『POSSE』第4号さらにつづき

Hyoshi04 さらに、『POSSE』第4号の話題を続けます。

「なんともはや」の鼎談の次にくるのは、阿部真大氏の「『やりがい』は間違っちゃいない」です。

阿部氏は『搾取される若者たち』などで、不安定な就業形態のもとで仕事にのめり込んでいく姿を批判的に描き出したわけですが、ここでは「やりがい」をポジティブに捉えています。

それはいいのですが、なんというか、「今の日本の状況だと、『やりがい』を求めてフリーターを選ぶとずっと『底辺』のままで這い上がることすらできなくなってしまう」という言葉に示されているように、「やりがい」は不安定な仕事にこそあって、安定した仕事は「やりがい」のないつまらない仕事であるかのような二分法が裏に感じられます。

しかし、日本的雇用システムというのは、ある意味で会社のメンバーとしての安定感とともに、会社の運営に参加しているという「やりがい」を感じさせながら、協同的自発的に「搾取」するシステムであったわけで、それが果てしない長時間労働の源泉ともなってきたことを考えれば、そして、資本主義的企業に対するオルタナティブを称するある種の事業体が、まさにそういう「やりがいの搾取」の仕組みとなっていることを考えれば、実は問題は大変複雑に入り組んでいるのであって、あまり単純な図式に押し込めない方がいいのです。

先に紹介した『情況』7月号で、パルシステムと生活クラブの2生協の方が対談していますが、高度成長期に新左翼の活動家だった方々が、党内闘争に敗れて地域運動に入り、生協活動をやってきたんですね。それがその後の高度消費社会にうまく対応するところがあって、事業が拡大されてきたのだと思いますが、それは実は日本的雇用システムを再上演しているところもあるように思われます。

http://homepage3.nifty.com/rouso/

こんにちは。
私たちは生活クラブ生協神奈川で働く労働者による労働組合です。

生活クラブ生協は、「安全・健康・環境」を原則とした共同購入の他、
地域福祉・まちづくりにも積極的に関わる生協として知られていますが、
私たち職員にとっては、昼休みも充分に取れず、
サービス残業を含む長時間の時間外労働を前提としたような業務形態、
成果主義に基づく新賃金体系導入による大幅な生涯賃金の減額、
トップダウンの決定機構など、
変えていかなければならない問題が山積しています。

当たり前のことですが、生協の中でも経営側と私たちとでは
立場の違いが存在します。
私たち労働組合は生協から自立して自らの労働条件と労働環境を改善し、
いきいきと働ける職場づくり、
働く者の自治領域の拡大のために闘っています。

日本的雇用システムの問題が難しいのは、それが欧米型の雇用システムのようにやりがいの薄い仕事をやらせる代償として高い労働条件を保障するという社会的交換ではなく、やりがいのある仕事をやらせる分、労働条件にあまり文句が言えないという社会的交換になっている面があるからです。生協の仕事も同じでしょう。確かに「やりがい」は間違っちゃいません。しかし、「やりがい」のやりすぎには注意した方がいいのは、株式会社でも協同組合でも変わるところはないはずです。

ものごとを論ずるなら、ここまで踏み込んで論じないといけないでしょう。

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正規・非正規二元論を超えて

Koyou_style001 リクルートワークス研究所の「雇用の在り方に関する研究会」が、去る7月7日に「正規・非正規二元論を超えて-雇用問題の残された課題」と題する報告を出しています。

http://www.works-i.com/flow/survey/koyou_style001.html

座長は佐藤博樹先生、他の委員は、

大内 伸哉 神戸大学大学院法学研究科 教授
神林 龍  一橋大学経済研究所 准教授
野田 稔  明治大学大学院グローバルビジネス研究科 教授
山田 久  (株)日本総合研究所 ビジネス戦略研究センター所長・主席研究員
本原 仁志 (株)スタッフサービス・ホールディングス代表取締役社長 社団法人日本人材派遣協会理事長
大久保幸夫 (株)リクルート ワークス研究所所長

