更は個別労働問題なのか?
  合理性の判断基準としての労使合意
  労働契約法の迷走 
 3 職場の労働者代表組織の再構築
  労働者代表組織のあり方
  過半数組合と労使委員会
  新たな労働者代表組織の構想
  (コラム)労働NGOとしてのコミュニティユニオン
 4 新たな労使協議制に向けて
  整理解雇法理の再検討
  日本型労使協議制の光と影
  (コラム)フレクシキュリティの表と裏
 5 ステークホルダー民主主義の確立
  三者構成原則への攻撃
  三者構成原則の現状と歴史
  ステークホルダー民主主義の確立に向けて 

『日本労働研究雑誌』2021年2・3月号

728_0203 『日本労働研究雑誌』2021年2・3月号は、メインは「学界展望:労働経済学研究の現在」ですが、経済学論文の最先端をつかまえて議論しているので私の手には負えないのでとりあえずパス。安藤道人さんの御話の中で脇道的に拙著『働く女子の運命』が出てきたりしますが、勿論本筋ではありません。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/index.html

特集はなんと「船員の働き方」です。

特集:船員の働き方
解題 船員の働き方 編集委員会

紹介 内航船員の働き方について 畑本郁彦(日本内航海運組合総連合会)

船員の集団的労使関係 立川博行(全日本海員組合)

論文 船員の安全と健康確保 久宗周二(神奈川大学教授)

内航船員の働き方改革に向けて─船員労働法制の特質と課題 野川忍(明治大学大学院教授) 

船員労働ってのはニッチだけどなかなか面白いテーマなんですよ。

255_hp 私も以前、『季刊労働法』2016年冬号(255号)に「船員の労働法政策」ってのを書いたことがありますが、陸上労働法の世界とはひと味もふた味も違う世界が広がっていました。

はじめに
1 船員法制の形成期
(1) 西洋型商船海員雇入雇止規則
(2) 商法と旧船員法
2 労働力需給調整システムと集団的労使関係システムの形成*3
(1) ILOの影響
(2) 船員職業紹介法
(3) 海事協同会による集団的労使関係システム
3 戦前期船員法政策の展開と戦時体制
(1) 1937年船員法
(2) 船員保険法
(3) 船員と傷病
(4) 戦時体制下の船員法政策
(5) 終戦直後期における船員管理
4 終戦直後期における船員法制の改革
(1) 労使関係法政策
(2) 1947年船員法
(3) 船員法の労働時間・有給休暇等
(4) 災害補償と船員保険
(5) 労働市場法政策
5 その後の船員労働条件法政策
(1) 1962年船員法改正
(2) 船員の最低賃金
(3) 1988年船員法改正(労働時間関係)
(4) 2004年船員法改正
(5) 2008年改正
6 その後の船員労働市場法政策
(1) 船員雇用問題と船員雇用促進特別措置法(1977年)
(2) 1990年改正(船員労務供給事業)
(3) 2004年改正(船員派遣事業)
7 船員保険の解体
8 船員労働委員会の廃止 
9 ILO海事労働条約の国内法化

 

 

 

アニメーターの労働環境@『ビジネス・レーバー・トレンド』2021年3月号

202103 『ビジネス・レーバー・トレンド』2021年3月号は「アニメーターの労働環境」が特集です。

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/index.html

アニメーターの職場から考えるフリーランサーの働き方

【基調講演】『アニメーターはどう働いているのか?』からみるフリーランス労働 松永伸太朗 長野大学企業情報学部 助教

【研究報告】フリーランサーの働き方 濱口桂一郎 JILPT 研究所長

【事例報告1】実態調査にみるアニメ制作従事者の働き方 桶田大介 日本アニメーター・演出協会 監事、弁護士

【事例報告2】東映動画労組の歴史と労働者としての権利 沼子哲也 東映動画労働組合 副委員長

【事例報告3】アニメーターの働き方の課題 船越英之 亜細亜堂労働組合 委員長

【パネルディスカッション】 コーディネーター:濱口 桂一郎 JILPT 研究所長 

というわけで、昨年12月15日に開催した労働政策フォーラムの中身がBLTに載りました。

松永さんの『アニメーターはどう働いているのか』が労働関係図書優秀賞を受賞したので、せっかくだからアニメ関係者を集めて報告とディスカッションをやれば面白そうだというのでやったものですが、司会の私自身が大変面白く聞かせていただいたという感じです。

