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2021年6月24日 (木)

入管法上の「不法就労」は労働者性の認定ではない件について

この記事に対して、入管当局がウーバーイーツの労働者性を認めたと思っている人もちらほらいるようですが、そういうわけではありません。

https://www.asahi.com/articles/ASP6Q44YGP6QUTIL00V.htmlウーバージャパン幹部らを書類送検 不法就労助長の疑い

不法残留していたベトナム人がフードデリバリー大手ウーバーイーツの配達員として働くのを手助けしたとして、警視庁は22日、運営していたウーバージャパン(東京都港区)の幹部2人と、法人としての同社を出入国管理法違反(不法就労助長など)の疑いで書類送検し発表した。運営会社が不法就労に関連した容疑で書類送検されるのは初めてという。・・・・ 

出入国管理及び難民認定法にいうところの「不法就労」とは、雇用契約の存否にかかわらず、どんな契約に基づくものであろうが、「報酬その他の収入を伴う」活動を指します。

(退去強制)
第二十四条 次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。
三の四 次のイからハまでに掲げるいずれかの行為を行い、唆し、又はこれを助けた者
イ 事業活動に関し、外国人に不法就労活動(第十九条第一項の規定に違反する活動又は第七十条第一項第一号、第二号、第三号から第三号の三まで、第五号、第七号から第七号の三まで若しくは第八号の二から第八号の四までに掲げる者が行う活動であつて報酬その他の収入を伴うものをいう。以下同じ。)をさせること。
ロ 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置くこと。
ハ 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又はロに規定する行為に関しあつせんすること。 

第七十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
一 第三条の規定に違反して本邦に入つた者
二 入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者
二の二 偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は第四章第二節の規定による許可を受けた者
三 第二十二条の四第一項(第一号又は第二号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者で本邦に残留するもの
三の二 第二十二条の四第一項(第五号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者(同条第七項本文の規定により期間の指定を受けた者を除く。)で本邦に残留するもの
三の三 第二十二条の四第七項本文(第六十一条の二の八第二項において準用する場合を含む。)の規定により期間の指定を受けた者で、当該期間を経過して本邦に残留するもの
四 第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者
五 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第六項(第二十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する者
六 仮上陸の許可を受けた者で、第十三条第三項の規定に基づき付された条件に違反して、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出しに応じないもの
七 寄港地上陸の許可、船舶観光上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可又は一時庇ひ護のための上陸の許可を受けた者で、旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの
七の二 第十四条の二第九項の規定により期間の指定を受けた者で当該期間内に出国しないもの
七の三 第十六条第九項の規定により期間の指定を受けた者で当該期間内に帰船し又は出国しないもの
八 第二十二条の二第一項に規定する者で、同条第三項において準用する第二十条第三項本文の規定又は第二十二条の二第四項において準用する第二十二条第二項の規定による許可を受けないで、第二十二条の二第一項に規定する期間を経過して本邦に残留するもの
八の二 第五十五条の三第一項の規定により出国命令を受けた者で、当該出国命令に係る出国期限を経過して本邦に残留するもの
八の三 第五十五条の六の規定により出国命令を取り消された者で本邦に残留するもの
八の四 第六十一条の二の四第一項の許可を受けた者で、仮滞在期間を経過して本邦に残留するもの 

とはいえ、規定ぶりを見ると、「自己の支配下に置く」とか、指揮命令関係を前提としているような規定になっていますが、少なくとも法律上は(近年多くの国でそういう判決が続出しているように)雇用であれ(ウーバーイーツ側が主張するように)請負であれ、入管法上は不法就労として処罰の対象になるという建付けになっています。

賃上げ与党に減税野党という構図でいいのかね?

本ブログでも何回も取り上げてきたし、最近は論壇でも頻繁に論じられるように、欧米の左派が労働や貧困といったソーシャルイッシューから人種や性別、LGBTといったアイデンティティポリティクスに傾斜し、その結果右派ポピュリズムの興隆を招いたというのは、日本でも似たような状況が展開してきたのは事実。で、そこんところに着目して「リベサヨ」というペジョラティブな用語を使う向きもある。というか、私自身も時に使ったりもする。ただまあ、いまでは偉大なピケティの作り出した「バラモン左翼」という用語法が普遍的になりつつあるようだが。

でも、そういう先進国共通の「リベサヨ」現象とはかなり異なる、それよりもだいぶ前から私が、日本の「りべらる」と自称する左派の傾向として指摘してきた「リベサヨ」現象は、そういう90度に直交する軸の話ではなくて、むしろ欧米であれば端的に右派の主張である減税を、それこそが左派の命であると思い込むかのごとく熱烈に主張する奇妙な傾向のことだ。

このままいくと、賃上げ与党対減税野党という奇妙きてれつな構図になっていくんだけど、それでいいのかね。ま、いいんだろうね。こういう長い歴史があるわけだし。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-972110.html(「憎税」左翼の原点?)