です。

15頁ほどの割と薄いものですが、内容は

テーマ1
 臨時・非正規雇用者向けセーフティネット
 ~所得保障と職業訓練をセットとした仕組みの構築~

テーマ2
 常用・非正規雇用者の処遇
 ~新たな正規社員モデルと能力開発プログラム~

テーマ3
 非正規雇用者の契約更新と終了に関するルール
 ~予見可能な雇止めルールの構築~

テーマ4
 登録型労働者派遣制度
 ~労働者派遣の位置づけの見直しと派遣元・派遣先責任の明確化~

テーマ5
 不安定就労者に対する支援
 ~自立を目指したアクティベーションと生活保障の整備~

と、広範です。

「はじめに」にあるように、

>一般的に、正規雇用と非正規雇用の二極化が進んだと理解されている。しかし、「正規雇用」、「常用・非正規雇用」、「臨時・非正規雇用」と三層化していると考えた方が、雇用構造の現状と変化をよく理解できる。

という認識から、

>こうした雇用の多様化を前提として、それぞれの働き方を選択した人々が、より安心でき、能力向上やキャリア形成など将来に希望をもてる雇用社会を構築していくことを目指した。従来の正規雇用・非正規雇用の両者内の多様化と重複化を前提とし、正規・非正規の二元論的な区分を解消し、両者が連続的に接続された新しい雇用社会の実現を目指した。新しい雇用社会の下では、正規・非正規という言葉も死語になるだろう。

具体的には、①非正規雇用から、従来型の正規雇用や本提言による新しい正規雇用への移行の円滑化(テーマ2、4)、②非正規雇用(有期雇用、登録型労働者派遣)の雇用機会の安定化(テーマ2、3、4)、③非正規雇用における能力や処遇の向上を可能とする仕組みの整備(テーマ2、4)、④雇用の多様化に即した新しい所得保障の仕組みや自立支援の整備(テーマ1、5)などである。

といった提言を示しています。

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『POSSE』第4号つづき

Hyoshi04 ようやく『POSSE』第4号が届きました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/posse-fb68.html

日曜日のエントリのつづきです。

木下武男さん作成の論壇MAPをめぐるインタビューは、これはほんとにおもしろいですから是非お読みください。

で、その次には、

C1a90adae4aa784b160293a53c6e2304 座談会「「ニート論壇」って言うな! ~「セカイ系」化する論壇か、論客の「精神の貧困」か~」

杉田俊介(有限責任事業組合フリーターズフリー)×増山麗奈(超左翼マガジン『ロスジェネ』編集委員)×後藤和智(『おまえが若者を語るな!』著者)

が載っていますが、これがなんともはや。

POSSEのHPでは、

http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/5c4a8ed976fc659a41d7a17400c45180

>そしてもう一つ、座談会「「ニート」論壇って言うな! ~「セカイ系」化する論壇か、論客の「精神の貧困」か~」も要注目です。本企画では、超左翼マガジン『ロスジェネ』から増山麗奈さん、『フリーターズフリー』から杉田俊介さん、そして「俗流若者論」批判で著書をいくつか出されている後藤和智さんにご参加いただき、批評的・思想的な立場から「格差論壇」を論じていただきます。

とさらりと書いていますが、全く噛み合わないどころか、スノーじゃないけどこりゃもう「二つの文化」かという感じ。最後はもう完全に喧嘩モードです。

正直いって、30代半ばの杉田氏と増山氏には、全然言葉が通じない感覚。20代半ばの後藤氏の言ってることがすっと入ってくるのと好対照。

こんな具合です。

>後藤:・・・というのも社会問題の原因や対策を実存やアイデンティティの問題に求めすぎて、結局そのような問題を設定した人間が、自分こそが現実を知っている、若者を理解しているという態度になってしまうという傾向は以前にも見られたわけです。具体的には宮台真司さんですね。経済だとか構造的な問題をどう解決するのかというところには触れないで、アイデンティティ的な対策ばかりを講じるわけです。