Kk

 

2021年2月24日 (水)

「労働者保護」と「ビジネスの成長性」のバランスが焦点にーギグワーカー

Kv_187 ADECCOの「Power of Work」に、インタビュー記事「「労働者保護」と「ビジネスの成長性」のバランスが焦点にーギグワーカー」が載っています。

https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/187

私と山田久さんが登場して喋っていますが、私の部分は以下の通りです。

「ギグワーカー」とは、ネット経由で単発の仕事を請け負う働き手を指す。Uber(ウーバー)に代表されるシェアリングサービスや、ネットを通じて仕事を受発注するクラウドソーシングの普及に伴い登場した働き方だ。コロナ禍で外出自粛が求められるなか、料理宅配サービスなどのニーズが急拡大し、ギグワーカーも世界的に増えている。新たな雇用の受け皿になるとの期待がある半面、課題となっているのが労働者保護の枠組みをどう設計するかだ。
ギグワーカーはパートやアルバイトなどの雇用契約を結んでいないケースが多く、個人事業主に当たるため、最低賃金や労災保険などの制度が整備されていない。労働者保護が足りないままでは人員を安定的に確保するのが難しくなるが、逆に保護が行き過ぎればビジネスとしての成長性を損なう可能性もある。このバランスをどう判断するかが争点となっている。
「すでに海外では極めてホットな議論がなされています。特に動きが激しいのが米国。カリフォルニア州では2020年1月に、ライドシェアの運転手を個人事業主ではなく従業員だとする州法が施行されました。しかしライドシェア事業者などの間ではそれに反発する声も強く、その後、同州の住民投票で法制化を覆す提案がなされ、賛成多数を獲得するという事態になりました。それだけ、労働者保護とビジネスの成長性に対する意見が拮抗しているということです」(濱口氏)
今後はギグワーカーの増加に伴い、日本でも同様の議論が活発化していく可能性はある。 

 

熊谷謙一『改訂増補版 アジアの労使関係と労働法』

Image_20210224210301 熊谷謙一さんの『改訂増補版 アジアの労使関係と労働法』(日本生産性本部生産性労働情報センター)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://bookstore.jpc-net.jp/detail/books/goods004009.html

 これまでにない経済発展とグローバル化が続くアジア各国では、社会的な格差拡大とともに、劣悪な労働環境と労使関係の増加など、社会や環境整備が経済成長に遅れていることからくる問題がひろがりを見せている。経済成長とともに、伝統的な労働慣行と新しい労働情勢・労務管理のはざまで、将来に向けた取組みが続いている。
 本書は、アジアの労使関係、労働法制の状況について、現地での経験と調査を踏まえ、西アジアを除く主要18か国と1地域について、その歩みと展開、最新の状況、背景にある歴史と文化について触れている。
 わが国の労使や行政の関係者、進出企業の方々にとって、揺れ動くアジアの労働情勢をより深く理解し、的確な対応をすすめるための一助となるだけでなく、日本の制度や法律をこれまでとは別の角度から見つめ直すことにもつながる一冊である。
(改訂増補版では、既載各国の情勢のアップデートと3カ国と1地域を増補)

初版をいただいたのはもう5年以上前になります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-b59c.html

ご承知のように、熊谷さんは長く同盟、連合で活躍され、その後国際労働財団(JILAF)、そして日本ILO協議会で国際労働派として活躍してこられた方ですが、本書はアジア諸国の労使関係と労働法制の手頃な解説書になっており、いろいろと面白かったです。

