今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会

8月8日に開催された第1回の今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会の資料が、厚生労働省のHPにアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/s0808-11.html

>非正規労働者の趨勢的な増加や労働契約の個別化、就業形態の多様化等が進む中、労働関係法制度をめぐる知識、特に労働者の権利に関する知識が、十分に行き渡っていない状況が問題として指摘されている。
本研究会は、こうした状況について実態把握を行った上で、学校教育や、労使団体、地域のNPO、都道府県労働局、地方公共団体等が今後果たしていくべき役割等について総合的に検討し、労働関係法制度をめぐる実効的な教育の在り方を提示していくことを目的として開催するものである。

というのが趣旨ですが、具体的にどういう指摘がされているかというと、ここにあります。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/dl/s0808-11b.pdf

>労働関係法制など社会に出た際に必要となる法制度の基礎知識を付与する教育や情報提供についても、社会人の基礎づくりといった観点から一層の取組が期待される。(人生85年ビジョン懇談会「『人生85年時代」に向けたリ・デザイン』(平成20年5月))

>。例えば,「働く」という観点からは,我が国における労働関係法令遵守水準の低さの大きな原因の一つとして,学校教育段階で働くことの意味を始め働くことに関する的確な教育が行われていないことが指摘されるところであり,働くことの権利と義務など働くことに関する教育の充実を通じて若年者の職業意識の形成が重要であると考えられる。

内閣府,厚生労働省,経済産業省,文部科学省等関係府省庁の連携の下に,学校教育段階から社会に出てからの教育を含め,働くことの意味や労働関係法令,働くことの権利と義務など働くことに関する教育の充実等のための取組を進めることが必要である。具体的には,学校教育については,文部科学省を中心に内閣府,厚生労働省等関係府省庁が協力して,働き続ける上で最低限必要な知識が実際にどの程度教えられているのかについて実態の検証を行い,不十分な部分について対応する必要がある。また,中小・零細企業経営者を中心に,最低限必要な労働関係法令の知識について,厚生労働省,経済産業省始め関係府省庁が中小企業団体や業界団体との連携を図りつつ,創業支援時等あらゆる機会を活用して周知・徹底を図る必要がある。 さらに,関係府省庁においては,都道府県の段階についても,これら各行政に係る官民の関係機関の緊密な連携の下に継続的な取組が進むような方策を検討し実施する必要がある。(国民生活審議会総合企画部会「『生活安心プロジェクト』行政のあり方の総点検-消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて-」(平成20年3月27日)

>就業形態の多様化や労働契約の個別化が進む中で、労働関係法制度をめぐる知識、特に労働者の権利に関する知識に不十分な状況がみられることから、労働関係法制に関する知識を付与する教育や情報提供の在り方について検討する(雇用政策研究会「すべての人々が能力を発揮し、安心し働き、安定した生活ができる社会の実現-本格的な人口減少への対応-」(2007年(平成19年)12月))

>労働を巡る権利・義務に関する正しい知識を教える学校教育の充実が図られ、そうしたなかで、就職・転職時における職業選択もよりスムーズに行われるようになる。(経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会第1次報告「働き方を変える、日本を変える」-<ワークライフバランス憲章>の策定-(平成19年4月6日)

このように、内閣府の機関である国民生活審議会や経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会(いわゆる八代研)も、労働法制教育の重要性を強調していることは、この問題の重要性を示しているといえるでしょう。

本研究会の座長である佐藤博樹先生が、この八代研の第1回会合で、こういう発言をされていることも重要です。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/01/work-s.pdf

>3つ目に、セーフティーネットを考える際に、今回の議論の中で落ちているのは、働いている人側の労働者保護など労働法制に関する知識が少ないことである。今まで、労働分野では法律をつくって、それを企業に浸透させて、企業に法律を守ってもらうことを通じて、労働者の保護などが達成できるという政策手法が採用されてきた。もちろん労働組合もその担い手であった。ところが、最近のように雇用形態が多様化すると、働いている一人ひとりが、こういう働き方を選ぶと自分にはどういう権利があるのかについての知識がないと、その権利を実現できないことになる。
例えば育児休業について、育児休業の規定を持っていない事業所が、中小企業ではまだ多い。ただ、勤務先の事業所に育児休業の規定がなくても、労働者が法律を知っていれば権利を請求できる。つまり、働いている人たちがきちっと法的な知識を持つということがすごく大事ではないかと考える。
ところが、残念ながら、最低賃金でも高校生では6割程度しか知らない。団結権では、1割強しか知らない。最近、小学校、中学校で株式投資について教育するなどの議論もあるが、投資家にはならなくても、多くは従業員になるので、働くことに伴う権利をきちっと教えることが実は大事なセーフティーネットになるのではないかと思っている。