後藤:いま、格差をめぐる議論に求められているのは、ある程度最大公約数をとれば労働法や制度、経済学的な側面の問題というところにあると思います。

増山:今出てきている話は労働とか福祉の話だけど、お金さえあれば生きていけるのかっていうとそうではなくて食うものが今後なくなりそうだという話があるじゃないですか。たとえば、もし国から毎月15万円もらったとしても、18万円でりんごが売ってたら生きていけないわけですよ。・・・だからまず。正社員でお金持ってて家があって車があって庭があってっていうそういう生活が一番豊かだという感覚をまず捨てないとあかん。

増山:あと宗教について話したいんです。現世欲ばかり膨らませて消費させるのが今の資本主義ですよね。

後藤:オルタナティブとかいろいろな話が出た中で申し訳ないですが、お二人の言っていることに、制度的・経済的な側面の具体的な像というのが私のはあまり見えてこないんです。そのような問題意識を持たないような人たちに、今おっしゃられたような理念をどう働きかけていくのでしょう。

こういう調子でやりとりしているうちに、ついに杉田氏がキレかけます。

>杉田:だから他人へ要求ばかりせず自分で戦略的に働きかけろって。お勉強して政策提言だけしていればあとは何もしなくていいわけ?同時に問え、と僕は繰り返すしかない。一つ言えるのは、生存に必要な金や住居の再分配を政府に要求することはもちろん大事だけれども、富裕層のみならず、当事者こそが権利意識の増長や要求感覚にうんざりしている面もある。

後藤:新しい「何か」を創造する必要性は分かります。しかし、そもそも既存の手法を活用できているのかと思います。たとえば労働法です。まずはその適切な運用を企業に求めたり、学校に知識、実践のための教育を求めていくべきではないかと私は思うんです。

杉田:どうも最初から最後まで後藤さんの議論の背景がよく分からないな。僕は他人じゃなく自分の議論が取りこぼす盲点が気になる。自分の足下を顧みずに、他の誰かを排除しながら饒舌にお喋りできているんじゃないか。・・・ある問題を「経済学」や「実証性」の許容範囲でしか考えたくない傾向、人生の無限に多様な諸問題を軽蔑し切りつめる傾向には、抵抗し迎撃せざるを得ないだろう。

後藤:私はどこかで切りつめていくことが必要じゃないかと思います。むしろ経済学とか労働法とかの側面でできることを考えた方が問題解決には効果的でしょう。

杉田:さっきから後藤さんは執拗に「全く見えてこない」と繰り返すけどさ。それは君が「見ようとしない」「見たくないものを見ない」だけじゃないのか。・・・繰り返すけど、そうやって他者の現実を切りつめて恥じないこと、自分の言動の自己矛盾を自覚すらできないこと、それこそが絶対的な「精神の貧困」じゃないのかい?

こうなると、後藤さんはもはやつきあってられないと撤収準備にかかります。

>後藤:すみません、私は精神も貧困ですし、出版界や同人界の隅っこで皆さんが客観的に物事を考えられるための手がかりやそういうツールを皆さんに細々と提供し続けていきます。それで皆さんがある程度政策を構築していただくときにお役に立てれば幸いです。 精神は「貧困」なままでいさせてください。以上。結局みなさんとは認識はあまり共有できないと言うことが分かりました。

杉田:悲しいよ。いや、後藤さんとも何かを共有できる。いつか君も僕も自分に必要なやり方で「精神の絶対的貧困」を少しはましにできるって信じるよ。

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大学と職業との接続検討分科会

本日、都内某所で某検討委員会。

いや、「某」とかいわずに明かすと、

http://www.scj.go.jp/ja/info/iinkai/daigaku/syoku.html

日本学術会議に設置された「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会」の「大学と職業との接続検討分科会」というところです。