初版に追加されているのは、スリランカ、パキスタン、ラオス、それにこれは国じゃありませんが極東ロシアというのが付いてきています。

本書に登場するアジア諸国は今も激動の中にあるところも少なくありません。ここ数年来一国二制がくずされつつある香港は最近の動きまで書き込まれていますが、さすがにミャンマーが今こういう状況になるなんて、本書校了時点でも難しかったのでしょうね。

なお、労働法の動向についていえば、ベトナムの直近の労働法改正(2021年1月施行)までちゃんと入っています。

ついでに予告しておきますと、来月JILPTから『団結と参加―労使関係法政策の近現代史』を刊行します。アジア諸国も含め、世界42か国(地域)プラスEU,ILOの集団的労使関係法制の歴史を概観するものです。

http://hamachan.on.coocan.jp/danketsumokuji.html

 

 

 

 

2021年2月23日 (火)

小島庸平『サラ金の歴史』

102634 小島庸平さんの『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』(中公新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.chuko.co.jp/shinsho/2021/02/102634.html

個人への少額の融資を行ってきたサラ金や消費者金融は、多くのテレビCMや屋外看板で広く知られる。戦前の素人高利貸から質屋、団地金融などを経て変化した業界は、経済成長や金融技術の革新で躍進した。だが、バブル崩壊後、多重債務者や苛烈な取り立てによる社会問題化に追い詰められていく。本書は、この一世紀に及ぶ軌跡を追う。家計やジェンダーなど多様な視点から、知られざる日本経済史を描く意欲作。

封筒からこの本を取り出した時、私は一瞬、もしかして宛先を間違えられたのかな?と思いました。著者の小島庸平さんも存じ上げていないし、タイトルを見ても、私に送られてくるような本じゃないと思ったからです。

しかし、あて先は間違いなく私です。私に読めという中身があるに違いないと思って、さっそく読み始めました。

読み進むうちに、なるほど、私に読めというのはこういう趣旨だったのだな、ということがじわじわとわかってきました。

一言でいうと、戦後日本におけるサラ金の発展(と没落)は、サラリーマンと専業主婦という性別役割分業を前提とした日本型雇用システムの確立とその変容を反映していたのです。

戦前以来の素人高利貸しの中から、まず「団地金融」というビジネスモデルが登場してきますが、これは団地に入居できるような階層であることを住宅公団の審査によって確証された「社員」の妻に、「夫に内緒で」お金を貸すというものです。

そこから今度は、その夫の方、つまり「サラリーマン」にお金を貸すビジネスモデル、つまり「サラ金」という言葉の源流が生み出されます。

ここで小島さんは、サラ金のニーズが当時の日本企業の人事管理制度とサラリーマン夫婦の在り方にあったのだと説明します。

日本企業の人事管理制度とは人事査定、とりわけ日本独特の「情意考課」です。情意考課で高く評価されるためには、仕事だけではなく全人格的に「付き合い」をよくしなければならず、特に付き合いゴルフや付き合い麻雀が必須です。

ところが一方、戦後日本的夫婦役割分担構造では、「家のことは全部任せた」と財布の管理も専業主婦に委ねられ、夫は渡される小遣いの範囲内で賄わなければならず、情意考課引き上げのための原資はほかに求めなければなりません。それを提供したのがサラ金だったというわけです。ふむふむ。

いささか図式的すぎるきらいもありますが、高度成長期の日本社会の構造からサラ金という新たなビジネスモデル出現の必然性を説く小島さんのロジックはなかなか興味深いものがあります。

この日本型システムがやがて揺らいでいき、そういう「前向き」の資金需要ではなく「後ろ向き」の資金需要、つまり下層の人々の目先の生活資金までサラ金が「金融包摂」するようになっていくと、言い換えればかつての(専業主婦を持てる上級労働者層という意味での)サラリーマン金融から、労働者金融、消費者金融になっていくと、我々の記憶に生々しい暴力的な取り立てのあれこれが全面に浮かび上がってきたというわけです。

