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2020年4月 4日 (土)

橋本陽子編『EU・ドイツの労働者概念と労働時間法』

507354 橋本陽子編『EU・ドイツの労働者概念と労働時間法』(信山社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.shinzansha.co.jp/book/b507354.html

日独から参集した第一線の執筆陣が、近年改めて議論が盛んな「労働者概念」と「労働時間法」の最新動向を考察する。 

「日独から参集」とありますが、昨年(2019年)9月に開かれた日独労働法シンポジウムに、ドイツのそうそうたる労働法学者たち5名が招かれた時の記録です。

◇日独労働法シンポジウム「労働者概念と労働時間法の最近の展開」の開催に当たって〔和田 肇〕
◆第Ⅰ章 本書の内容〔橋本陽子〕
◆第Ⅱ章 労働者か自営業者か―方法論と比較法―〔ロルフ・ヴァンク(桑村裕美子 訳)〕
◆第Ⅲ章 事業者としての地位と労働者保護との狭間に位置する個人自営業者〔フォルカー・リーブレ(後藤究 訳)〕
◆第Ⅳ章 有限会社の業務執行役員の法的地位:使用者、使用者類似の者または労働者?―ドイツ法およびEU法の観点からの検討〔カーステン・ハーゼ(橋本陽子 訳)〕
◆第Ⅴ章 労働者概念の最近の展開に寄せて〔皆川宏之〕
◆第Ⅵ章 デジタル化する労働の世界における労働時間法―現実と法の通用性の間で―〔リューディガー・クラウゼ(細谷越史 訳)〕
◆第Ⅶ章 架橋的パートタイム制の導入とパートタイム労働の権利の展開〔フランツ・ヨーゼフ・デュヴェル(緒方桂子 訳)〕
◆第Ⅷ章 日独の労働時間法とパート法―クラウゼ教授およびデュベル教授の見解へのコメント〔高橋賢司〕 

労働者概念と労働時間の二大トピックですが、やはりヴァンク教授をはじめとするドイツ流の緻密な労働者概念の追及は読んでいて面白いです。

German ちなみに、この中で2017年の民法典改正で挿入された労働者の定義規定(611a条)というのがでてきますが、それも含めた現代ドイツの労働法の条文は、つい先日アップされたばかりのJILPT資料シリーズNo.225「現代ドイツ労働法令集Ⅰ―個別的労働関係法―」に載っております。訳語は本書とはいささか違いますが。

第 2 編 債務関係法
第 8 章 個別的債務関係
第 8 節 役務提供契約(Dienstvertrag)及び類似の契約
 
第 1 款 役務提供契約
第 611a 条 労働契約(Arbeitsvertrag)
(1) 1 労働契約により、労働者は、他者のために、人的な従属のもと、指揮命令に服 しつつ、他人決定的な労働を給付することの義務を負う。2 指揮命令権は、職務の内容、 遂行、時間及び場所に関係するものでありうる。3 自らの職務及び労働時間を本質的に自 由に決定しえない者は、指揮命令に服している。4 ここでの人的従属性の程度は、その都 度の職務の特性にも従う。5 労働契約の存否の判断については、すべての事情を全体的に 考慮しなければならない。6 契約関係の実際上の遂行が、労働契約性を示している場合に は、契約の呼称は基準としないものとする。  
(2) 使用者は、約定された報酬を支払うことの義務を負う。

https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/225.html

山本陽大 労働政策研究・研修機構副主任研究員
井川志郎 山口大学経済学部准教授
植村新 京都女子大学法学部准教授
榊原嘉明 名古屋経済大学法学部准教授 

こちらもフルに使ってやっていただければ幸いです。

2020年4月 3日 (金)

新型コロナ対策に関する諸外国の動向@JILPT

JILPTのホームページに、新型コロナ対策に関する諸外国の動向がアップされました。

https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2020/document/focus20200403.pdf

Kaigai

 

 

『月刊連合』4月号

202004_cover_l 『月刊連合』4月号の表紙では、モナリザがマスクをして「無理せず休もう」と言っています。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/shuppan/teiki/gekkanrengo/backnumber/new.html

中身は、まず「3月6日は『36(サブロク)の日』36協定が働く人を守る」と題して、神津会長も入ったパネルディスカッション。

次は「「曖昧な雇用」の問題点が見えてきた!」と題して、フリーランスの問題点を摘出しています。総合政策推進局長の仁平章さんがこう述べているので、期待して待ちましょう。

・・・連合としての「曖昧な雇用」で働く就業者の法的保護に関する考え方について検討しており、近く考え方を取りまとめる予定だ。

表紙のマスク姿のモナリザの話題は、ようやく後の方の「若菜センセイに叱られる!?」に出てきます。「新型コロナウイルスの感染拡大と雇用不安」では、こう述べます。今号でいちばん読者に突き刺さる言葉かも知れません。