これは、拉致問題の絡みで旧日本社会党を批判するという文脈で持ち出されている古証文ではあるんですが、

https://twitter.com/nittaryo/status/1270557950738825217

「『北朝鮮はこの世の楽園』と礼賛し、拉致なんてありえないと擁護していた政治家やメディア」
と言われても実感が湧かない皆さんに、証拠を開示しよう。これは日本社会党(現社民党)が1979年に発行した「ああ大悪税」という漫画の一部。北朝鮮を「現代の奇蹟」「人間中心の政治」と絶賛している。 

Eahtrbevcaatscf

その文脈はそういう政治話が好きになひとに委ねて、ここでは違う観点から。と言っても、本ブログでは結構おなじみの話ですが。よりにもよって「ジャパン・ソーシャリスト・パーティ」と名乗り、(もちろん中にはいろんな派閥があるとはいえ)一応西欧型社民主義を掲げる社会主義インターナショナルに加盟していたはずの政党が、こともあろうに金日成主席が税金を廃止したと褒め称えるマンガを書いていたということの方に、日本の戦後左翼な人々の「憎税」感覚がよく現れているなぁ、と。そういう意味での「古証文」としても、ためすすがめつ鑑賞する値打ちがあります。

とにかく、日本社会党という政党には、国民から集めた税金を再分配することこそが(共産主義とは異なる)社会民主主義だなんて感覚は、これっぽっちもなかったということだけは、このマンガからひしひしと伝わってきます。

そういう奇妙きてれつな特殊日本的「憎税」左翼と、こちらは世界標準通りの、税金で再分配なんてケシカランという、少なくともその理路はまっとうな「憎税」右翼とが結託すると、何が起こるのかをよく示してくれたのが、1990年代以来の失われた30年なんでしょう。

31dsj9bb24l_sx307_bo1204203200_ いまさら井出英策さんがどうこう言ってもどうにもならない日本の宿痾とでもいうべきか。

 

2021年6月23日 (水)

山本隆司・水町勇一郎・中野真・竹村知己『解説 改正公益通報者保護法』

583181 山本隆司・水町勇一郎・中野真・竹村知己『解説 改正公益通報者保護法』(弘文堂)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.koubundou.co.jp/book/b583181.html

2004年に制定された「公益通報者保護法」は、2020年に初めて基本構造に及ぶ改正が行われました。
 改正の主なポイントは、①通報者の範囲の拡大、②通報対象事実の範囲の拡大、③通報要件の緩和、④内部通報体制整備の義務化、⑤守秘義務、⑥通報者の損害賠償責任の免除、等です。改正法の施行は2022年ですので、それまでに一定規模以上の事業者は必要な内部通報体制等の整備を行わなければなりません。
 本書は、制度および改正全体を概説するほか、改正に至るまでの議論や実務上の疑問点を踏まえて、改正後の全条文を逐条解説しています。また、改正点等を具体的にイメージしやすいようQ&Aも収録しています。行政法・労働法の議論に基づく考察を行った、公益通報者保護法を真に理解するうえでの必読書です。

帯には「法改正の立案に携わった学者と弁護士による解説書」とありますが、 学者は行政法と労働法で、それぞれ第3篇で行政法と労働法の観点から書いていて、本体に当たる第1篇と第2編は、弁護士ーーというか、弁護士として役所に入って立法作業に携わった方が書いています。

第1編 総論(竹村知己 弁護士・元内閣府消費者委員会事務局参事官補佐
 第1章 公益通報者保護法制の全体像
 第2章 公益通報者保護法の制定
 第3章 公益通報者保護法改正の経緯
 第4章 公益通報者保護法改正の基本趣旨

第2編 逐条解説(中野真 弁護士・元消費者庁消費者制度課政策企画専門官)

 第1章 公益通報者保護法全般に関わる事項
 第2章 法目的(1条)
 第3章 「公益通報」の定義(2条)
 第4章 公益通報者の不利益な取扱いからの保護(3条~10条)
 第5章 事業者および行政機関のとるべき措置(11条~22条・別表)
 第6章 その他の法の検討課題
 ◆Q&A 

第3編 行政法・労働法からみた改正法のポイント

 第1章 改正公益通報者保護法のポイント――行政法の観点から(山本隆司 東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  第1 序
  第2 本法の全体に関する行政法上の問題
  第3 事業者に対する行政措置
  第4 2号通報と行政手続との関係
  第5 国・地方公共団体の公益通報への取組み
  第6 結びに代えて―消費者庁の役割
 第2章 改正公益通報者保護法のポイント――労働法の観点から(水町勇一郎 東京大学社会科学研究所教授)
  第1 背景―公益通報者保護法の制定と改正
  第2 一般法理としての内部告発者保護法理(裁判例)
  第3 公益通報者保護法の枠組みと改正のポイント
  第4 意義と課題

 

「最賃が上がると雇用が減る」は本当か@東洋経済オンラインインタビュー

Toyokeza 東洋経済オンラインの最低賃金に関するインタビューに登場しました。

https://toyokeizai.net/articles/-/436013(最低賃金引き上げ、いま何を議論すべきなのか 菅政権が掲げる「より早期に1000円」への課題)

