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2021年9月27日 (月)

春田吉備彦+全駐留軍労働組合中央本部『基地労働者から見た日本の「戦後」と「災後」と「今後」』

20210917173401180_18 春田吉備彦+全駐留軍労働組合中央本部『基地労働者から見た日本の「戦後」と「災後」と「今後」』(労働開発研究会)をお送りいただきました。

これ、新書版の割と薄いちっぽけな本ですが、中身はとても詰まっていて、すごい充実感があります。

なんといっても、基地労働者という戦後日本の「死角」からいろんな物事が浮かび上がってくる感じがすごいです。

知っている人は少ないでしょうが、基地労働者は指揮命令するのは米軍ですが、雇用するのは日本政府という労働者派遣システムで、派遣法ができるずっと前から占領下で形作られた仕組みが維持されてきたのですね。

このため、基地内は日本の法律が通用しないアメリカの一部のような面もあり、それがいろいろな問題を引き起こしていることが詳しく語られます。

一方で、これはやや私の視点に引き付けた読み方ですが、近ごろはやりのインチキな「キラキラ」系ジョブ型論とは対照的な、まことに地味なしかしいかにもアメリカ的なジョブ型の世界が広がってもいるんですね。

伊原亮司さんの執筆した一節から引用すると、

・・・現在の賃金制度は、一職種一等級が原則である。職種は1200余りあり、そのうち900職種が実際に使用されている。職種別に、職務内容が定義され、基本給表と等級が適用される。国家公務員のような職務階層制度はとっておらず、年功序列的な昇格制度はない。勤務実績に基づく特別昇給制度もない。従業員の多くは、退職するまで同一等級にとどまる。現状より高い等級に移りたければ、該当職場に空きが出た時に自分で応募する。・・・・組長や班長といった現場職制には日本人が就くものの、管理職や・・・専門職は原則、米国の軍人あるいは軍属に限られる。このような制度、処遇、慣行に対して、労働者に不満がないわけではないが、日本人労働者は全員が組合員になりうる立場にあるため、対米軍という形で団結を守りやすい。特筆すべきは査定の拒否である。査定は労働者間の競争をあおり、労働者を分断する。労働組合はそれを拒んできたのだ。・・・

・・・しかし結果的にではあるが、未締結であるがゆえに米軍は時間外労働を強要できない。残業が必要な場合には、従業員に「お願いして、協力を求める」という形をとり、労働者は断ることも可能である。ちなみに、兼業も認められてきた。

米軍基地は、実質的に米国の支配下にあり続けている。日本の法律が及ばぬ世界であり、いわゆる「日本的経営」が成り立たない世界である。それゆえに、基地で働く人たちは多大な苦労を強いられてきたが、米軍の言いなりになってきたわけではない。・・・

やたらに一知半解の「ジョブ型」を振り回す人は、アメリカに行く必要はないので、日本の米軍基地に行って基地労働者の働き方を見てきた方がいいかも知れませんね。

 

 

 

『労働法律旬報』9月下旬号はシフト制労働者が特集

591323 『労働法律旬報』9月下旬号はシフト制労働者が特集です。

https://www.junposha.com/book/b591323.html

[特集]シフト制労働者―新型コロナ禍における実態を通して
飲食産業におけるシフト制労働の実態と『シフト制労働黒書』=栗原耕平…………07
シフト制労働者の法律問題=川口智也…………15
[資料]シフト制労働黒書(首都圏青年ユニオン・首都圏青年ユニオン顧問弁護団、2021.5)…………35

本ブログでも何回か取り上げたシフト制労働ですが、労旬が特集を組みました。事実上首都圏青年ユニオンの活動報告という感じですが、第一次接近としてこんなものでしょうか。

ややフライング気味ですが、少し先にこういった問題についての海外事情みたいな特集も予定されているようなので、だんだん話が膨らんでいくのでしょう。

あと、シルバーハート事件の簡単な評釈も某所に準備していますので、それが出たらまたその時に。

 

 

 

 

安藤至大,高橋亮子『就活最強の教科書』

31118619_1 安藤至大,高橋亮子『経済学部教授とキャリアコンサルが教える 就活最強の教科書』(日経新聞出版)をお送りいただきました。

何から始めればいい? 自分に合った仕事はどうやって見つけるの? 労働経済学の人気教授とキャリアコンサルタントが、就職活動のルールをストーリー形式で楽しく解説。ワークシート付き。

副題から就活現象に経済学的な切り込みが結構あるのかと思いますが、むしろキャリアコンサルによる実践的なアドバイス本に徹底している感じです。エントリーシートの具体的な書き方からまことに懇切丁寧に説明してくれていくのですが、安藤さんの名前に期待して読み進めていくとちょっと肩透かしを食らった感を抱くかもしれません。

第1話 就職活動、不安です。
第2話 エントリーシートを完成させるには?
第3話 就職活動これからどうする?
第4話 就職活動、始まりました。
第5話 働く会社が選べません。
最終話 僕、決めました。就職活動、始めます。

 

 

2021年9月26日 (日)

いや無視してないし、むしろ取り上げてる方なんだが

拙著に関わって、こういうつぶやきが目に入ったので

https://twitter.com/culloss/status/1442128216311795725

そういえば『ジョブ型雇用社会とは何か』でも徹底して無視されてたけどなんで濱口先生は全日本海員組合とか全日本港湾労働組合を無視するのだろう?