・・・社会は、組合員の雇用と労働条件を守る労組が、組合員以外の労働者のことをどう考えているのかを見ている。

 

 

 

 

 

アメリカが特殊なんです

新型コロナウイルスはいまやアジア欧米、世界中で猛威を振るっていますが、後から急激に感染が拡大したアメリカで一気に失業者が増えたのを見て、これがジョブ型雇用社会の現実か、という声もあるようです。

https://twitter.com/gelsy/status/1245820828366733313

ジョブ型雇用社会の現実 / “米国の新規失業保険申請グラフ、コロナウイルスで完全に壊れる : 市況かぶ全力2階建” 

ただこれ、同じジョブ型社会といってもアメリカとヨーロッパではだいぶ違います。いま必要な労働力だけを雇えばいいというアメリカに対して、ヨーロッパの特に大陸諸国は、職業意識は強いのでほかの関係ない仕事に配転するということには抵抗が強いですが、リーマンショックや今回のコロナショックのような一時的な急激な労働需要減少に対しては、将来回復するまで(当座仕事はなくても)雇用を維持するというのがむしろ当然と考えられています。そもそも、日本の雇用調整助成金(今回、解雇しない中小企業には9割給付になった)の原型は西ドイツの操業短縮手当であって、長期的に存在し続ける仕事が一時的に減少するのに対してやたらに解雇することには否定的な諸国が多いのです。

先日、JILPTの天瀬副所長のコラムにもあったように、これまでそういうスキームのなかったイギリスでも、ジョンソン政権下で新たに導入されています。いまやむしろアメリカの方が特殊と言っていいのでしょう。

https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/column/001.html

ちなみに、欧州労連が欧州労研に作らせたEU諸国の雇用調整助成金型のスキームの一覧表がこちらにあります。

https://www.etuc.org/sites/default/files/publication/file/2020-04/Covid_19%20Briefing%20Short%20Time%20Work%20Measures%2031%20March.pdf

ちなみに、ここにはその他の各国の施策表も載っており、この自営労働者対策も興味深いです。

https://www.etuc.org/sites/default/files/publication/file/2020-04/PF%20Covid-19%20Briefing%20self-employed%20workers%20%2BSC%20-%20FINALE.pdf

 

2020年4月 2日 (木)

『HRmics』35号は労使関係が特集

1_20200402201601 海老原さんのニッチモの『HRmics』35号は「あいまいな、日本の,労と使」というちょっと不思議なタイトルの特集です。

http://www.nitchmo.biz/hrmics_35/_SWF_Window.html

1章 日本人が煙たがる「労働運動」をもう一度考える
§1.最低限知っておくべき2つの仕組み
§2.2つの仕組みはどのように形作られたのか?

2章 欧州でも満点とはいえない労使協議の仕組み
§1.労使協議デュアル・チャンネルの元祖が悩み深い状況に
§2.従業員代表制と代表的組合の仕組みが近年大きく変わる
§3.シングル・チャネルでも事足りる仕組みを構築

3章 変わるか? 日本の集団的労使関係
§1.日本における従業員代表制を巡る議論と歴史
§2.「2つの問題」を取り除く解 

今回の特集、もちろん大部分を執筆しているのは海老原さんですが、そこにいろいろと情報を注入しているのはJILPT軍団です。

1章の§2は海老原さんと私との対談ですし、2章はドイツの§1が久本憲夫さんと山本陽大さん、フランスの§2が細川良さん、スウェーデンの§3が西村純さんと、これは久本さんを除けばJILPT組で占めちゃってますな。

海老原さんがそうやって労使関係をいろいろと勉強した結果たどり着いた結論は何だったか。それは上記リンク先に書いてあります。

 

桝本純さんのこと

51x0hiqpril__sx350_bo1204203200_ 昨日、情況出版の服部一郎さんより送られた櫻井善行『企業福祉と日本的システム』を紹介しましたが、実はそれに同封して、服部さんも編集に加わっている雑誌『情況』2020年冬号もいただきました。

http://www.mosakusha.com/newitems/2020/01/_202057.html

特集は「ポピュリズムの時代」で、下記のように結構硬派な論文が並んでいますが、ここではそれが主眼ではありません。 

左翼ポピュリズムは、安倍政権へのオルタナティブとなりうるか-最近のイタリアの議論を参照して考える | 中村勝巳
右翼ポピュリズムの躍進-「左翼の衰退」と「非極右性」を中心として | 諏訪共平
中国革命の「群衆」-晋察冀軍区「抗敵劇社」を中心に | 丸川哲史
「ロペス・オブラドール政権」とポピュリズム | 山端伸英 