審議事項は

http://www.scj.go.jp/ja/info/iinkai/daigaku/pdf/teian3.pdf

○ 「就活」の現状が象徴する大学と職業との接続に関する問題状況と、その背後に存在する、より本質的な諸問題についての検証(若年労働市場全体の構造的な問題等)
○ 大学の側において改善できること、すべきこと
○ 企業や政府に対する問題提起と要請 等

で、メンバーは、

http://www.scj.go.jp/ja/info/iinkai/daigaku/pdf/kousei3.pdf

委員長 高祖 敏明 学校法人上智学院理事長 特任連携会員
副委員長 久本 憲夫 京都大学大学院経済学研究科教授 連携会員
幹事 児美川孝一郎 法政大学キャリアデザイン学部教授 特任連携会員
幹事 本田 由紀 東京大学大学院教育学研究科教授 特任連携会員
樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授 第一部会員
逢見 直人 日本労働組合総連合会副事務局長 特任連携会員
駒村 康平 慶應義塾大学経済学部教授 特任連携会員
田中 萬年 職業能力開発大学校名誉教授 特任連携会員
濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構労使関係・労使コミュニケーション部門統括研究員 特任連携会員
籾井 勝人 日本ユニシス株式会社代表取締役社長 特任連携会員
矢野 眞和 昭和女子大学人間社会学部教授 特任連携会員
唐木 英明 東京大学名誉教授 第二部会員
室伏 きみ子 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授 第二部会員
唐木 幸子 オリンパス株式会社研究開発センター研究開発本部基礎技術部部長 特任連携会員
北村 隆行 京都大学大学院工学研究科教授 第三部会員

本日は、田中萬年先生と本田由紀先生の報告と討論。

田中先生の報告は、著書『働くための学習』に沿ったものです。

http://www.geocities.jp/t11943nen/tyosyo.htm

本田先生の報告は近々出される原稿をもとにしたもので「未定稿・引用不可」と書かれているので引用できませんが、とても興味深いものでした。

最後のあたりで、矢野先生が就活を断固規制せよ、と発言され、わたしが経済合理性に反する規制をしても脱法されるだけ、と応える一幕が。

いや、これはなにか規制をしようとするたびに必ず経済合理性に反する云々と叩かれ続ける労働関係者のボヤキみたいなものでして。そういうことを気にせず言える福祉(厚生)や教育(文部)の人々って楽だなあ、と。

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苅谷剛彦『教育と平等』

102006 中公新書の新刊で、苅谷剛彦氏の『教育と平等』がでていました。

http://www.chuko.co.jp/new/2009/06/102006.html

>戦後教育において「平等」はどのように考えられてきたのだろうか。本書が注目するのは、義務教育費の配分と日本的な平等主義のプロセスである。そのきわめて特異な背景には、戦前からの地方財政の逼迫と戦後の人口動態、アメリカから流入した「新教育」思想とが複雑に絡み合っていた。セーフティネットとしての役割を維持してきたこの「戦後レジーム」がなぜ崩壊しつつあるのか、その原点を探る。

ということで、実際、辛気くさいほど緻密な教育財政の歴史分析が続く本で、新書だと思って軽く読めると思うと間違います。ハードカバーの新刊の方が軽く読めます。

しかし、文部省が主導した日本的な「面の平等主義」を中央集権化だ、画一化だ、と批判した戦後進歩派のロジックが、そのまま格差を容認し促進するロジックにつながっていったアイロニーは、他の様々な領域でも演じられてきたわけです。

コーゾーカイカクが褒め言葉から叱り言葉に移行した今日ただいまにおいてすら、チホーブンケンが依然として正義の旗印であるらしいこの日本で、この本のメッセージがどのように受け止められるのかも興味深いところです。