いやわかるのよ、日本でもあれらがかなり特殊だから一般化できないしとりあげるだけ無駄ってのは

いやいや、『ジョブ型雇用社会とは何か』は日本的メンバーシップ型とジョブ型を理念型にして論じているので、そこからあまりにも離れすぎている船員だの港湾だのは取り上げられていないけど、労働法政策の議論においては、おそらく日本の労働法研究者としては極めて例外的に、船員だの港湾だのをやたらに突っ込んで取り上げている方だと思います。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/255-f29a.html

255_hp_20210926231701 なお、わたしの「船員の労働法政策」はいかにもニッチな分野に見えますが、陸上労働法だけ見ていると見えてこないいろんな視角がちらちらと垣間見える領域でもあるので、もし時間があればじっくりと読んでいただけると有り難いです。

はじめに
1 船員法制の形成期
(1) 西洋型商船海員雇入雇止規則
(2) 商法と旧船員法
2 労働力需給調整システムと集団的労使関係システムの形成
(1) ILOの影響
(2) 船員職業紹介法
(3) 海事協同会による集団的労使関係システム
3 戦前期船員法政策の展開と戦時体制
(1) 1937年船員法
(2) 船員保険法
(3) 船員と傷病
(4) 戦時体制下の船員法政策
(5) 終戦直後期における船員管理
4 終戦直後期における船員法制の改革
(1) 労使関係法政策
(2) 1947年船員法
(3) 船員法の労働時間・有給休暇等
(4) 災害補償と船員保険
(5) 労働市場法政策
5 その後の船員労働条件法政策
(1) 1962年船員法改正
(2) 船員の最低賃金
(3) 1988年船員法改正(労働時間関係)
(4) 2004年船員法改正
(5) 2008年改正
6 その後の船員労働市場法政策
(2) 1990年改正(船員労務供給事業)
(3) 2004年改正(船員派遣事業)
7 船員保険の解体
8 船員労働委員会の廃止
9 ILO海事労働条約の国内法化

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/239-58be.html

Tm_i0eysjizovvxi6ggxmoyplolmwbeg 港湾労働の法政策
労働政策研究・研修機構統括研究員 濱口桂一郎

はじめに
1 港湾労働法以前の世界
2 港湾労働法への動き
3 旧港湾労働法
4 1973年法案
5 1979年改正
6 新港湾労働法
7 2000年改正

いずれも、船員労働法制、港湾労働法制についてこれほど包括的かつ突っ込んで論じたものはほかにあまりないのではないかと思っています。特に、船員労働法については、たぶん(この時点では)誰の言っていないような議論も展開していますし。

 

 

『ジョブ型雇用社会とは何か』短評さらに

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https://twitter.com/kou1675/status/1441340192229507080(kou)

濱口 桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か: 正社員体制の矛盾と転機』を読んだ。歴史をたどり、源流という高見から現在を俯瞰して見させてくれる。推理小説のようにワクワクさせられる。 ①ルール、②契約、③実態のそれぞれをメンバーシップ型かジョブ型かを判別することで、ねじれ箇所を発見できる。 

https://twitter.com/kirinnnn/status/1441300053474250756(中嶌 聡)

基本的にはほぼ正確に理解していると思っているので答え合わせのつもりで読む。加えて、木下武男さんの「労働組合とは何か」におけるジョブの4つの特徴の指摘や、ジョブは労組が押し付けるもの、との指摘を濱口さんがどう解釈してるのか(触れてるかわからないが)を知りたいのもある。 

https://twitter.com/culloss/status/1441709948572897287(神行太保)

『ジョブ型雇用社会とは何か』は濱口桂一郎先生の著作としてはこれまでの総決算というか、入門書としておすすめしやすいし、2021年の日本の労働事情のパラダイムとして後世読み返すのも面白いかも 

https://twitter.com/futtaya/status/1442001724110032897(藤田聡(サブカル私立高校教員))

濱口桂一郎氏の新著『ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と限界』(岩波新書)を読む。メンバーシップ型の職場環境の居心地悪さに明晰な言葉をもらって、改めてそれに反抗してるんだなと自覚する。 教育で培う同調力と仲間づくり力がないと日本型正社員では生きづらい。 

 

 

 

 

いよいよ神聖なる憎税同盟の枢軸たらんと

いよいよ神聖なる憎税同盟の枢軸たらんとしているのかな?

もう勝手にさらせとしか

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/09/post-61de80.html(神聖なる憎税同盟再び)

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結局、反緊縮だの弱者のためだのがことごとく減税ニッポンにからめとられていき、もう一方のあれもやりますこれもやりますとの矛盾を「事業仕分けで無駄をたたき切れば財源なんてなんぼでも出てくる」でごまかした挙げ句の果ての泥沼をもう一度再演したいのかな。

ま、国民の側が神聖なる憎税同盟のおまじないにころりといかれる性癖が直らないのだから、どうしようもないわな。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-c764.html(「憎税」りふれはのアイドル クーリッジ)