実は目次の左端の方に、「追悼 桝本純さんを偲んで」とか「桝本純さんを偲ぶ会への弔辞」といった文章が載っているんですね。

桝本さんは、ここではかつてのブントの理論的リーダーとして「偲」ばれているんですが、彼はその後労働組合ナショナルセンターの同盟のプロパー職員となり、その後連合に移り、連合総研の副所長もされていて、私との関係ではこの頃にかなり密接なおつきあいをさせていただいたんですね。

彼のおじいさんが第1回ILO総会に労働者代表として出席した桝本卯平であったということは、本ブログでも何回か取り上げてきた話題です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/02/post-570d52.html(桝本卯平@ILO第1回総会のその後)

・・・・ILO第1回総会における日本の労働者代表となった桝本卯平がその後どうなったかを知る人は少ないのではないでしょうか。実は彼は労働問題の論客となり、『労資解放論』などの著書もあるほか、持論の労働者自治生産を実行しようとしたりと、いろんな活動をしています。 

さらに、彼の娘である桝本セツがその世界では有名人です。左翼運動に飛び込み、妻子ある岡邦雄を「略奪愛」して子どもを産む。その姿は澤地久枝の『昭和史のおんな』(文春文庫)に描き出されています。
そうして生まれた子どもが、昨年亡くなった元連合総研副所長の桝本純さんであったということを、知る人はどれくらいいるでしょうか。旧同盟から連合に移った組合書記プロパーとしての彼を知る人は労働界隈には結構多いと思いますが、その血脈を語ることはほとんどなかったですから。
退職後、卯平じいさまのことを調べて本にしたいみたいなことも語っていましたが、かなわなかったようです。 

 

早川智津子『外国人労働者と法』

507605 早川智津子三の新著『外国人労働者と法― 入管法政策と労働法政策』(信山社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.shinzansha.co.jp/book/b507605.html

日本政府は、「移民・単純労働者は受け入れない」という入管法政策の方針転換の言明はさけつつ「外国人高度人材グリーンカード」を導入したり、介護・農業・建設分野などを「専門的技術分野」として外国人受入れを進めている。現状の受入れ準備には多くの懸念があるが、本書は、こうした激変する入管法政策に対し、外国人労働政策全体としてのあるべき姿を示そうと試みた労作。 

という惹句を見ると、かなり踏み込んだ議論をしているようにも見えますが、むしろ極めて丁寧に制度の細かいところを分析しており、政策提言的なところは相当に控えめです。それがむしろ早川さんの持ち味でもあるのでしょう。とりわけ、「入管法政策と労働法政策」なんていう話になると、私だったら(以前書いた論文等でも露呈しているように)法務省入管局と労働省の仁義なき権限争いの帰結として描き出すところですが、早川さんはそういう野蛮な記述はしません。淡々と制度の変遷を叙述していきます。

◇序 問題の所在

◆第1部◆ 外国人労働政策の視点

◆第1章 法政策の視点
◆第2章 入管法政策の手法
◆第3章 労働法政策の手法

◆第2部◆ 日本法の状況

◆第1章 入管法政策の展開

第1節 わが国の入管法政策
第2節 新たな動向の背景
第3節 高度人材ポイント制
第4節 日系人労働者
第5節 その他の受入れ状況
第6節 2018年入管法改正

◆第2章 労働法政策と外国人

第1節 労働法による保護
第2節 不法就労者の扱い
第3節 国籍差別をめぐる問題点
第4節 解雇及び雇止め
第5節 安全衛生・労災補償
第6節 その他の雇用管理をめぐる問題点
第7節 労働組合法
第8節 労働市場法
第9節 2018年入管法改正後の対応

◆第3章 外国人技能実習制度

第1節 技能実習制度の沿革
第2節 技能実習法の制定
第3節 技能実習生の賃金と処遇
第4節 技能実習と関係者の責任
第5節 研修生の労働者性をめぐる議論と裁判例
第6節 技能実習契約の性格と就労請求権
第7節 技能実習制度と労働市場法
第8節 技能実習生の雇用管理をめぐる問題点

◆第4章 日本法の課題

◆第3部◆ アメリカ法の検討

◆第1章 入管法政策⑴ 通常の労働証明制度
◆第2章 入管法政策⑵ 一時的労働証明制度
◆第3章 労働法政策⑴ 労働法の適用・不法就労問題
◆第4章 労働法政策⑵ 差別禁止
◆第5章 労働法政策⑶ 労災補償・失業保険
◆第6章 労働法政策⑷ 職業紹介
◆結びに アメリカ法の要約と日本法への示唆 

ちなみに、そういう野蛮な議論を読みたい人は、そろそろ刊行されるはずの野川忍編著『労働法制の改革と展望』(日本評論社)の第13章(日本の外国人労働者法政策――失われた30年)をみてください。ほぼ同じ対象を扱いながら、文体が実に違います。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784535524224