 毎年恒例の最低賃金をめぐる議論が6月22日の中央最低賃金審議会でスタートした。2012年以降、8年連続で最低賃金は大幅に引き上げられてきたが、今年は菅義偉政権が「より早期に全国加重平均1000円を目指す」ことを目標に掲げている。
 最低賃金をめぐり、企業経営や労働の現場でいま何が起きているのか。茨城県の筑波山のふもとで旅館業を経営する吉岡鞠子氏、労働問題の第一人者である労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏、全国の生協で働く人たちを束ねる全国生協労働組合連合会の柳恵美子氏の意見を聞いた。

というわけで、私は「「最賃が上がると雇用が減る」は本当か」という問いに対して、私なりの答を述べております。

 日本は2000年代半ばから最低賃金の引き上げに一貫して取り組んでいます。「脱デフレ」を掲げた第2次安倍政権は(最低賃金の)引き上げ幅を拡大させましたが、引き上げの動き自体はそれ以前からあって、与党が自民党でも民主党でも変わりはなかった。・・・・・・

 

 

上野歩『労働Gメンが来る!』

9784575237542 労基小説としては、最初の沢村凜『ディーセント・ワーク・ガーディアン』がとても出来が良く、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-748a.html

894278 次の早見俊『労働Gメン草薙満』があまりにもひどい出来だったのに対して、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/g-0de4.html

9784334791698 今回読んだ上野歩『労働Gメンが来る!』はその中間くらいというか、労基ってこうなんだよと説明するにはいい小説という感じでありました。

https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334791698

清野清乃は二十六歳。労働基準監督官に任命され、吾妻労働基準監督署に配属された新米だ。働き方改革が叫ばれる昨今だが、意識の低い雇用主は多く、相談は絶え間ない。いきなり解雇されたり、給料の払いが遅れたり、ハラスメントを受けたり……。働くこと、雇うことって、こんなに難しいの? 清乃が担当する案件を通して、「労働」の本質をさぐる、最新型お仕事小説

正直言って、特に労災のパートなど、無理矢理小説仕立てにした労災の解説書風でもありますが、巻末の主要参考文献や労働局、監督署にいろいろ取材したのだろうなというのはよく伝わってくる小説になっています。

最後の章で、ちょうどコロナのさなかの妊娠看護師の話で出たばかりの母体健康管理措置を持ち出すあたりは、いかにもコキンから聞いた話をそのままネタにしました感があって、よろしいんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

2021年6月22日 (火)

EUのプラットフォーム労働の労働条件に関する第2次協議に見える立法構想@JILPTリサーチアイ

JILPTリサーチアイに「EUのプラットフォーム労働の労働条件に関する第2次協議に見える立法構想」を紹介しました。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/066_210622.html

プラットフォーム労働の問題と、AIによるアルゴリズム管理の問題の双方にまたがって、意欲的な立法構想を提示しています。

去る6月15日、EUの行政府たる欧州委員会は、プラットフォーム労働の労働条件に関する労使団体への第2次協議文書[注1]を附属職員作業文書[注2]とともに発表した。周知のように、EUでは労働社会政策の立案に当たってはEUレベル労使団体への2段階の協議が義務付けられており、その第2次協議においては欧州委員会が検討している措置の内容が示される。今回の第2次協議文書は、具体的なプラットフォーム労働者保護立法の内容が示されているだけではなく、先日(4月30日)このリサーチアイ第60回で紹介したEUの新AI規則案とも深く関連するテーマとして、アルゴリズム管理に関する規制の在り方についても提案がなされており、Society5.0という旗の下にICT、AIの発展を進めている日本にとっても大変興味をそそられるものとなっている。今回も基本的には速報的意義を重視し、その議論の詳細は省略して、第2次協議文書で示されている将来のEU立法構想の概略を紹介したい。

まず、就業上の地位の「誤分類」に対する施策である。ほとんどの場合、プラットフォーム労働者は契約上自営業者とされているが、近年加盟国の裁判所でプラットフォーム労働者を労働法の適用対象たる「労働者」と認定する判決が相次いでいる[注3]。しかしながら、それらは個別事案ごとのバラバラの判断に過ぎないので、EUレベルでのルールを設けようというのである。

第1の選択肢は、プラットフォーム事業者とそれを通じて就労する者との間の契約が雇用関係であるという反証可能な推定規定である。この推定を覆すためには、プラットフォーム事業者は司法手続きによりその者が真に自営業者であることを立証しなければならない。かかる法的推定規定は、労働・社会保障当局が彼らを労働者として再分類する上で明確なルールを提供することとなる。