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どうもある種のりふれはの人が、緊縮財政を批判するツイートのつもりで、アメリカのクーリッジ大統領の「必要以上の税を集めるのは合法的強盗である」という台詞を引用していたらしいのですが、もちろんクーリッジ大統領は「緊縮財政の守護天使のような存在」であり、「大恐慌以前の市場原理主義者、シバキの代表」であります。『ただひたすらに「頑張る」というスローガンだけで、たいていの問題は解決できる』と言う名言が残っているんだそうです。
その昔世界史の教科書で読んだのを思い出していただければ、クーリッジの次のフーバー大統領のときにあの大恐慌が起こり、それでルーズベルトのニューディール政策が始まったわけです。思い出しましたか?
あんこれさんはこの歴史感覚の欠如した自分に都合の良い言葉尻だけに条件反射する愚かさをあざ笑っている訳なんですが、もうすこしつっこむと、ここにある種の「りふれは」の本性-ただひたすらに「憎税」-がにじみ出ているということもできるように思われます。
その帰結は、もちろん言うまでもなく、クーリッジ大統領の経済政策の追求以外の何物でもないわけで、その意味ではむしろ、あんこれさんの皮肉は皮肉ですらなく、この手のりふれはの明白な本性を明らかにしたというだけだったのかもしれません。 

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-972110.html(「憎税」左翼の原点?)

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その文脈はそういう政治話が好きになひとに委ねて、ここでは違う観点から。と言っても、本ブログでは結構おなじみの話ですが。よりにもよって「ジャパン・ソーシャリスト・パーティ」と名乗り、(もちろん中にはいろんな派閥があるとはいえ)一応西欧型社民主義を掲げる社会主義インターナショナルに加盟していたはずの政党が、こともあろうに金日成主席が税金を廃止したと褒め称えるマンガを書いていたということの方に、日本の戦後左翼な人々の「憎税」感覚がよく現れているなぁ、と。そういう意味での「古証文」としても、ためすすがめつ鑑賞する値打ちがあります。
とにかく、日本社会党という政党には、国民から集めた税金を再分配することこそが(共産主義とは異なる)社会民主主義だなんて感覚は、これっぽっちもなかったということだけは、このマンガからひしひしと伝わってきます。
そういう奇妙きてれつな特殊日本的「憎税」左翼と、こちらは世界標準通りの、税金で再分配なんてケシカランという、少なくともその理路はまっとうな「憎税」右翼とが結託すると、何が起こるのかをよく示してくれたのが、1990年代以来の失われた30年なんでしょう。 
いまさら井出英策さんがどうこう言ってもどうにもならない日本の宿痾とでもいうべきか。

 

2021年9月25日 (土)

先週末出たばっかの本がどうやって経年劣化してるんだよ

71cahqvlel_20210925161901 先週末刊行された『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)は幸い温かい評価をいただいておりますが、いつものことながらamazon界隈に生息する転売屋諸氏の常識では測りがたい価格付けに驚嘆の念を禁じ得ません。

https://www.amazon.co.jp/dp/4004318947/ref=olp-opf-redir?aod=1&ie=UTF8&condition=used

いうまでもなく、先週出たばっかのこの本の定価は本体1020円、税込み1122円ですが、なぜかamazonには中古品(!)が2805円という値段で出品されていて、そこには「コンディションは経年劣化は見られますが綺麗な状態です」などと書かれているんですが、一週間も経たない間に経年劣化させるとは、さては時空を超える超秘密兵器でも持っているんですかね。

11021851_5bdc1e379a12a_20210925162601 ついでながら、老婆心で申し上げますが、amazonの闇は限りなく深いようで、3年前に刊行し、今でもいくらでも定価ないし割引価格で手に入る『日本の労働法政策』(本体3889円、税込み4278円)が、5841円から始まりはては12406円で売られているのを見ると、まるで悪党に誘拐された我が子が道端で乞食をさせられているのを見るようで胸が痛みます。

https://www.amazon.co.jp/dp/4538411647/ref=olp-opf-redir?aod=1&ie=UTF8&condition=new&qid=1632554946&sr=1-8

 

 

日本ILO協会を潰したのも民主党政権

こたつさんが、どこかから聞きかじってきたようで、

https://twitter.com/ningensanka21/status/1441357008695746565

日本ILO協会も事業仕分けにより廃止に追い込まれていたとの情報に接した。

その話題についても、ちゃんと本ブログで取り上げておりました。10年ひと昔といいますから、今となっては知らない人も多いかも知れませんので、全文再掲しておきます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-e3a6.html(中村正『ガイドブックILO国際労働基準』)

標記の冊子をお送りいただきました。ありがとうございます。

・・・

と、いつもと変わらぬ謝辞をここに書くだけでは済まされないでしょうね。

なぜなら、この本の刊行元の日本ILO協会は、去る4月30日を以て解散させられてしまっているからです。労働組合が選挙で一生懸命応援して成立したはずの政権の手によって、そんな団体は要らないと潰されてしまったからです。

「りべらる」なみなさんが熱狂的に待ち望んでおられた民主党政権にとっては、こういうILOの国際労働基準を労働者に、企業に、そしてすべての国民に啓発するというようなことは、潰すべき「無駄」の最たるものだったのでしょうね(微苦笑)としか言えませんが。

この本の奧付けを見ると、2011年4月30日発行とあります。

無駄だと言われて潰された日本ILO協会の最後の刊行物というわけです。

中身は、中村正さんが同協会の今は亡き月刊誌『世界の労働』に連載したものに大幅に加筆修正したもので、第Ⅰ部が「ILOの歴史と機構」、第Ⅱ部が「ILO国際基準」です。まあ、一般向けの簡単な解説として、初心者にとってはとての便利な本だと思います。