この歴史絵解きを、どこまで説得的と感じるか否かは読者によってさまざまでしょう。

さて、読み終わって改めて「まえがき」に目を通すと、上で「金融包摂」といったことに関わる一節が再度目に入ってきました。

貧しい人に金を貸す金融包摂の代表格であるバングラデシュのグラミン銀行、その金利は年20%で現在の大手サラ金よりも高利なのですが、創設者ユヌスはノーベル平和賞を受賞しています。

この皮肉をあらためてじっくりと考えてみる必要がありそうです。

 

 

 

 

 

2021年2月22日 (月)

『日産・ルノー アライアンス オーラルヒストリー』

27210 八代充史・井原久光・牛島利明・梅崎修・島西智輝・南雲智映・山下充編『戦後労働史研究 日産・ルノー アライアンス オーラルヒストリー グローバル提携時代の雇用・労使関係』(慶應義塾大学出版会)をお送りいただきました。

https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766427219/

これ、もしかしたら見た記憶がある方もいるかも知れません。

一昨年に、報告書(非売品)の形でまとめられていたものの市販本です。その時のエントリはこちらですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-c70a.html

いままさに日産とルノーの関係の行方にみんなが固唾をのんでいるときに、こういうオーラルヒストリーを世に送るというのは、あまりにもはまりすぎているというべきなのか、まずい時に当たってしまったというべきなのかわかりませんが、ゴーンが引っ提げてきた日産=ルノーアライアンスが始まったころの証言の数々は、大変興味深いものです。

本書の「はじめに」でも、そもそもこれはゴーンのサクセスストーリーでも、その逃亡劇でも、社内政治話でもないと、くどいくらいに断っています。

それでも、報告書に登場した8人のうち2人が脱落して、本書では6人になっています。解題でもその2人分は削られていますね。

 

 

 

 

2021年2月21日 (日)

今井順『雇用関係と社会的不平等』

L17458 これは著者からお送りいただいた本ではなく、面白そうだったので読んでみたものです。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641174580?top_bookshelfspine

1980年代半ば以降30年にわたる「雇用改革」は,雇用関係をどのように変え,社会的不平等と排除のパターンにどのような影響を与えたのか。「産業的シティズンシップ」に着目し,日本の正規雇用と非正規雇用の格差拡大について一貫した論理で整理する意欲作。 

読んでみると、今井さんの問題意識はほぼわたくしのそれと重なっています。副題には「産業的シチズンシップ」が出てきますが、本書で取り上げられるのはその特殊戦後日本的な形態たる「企業別シチズンシップ」であって、この概念はほぼわたくしのいう「メンバーシップ」と重なります。

第1部でその形成史を簡単に概観した後、第2部と第3部で、ここ30年余りの期間に、非正規と正社員の双方で進んだ変化を、「企業別シチズンシップ」の矛盾の露呈拡大という観点から一貫して論じたものです。この点も、ここ十数年間の私の諸著作の問題意識とほぼほぼ重なっています。

なぜ用語が異なるかといえば、おそらく今井さんは世界の政治社会学で共通概念になっている「シチズンシップ」から入って、その特殊形態として「正社員」であることに様々な権利義務が付随してくる戦後日本の在り方に注目してきたからなのでしょう。

なので、あまりにも私の問題意識と重なりすぎるので、あえて取り上げて論じるところがあまりないのですが、一点興味深いというか、目に付いたのが、第5章の副題にもなっている「去勢されたライフコース」という(やや奇矯にも見える)概念です。

1990年代以降、それまでは正社員になるのが当たり前だった若年青年層に、不本意に非正規化せざるを得ない層が増加したことはよく指摘されていますが、彼らが経験した企業別シチズンシップからの排除に対する「適応」としての心理的な現状処理の一つとして、モラトリアムだと位置づけること、社会的な独立を主張することに並んで、ジェンダー保守主義を強調することが発見されている点は、ここ20年余りのジェンダー・ポリティクスを理解するうえでなかなか重要なのではないかと思いました。