第2の選択肢は、司法手続きにおける立証責任の転換又は証拠基準の低減である。プラットフォーム事業者を通じて就労する者は自動的に雇用関係とみなされるわけではないが、雇用関係が存在する証拠となるごくわずかな基本的事実(プリマ・ファシ)を提示すればよく、その場合その者が真に自営業者であることを立証すべきはプラットフォーム事業の側となる。プリマ・ファシとなりうるのは、報酬の水準がプラットフォーム事業者によって決められているとか、顧客とのコミュニケーションを制限しているとか、外見や接客について特定のルールを要求しているといったことでよい。

この他、行政手続きによる労働者性の認定や、労働、社会保障、税務当局による契約の性質決定も、煩雑な司法手続きをしなくて済むというメリットはあるが、最終的には司法判断によらざるを得ないという問題がある。これらの選択肢を分野に応じて組み合わせるという提案もされている。

次にアルゴリズム管理に関連する新たな権利の導入である。協議文書が提示しているのは、

・アルゴリズムが労働を管理する方法に関して、その影響を受ける者及びその代表者に対して情報提供を改善すること、
・アルゴリズムが顕著な影響を与える意思決定に対する適時の正当な人間による監視、管理、説明責任を保証する内部的手続きの確立、
・是正のための適切なチャンネルの確保、
・アルゴリズム管理システムに関する情報提供と協議の権利、労使団体の関与の確保、
・勤務外時間におけるプライバシーの権利、個人データ保護規則の適用、
・レーティング(格付け)のポータビリティ、
・労働関連契約関係の自動的終了又は同等の行為の排除、

といったことであり、これらは性質上プラットフォーム労働を超える広がりをもった提案であるが、ここではあくまでもプラットフォーム労働に限定した立法提案であり、将来的に労働市場におけるAIの利用に向けたより広範なアプローチへの第一歩となりうると述べている。ここは労働法の未来を考えるうえでも興味深い。

協議文書はさらに、プラットフォーム事業者に対する登録や透明性義務(就労条件や就労者数等)、一定のデータの報告義務(タスク期間、タスクごとの報酬、タスクの割当て等)、社会保障の権利のポータビリティとプラットフォームを通じて就労する者の身元確認といった点にも言及している。

このように、今回の協議文書は、プラットフォーム労働についてのEU立法構想を示したものとしても極めて重要な意義を有するが、それだけではなく、雇用、非雇用を通じて広範な様々な働き方に大きな影響を及ぼしつつあるAIによるアルゴリズム管理に対する労働法の対応方向という観点からも興味深いものとなっており、日本における議論にも示唆するところが大きいと言えよう。 

 

過労死認定基準微修正へ

本日の労政審労災保険部会脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会の資料が既にアップされていますが、

https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000795625.pdf

今までの基準を基本的には維持するということですが、若干変わるのはこの点でしょう。

・・・さらに、この考え方に加えて、疫学調査の結果や支給決定事例等を踏まえ、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮して業務と発症との関連性が強いと判断できる場合について、「労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断すること」、「その際、労働時間のみで業務と発症との関連性が強いと認められる水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること」を、新たに示すことが妥当である。

つまり、1か月100時間、2~6か月平均で80時間という基準には達していなくても、それに近い水準でありかつ他の負荷要因が認められる場合には認定しますよということです。

あと、そもそも今の認定基準ができた20年前にその根拠として睡眠時間との関係が載ってたのですが、今回の報告諸案には、その後のいろんな研究成果なども載っていて、改めてこの問題を考える上で役に立ちます。

 

 

 

 

2021年6月21日 (月)

「ジョブ型」賛美の裏で真実隠す――労働や賃金の概念ない濱口桂一郎@労働の解放をめざす労働者党

Marxdoushikai2016_60 労働の解放をめざす労働者党さんから、「労働や賃金の概念ない」輩であるとの御批判をいただきました。大変膨大かつ微に入り細にわたっているのですが、要するにマルクス経済学のイロハのイもわきまえない奴だというお叱りのようであります。それは最初からそういう奴ばらだと言っているはずですが。

http://blog.livedoor.jp/marxdoushikai2016/(「ジョブ型」賛美の裏で真実隠す――労働や賃金の概念ない濱口桂一郎)

「異なる労働異なる賃金」が最上の原理と

労働と労働力の区別を知らない濱口

賃金とは「労働の価値」ではない

労働力の価値規定は「メンバーシップ」のみならず、ジョブ型雇用にも当てはまる

非正規労働も女性差別も資本の本性から発生

いやもちろん、マルクス経済学の方々が労働と労働力を区別しており、それに基づいて労働力の価値は女房子供も含めた生活費だからと年功賃金を正当化してきたことも、歴史的事実としては知っています。その理屈に全然納得できていないだけで。

ただまあ、確かにマルクス経済学の観点からすれば、私がマル経流の「労働や賃金の概念ない」輩であるというのは間違いのないところなのでしょうから、そもそも全然異なる土俵の上の議論にあれこれコメントする必要もないでしょう。その点は仰るとおり。

私にとって関心があるのは、経済理論のあれこれが正しいとか間違っているといった神学的議論ではなく、それが具体的なさまざまな労働者の賃金形態にどのように影響してきたのか、そして日本の労働社会をどのように作り上げてきたのか、という点にしかないものですから。