なぜ近年こういう指摘がなされるようになってきたのかをまとめた資料もアップされているので、是非見てください。うーむとうなるようなデータがいっぱい載っています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/dl/s0808-11c.pdf(労働者の権利の理解に関する状況)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/08/dl/s0808-11d.pdf(労働者の権利理解に関する先行研究のサーベイ(原委員提出資料))

ちなみに、本研究会の委員でもある原ひろみさんのエッセイでこの問題が取り上げられています。

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum022.html(労働者の権利を知ることの必要性)

また、日本労働研究雑誌の巻頭エッセイでも、何回か取り上げられています。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2006/11/pdf/001-001.pdf(働く市民の常識としての労働法)(道幸哲也)

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/02-03/pdf/001.pdf(労働法を知らせる)(仁田道夫)

この道幸先生が、北海道の労働審議会でまとめられたこういう報告もあります。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/80D574D5-2D83-4E5C-85A0-AC69BA8150C6/0/jakyohoukoku.pdf(若年者の労働教育について)

この問題に取り組む機運が、全国的に高まってきているといえるでしょう。

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中国は「左翼的な独裁国家」!?

アナルコ・キャピタリスト(無政府資本主義者)を標榜する蔵研也氏が、そのブログで、

http://d.hatena.ne.jp/kurakenya/20080814

>中国に見る社会主義者の国家主義

>オリンピックで水泳をみていたら、

「国家水泳センター」で行われていた。

体操なども、どうやら「国家スタジアム」で行われているらしい。

この例に明らかなように、小生は長らく、

左翼的な独裁国家のリーダーは、

ファシズムのリーダーと同じくらいに権威主義的だと思っていた。

これはアイゼンクなども旧ソヴィエトの政治について指摘している見解だ。

と語っています。

いや、中国が独裁国家というのはまったくそうでしょうが、未だに「左翼的」という形容詞がつく独裁国家と思われていたのか!といささか感慨無量でした。

いや、たしかに毛沢東の中国は正確な意味での「左翼的独裁国家」だったんでしょうけど。市場原理主義と愛国主義だけが頼りの今の中国が「左翼的」ねえ。

最近の感覚では、ハーヴェイの本などに見られるように、むしろ英米とならぶネオ・リベラリズムの先兵というのがふつうの見方かと思っていただけに、かえって新鮮な感じです。

ま、「サヨク」って言葉が、あまり内容を指し示す効果を持たない、単なるけなし言葉になっているということのあらわれでしょうか。少なくとも、今の中国が「ソーシャル」とは口が裂けても言えないでしょうから。日本はあまりにも「社会主義的」だ、もっと中国を見習って資本主義に邁進せよ、と叱咤される方々も多いようですし。

>しかし、それにしても、

現存する独裁国家の権威主義はあまりにも鼻につく。

比較の対象となるべき現存する右翼的な独裁国家が

まったく存在しないことにもよるのだろうが、、、、

いや、だから、市場原理主義と愛国主義に立脚する「共産党」という名の独裁政権をはなから「右翼的」という形容詞から排除しているから「まったく存在しない」と見えるだけなんじゃないかと。

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採用年齢制限は差別か?

日本で年齢差別問題といえば、募集採用の年齢制限が第一の問題で、昨年の雇用対策法改正では政治主導で年齢制限が原則禁止となったことは記憶に新しいところです。

一方、EUでは私がこれまでも何回か書いてきたように、2000年の一般雇用均等指令で年齢差別も禁止され、2006年から全面施行されているわけですが、欧州司法裁判所に係属された事件は、一定年齢以上の有期雇用を争ったマンゴルト事件、65歳定年の正当性を争ったデラヴィラ事件くらいで、採用年齢制限を正面から争う事件はありませんでした。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/eldereu.html(「EUにおける年齢差別禁止の動向」 『エルダー』2008年6月号)

ところが、ここにきて、ようやく待望久しかった(?)採用年齢差別事件が欧州司法裁判所にやってきました。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&typeord=ALLTYP&docnodecision=docnodecision&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=PSOC&mots=&resmax=100

ドイツからやってきたColin Wolf vs Stadt Frankfurt am Main事件です。

これは、事件が欧州司法裁に付託されたよ、という公示ですから、詳しい中身は必ずしもよくわかりませんが、フランクフルト市の消防職員採用に当たって、採用後一定の勤続期間が必要だからとして、年齢制限をしたことが争われているようです。