政治的に奇妙にフレームアップされる夫婦別姓問題が、(もちろん様々な要素が絡み合っているとはいえ)自らの未婚時の姓でもって社会的に一定の評価をすでに得ている(勝ち組)女性の、その社会的評価の付着した姓を結婚後も使い続けることによって、コンパラブルな男性と同様の勝ち続けられるポジションを得たいという要望に立脚していることとの対比で、(負け組)若年・中年男性のジェンダー保守主義は、高齢層のいまさら変わらない保守主義とはやはり異なる平面で考察される必要がありそうな気がします。

 

 

 

 

 

 

 

女性がなりたがらない「管理職」と男性がなりたがる「管理職」

経済同友会の代表幹事の発言をきっかけに、女性が管理職になりたがらない問題がまた話題になっているようですが、いくつもの話が輻輳しているこのテーマを、腑分けせずにぐだぐだに話するとわけわかめになりがちです。

この問題には世界共通の問題の側面があり、それはまさに管理監督する責任を負ったハードワークな機能としての「管理職」に対して、社会慣行的に家庭責任を負いがちな女性がなりたがらないという問題です。

ただし、ジョブ型社会におけるハイレベルジョブとしての「管理職」を女性が目指さないというのは、例えば医療の世界でより責任の高い「医師」になりたがらないとかの問題と同様、その根っこのところで女性の参入を促そうという政策につながりますが、メンバーシップ型社会ではそう単純ではありません。日本の企業における「管理職」はそう単純な存在ではないからです。

実際に日本の会社やいろんな組織の中で職業生活を送っている人はみんな知っているように、日本の「管理職」とは、世界共通のまさに管理監督する責任を負ったハードワークな機能としての「管理職」という側面と、実のところは管理の監督もしていない、場合によってはまともな労働すらしていなくても、平社員より相当に高い高給を得ている地位としての「管理職」という側面があり、後者は実のところ管理職になるまでの長年にわたる勤続に対する報酬という性格を持っています。

女性が管理職になりたがらないというのは、裏返して言うと男性は管理職になりたがるということですが、さてその男性がなりたがっている「管理職」というのは、本当に管理監督する責任を負った機能としての「管理職」なのか、それとも往々にして「働かないおじさん」と揶揄されることもある地位としての「管理職」なのか、よく考えて論じる必要があるそうです。

 

2021年2月20日 (土)

イギリス最高裁がUber運転手を労働者と判決(追記:「従業員」に非ず!)

既に報じられているように、イギリス最高裁がUberの運転手を「労働者」(worker)であると判決しました。イギリス労働法の「worker」ってのは「employee」と違ってやや複雑なんですが、かなりの労働法上の保護の対象になります。Uber社がいうような自営業者ではないということです。

https://www.bbc.com/news/business-56123668

_117077186_img_7524 Uber drivers must be treated as workers rather than self-employed, the UK's Supreme Court has ruled.

The decision could mean thousands of Uber drivers are entitled to minimum wage and holiday pay.

むむ、これ報告書のタイミング的に・・・・というところはあるんですが、いずれにしても最近ヨーロッパ各国で続々とこの問題に対する司法の判断が出されてきていて、これから結構動きがありそうです。

イギリスはもはやEU加盟国ではありませんが、その動きは大きな影響力を持ちます。

実は、まだ委員会に出てはいませんが、数日前欧州議会の雇用社会問題委員会に出されるプラットフォーム労働者の公正労働条件、権利及び社会保護に関する決議案が明らかになっていて、これから欧州委員会が何らかの立法手続きに動き出すという観測もあるようで、引き続き注視していく必要があります。

(追記)

このニュース、日本の新聞も報じているんですが・・・・

https://www.asahi.com/articles/ASP2M7WP4P2MULFA046.html(ウーバー運転手は「従業員」 英最高裁が権利認める判決)

配車サービス大手、米ウーバー・テクノロジーズのロンドンの運転手らが、ウーバーに対して「従業員」の権利を認めるよう求めた訴訟で、英最高裁は19日、運転手側の主張を認める判決を出した。ウーバー側は英国の雇用法制に従い、運転手への最低賃金の保証や有給休暇を付与する必要が出てくる可能性がある。仕事をネットで請け負う「ギグ・エコノミー」のあり方に一石を投じる判決だ。・・・・