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『POSSE』第4号

Hyoshi04 まだ発行はされていないようで、私のところにもきていませんが、ホームページ上ではすでに詳しい内容紹介がアップされているようなので、ややフライング気味ですが、こちらでも紹介しておきます。

http://www.npoposse.jp/magazine/no4.html

【特集1】労働組合の新時代

◆「労働組合が社会をつくる ―市民社会からグローバル化へ―」
田端博邦(東京大学名誉教授)
◆「大失業時代における労働組合のヘゲモニー戦略」
木下武男(昭和女子大学教授)
◆座談会「立ち上がる新世代の若者ユニオン ―最前線の現場から―」
河添誠(首都圏青年ユニオン)×菅野存(東京東部労組)
○全国に広がるコミュニティユニオンの活躍
   ◆1:「前例がないからやるんだ! ~コミュニティユニオン30年の闘い~」
 高井晃(東京ユニオン)
 ◆2:ルポ「山形・福岡で広がるユニオン ~相談とネットワークが地方の運動をつくる~」
 梁英聖(ライター)
◆「なぜ外国人労働者のユニオンが成功したのか ―文化の壁と不安定性を超えて―」
ウラノ・エジソン(上智大学講師)
◆「使い捨て」正当化の法的根拠をめぐって―ユニオンの期間工裁判の歴史的意義―」
今野晴貴(NPO法人POSSE)
◆「労働組合の歴史と役割がわかるミニブックガイド」
本誌編集部
◆コラム「ユニオンのここがすごい!」
本誌編集部

【特集2】「格差論壇」の座標軸

○特別企画 「格差論壇」MAPのゆくえ
 ◆「「格差論壇」MAPとは何なのか」
  木下武男(昭和女子大学教授)
 ◆「私は「格差論壇」MAPをどう見たか①」
  五十嵐仁(法政大学大原社会問題研究所教授)
 ◆「私は「格差論壇」MAPをどう見たか②」
  濱口桂一郎(独立行政法人労働政策研究・研修機構統括研究員)
◆座談会「「ニート論壇」って言うな! ~「セカイ系」化する論壇か、論客の「精神の貧困」か~」
杉田俊介(有限責任事業組合フリーターズフリー)×増山麗奈(超左翼マガジン『ロスジェネ』編集委員)×後藤和智(『おまえが若者を語るな!』著者)
◆「「やりがい」は間違っちゃいない! ―若者の力を生かすセーフティネット論―」
阿部真大(甲南大学講師)

◆「金融危機後の雇用対策はなぜ問題なのか」
本誌編集部
◆「労働と思想④ サルトル ―ストライキは無理くない!―」
永野潤(大学非常勤講師)
◆書評 今野晴貴『マジで使える労働法』

先日ちょびっと予告したように、この特集2の「格差論壇の座標軸」ではわたしも登場しています。

これについては、同じPOSSEのブログで詳しい予告が書かれていますので、それをそのまま引用しておきますね。

http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/5c4a8ed976fc659a41d7a17400c45180

>若者の格差をめぐる言説はここ数年で非常に大きな盛り上がりを見せている。
しかし、なかには格差を「消費」するだけのメディアや言説も少なくはない。
また、一見格差を是正するとみせかけて、貧困を生み出してきた構造やその転換の必要性から眼をそらすような議論や政策も出されている。
さらには、自己満足の言説に陥り、若者にとどかない、あるいは社会を現実的に変えることのできない抽象論・理想論になっているとの批判もある。

もちろん、格差への批判そのものは今後もますます強まっていくだろう。
しかし、だからこそ、いま立ち止まり、この論壇を見渡す必要があるのではないか。 
格差社会をどのようなシステムに変えていくのか。
そしてそのヴィジョンを実現するためには、どうやって社会の構造へ、そして 「当事者」へとはたらきかけていけばいいのか?