2020年4月 1日 (水)

櫻井善行『企業福祉と日本的システム』

Sakuraikigyofukushi 情況出版の服部一郎さんより、櫻井善行『企業福祉と日本的システム──トヨタと地域社会への21世紀的まなざし』(ロゴス)をお送りいただきました。

http://logos-ui.org/book/book-35.html

本書の特質は、おそらく恩師である十名直喜さんのこの推薦の辞が一番言い表しているのでしょう。

本書は、トヨタと西三河地域をモデルにして、幅広い視点から企業福祉の日本的な特徴と課題を分析した労作である。「企業福祉」研究を社会科学的な分析へと昇華させたところに、その真骨頂がある。
 企業と家族に福祉をゆだねるという日本型福祉を担ってきた「企業福祉」は、日本的な労使関係や働き方、深刻な階層間格差の一因にもなってきた。本書は、働き方、労使関係、企業内教育、地域社会など多様な視点から「企業福祉」を体系的に捉え、その光と影の両側面を浮かび上がらせている。さらに、混迷を増す企業福祉の未来像も提示する。企業内の施策にとどまらず、協働的な地域づくりの触媒として活かすべしとの政策提起は示唆に富む。
 西三河地域で暮らし働きつつ傾注してきた四半世紀にわたる研究成果が込められている。ご一読されその魅力と迫力に触れていただきたい。

人事労務管理論の世界では福利厚生はそれなりの重みのあるわき役ですが、本書はそれが愛知県の研究者を中心としたいわゆる批判的トヨタ研究の一環としてなされている点が特徴でしょう。

ただ、ではそれがすごく意味のある発見をもたらしているのかという点については、正直言ってあまり目の覚めるような思いをさせられなかった感はあります。例えばトヨタは日本型システムのもっとも典型とみるべきなのか、むしろ例外的なのかという点も、よく詰められていないよううな。

せっかくお送りいただいているので、なにかこれこそという点を見つけ出してほめるべきかもしれないのですが。

JILPT資料シリーズNo.223『過重負荷による労災認定事案の研究 その1』

新型コロナで世情騒然とする中、例によって年度末の駆け込みでJILPTの研究成果物が一気に20冊ばかりアップされました。

https://www.jil.go.jp/institute/list/index.html

Kaju とても全部は紹介できないし、人によって関心も異なると思いますので、ここでは研究手法という観点で注目すべき成果を一つ。それは、JILPT資料シリーズNo.223『過重負荷による労災認定事案の研究 その1』です。

https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/documents/223.pdf

本研究は、過労死・過労自殺等の業務上災害が、なぜ、どのようにして発生するのかを、労働や職場の視点、すなわち職務遂行や職場管理等の社会科学的視点から明らかにすることを目的とする。具体的には、労働時間の長さに着目しつつも、その背景には様々な、職場・業務の事情や物理的・心理的負荷が複雑に絡み合って、過労死・過労自殺等の過重労働が生じていると考えられるところ、個別事案における労働災害発生の主な要因を明らかにしようと試みるものである。

どこが注目すべきかというと、その研究手法です。

独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センターが保有する資料を基に調査研究を行った。下記研究担当者は、①上記資料を基に作成されたデータベースに依拠した定量的な労災認定事案全体の傾向把握、② 発症年代・職種、時間外労働時間数を考慮して一定の基準で抽出した脳・心臓疾患事案の事例分析、③若年層の精神障害事案(かつ生存事案)における記述内容の質的分析(業務負荷に関する被災者本人の問題認識と、職場の上司・同僚等の事実認識・評価を照らし合わせ、事案の経過における被災者の業務負荷や職場の状況についての把握と分析)を行った。(*なお、以下では、脳・心臓疾患事案を「脳心事案」と、精神障害事案を「精神事案」と表記する。)

この「労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センターが保有する資料」というのが何かというと、

過労死研究センターは、平成26 年に制定された過労死等防止対策推進法が定める調査研究事業(8 条)を背景に設置されたものであり、国から、過労死・過労自殺等の脳・心臓疾患、精神疾患に関する行政資料、つまり主として労働基準監督署において認定・判断が行われた資料(調査復命書等資料)を提供され、保有し、調査研究に活用している。 

つまり、労働基準監督署が個々の労災事案について作成した行政文書そのものなんですね。こういう、それ自体は一般に公開されない行政文書それ自体を分析の素材として行う研究としては、実は私がはじめてやった労働局のあっせん事案の分析が有名ですが、こっちは過労死・過労自殺にに係る労災認定事案を分析の対象とするというもので、過労死防止対策推進法に基づく研究成果であるという意味でも注目に値すると思います。