原文の英語は「employee」じゃなくて「worker」なのに、なんでわざわざ「従業員」なんて間違った訳をつけるんだろう。イギリス以外では両者は同義語ですが、ことイギリスに関する限り、両者は異なる概念であり、それはイギリス労働法の基本なんですが。

ちなみに各紙の星取り票は:

日経新聞:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69305540Q1A220C2NNE000/(ウーバー運転手は「従業員」 英最高裁、仏に続き認定)

毎日新聞:https://mainichi.jp/articles/20210220/k00/00m/030/214000c(ウーバー運転手は「従業員」 英最高裁判決とギグワーカーの現状)

東京新聞(もとは共同通信):https://www.tokyo-np.co.jp/article/87082(ウーバー運転手は従業員 英最高裁、権利認める)

読売と産経は記事なし。

なんだ、全滅じゃねぇか。

(再追記)

なんで日本のマスコミはみんなそろいもそろってイギリスでは「employee」とは区別される「worker」の話を、わざわざ「従業員」と報じているのだろうと不思議に思っていたのですが、もしかしたら、イギリス発ではなくフランス発のニュースをもとにしていたからなのかもしれません。

https://www.bilan.ch/entreprises/uber-les-chauffeurs-sont-des-employes-pour-la-justice-britannique(Uber: les chauffeurs sont des employés, pour la justice britannique)

これ、AFPからの記事で、AFP日本語版では「従業員」と訳しちゃっていますね。

https://www.afpbb.com/articles/-/3332651(「ウーバー運転手は従業員」 英最高裁が判断)

いや、フランス語では「employés」も「travailleurs」も変わんないかもしれないけど、イギリス語(つうか、ここ20年程のイギリス労働法)では違うんだよね。

 

 

 

プラトンの無断引用の査読者責任

最近の科学の世界の常識はほとんど理解を絶するところがありますが、やはりプラトンの著作といえども引用する場合にはきちんとプラトン本人の了解を得なければならず、それを怠った無断引用の悪質な論文を見逃した査読者の責任たるや極めて重大なものであるようです。なまいだぶ。

https://twitter.com/U4Gv2h/status/1362631267317997570

先日、哲学分野でプラトンの著作を無断引用している論文を見かけました。科学じゃ考えられませんよね。ちゃんと著者に了解を取らないと。

Qwr8e9pw_400x400 見逃した査読者にも責任がありますね。

アテナイまで伝書鳩を飛ばせば済むことですからね。

そうですね、今では最も安全な情報伝達の方法かもしれません。まさか鳩で送るとは思いませんものね。

 

 

総同盟的なるものと民同的なるもの@桝本純オーラル・ヒストリー

旧同盟から連合で組合プロパー(というか本人的には「書記」)として活躍し、一昨年亡くなった桝本純さんのオーラル・ヒストリーが出ているのを見つけました。インタビュワは田口和雄さんで、岩崎馨さんが横に付く形です。

読んでいくと、生前の桝本さんの口ぶりが生き生きと蘇ってくるような感じで、思わず読みふけりました。

性格上、労働運動にかかわる話題しかされていないので、桝本純という多面的な人物像の一部でしかないのですが、その中でも、いくつも重要なポイントが指摘されています。実は、私の労働運動史に対する歴史観の相当部分は桝本さんとの会話で形作られた面もあり、ページごとに懐かしさを覚えました。

その中でも、ややもすると多くの人が勘違いをしがちなところが、労働運動の路線対立を右派対左派でとらえてしまいがちなところでしょう。それは一見激烈だけど表層の対立に過ぎず、根っこは企業別組合中心主義とそれを超えた産別・ナショナルセンターの権限が強いかで、総評も同盟も中に両方の傾向がある。そしてそれは、戦前来の総同盟の流れと、戦後産別民主化同盟の流れに対応すると、