しかし、関係者にとっては、中村さんの国際労働行政を綴ったやや長めのあとがきが興味深いでしょう。

>・・・しかし、2011年3月、『世界の労働』最終号で背景・経緯を述べたように、ILO協会は公益法人に対する一般的批判の強まる中で、財政的支援を絶たれ、自主的収入努力の道も否定されて、残念・無念2011年4月30日を以て60年の歴史を閉じることになってしまった。新しいILO協会の基石にと思った本書は、消え去ったILO協会の遺跡、そして私の社会人人生の遺言となってしまった

この本は中村さんと日本ILO協会にとっては遺言になってしまったわけですが、それが日本における国際労働基準の断末魔となることのないよう、労働関係者にとっては責任は重大だと思います。

ちなみに、事業仕分けで仕分けられるという経験をした人々が共通に抱いている、民主党政権こそが小泉政権時代と並ぶネオリベ全開政権だったという客観的な認識は、肝心のその後継者の皆さんやその支持者の方々にはこれっぽっちも共有されていないようで、一貫して自民党のネオリベと戦ってきたみたいな自己欺瞞を本気で信じているらしい姿が、私からするとそのことが不思議でならないのですが。

というような話が、ちょっと先(数か月後)にそういう界隈のメディアに面白い形で載ると思いますので乞うご期待。

 

 

連合の次期会長候補にJAM芳野氏浮上 初の女性会長の可能性@朝日

既にいくつかのメディアが報じていますが、

https://www.asahi.com/articles/ASP9T02QVP9SULFA034.html

Yoshino 労働組合を束ねる中央組織、連合の次期会長に、芳野友子副会長(55)が昇格する案が浮上した。週明けにも会長候補を決める連合内部の委員会にはかられる。芳野氏に決まれば、連合初の女性会長となる。・・・

締め切りになってもだれも手を上げないから、見合いに見合ったあげく、だれも想定していなかった人が瓢箪から駒で押し出されて出てきたという経緯なんでしょうが、結果的には怪我の功名というか、大変いい選択肢になったように思われます。経済界と並んで「おじさん」族の集まりという印象の強い労働界のトップに、こういう現場の働く女性の代表が就くのは、素直に評価すべきことでしょう。というか、正式にはまだ未定で、「浮上」という段階なんでしょうけど。

完全なダークホースだったこともあり、彼女についての情報は限られていますが、今から10年以上前にJUKI労組の副委員長として、埼玉大学の連合寄付講座で喋った記録が、その人となりをよく伝えていると思います。

https://www.rengo-ilec.or.jp/seminar/saitama/2008/youroku05.html

(2)新入社員時代
 企業に入りますと、まず、新入社員教育が始まります。女性は、電話の取り方や名刺交換、お茶の出し方などの接遇教育が中心でした。一方男性は、製造現場に入って、組立や溶接などを一通り経験していきました。現場実習が終わると、今度は企画部門に行ったり、全国の営業所を回って上司と一緒に縫製工場に行ったりしていました。要するに男性は、実際の仕事に根ざしたことを教育課程の中でやっていくわけです。
 このように、男女で研修カリキュラムが全く違う中でのスタートでした。しかし、私はその当時は、そのことに何の疑問も抱かず、むしろお茶汲みやコピー取りといったサポート的なことは、女性の役割だと思っていました・・・・

(5)職場での男女差に対する疑問
 ある時、同期の女性が相談に来ました。当時、残業規制があり、既婚男性と独身女性とで対応に違いがありました。この対応の違いに疑問を持った女性組合員が相談にきたのです。
 それを聞いて、私もそれは納得がいかないことだと思い、当時の書記長にその意見をあげました。すると書記長は、「A係長は妻子を養っていて生活が大変だから、それは当然ではないか。」と言うのです。私は、同じように残業をしていながら、それぞれの個人的な事情で勝手に判断がされるのは、やはりおかしいと思いました。しかし、私がおかしいと思ったことが、当時の男性役員には男女異なる扱いについて、全然響いていなかったわけです・・・・

 

510fduhbcl_20210925094501 まさに『働く女子の運命』のただなかを生き抜いてきた方というわけです。

 

 

 

 

 

2021年9月24日 (金)

『ジョブ型雇用社会とは何か』短評続き

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https://twitter.com/harahirohire/status/1440969750608166912(はらひろひれはら)

濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』読了。たぶん、本当のタイトルは「メンバーシップ形雇用とは何か」だろう。論じているのはメンバーシップ型とはジョブ型(=世界標準)の視点から見ればどのようなものか、なのだから。 個別の論点は本当に勉強になったが、特に健康管理措置の部分は考えされた。

そもそも使用者による一般健康診断が日本独自のものだとすら知らなかったのだが、メンバーたる労働者の健康情報を収集する関係が本当に対等な関係なのか?という疑問は持っておきたい。 安全衛生配慮義務からすれば、結局労働者の開示度合いに応じて責任に軽重がつけられていくのだと思うが。 

https://twitter.com/shabababa0609/status/1440985887857283087(シャバこば)

濱口桂一郎著「ジョブ型雇用社会とは何か」読んだ。これまで「どういうこと?」と思ってきた人事とか労務管理だとかの理屈がストンと腹に落ちた気がする。まあ~俺は社会人13年やってて社会のことを何にも知らねえなという事実を改めて叩きつけてくれた一冊。

https://twitter.com/saeki_sr/status/1441231893492424711(佐伯博正)

濱口桂一郎著『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)が今日の書店にはあった。早速「適用除外制度をめぐるねじれた経緯」等の項を確認したが、高プロは書いていたが裁量労働制問題にはふれられていなかった。裁量労働制対象拡大は6月に閣議決定された規制改革実施計画にもある重要論点のはずだが?