今回の文化特集のテーマは、格差をめぐる「論壇」そのものである。

本特集の目玉のは二つ、「格差論壇」MAPのゆくえ」座談会「「ニート論壇」って言うな! ~「セカイ系化」する論壇か、論客の「精神の貧困」か」です。

「「格差論壇」MAPのゆくえ」では、格差論壇を政策の観点から4つの象限に分類するという木下武男さん考案の「「格差論壇」MAP」をもとに、

五十嵐仁さん
(ブログ
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/

濱口桂一郎さん
(ブログ
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/

のお二方に登場していただき、それぞれの分析を披露していただいています。

さて、本誌4号に掲載している「格差論壇」MAPですが、問題提起として本ブログでもご紹介致します。(図参照)
今後「格差論壇」で政策を語るうえで、外すことの出来ない図になるのではないでしょうか。

Ef409dd006967b9a147c14ff5ab2eb82_4   この図は、以下の2つの座標軸で構成されており、
縦軸にジョブ派―年功派、
横軸に規制緩和派―規制強化派(第一象限側に国家・ユニオン、第四象限側に慣行・社会的規範)があります。

そして以下の4つの象限、
第一象限が福祉国家派、
第二象限がジョブ型競争社会派、
第三象限が「構造改革」派、
第四象限が既存労組・諸政党となっています。

この木下マトリクスをもとに「格差論壇」をマッピングしていきます。
いったいどんな論点が提起されているのか。
ここでは、それぞれのインタビューの見出しをご紹介します。

■「「格差論壇」MAPとは何なのか」
木下武男(昭和女子大学教授)


・戦略としての動態的MAPへ
・濱口ブログと「派遣村」 ~マトリクスをつくった契機~
・全く違う福祉国家論 ~第1象限と第4象限の差異~
・非正社員は日本型雇用に戻せない ~既存労組の可能性~


■「私は「格差論壇」MAPをどう見たか①」
五十嵐仁(法政大学大原社会問題研究所)


・「格差論壇」の転換と議論の交通整理 ~論壇MAPの意義~
・日本的経営の打破をめざして規制緩和を支持した旧左派の一部
・誰が敵で、誰を味方につけるのか ~戦略としてのマッピングの意味~
・ジョブよりも「メンバーシップ」 ~「就職」対「入社」~
・中谷巌は「懺悔の値打ちもない」
・日本型雇用は必ずしも全否定されるものではない ~ステークホルダー論として~
・「派遣村」以降の政策案をどう評価するか


■「私は「格差論壇」MAPをどう見たか②」
濱口桂一郎(独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)統括研究員)


・視覚的わかりやすさ ~木下マトリクスの意義~
・国家の規制とユニオンの規制は違う
・社会運動による国家規制か、ポピュリズムの危険性か
・職場を基盤にしたシステムを
・再分配する国家≒ジョブ派、再分配しない国家≒年功派
・日本のジョブ型と既存労組は再分配をしない
・「新時代の日本的経営」・「構造改革」派こそ隠れ年功派
・八代尚弘は福祉国家派か? ~ジョブ派の論客図~
・濱口桂一郎の位置づけ ~「理念」と「短期戦略」の軸~
・「ロスジェネ論壇」の座標軸 ~「叫び型」の問題提起~
・自覚的に年功派を選んだ日経連
・企業別組合をどこに入れるのか ~木下マトリクス最大の「問題点」~


ぜひご覧下さい

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働くルール作り足踏み

朝日で毎週やってる「変わる働き方 選択のとき」のシリーズも、そろそろ大詰めで、今朝は「ルール作り」がテーマ。

これは、一昨年の労使関係研究協会のシンポ以来、私が取り組んできているテーマでもあります。

記事中の発言をピックアップすると、

>中村圭介東大教授(労使関係論)は「少数意見を政策に反映させるため、労使のより一層の努力が求められている」

>経団連の元幹部は「労働側の影響力が低下したことで、経営側は対話に力を注がなくなった。労使間の議論を深めるには、労働側の復権が欠かせない」

>笹森清前連合会長は「これからは、正社員と非正社員の利害が相反する『労労対立』を乗り越えることが課題だ」「非正社員の立場に立った政策を実現するには、労政審の人選を考え直す時期ではないか」

>労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は「法的に義務づけることを含め、企業別組合が非正社員を組織せざるを得ないような仕組みを作るのが現実的ではないか」