そして、実は企業別組合的性格は総評の方が強かったんですね。何しろ国労も全逓も全電通もみんな超巨大国営企業の企業別組合で、やたら過激に見えるその「闘争」もすべて、藤林敬三の言うところの「家庭争議」。これらはみんないわゆる「民同左派」なわけです。内弁慶体質。

一方、同盟に行った「民同右派」も、政治イデオロギーの向きが違うだけで、体質は全く同じ。塩路天皇みたいに企業内で力をふるう、その振るい方が違うだけ。

一方、旧総同盟の系譜をひく流れは、総評では全国金属だけど、初期の高野実が追放されたのちは、これはもうほんとに周辺的な存在。

同盟では総同盟派がそれなりの存在感をもち、企業別組合を超えた運動体質はそれなりに残っており(ここが、桝本さんが自らの同盟時代の経験として語るところですが)、とはいえやはり民同右派(「全労」)が大きな力を持っていた。

で、桝本さんの言いたいのは、連合結成は決して同盟の勝利なんかではなく、実は民同的なるものの勝利であり、総同盟的なるものの敗北なんだということ。

そして、やたらにイデオロギーで喧嘩していた全国金属と全金同盟がJAMとして元のさやに納まったら、実は似たような体質であったことがお互いに分かった云々という笑い話みたいなことがおこるわけです。

これはほんとに、ぜひ一般向けの本として出版してほしい内容です。まあ、あれこれの人の名前も出てきて、そのままでは出版できないところもあるかもしれませんが。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/post-6e841b.html(桝本純さんのこと)

桝本さんは、ここではかつてのブントの理論的リーダーとして「偲」ばれているんですが、彼はその後労働組合ナショナルセンターの同盟のプロパー職員となり、その後連合に移り、連合総研の副所長もされていて、私との関係ではこの頃にかなり密接なおつきあいをさせていただいたんですね。

 

 

2021年2月19日 (金)

コロナ禍の雇用・女性支援プロジェクトチームのメンバー全員のリスト

一部新聞が、特定の一部メンバーの名前だけを報じたために、やや誤解を招きつつあるかに見える標記プロジェクトチームですが、厚生労働省のプレスリリースからメンバー全員の名前をコピペしておきます。いろいろな考え方があると思いますが、おおむねこういう会議体に出てくるであろう方々の中に、やや目を引く方も含まれているといったところではないかと思われます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16829.html

コロナ禍においては、女性の雇用等への影響が特に深刻となっていることを踏まえ、政府が実施している支援策の効果的なPR方法等について、発信力のある有識者も交えて議論し、困難な問題を抱える方々に必要な支援が十分に行き渡るように取組を一層進めるため、三原厚生労働副大臣をチームリーダーとして、本プロジェクトチームを開催する。

チームリーダー     三原じゅん子  厚生労働副大臣
メンバー        金子恵美   元衆議院議員(※オンライン参加)
                               駒崎弘樹   認定特定非営利活動法人フローレンス 代表理事(※オンライン参加)
                               小室淑恵   株式会社ワークライフバランス 代表取締役
                               佐藤博樹   中央大学大学院戦略経営研究科 教授(※オンライン参加)
                               菅井利雄   株式会社ブレインズ・カンパニー 代表取締役社長
                               トラウデン直美   環境省サスティナビリティ広報大使
                                                         慶應義塾大学法学部政治学科在学中(※オンライン参加)
                               西田亮介   東京工業大学リーダーシップ教育院・リベラルアーツ研究教育院 准教授(※オンライン参加)
                               古市憲寿   慶應義塾大学SFC 研究所 上席所員(※オンライン参加)
                               三浦瑠麗   株式会社山猫総合研究所 代表取締役
                               森永真弓   株式会社博報堂DY メディアパートナーズ
                                                メディア環境研究所 上席研究員(※オンライン参加)
ゲストスピーカー      工藤啓       認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長(※オンライン参加)

 

 

 

 

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