日本では現在、公務員は改正雇用対策法の年齢制限禁止規定が適用除外とされていますが、下記論文でも書いたように、本質的にこの問題を免れているわけではありませんから、公務員制度関係でも本事件の行方を注目する値打ちはあると思いますよ。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/chikounennrei.html(「雇用対策法改正と年齢差別禁止」 『地方公務員月報』2008年3月号)

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デンマークの移民政策にECJの一撃

去る7月25日に欧州司法裁判所が下した判決が、デンマーク国内で大きな反響を呼んでいます。判決はこれです。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&typeord=ALLTYP&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=&mots=&resmax=200

>1.      Directive 2004/38/EC of the European Parliament and of the Council of 29 April 2004 on the right of citizens of the Union and their family members to move and reside freely within the territory of the Member States amending Regulation (EEC) No 1612/68 and repealing Directives 64/221/EEC, 68/360/EEC, 72/194/EEC, 73/148/EEC, 75/34/EEC, 75/35/EEC, 90/364/EEC, 90/365/EEC and 93/96/EEC precludes legislation of a Member State which requires a national of a non-member country who is the spouse of a Union citizen residing in that Member State but not possessing its nationality to have previously been lawfully resident in another Member State before arriving in the host Member State, in order to benefit from the provisions of that directive.

2.      Article 3(1) of Directive 2004/38 must be interpreted as meaning that a national of a non-member country who is the spouse of a Union citizen residing in a Member State whose nationality he does not possess and who accompanies or joins that Union citizen benefits from the provisions of that directive, irrespective of when and where their marriage took place and of how the national of a non-member country entered the host Member State.

判決文を読むのが面倒臭い人は、EU業界紙のこちらの記事を眺めてください。

http://euobserver.com/843/26557

>A recent EU court immigration ruling is causing headaches for the Danish centre-right government and may deliver a blow to the country's immigration policies, which are amongst the most restrictive in Europe.

The European Union's highest court ruled last Friday (25 July) in a case of four couples living in Ireland that spouses of EU citizens who are not themselves EU citizens can not be prevented from living in the Republic.

EUは、EU加盟国民である限り絶対的に差別禁止ですが、第三国人についてはどう扱おうがカラスの勝手というのが原則ですが、EU加盟国民の配偶者であるけれども本人はEU加盟国民ではなく第三国人という場合、どっちにはいるんでしょうか。厳密に言えば本人は第三国人ですから、そんな奴の入国は認めないというのもありとも思えますが、さすがにそういう人については、ちゃんと指令を作って対応しています。上の判決文にある最近の指令ですね。ところが、あの福祉国家で知られるデンマークはそれをちゃんと実行していないではないかという話です。

この判決自体はアイルランドの移民法がEU指令違反だとしたものですが、それが一番影響を及ぼすのはデンマークなんですね。

実は、以前本ブログで紹介したデンマーク事情がこのあたりを詳しく書かれているので、もう一度引用しますね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_0ae1.html

http://ameblo.jp/komanatsu86/entry-10061131532.html

ここに書いてある「愛の橋」のことが、この記事でも、

>Having been denied residence in Denmark, many such couples settle in the city of Malmo in Sweden, about half an hour's drive from Copenhagen, as Sweden has less restrictive immigration laws.

と書かれていますね。

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本日100万件突破

ということで、読者の皆様のお陰でこのブログも、右上のカウンターにありますように、無事100万件を突破いたしました。心より御礼申し上げます。

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外国人専門職・技術職の雇用問題

03027484 明石書店から出版された塚崎裕子著『外国人専門職・技術職の雇用問題 -職業キャリアの観点から 』を謹呈いただきました。ありがとうございます。

http://www.bk1.jp/product/03027484

著者の塚崎裕子さんは、

>1961年東京生まれ。東京大学法学部卒業。労働省、政策研究大学院大学助教授等を経て、内閣府男女共同参画局推進課長。

というわけで、大学における私の前任に当たりますが、その後内閣府で男女共同参画関係の仕事をしながら、ライフワークとしての外国人問題に取り組んでこられました。

内容は、

>少子高齢化が進み、労働力供給も次第に抑制されていくことが見込まれる中、日本の労働市場で外国人は重要なプレイヤーとなりつつある。専門的、技術的分野の外国人の雇用の現状と課題を追究し、現実に即した政策提言を放つ。

外国人問題というと、どうしても単純労働力問題が中心になりがちですが、本当の意味での高度人材の外国人というもう一つの重要な問題領域を分析した貴重な本だと思います。

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«欧州の派遣業界は労使対話に熱心です!