そういう観点からすれば、マルクス経済理論によってどれほど山のように論証されようが、それは下のエントリで取り上げた「昭和感覚の減税主義者たち」と何一つ選ぶところはないように思われます。

あと、資本の本性というのは特定の労働力だけかわいがってそれ以外の労働力を搾取するなんていうチンケなものではなく、あらゆる労働力を無慈悲に無差別に搾取することにあると思いますよ。それこそ、マルクス御大がのたまわっているじゃないですか。資本主義こそ偉大なレヴェラーである、と。

 

 

 

 

 

児美川孝一郎『自分のミライの見つけ方』

584264 児美川孝一郎『自分のミライの見つけ方 いつか働くきみに伝えたい 「やりたいこと探し」より大切なこと』(旬報社)をお送りいただきました。

https://www.junposha.com/book/b584264.html

いやこの表紙、どうみたって青春アニメでしょ。

これまでの常識が通用しない未来を、僕たちはどう働き、
どう生きるか。若い世代に向けた、まったく新しいキャリアデザインのヒント。
「やりたいこと探し」になんか悩まなくていい。
「なりたい職業ランキング」に意味はない。
この本で新しい視点=武器を手にすることで僕らはもっと自由になれるはず。
自分らしいキャリアを歩み出すための1冊 

児美川さん、今回は思いっきり目線を10代前半の若い世代に合わせてきています。

・・・昔からそうだけど、きみたち10代は「自立に向かう旅」に出発する時期だ。

今、きっと同世代のだれもが、少しずつ自分の中で「なんだろう、このもぞもぞずる感じは」って違和感を意識し始めているんじゃないだろうか。

これまでは親や先生、大人たちの言うことを素直に聞いて、それが正しいと思ってきたかもしれない。けれど、思春期になると、それだけでは満足しきれなくなっているはずだ。

そんな古い自分を少しだけ壊して新しくするためには、自分自身を旅へと駆り立てていく力が必要になる。・・・

この本ではきみが自立に向けた第一歩を踏み出し、これからの人生や進路、キャリアについて準備するためのヒントも示してみたい。・・・

もちろん、児美川さんなので、焦点は仕事についての視点を示すことにあります。

はじめに

1章 フツーの人生って、なんだ?

「同調圧力」というやっかいな存在

フツーにも意味はある?

フツーの人生はどこにある?

価値観のちがう世代が共存する時代

フツーを疑えば、きみは少し自由になる

2章 「やりたいこと」がないとダメなの?

大人はなぜ「やりたいこと」を聞くの?

「やりたいこと言わせ」の問題点

 1)夢が職業に限定されている

 2)なりたい職業は専門職ばかり

 3)「キャリア教育」の設計ミス

やりたい仕事に就けなかったら不幸?

そもそも、人は働かないとだめなの?

その仕事は10年後には消えている?

80歳まで働く社会が到来する!

「やりたいこと」にとらわれなくていい

3章 働くって、なんだ?

「いい仕事」って、どんな仕事?

転職するのはいけないこと?

5人に2人は正社員ではない

雇われない働き方も考える

「働きたくない」は許される?

きみの目の前に広がる可能性

4章 きみたちはこんな社会にこぎ出ていく

女性の「ガラスの天井」って、なんだ?

「働きバチ」社員はいなくなる?

血のつながり=家族はもう古い?

きみのまちが消滅する可能性

きみはどんな未来をつくりたいか

5章 学校の勉強は役に立つか

勉強なんて役に立たない、というフツー

「役に立つ」って、どういう意味?

そうは言っても学校の勉強はつまらない?

人はなぜ勉強するんだろう?

勉強するのは自分のためだけじゃない?

「グーグル先生」に聞けばすべて解決するのか? 

 

 

 

「殺人ワクチン」ビラ配布は従業員全員取締役の塾でしたか

こういう三面記事ネタがあったのですが、

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210621-OYT1T50040/(「殺人ワクチン」「世界に大革命」大阪の学習塾運営会社、不安あおるミニコミ紙を住宅に大量投函)

学習塾を運営する大阪市の会社が今月初旬、新型コロナウイルスワクチンの体への影響について、誤った情報に基づいて不安をあおる内容の印刷物を、大阪府内の多数の住宅に 投函していたことがわかった。専門家は「科学的根拠のない情報に惑わされないように注意してほしい」と呼びかける。 ・・・

まあ、長引くコロナ禍の影響で変なのが続々出てきよるわいな・・・と思ってその先を読むと、どこかで目にした名前が出てきました。

・・・この会社は「類設計室」(大阪市淀川区)で、小中学生らを対象に大阪府内など約50か所で学習塾を展開。毎年、難関校の合格者を出しているという。・・・

96f1413b0efd0bd9e57fc7702b6f9487d70 この名前の塾、どこかで見たな、とおもったら、労働判例でしたわいな。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-7e4d.html (社員全員取締役!?)