敢えて言えば、今日ただ今の政策課題というレベルでの意味と、日本の雇用システム全体にとっての意味とでは軽重が異なるということです。

274_h1hp_20210924151101 実際にはまったく触れていないわけではなく、191ページから192ページに、企画業務型裁量労働制に対する必要にして十分な評言が7行にわたって書かれています。もう少し詳しく論じたものとしては、先週刊行されたばかりの『季刊労働法』2021年秋号(274号)に書いた「専門職の労働法政策」の218ページから219ページにかけて、1ページ半にわたって論じています。

https://twitter.com/culloss/status/1441289027185872902(神行太保)

濱口桂一郎先生、相変わらず遠慮なく辛辣でおもろい

御意。それを狙ってます

 

 

 

 

未だに・・・

この期に及んで、未だに労働契約法第16条を削除すれば解雇権濫用法理がこの世から消えてなくなると思い込んでいる一知半解無知蒙昧がまったく治癒されていないのを見るのは味わい深い

法律をやみくもに敵視する人間ほど無知ゆえの法律万能主義を演じてしまうという典型というべきか

2021年9月23日 (木)

労働組合法第18条による労働協約の地域的拡張適用

労働組合法施行以来75年を閲してなお両手で数えて足りてしまう労働協約の地域的拡張適用ですが、UAゼンセンのヤマダ電機等3組合により今般決定がされたようです。

朝日の澤路記者の記事と

https://www.asahi.com/articles/ASP9Q3GT4P9QULZU008.html(茨城の大型家電量販社員の休日111日に 30年ぶりに労働協約拡張)

ある会社の労働組合が会社と交渉して決めた労働条件が、同じ地域の同じような会社すべてに一律で適用される――。労働協約の「地域的拡張適用」といわれる決定が22日、厚生労働省から出た。茨城県内の大型家電量販店は、正社員の年間休日数を最低でも111日にしなければならない。地域的拡張適用の決定は約30年ぶり。

 拡張適用になるのは、家電量販のヤマダ電機(現ヤマダホールディングス、群馬県高崎市)、ケーズホールディングス(水戸市)、デンコードー(宮城県名取市)と、3社の労組が2020年4月に結んだ労働協約。正社員の年間の所定休日数を最低111日としている。3社の労組の申し立てを受けた中央労働委員会が8月に承認。9月22日に厚労相名で決定した。 

その官報への告示

https://kanpou.npb.go.jp/20210922/20210922h00580/20210922h005800009f.html

そもそも欧米型の産業別労働組合を前提に設けられたこの制度を、企業別組合主体の日本の労働組合が使えるところまでもっていったということ自体が大変な快挙でしょう。口先だけは勇ましいけれどこういう実行力は乏しい左派組合に比べて、UAゼンセンの底力はこういうところに現れてくるのですね。

 

 

 

 

 

 

2021年9月22日 (水)

『働く女子の運命』が第6刷

510fduhbcl 文春新書から6年前に刊行した『働く女子の運命』ですが、今なお読み継がれているようで、第6刷がかかったというご連絡をいただきました。

https://twitter.com/umeboshibancha/status/1440613861548183553

濱口桂一郎さん『働く女子の運命』に重版がかかり、6刷に。働く女性と企業側の相克が垣間見える裁判資料などを読み解きながら、「働く女子の運命」を歴史的に描き出した一冊。今読んでも古びません。岩波新書から出たばかりの『ジョブ型雇用社会とは何か』とあわせてぜひ。

読者の皆様には心より御礼申し上げるとともに、今般岩波新書から出した『ジョブ型雇用社会とは何か』のなかでも、第5章「メンバーシップの周縁地帯」第1節の「女性活躍というけれど」で女性労働問題にも切り込んでおりますので、併せて宜しくお願いします。

 

 

 

 

水町勇一郎『詳解 労働法 第2版』

61ivdifs8al 水町勇一郎さんの『詳解 労働法 第2版』(東京大学出版会)をお送りいただきました。ありがとうございます。初版の1429ページをさらに超え、はしがき・目次・凡例抜きで1478ページという、ほとんど凶器の沙汰(おまえがいうか)に達しております。

http://www.utp.or.jp/book/b586917.html

ありとあらゆることがことごとく書き尽くされている教科書という無理難題を実現してしまっている点は初版と同様です。冒頭が「律令制下の労働関係」からはじまり、最初に引かれている文献が瀧川政次郎というところで度肝を抜くということも初版時に書きました。

働き方のルールを定めた労働法制のすべてが分かる概説書.法令や告示・通達など制度の枠組みを分かりやすく解説するとともに,裁判など実際の紛争事例を多数採り上げ基準や潮流を鮮やかに示す.育児介護休業法の改正(2021年6月)やテレワークガイドラインの改定(2021年3月)など法令改正のほか,「『同一労働同一賃金』最高裁判決」(2020年10月)など重要判例を詳しく紹介,最新の動向を踏まえた待望の改訂版.