過去の私の発言や論文にはこんなものがあります。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/jilzoukan.html(『日本労働研究雑誌』2008年特別号 「労働立法プロセスと三者構成原則」)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/teidan.html『季刊労働法』222号座談会「労働政策決定過程の変容と労働法の未来」

http://homepage3.nifty.com/hamachan/juristtripartism.html(ジュリスト2008年12月15日号(立法学特集)「労働立法と三者構成原則」)

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『情況』7月号

51eeh1vvfnl__ss500_ 『情況』7月号が「反貧困:連帯社会の創造」という特集。

http://situation.main.jp/

>・神野直彦 所得再分配国家の終焉
・湯浅 誠 社会活動家を増やせ
・斎藤縣三 障害者も労働権を持つ
・山田 實 いま釜ヶ崎では 社会的労働を作り出せ
・武 洋一 関西地区生コン支部 ハードボイルドだ、Go! Go!
・若森資朗 地域へ・NPOへ・共同性へ
・高井 晃 全国ユニオンは「明るく・激しく・楽しく」闘い続ける
・下山 保・柏井宏之 生協は格差社会の共犯者か
・木村三浩 「改革」という破壊で共同体と人心をズタズタにした経済マフィアに反撃の狼煙を!
・筆坂秀世 新自由主義・貧困・共産党
・蔵 研也 貧困問題のための新しいネットワークをリバタリアニズムはどう構想するか
・境 毅  社会的企業・社会的事業所の促進に向けて
・龍井葉二 労働組合運動から社会運動へ
・藤井敦史 「社会的企業」とは何か(上)社会的企業に関する二つの理論的潮流をめぐって
・山口素明・伊倉秀知・菅原秀宣 [座談] 今、労働の問題に向かうために

このメンツがなかなかすごいです。はじめの神野先生、湯浅さんといったあたりは、いかにもいかにもという感じですが、釜ヶ崎反失業連絡会、全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部と武闘派が続き、全国ユニオンを経て、パルシステム生協連と生活クラブ生協の人、と思いきや、次にくるのは真正右翼の一水会、元共産党幹部、挙げ句の果てはアナルコキャピタリストのリバタリアンという具合で、いやはやジェットコースターに乗せられているようで、ようやく連合非正規センターの龍井葉二さんにたどり着く頃には、すでに目が回っています。

最後の鼎談はあんまり深い話にはなっていないですが、司法修習生になったばかりの伊倉さんのこの発言がメモに値するかも・・・。

>菅原 労働弁護士というのは、実際、収入ではどうなんですか。

伊倉 労働弁護だけでは食えないそうですよ。法律事務所では、上の人が大きい民事で事務所を回して、労働弁護を若手にやらせる。一番やっているところで労働弁護を5割くらい。上が一生懸命民事をやって、5割労働弁護をやってる事務所は東京で3件くらいです。一般的に2割を超えると経営が成り立たないと言われているようです。

・・・

伊倉 ええ(苦笑)。こないだ月8万円しか稼げない若手先輩弁護士の発言というのもありましたが・・・。

菅原 ワーキングプアだね。

山口 ワープア弁護士・・・。フリーター労組の組合員にならないかな。

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岩波新書『新しい労働社会』予告

岩波書店のHPに、標記の予告が載っています。

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/2/4311940.html

>新しい労働社会
―― 雇用システムの再構築へ ――

■新赤版 1194
■体裁=新書判・並製・カバー・208頁
■定価 735円(本体 700円 + 税5%)(未刊)
■2009年7月22日
■ISBN978-4-00-431194-2 C0236

>正規労働者であることが要件の,現在の日本型雇用システム.その不合理と綻びはもはや覆うべくもない.正規,非正規の別をこえ,合意形成の礎をいかに築き直すか.問われているのは民主主義の本分だ.独自の労働政策論で注目される著者が,混迷する雇用論議に一石を投じる.

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«労働法、守られないのは日本だけ