分析内容はここでいちいち書きませんので、リンク先を御覧下さい。池添さんと高見さんというJILPTきっての労働時間専門家による分析です。

あと、中身には立ち入りませんが、労働法・労使関係に関わる研究成果だけ羅列しておきます。

https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/224.html (パワーハラスメントに関連する主な裁判例の分析)

https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/225.html (現代ドイツ労働法令集Ⅰ―個別的労働関係法―)

https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/231.html (中国のプラットフォーム就労関連裁判例の整理と分析)

https://www.jil.go.jp/institute/discussion/2020/20-04.html (労働協約を通じた派遣労働者の賃金決定―スウェーデンの事例から)

 

 

 

 

2020年3月31日 (火)

石塚史樹他『福祉国家の転換』

507932 石塚史樹・加藤壮一郎・篠田徹・首藤若菜・西村純・森周子・山本麻由美『福祉国家の転換 連携する労働と福祉』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.junposha.com/book/b507932.html

労働政策と福祉政策、労使関係と社会保障、雇用と社会扶助など、
実際には重なり合う密接な関係の領域ながら、結びつけて議論されてこなかったインターフェイスに、学際的に迫る! 

本書は、生活経済研究所の比較労働運動研究会の成果ですが、若手研究者たちがドイツ、スウェーデン、デンマークといった諸国の労働と福祉周りのテーマを取り上げています。

はじめに 篠田 徹
第1章 ドイツにおける「ミニジョブ」という働き方の現状と課題 森 周子
第2章 ドイツにおける雇用社会の新展開――内需志向産業に注目して 石塚史樹
第3章 グローバル化に対して労働組合は何ができるか 首藤若菜
第4章 スウェーデン福祉国家の変化――アクティベーション政策を手がかりとして 山本麻由美
第5章 スウェーデンにおける労働移動を通じた雇用維持システム 西村 純
第6章 デンマークにおける積極的社会政策の変遷――公的扶助受給者への政策アプローチを中心に 加藤壮一郎
おわりに 篠田 徹

このうち、首藤若菜さんや西村純さんの章は、近年の彼らの著書でも取り上げているテーマで、本ブログでも何回か紹介してきましたし、他の章も多くはそれほど意外感を与えるものはなかったのですが、第2章の石塚史樹さんのところは、これまでのドイツ型人事管理、ドイツ型労使関係のイメージとは対極に位置するような、ある種ドイツ型ブラック企業論とでもいうべき論文になっていて、大変興味深いというか、をいをいほんとかよ、そうなのかよ!?という感じで、ページをめくる手ももどかしい感じでした。

第2章 ドイツにおける雇用社会の新展開――内需志向産業に注目して 石塚史樹
本章のポイント
1 従来の雇用労働に関する理解とその問題点
2 ディスカウンターの急成長
3 ディスカウンターの労働問題
4 アルディの組織構造
5 従業員構成と人事秩序
6 技能形成・雇用ルール
7 仕事管理・業績管理
8 雇用労働に関する新しい像
コラム:ディスカウンターの思わぬ効用

取り上げているのは、ディスカウンター(安売り屋)と呼ばれる大規模食品小売業で、これまでドイツ労働研究が焦点を当ててきたフォルクスワーゲン等を始めとする重厚長大型の外需型製造業とは対極に位置する内需型サービス業です。本章ではアルディという業界最大手の会社を取り上げています。

ここが凄いんだわ。大量に採用して使い潰して、勝ち残ったのを昇進させていくという、POSSEに出てくる典型的なブラック企業を彷彿とさせる人事管理なんですね。詳しくは、是非本書を手にとって読んでみてください。

これもまたドイツの一面。

 

 

JILPT『ラオスの労働・雇用・社会』

Chosa04 JILPTの海外調査シリーズの最新版『ラオスの労働・雇用・社会』が刊行されました。

https://www.jil.go.jp/publication/kaigai/chosa04.html

労働法制を中心とする規制や、労働市場、職業教育制度といったラオスに進出する企業が必要とする情報を網羅。労働・雇用・社会について多角的にわかりやすく解説。最新の労働情勢を正しく理解するための決定版。
海に接しない内陸国(ランドロック)のラオスが、タイ、ベトナム、中国、カンボジア、ミャンマーの5カ国と経済回廊を通じて連結(リンク)する。メコン地域の要衝の地を目指して動き出す。そのようなラオスに進出する日系企業が円滑な経営を行うために必要な労働・雇用・社会に関する情報を収集しました

ラオスといっても、ぴんと来る人はあんまりいないかも知れませんが、旧仏印の奥地にある内陸国で、これだけの詳細な情報が一冊にまとめられたのは初めてではないでしょうか。

ちなみに、まことにトリビアな話題ですが、ちょっと興味を惹かれたのは労使関係の中の「外国の労働組合との関係」というところで、

・・・ラオスは社会主義国であるので、ナショナル・センターであるラオス労働連盟は社会主義国の労働組合や共産党との関わりのある労働組合によって結成されている世界労連に加盟している。・・・