ここでは、この版元の売り文句の最後のところについて、『ジョブ型雇用社会とは何か』で突っ込みを入れた点に関わって、ちょびっと一言。

版元は「『同一労働同一賃金』最高裁判決 」と、世間一般の用語法で宣伝するわけですが、その「同一労働同一賃金」を大いにリードした水町さんは自らのテキストでは、これら昨年の最高裁判決を決してそのようには呼んでいません。政府の作ったそういう名前のガイドライン以外では、地の文で生の「同一労働同一賃金」という言葉が出てくるのは、男女平等と賃金制度のところだけであって、非正規労働者のところではないのですね。その意味では労働法学者としてはまことに誠実な姿勢ではあるんですが。

第1編 総 論
第1章 労働法の歴史
 労働法生成の前史/戦前の労働関係と労働法/戦後の労働法制の確立と展開
第2章 「労働者」
 総説――「労働者」概念の意義と種類/労働基準法上の「労働者」/労働組合法上の「労働者」/労働契約(法)上の「労働者」
第3章 「使用者」
 総説――「使用者」概念の意義と種類/労働契約上の「使用者」/労働基準法上の「使用者」/労働組合法上の「使用者」――概要
第4章 強行法規
 労働関係を規律する法源(総論)/憲法,条約と労働法/労働法規の規制枠組
第5章 労働協約
 労働協約の意義と法的性質/労働協約の効力発生要件/労働協約の効力/労働協約の拡張適用(一般的拘束力)/労働協約の終了
第6章 就業規則
 就業規則の意義/就業規則の手続き――労基法上の作成・変更手続/就業規則の効力
第7章 労働契約
 労働契約の意義/労働契約の基本原則/労働契約の成立要件/労働契約の解釈枠組み/労働契約上の権利義務

第2編 個別的労働関係法
第8章 労働者の人権保障
 労働者の人権保障の経緯と背景/労働憲章/人格権の保護/内部告発の保護
第9章 雇用差別の禁止
 雇用差別禁止法制の状況/均等待遇原則(労基法3条)/男女賃金差別の禁止(労基法4条)/賃金以外の男女差別の禁止(男女平均取扱法理と男女雇用機会均等法など)/女性活躍推進法
第10章 非正規労働者
 正規・非正規労働者間の待遇格差に関する学説・裁判例の展開/パートタイム労働者をめぐる立法――パートタイム・有期雇用労働法など/期間の定めのある労働契約をめぐる立法/労働者派遣をめぐる立法――職業安定法44条,労働者派遣法など/フリーランス等をめぐる法的対応
第11章 労働関係の成立
 採用の自由/労働契約の成立と労働条件の明示/労働契約の締結過程――採用内定・採用内々定/試用期間
第12章 教育訓練
 教育訓練の概要と背景/教育訓練を命じる権利/教育訓練を受ける権利
第13章 昇進・昇格・降格
 人事考課(査定)/昇進・昇格・昇級/降格
第14章 配転・出向・転籍
 配転/出向・転籍
第15章 休職
 意義/法的規則
第16章 企業組織の変動
 合併/事業譲渡/会社分割/会社の解散
第17章 懲戒
 服務規律と「企業秩序」論/懲戒の意義と根拠/懲戒権の法的規制の枠組み/懲戒の種類/懲戒の事由
第18章 賃金
 賃金の形態と法制度/賃金請求権/賃金の法規制
第19章 労働時間
 労働時間規制の意義と展開/労働時間制度の基本的枠組み/労働時間制度の特則――労働時間の柔軟化
第20章 年次有給休暇
 年次有給休暇制度の意義と展開/年次有給休暇の権利の構造/年休権の発生/年休の時期の特定/年休の使途/年休取得に対する不利益取扱いと年休取得の妨害/年休権の消滅
第21章 労働安全衛生
 労働安全衛生法制の経緯と展開/労働安全衛生法の基本枠組み・性格/安全衛生管理体制/危険・健康障害の防止措置/機械・有害物等に関する規制/労働者の就業にあたっての措置/健康の保持増進のための措置/規制の実施方法
第22章 労働災害の補償
 労災補償制度の経緯と展開/労災保険制度――労災保険法による給付/労働災害と損害賠償――労災民訴/労災上積み補償制度
第23章 年少者の保護
 年少者保護の経緯/労働契約の締結に関する規制/賃金・労働時間に関する規制/安全衛生に関する規制/帰郷旅費
第24章 女性の保護(母性保護)
 女性保護政策の経緯と目的/危険有害業務・坑内業務の就業制限/産前産後の保護/育児時間/生理日の休暇
第25章 育児・介護等の支援
 育児介護休業法の意義と展開/育児を行う労働者の支援/介護を行う労働者の支援/育児・介護支援措置を理由とする不利益取扱いの禁止/育児・介護に関するハラスメントの防止措置義務/育児・介護支援措置に関する紛争解決制度/次世代育成支援――次世代育成支援対策推進法
第26章 外国人雇用
 外国人労働者の受入れ政策/外国人労働者への労働法等の適用
第27章 障害者雇用
 障害者雇用政策の経緯と展開/障害者雇用促進法の目的と枠組み/障害者雇用の促進/障害者差別の禁止
第28章 知的財産・知的情報の保護
 職務発明等と労働者の権利/労働者の秘密保持義務と競業避止義務
第29章 労働関係の終了
 解雇/辞職と合意解約/当事者の消滅/労働契約終了後の権利義務
第30章 高齢者・若者雇用
 高齢者雇用/若者雇用