・・・・・・いや、問題は残業代だけじゃないでしょ、というか、残業代だけならば、管理監督者に仕立てておけばいいのですが、社員全員取締役、ということは、社員全員労働者にあらず、ってことで、ということは、そもそも労働者ではないんだから、一切の労働法が適用されないということで、残業代どころか、そもそも賃金を支払う必要すらなく、労働時間も安全衛生も一切規制がなく、被用者保険にも当然入れず、お前はクビだ!と言われても、それは取締役の解任なので解雇ではなく、要するに労働者の権利は一切なくなってしまうということになるわけであって、残業代だけじゃないでしょ。 

こういうことをやらかす塾が、やっぱりこういうことをやらかすわけですな。

配布したのは「週刊 事実報道」と題した同社発行のミニコミ紙。ワクチンによる死亡が、感染による死亡より多くなるとし、「殺人ワクチン」と記しているが、示された数字に根拠はなかった。流産が高い割合で報告され、不妊症になる恐れがあるとも主張。「生殖障害が伝染する」との誤った情報も紹介していた。・・・・

ミニコミ紙は、これまで「欧州の貴族連合・奥の院」の存在を主張し、「コロナ騒動を起こし、世界に大革命を起こそうとしている」などと掲載。同社のウェブサイトによると、通常は有料だが、今回は無料で約58万世帯に配布したという。・・・

宗教系とは言いながら(たぶん)教えている中身はまともな受験勉強であるみすず学苑に後光がさして見えてくるほどの、年季の入ったトンデモっぷりです。

 

 

 

 

 

 

 

2021年6月20日 (日)

ジョブ型とメンバーシップ型のねじれた議論

みずほ銀行のシステム障害の報告書をめぐって、こういうツイートがあったのですが、

https://twitter.com/_innocent2017/status/1406076301153386498

Vliauirg_400x400 みずほ銀行のシステム障害に関する調査報告書が話題になってますね。
その中でも「声を上げて責任問題となるリスクを取るよりも、持ち場でやれと言われていることだけをやった方が組織内の行動として合理的となる企業風土」という趣旨の原因分析が、日本企業らしいとして話題になっています。

これは、本当に日本企業独特の企業風土なのでしょうか?
確かに「減点型」の人事評価をする組織ならそのようなことがあるかもしれませんが、いわゆる欧米型、ジョブ型雇用の組織こそ「自分の持ち場の外のことは口を出さない」という風土が強くなってもおかしくないと思います。

欧米型、ジョブ型雇用の組織で「あえて声を上げる」ことが組織の中で合理的な選択となるのか、ぜひ有識者の方に教えていただきたいです。

たぶん、世の多くの人もこの人も、みんな日本的な集団的に仕事をし、一人一人に権限と責務が明確に割り振られているのではない量子力学的メンバーシップ感覚のままであれこれ議論するからこうなるんだろうな、と。

いやいや、ジョブ型ってのは、何か問題を発見したらそれをきちんと報告せよというのが、その当該者に与えられたタスクである限り、それこそが「持ち場でやれと言われていることだけ」なのであり、そういうジョブにはめ込まれた人がそれをわざとやらないことは、それがばれたらそれこそどういう処分を受けても文句をいえない。他により重要な考慮すべきことがあり、それを守るためならば自分の首をかけてもいいと思えるのでない限り、自らの職責を粛々とこなすこと以外に合理的な選択などはない。

逆に、そういうタスクを課されていない人は、そもそも自分の職責にもないことで「あえて声を上げる」などという他人の仕事を奪うような真似をする理由などない。そんなバカなことはいかなる意味でも合理的な選択ではないが、それはそもそもそれが自分の仕事じゃないから。その意味では、まさしくこの人の言うとおり、ジョブ型雇用の組織こそ「自分の持ち場の外のことは口を出さない」世界だ。

という、自分の仕事と決まっていることはきちんとやる、自分の仕事ではないことには口を出さないという、ニュートン力学的なジョブ型の世界の感覚を欠落させて、誰がどの仕事にどういう責任を負っているのやらいないのやらよくわからないような量子力学的メンバーシップ型の世界で、誰もが少しずつその問題に持ち場として関わりつつ、誰も自分のみがその問題の責任者であるとは思っていないようなふわふわした状況下では、それに関わる全員が、自分もその部分的責任者であるのに、「あえて声を上げる」ことが組織の中で合理的な選択とならず、他の部分的責任者の誰かがやるだろうと考えてしまうことが合理的になってしまうのでしょう。

 

昭和感覚の減税主義者たち

くろかわしげるさん曰く:

https://twitter.com/kurokawashigeru/status/1406246839700000771

1ojde3gp_400x400_20210620123401 労働界がお父さんが持って帰る可処分所得のことしか考えない時代は減税ばかり要求してきたけど、社会政策がないと女性の就労は不可能とわかって減税を言わなくなっている。
そのことがわからないで、いまだに高度成長期のままの思考の人が多すぎる。