とあり、「えっ、まだ息してたんだ・・・」と。

一方で、市場経済化後はITUCとも関わりを持っているようです。それなんのはなしや、と思うかも知れませんが、その昔はこの路線対立でいっぱい人が死んでたんですよ。

 

2020年3月30日 (月)

社会なんてものはないのかあるのか

Boris かつてイギリス保守党のマーガレット・サッチャー首相は、「社会なんてものはない」(There is no such thing as society.)という名言(迷言)で世を感心(寒心)させましたが、その40年後の後継者であり、EU嫌いという点ではまことに共通点のあるボリス・ジョンソン首相は、「社会なんてものはあるんだ」(There is such a thing as society.)と、真逆のことを語ったようです。

https://www.theguardian.com/politics/2020/mar/29/20000-nhs-staff-return-to-service-johnson-says-from-coronavirus-isolation

Boris Johnson has stressed that “there really is such a thing as society” in a message released he is while self-isolating with Covid-19, in which he also revealed that 20,000 former NHS staff have returned to help battle the virus.

The prime minister chose to contradict his Conservative predecessor Margaret Thatcher’s endorsement of pure individualism made in 1987, when the then PM told a magazine: “There is no such thing as society.”

In his video message, Johnson said: “We are going to do it, we are going to do it together. One thing I think the coronavirus crisis has already proved is that there really is such a thing as society.” 

ボリス・ジョンソンは新型コロナで隔離されながら公開されたビデオメッセージで「社会なんてものはほんとにあるんだ」と強調し、2万人の全国医療サービス退職者たちがウイルスとの闘いのために職場に復帰したことを明かした。

同首相は彼の保守党の先輩であるマーガレット・サッチャーが1987年に行った「社会なんてものはない」という純粋な個人主義の裏書きと矛盾することを選択したのだ。

ビデオメッセージでジョンソンは「我々は打ち勝ちつつある。我々はともに打ち勝ちつつある。コロナウイルス危機がすでに証明した一つのことは、社会なんてものはほんとにあるんだということだ」

いやあ、この時にボリスがサッチャーのイデオロギーを正面から批判する役回りを演ずることになるとは、ほとんどだれも予想すらしていなかったのではないでしょうか。

『POSSE』vol.44

9784906708833_600 『POSSE』vol.44をお送りいただきました。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784906708833

特集は「広がる非正規、崩壊する現場」です。

公共サービスや教育・保育などのケア領域をはじめ、非正規労働者が拡大し続けている。
非正規労働者の増加は、低賃金・不安定なワーキングプアの増大に直結しているが、問題はそれだけではない。
わたしたちの日常生活を支える労働が非正規化していくことによって、サービスの質が劣化し、社会の再生産が脅かされていく。
こうした事態は、すでにかなりの規模で進行しているのだ。
本特集では、非正規労働者の拡大が社会のあり方をどのように変容させてしまうのかに焦点を当て、非正規化の行き着く先を考える。

[鼎談]分断を乗り越える労働運動へ―外国人労働問題と非正規雇用の全階層化
奥貫妃文(全国一般東京ゼネラルユニオン(東ゼン労組)執行委員長)×ルイス・カーレット(全国一般東京ゼネラルユニオン(東ゼン労組)専従オルグ)×今野晴貴(NPO法人POSSE代表)

新型コロナウイルス対応で浮き彫りになった非正規雇用の拡大と現場の崩壊
本誌編集部

公務員の非正規化がもたらす行政現場の歪み―非正規公務員の専門性が発揮できる労働運動へ
上林陽治(公益財団法人地方自治総合研究所研究員)

地方自治体における官製ワーキングプア問題と、労働組合に期待される取り組み―現場からの働き方改革を起点にした社会的労働運動の実践
川村雅則(北海学園大学教授)

私学教員ユニオンにおける非正規雇用教員への取り組み
私学教員ユニオン

この冒頭の鼎談に出ている奥貫妃文さんは、ここで名乗っている全国一般東京ゼネラルユニオン(東ゼン労組)執行委員長たる労働運動家であると同時に、相模女子大学人間社会学部社会マネジメント学科准教授たる労働法学者でもあります。活動家と密接な学者というのはそれなりにいますが、自ら一般労組の委員長となっている労働法学者は恐らくほかにいないでしょう。

実は本ブログで以前、彼女の論文を紹介したときに、こう書きましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/08/post-e30cca.html (『日本労働研究雑誌』2019年9月号)

その中で若干異色なのが、奥貫さんの論文で、実は本文は労働組合法の簡単な解説みたいなものですが、「むすびにかえて」で、御自分が執行委員長を務める全国一般東京ゼネラルユニオンの実践についていろいろと書かれていて、正直、(労働法学者としての立場よりも)こちらを中心において書かれれば良かったのではないかと。