第3編 集団的労働関係法
第31章 労働組合
 労働組合法制の経緯と枠組み/労働組合の類型と実態/労働組合の意義と要件/組合自治と法的規制/組合への加入・脱退・組織強制/労働組合の統制権/労働組合の組織の変動
第32章 団体交渉
 団体交渉の意義と機能/団体交渉の主体――「当事者」と「担当者」/団体交渉義務/団体交渉拒否の救済
第33章 団体行動
 団体行動の法的保護の枠組み/団体行動の正当性/正当性のない団体行動と法的責任/争議行為と賃金/使用者の争議対抗行為
第34章 不当労働行為
 不当労働行為制度の沿革と目的/不当労働行為の成立要件/不当労働行為の救済

第4編 労働市場法
第35章 雇用仲介事業規制
 雇用仲介事業規制の趣旨と経緯/職業紹介事業の規制/労働者の募集の規制/労働者供給事業の規制
第36章 雇用保険制度
 制度の背景と展開/制度の基本的枠組み/失業等給付/育児休業給付/雇用保険二事業
第37章 職業能力開発・求職者支援
 背景と経緯/職業能力開発――職業能力開発促進法/求職者支援制度――求職者支援法
第38章 特定分野の雇用促進政策
 高年齢者の雇用促進――高年齢者雇用安定法/障害者の雇用促進――障害者雇用促進法/特定地域の雇用開発促進――地域雇用開発促進法/生活困窮者の自立支援――生活困窮者自立支援法/若者の雇用促進――若者雇用促進法

第5編 国際的労働関係法
第39章 適用法規と裁判管轄
 適用法規の決定/国際裁判管轄
第40章 国際労働基準
 国連条約/ILO条約

第6編 労働紛争解決法
第41章 行政による紛争解決
 企業内での紛争解決の意義と限界/行政による紛争解決制度の概要と経緯/都道府県労働局長による個別労働紛争の解決促進/労働委員会による紛争解決
第42章 裁判所による紛争解決
 裁判所による紛争解決制度の概要と経緯/労働審判/民事通常訴訟/保全訴訟/少額訴訟/民事調停

 

 

 

2021年9月21日 (火)

時折辛辣ワードのビーンボール

71cahqvlel_20210921195701 『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)への短評集続き

おなじみ焦げすーもさんに言わせると、

https://twitter.com/yamachan_run/status/1439972431427301381

hamachan先生の新刊では、序章はジャブ。
1章でメンバーシップ型/ジョブ型の基本事項を説明しつつ、後続章の話題をこまめに頭出し。
2章以降は、章ごとに切り口を変えて体系的にまとめあげられた重厚な構成。

にもかかわらず、時折辛辣ワードのビーンボールを織り交ぜてくるのはhamachan先生らしい。

「時折辛辣ワードのビーンボールを織り交ぜてくる」のが私らしいそうで、いやそれは全くその通り。ていうか、岩波書店の校正の方が心配し、「こういう言い方をしていいんですか?」と言ってくるのを、「いや、これはこれでいいんです」とあえて残した表現なので。

日によってカピバラになったり猫になったり鹿になったりしているこの方は、

https://twitter.com/pandadnap9999/status/1439972165747576841

ジョブ型賛美の人にとっては「そんな魔法の杖みたいに都合のいいスキームがあったら今まで苦労してねえわ」という示唆があるし、ジョブ型が怪しいなと思っている人にとっても「メンバーシップ型と比較した際に異なってくる周辺の考え方」の示唆があると思うので、とても勉強になるな。

はい、これもまさに狙い通りの趣旨です。素朴に「ジョブ型」とかいう新商品を売り込んでると思い込んでる人の思い込みをひっくり返すのが第一の目的。返す刀で「ほら見ろ、ジョブ型なんかじゃダメなんだ」と言いたがる人の思い込みを叩き潰すのが第二の目的。

https://twitter.com/YamTapas/status/1440136501749161990

近所の本屋に濱口桂一郎さんの新刊売ってたんで買ってきた。

詳しくは本書に譲りますが、どこそこのファームから出されているジョブ型の本を読む前にこちらを先に読んだ方が良いと思います。

まあ、どっちが先でもいいんです。「(ぼくのかんがえたさいきょうの)ジョブ型はこんなに素晴らし」というたぐいの(いかにも実践的めかした)本を読んで脳内に構築されたものを叩き潰す快感も捨てがたいものがあるはず。

 

 

 

 

 

2021年9月20日 (月)

『ジョブ型雇用社会とは何か』への短評が出始めました

71cahqvlel_20210920210501 9月17日に刊行された『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)に対して、ツイッターやネット書評サイトにぼちぼち短評が載り出しました。

https://twitter.com/T10000nen/status/1439384555262124035(田中萬年)

濱口桂一郎さんから『ジョブ型雇用社会とは何か』を戴きました。有難うございました。
「アカディズムの幻想と職業訓練の世界」の節もありますが、私なら「教育への幻想と学問観の錯誤」としますね(^0^)
職業訓練がきちんと評価される社会にならねばジョブ型雇用にはならない、と云うことですね。

https://twitter.com/hakennohakeko/status/1439547406199058433(派遣のハケ子@あなたの隣の派遣社員 )