も少し敷衍すると、福祉は全部生活給に由来する年功賃金で賄えてきたし、賄うのが当たり前だという昭和の感覚にどっぷり漬かったまま、この令和の時代になっても依然として税金が自分の福祉の原資であるなんて感覚がこれっぽっちもないまま、ひたすら自分の女房子供の生活費から教育費から住宅費からすべて賄うはずの給料から他人の福祉のための税金を取られることに絶対的拒否反応ばかりを叫び上げる人々が政界でも評論家でもやたらにでかい顔をしていることの矛盾でしょう。野末陳平が減税だけを一枚看板にしてサラリーマンの党とか言ってた半世紀前の時代から何一つ進化していない現代の恐竜たち。

そういう超絶的時代遅れの連中から比べれば、組合員に女性がかなり入ってきて否応なく時代に適応せざるを得なくなってきた労働組合の方がまだまだ百万倍まともです。

 

 

2021年6月19日 (土)

成長戦略と骨太方針

昨日、成長戦略と骨太方針が閣議決定されたので、労働に関係するところを見ておきましょう。まず、成長戦略では、

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/ap2021.pdf

第5章 「人」への投資の強化

1.フリーランス保護制度の在り方
実態調査によると、取引先とのトラブルを経験したことがあるフリーランスのうち、そもそも書面・電子メールが交付されていない者や、交付されていても取引条件が十分に明記されていなかった者が6割となっている。こうした状況を改善し、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスの取引について、書面での契約のルール化など、法制面の措置を検討する。
フリーランスのセーフティーネットについて検討する。

2.テレワークの定着に向けた取組
テレワークの定着に向けて、労働基準関係法令の適用について、ガイドラインの周知を図る。
また、全国において良質なテレワークを推進するため、ICTツールの積極的な活用やサテライトオフィスの整備等を進める。
事業者にテレワークの実施状況について公表するよう促す。

3.兼業・副業の解禁や短時間正社員の導入促進などの新しい働き方の実現
多様な働き方や新しい働き方を希望する方のニーズに応え、企業における兼業・副業の選択肢を提供するとともに、短時間正社員等の多様な正社員制度の導入を促進する。産業構造の変化に伴う労働移動の円滑化を図るためにも、フェーズⅡの働き方改革を推進する。
選択的週休三日制度について、好事例の収集・提供等により、企業における導入を促し、普及を図る。

4.女性・外国人・中途採用者の登用などの多様性の推進
日本企業の成長力を一層強化するため、女性、外国人、中途採用者が活躍できるよう、多様性を包摂する組織への変革を促す。
留学経験者や国際機関勤務経験者など異なる文化を経験している方の活躍の場を広げる。

5.人事評価制度の見直しなど若い世代の雇用環境の安定化
子育て世代の収入の向上・安定を図るため、企業の人事評価制度の見直し等を通じて、若い世代の雇用環境の安定化を図る。

6.労働移動の円滑化
リカレント教育の推進など、産業構造転換に伴う失業なき労働移動を支援する。
また、特に、コロナ禍により雇用が不安定化しているのは、前述のとおり、飲食・宿泊・文化芸術・エンターテインメントなどで働く非正規雇用労働者の方々である。特に、女性の非正規雇用労働者で20代~40代の方々への影響が大きい(図8)。
他方、女性の非正規雇用労働者の方々に非正規雇用を選択した理由を問うたところ、正規雇用の仕事がないからは10.3%であり、都合の良い時間に働きたい(39.9%)、家事・育児・介護と両立しやすい(19.7%)といった優先順位が高く(図9)、時間的制約があるため、フルタイムの職業への労働移動は困難なケースが少なくない。
これらの方々のために、現在増加している正規雇用職への労働移動と時間的制約の少ない職への労働移動の選択肢を提供する。
このため、非正規雇用の方々が、簡単なトレーニングを行って、時間的制約の少ない事務職などに失業なく労働移動できるシステムを検討する。同時に、企業側にも、勤務時間の分割・シフト制の普及や、短時間正社員の導入など多様な働き方の許容を求める 

「フリーランス保護制度の在り方」については、今年3月にあんまり中身のない(既存の措置をまとめただけの)フリーランスガイドラインを作ったけれども、それで済むわけはないので、これからきちんとフリーランスの保護制度を作っていかなければならないのは当然でしょう、その際、何よりも社会政策的観点をきちんと踏まえることが何より重要なはずです。そしてその際には、先進諸国で続々と進みつつあるプラットフォーム労働への対応状況をちゃんと吸収していただきたいと思います。

労働移動の円滑化のところは妙に詳しく書かれており、かつ「非正規雇用の方々が、簡単なトレーニングを行って、時間的制約の少ない事務職などに失業なく労働移動できるシステム」って、具体的にどういう「事務職」を考えているのかよくわからないところがありますね。もちろん、女性に限らず「時間的制約の少ない職への労働移動の選択肢」というのは大変重要なんですが、そこのところのイメージが現実とずれているとうまくいかない可能性があります。