今回の鼎談では、まさに労働運動家として存分に語っています。

・・・あらゆる場面で組み込まれた分断や競争にどう対抗していくかが、自分たちにとって課題だと思っています。・・・事務スタッフの日本人女性は「外国人の先生たちはいいよね。あんなさくっと授業だけやって、高い時給をもらえて。私たちはこんなに拘束されて、月20万円弱しかもらってないのに」と不満がたまってしまいます。一方で外国人講師は、「私たちは安定した雇用を求めているのに、社会保険に入りたくても入れてくれない。有給休暇すらもらえない」と、両者ともに不満はたまる状況です。

本来はどちらも同じ職場の問題として組織化して団体交渉していかなければいけないのですが、経営者はその分断をうまく使ってきます。・・・

 

 

土岐将仁『法人格を越えた労働法規制の可能性と限界』

L24334 土岐将仁さんより『法人格を越えた労働法規制の可能性と限界-個別的労働関係法を対象とした日独米比較法研究』(有斐閣)をお送りいただきました。ありがとうございます。大テーマに挑んだ大作です。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641243347

労働契約上の使用者以外の第三者も,資本関係・企業間契約を通して使用者に影響を与えることがある。本書では,労働法規制の名宛人は誰かという観点から,丁寧な比較法的分析を基礎として,第三者に法規制を及ぼすことの可能性と限界を探究する

第1章 序 論
 第1節 問題の所在
 第2節 日本法の分析
 第3節 日本法の特徴と外国法分析の課題
第2章 ドイツ法
 第1節 はじめに
 第2節 最低賃金に関する規制
 第3節 労働安全衛生に関する規制
 第4節 差別禁止に関する規制
 第5節 労働者派遣に関する規制
 第6節 解雇に関する規制
 第7節 その他の規制
第3章 アメリカ法
 第1節 はじめに
 第2節 最低賃金や時間外割増賃金に関する規制
 第3節 労働安全衛生に関する規制
 第4節 差別禁止に関する規制
 第5節 解雇に関する規制
 第6節 その他の規制
第4章 総 括
 第1節 ドイツ法及びアメリカ法のまとめ
 第2節 総 括 

世間では労働者性に対する「使用者性」の問題として論じられる領域ですが、それを使用者概念に拘泥するのではなく、労働法規制の名宛て人は誰かという観点から緻密に分析していきます。

この発想は、私もかつて、派遣や請負が話題になった頃、工場法以来の法政策を分析することであれこれ論じたことがありますが、その後かなり離れていたため、改めて土岐さんの分析を読んで新鮮でした。

ちなみに、本書第1章第2節の日本法の分析の制定法上の名宛人の追加・拡張の最後の政策的規制にある「高年齢者雇用安定法上の「特殊関係事業主」における継続雇用制度」は、現行法上はあくまでもごく例外的なケースに過ぎませんが、現在国会審議中の改正案が成立すると、新第10条の2第3項の純他企業における「継続雇用」もこれに含まれることになります。しかし特別の関係のない(企業間の契約は結びますが)純他企業がどこまで恒例法の「名宛人」になり得るのか、いろいろ検討すべき点がありそうです。

2020年3月29日 (日)

AdeccoのPower of Workに、インタビュー記事いくつか

AdeccoのPower of Workに、インタビュー記事がいくつか載っています。

まず、外国人労働問題で、特定技能について、

https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/142 (特定技能による就労は徐々に拡大 外国人にとって魅力ある職場づくりが課題)

Tmb_142 2020年に日本の働き方改革は新章に突入する。2020年に注目される「外国人労働者」についてのポイントや留意点について、独立行政法人労働政策研究・研修機構の労働政策研究所長、濱口桂一郎氏に語っていただいた。
2019年4月に改正出入国管理法(入管法)が施行された。在留資格「特定技能」の新設により、初めて技能労働を目的とした外国人の受け入れが認められることとなった。
これにより外国人労働者の就労が拡大すると見られたが、今のところ大きくは増えていない。
「詳細な分析が必要ですが、理由の一つに『技能実習』との兼ね合いがあります。これまで多くを占めていたのが、働きながら技能を身につける技能実習でした。
技能実習で就労できるのは最長5年で、修了すると特定技能1号資格が与えられます。企業としては、まず技能実習生として受け入れ、5年後も働いてもらいたい場合に特定技能に移行する、という流れを想定しているのでしょう」
独立行政法人労働政策研究・研修機構の労働政策研究所長、濱口桂一郎氏はこう話す。
とはいえ今後、国内の人手不足が深刻化するのは間違いなく、技能実習から特定技能へのシフトは着実に進んでいく。
「技能実習と違い、特定技能資格を持つ人は、より良い待遇を求めて他社に自由に移ることができます。
今後、特定技能で就労する人が増えれば、単に『人件費が安く済むから』といった理由で雇用していた企業からは外国人はどんどん離れていってしまうでしょう。
2020年以降、外国人にとって魅力ある就労先となるような努力がますます求められるはずです」 