次に骨太方針は、

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/2021_basicpolicies_ja.pdf

(3)賃上げを通じた経済の底上げ
民需主導で早期の経済回復を図るため、賃上げの原資となる企業の付加価値創出力の強化、雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制措置等により、賃上げの流れの継続に取り組む。我が国の労働分配率は長年にわたり低下傾向にあり、更に感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引上げが不可欠である。感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、雇用維持との両立を図りながら賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組みつつ、最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000 円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。
また、本年4月に中小企業へ適用が拡大した「同一労働同一賃金」に基づき、非正規雇用の処遇改善を推進するとともに、非正規雇用の正規化を支援する。 

ほとんど上がらなかった昨年とは異なり、今年は最賃を上げるぞと言っています。

ちなみに、「感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組」については、先月開かれた最賃審の目安制度の在り方に関する全員協議会に、JILPTの調査等に基づいて「諸外国の最低賃金制度・改定状況について」というのが報告されております。

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000784658.pdf

Saichin

 

 

 

アイドル研究者の提訴

こんなニュースを見て、特に何かを論じようというわけではないけれども、感じたことをつれづれに、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210618/k10013092331000.html(筑波大教授「NGT48」問題論文 大学ホームページから削除で提訴)

K10013092331_2106181912_2106182022_01_02 アイドルグループ「NGT48」のメンバーとファンのトラブルをめぐる問題について、筑波大学の教授が論文を書き、大学のホームページで公開したところ、運営会社の抗議を受けて大学に削除されたのは学問の自由の侵害だとして、論文の再掲載を求める訴えを起こしました。
筑波大学の平山朝治教授は18日、東京地方裁判所に訴えを起こし、東京 霞が関で会見を開きました。
訴えによりますと、去年1月にアイドルグループNGT48のメンバーとファンのトラブルをめぐる問題について書いた論文を、大学のホームページ上で公開したところ、NGT48の運営会社「Vernalossom」から削除を求める抗議文が届き、大学に削除されたということです。
これについて、平山教授は憲法で保障されている学問の自由を侵害されたとして、運営会社と大学に対して論文の公開と賠償を求めています。
会見で平山教授は「研究者にとっていちばん重要なのは、自分の研究を自由に発表できることだ。大学は論文を元の状態に戻してほしい」と話していました。 

ネタがネタだけに、やや斜めからの議論にもなりがちなテーマではありますが、筋道はまさにおっしゃる通り。かつまた、アイドルを含む芸能タレントの問題はプロスポーツ選手の問題と並んで、労働者保護の欠落した組織に組み込まれたフリーランス問題の代表でもあり、その意味からも労働研究を始めとした社会科学的観点からきちんと論じる値打ちのあるトピックであることも事実です。

が、

ここからはいささか個人的な感慨になりますが、

平山さんは実は駒場時代の同期生なんですが、ここ数年来、それまでの研究スタイルとは打って変わって、やたらAKBなどのアイドル研究に熱中しているらしいのを風のうわさに聞くにつけ、どうしちゃったのかな、と感じることもないわけではありませんでした。

上述のように、芸能やスポーツは社会科学のいくつかの側面からアプローチのできる興味深いテーマであることは確かなんですが、私の知る限り、平山さんの研究スタイルというのはそのいずれともはるか遠くかけ離れたようなすごく深遠にしてしごくマクロ社会的なものであったように記憶しているので、彼の中でどれがどのようにつながっているのか、正直よくわからないなという感想も湧いてくるところではあります。

ちなみに、平山さんの提訴の当たっての所信はこちら。

https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12681378992.html

 

2021年6月18日 (金)

労災保険特別加入の追加案

本日の労政審労災保険部会に、フードデリバリー等を労災保険特別加入に追加する省令案が示されたのですが、

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000794151.pdf

一 特別加入の対象となる事業として、自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業に加えて、原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業を新たに規定すること。

これは別にウーバーイーツなどのフードデリバリーだけでなく、ソクハイなどのバイシクル便も含まれますね。

逆に、ウーバーのようなプラットフォーム型の就労形態であるかどうかは法文上は出てきません。

一昨日EUのプラットフォーム労働に係る第二次協議文書が出されたことはここに書きましたが、この調子だと本年中に指令案が提案される可能性が高く、指令になるのもそれほど遅くない可能性があります。それが日本にどういう影響をもたらすかも興味深いところです。

ちなみに、もう一つのIT技術者の方はえらく複雑怪奇な規定ぶりです。

二 特別加入の対象となる特定作業として、情報処理システム(ネットワークシステム、データベースシステム及びエンベデッドシステムを含む。)の設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監査若しくはセキュリティ管理その他情報処理システムに係る業務の一体的な企画又はソフトウェア若しくはウェブページの設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監査、セキュリティ管理若しくはデザインその他ソフトウェア若しくはウェブページに係る業務の一体的な企画その他の情報処理に係る作業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるものを新たに規定すること。

 

 

«産業雇用安定助成金の様々なる前史@『労基旬報』2021年6月25日号