次の同一労働同一賃金は、法政大学の松浦民恵さんが登場していますが、

https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/143 (同一労働同一賃金のポイントは均衡待遇の規制強化ー待遇差の点検と労使間の対話が重要ー)

その次の高齢者雇用就業にはまたわたくしが、

https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/144 (70歳雇用が努力義務にー7つの働き方をどう具体化するかー)

Tmb_144 2020年に日本の働き方改革は新章に突入する。21年に法施行が予想される70歳までのシニア世代の雇用支援など、改革法案は目白押しだ。そんな2020年に注目される「シニア世代の就労拡大」についてのポイントや留意点について、独立行政法人労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口桂一郎氏に語っていただいた。
「2020年以降の雇用関連のトピックスで企業にとって最も大きな影響を与えそうなのが、70歳までの就業機会確保への努力義務を課す『高年齢者雇用安定法』の改正です」(濱口氏)
2019年6月に政府の未来投資会議が発表した成長戦略実行計画案において、議論が活発化。上記の改正法案が2020年の通常国会に提出され、成立すると早ければ21年4月から導入される見通しだ。
すでに60代前半については、「定年廃止」「定年延長」「継続雇用制度導入」のいずれかで処遇する実施義務が企業に課されてきた。70歳までについては、これらに「他企業への再就職」「個人とのフリーランス契約への資金提供」「個人の起業支援」「社会貢献活動参加への資金提供」を加えた7項目が努力義務となる(図1参照)。 

「年金制度改革と並行して進む見通しで、政府としては65歳以上の就労を後押しすることで、社会保障財政を改善させたい狙いもあるのでしょう。
ただ、フリーランスや起業を選ぶ人がどのぐらいいるのか、社会貢献活動への参加とは具体的にどのような就労なのかなど、現状では不透明な部分も多いので、国会での審議内容などをウォッチする必要があります。企業は今後1年をかけて労使での話し合いの場を設け、就業規則において70歳までの雇用機会についてどのように規定を設けるかが課題になります」 

そして新型コロナで注目を集めているテレワークやフリーランスについても、

https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/145 (テレワーク普及には制度的課題もーフリーランスの保護がホットなテーマにー)

Tmb_145 2020年に日本の働き方改革は新章に突入する。19年に始まった外国人労働者の就労拡大、2020年に施行される同一労働同一賃金制度による正規社員・非正規社員の待遇差の解消に加え、21年に法施行が予想される70歳までのシニア世代の雇用支援など、改革法案は目白押しだ。多様化が進む個人のキャリアに対する企業側のケアも欠かせない。
2020年に注目される「テクノロジーと働き方」についてのポイントや留意点について、独立行政法人労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口桂一郎氏に語っていただいた。
2020年7月開催の東京五輪は、テレワーク普及への起爆剤になるとの見方がある。12年のロンドン五輪の際、政府の呼びかけに応じてロンドン市内の約8割の企業がテレワークを実施し、交通混乱を回避。東京五輪でも大規模な混雑が予想されることから、政府や東京都もテレワークを推進している。
「かなり以前から技術的にはテレワークでの勤務は問題なくできるにもかかわらず、日本ではなかなか普及していません。企業で勤務する大半が職務や勤務地を限定しない無限定正社員であり、職務内容や成果のみで評価されるわけではないので、テレワークに馴染まない面があります。ジョブ型雇用の導入や評価制度の見直しも含めた議論が必要でしょう」(濱口氏)
テクノロジーと雇用との関係では、シェアリングエコノミーの普及によって生まれた個人の新しい働き方への対応に注目すべきだと濱口氏は話す。
「特に2019年頃から、インターネットを通じて飲食店の宅配代行を請け負うサービスが日本でも急速に普及し、働き手である個人の配送員をどこまで保護するかが重要な政策的課題として浮上しています」
課題の一つは、労働法による保護などが受けられない点にある。働き手が法的に「個人事業主(フリーランス)」として扱われるためだが、特定の企業から仕事を継続的に請け負い、実質的に労働者に近い立場になっている人は少なくない。
「厚労省はこれらの働き方を『雇用類似』と位置づけ、仕事中のケガや病気を補償する労災保険の適用や、取引先企業と契約ルールの整備を検討しています。働き方の多様化が一層進む契機になるかもしれません」 

いずれも取材を受けたのはかなり以前なので、最近の動きは全く語られていませんが、大きな流れの話としては読むに堪えるとは思います。

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