 ジョブ型雇用社会とは何か - 正社員体制の矛盾と転機/濱口桂一郎 著/岩波新書 著者…捻じ曲げられ広まるジョブ型雇用に怒っていらっしゃる…。読んでみると、ジョブ型の典型である派遣社員としては「あ、そうそうこれがジョブ型だよ」と腹に落ちる。非正規雇用や女性労働者への視点もあって勉強になる

https://bookmeter.com/books/18523605読書メーター

昨年からよく聞く言葉となった「ジョブ型」について、提唱した濱口氏が解説したもの。いわば第一人者が世間の誤解をとくために出版されたものと言える。 ジョブ型とメンバーシップ型の基本概念から、雇用と解雇、賃金、労働時間、組合など、それぞれの角度から昨近問題となっている話題について解説がなされている。 分析はなるほどとと思うことも多く、日本版同一労働同一賃金は、呼称と中身が合っていない。 文章が昔より回りくどくなった気がするが気のせいか。(Yuichi Tomita)

うーむ、回りくどいですか?自分では新書の一冊にあれもこれも片っ端から詰め込もうとしたため、特に後半の諸テーマについてはあまり十分に展開できず、いささか舌っ足らず気味になっているくらいかな、と思っていたんですが・・・。

 

 

 

 

 

2021年9月19日 (日)

渡辺輝人『新版 残業代請求の理論と実務』

591784 渡辺輝人『新版 残業代請求の理論と実務』(旬報社)をお送りいただきました。

https://www.junposha.com/book/b591784.html

 前作を大幅改訂! 残業代請求の第一人者による最強の実務書
・最新の最高裁判決(2020年)と学説動向を分析
・最先端の理論で、残業代請求実務がさらに確実に
・残業代計算ソフト「給与第一」「きょうとソフト」解説付き

タイトルの通り、残業代に関する恐らく最高レベルの実務書であり、考えられる様々な論点が事細かに論じられています。後半の実務編では、渡辺さん自身が開発した残業代計算ソフトの詳しい使い方が解説されており、「残業代といえばこの一冊」であることは間違いありません。

新版はしがき
初版はしがき
凡例
用語法・言葉の定義

第1部 割増賃金制度の理論

第1章 法定の計算方法と法定外の支払方法の許容性
第1 割増賃金制度の概略
 1 労基法における労働時間規制の概略
 2 割増賃金制度の趣旨
 (1)最高裁判決
 (2)労働行政の見解
 (3)学説状況
 (4)まとめ
 3 法定の計算方法の概略
 (1)根拠条文
 (2)具体的計算方法
 (3)賃金形態別の賃金単価の算出方法の概略
 (4)賃金形態別の賃金単価の合算
第2 法定外の支払方法の許容性
 1 労基法37条の強行的・直律的効力の範囲(法定外の支払方法の許容)
 2 最高裁判決によりただちに違法ではないとされたこと
第3 通常の労働時間の賃金
 1 概念整理の必要性
 2 「通常の労働時間の賃金」という文言の特定
 3 除外賃金との関係での通常の労働時間の賃金の定義
 4 25%説の「通常の賃金」と通常の労働時間の賃金の関係
 5 判別要件との関係での論点設定

第2章 判別要件(法定外の支払方法の有効要件)
第1 法定外の支払方法全般と全種の割増賃金を対象に
 1 「固定残業代」の定義
 2 当初の判別対象
 3 康心会事件最高裁判決での対象の根本的拡大
 4 従前の学説の問題点
 5 小括:判別要件を法定外の支払方法全般へ拡大
 6 すべての種類の割増賃金を判別要件の対象に
 (1)深夜早朝割増賃金についての従前の労働行政、裁判例の状況
 (2)ことぶき事件最高裁判決
 (3)康心会事件最高裁判決で判別要件へ編入
 (4)小括
第2 「判別」することの内容の深化
 1 高知県観光事件最判の「判別」
 2 テックジャパン事件での月給制への射程拡大
 3 国際自動車事件第一次判決で賃金の計算過程まで射程を拡大
 4 康心会事件最高裁判決の「すら」
 5 国際自動車事件第二次最高裁判決での「置き換え」=判別不能の判示
第3 法37条の「趣旨による判別」
 1 国際自動車事件第一次判決の投げかけた問題点
 2 康心会事件最高裁判決以降の「趣旨による判別」
 3 国際自動車事件第二次最高裁判決の「趣旨を踏まえた」対価性検討
 4 小括
第4 対価性要件を判別要件の下に位置づけたこと
 1 日本ケミカル事件の概要
 2 対価性要件と判別要件の関係
 3 担当調査官の見解
 4 国際自動車事件第二次最高裁判決での対価性要件の位置付けの明確化
第5 判別要件は契約の定めにつきなされるものと位置付けられたこと
第6 まとめ:判別要件及び通常の労働時間の賃金の意義
 1 判別要件の意義
 (1)強行的・直律的効力のある「基準」としての判別要件の射程
 (2)判別要件の目的
 (3)誰にとっての「判別」可能性か
 (4)判別可能性の立証責任
 2 通常の労働時間の賃金の意義:客観説
 3 まとめ

第3章 判別要件を基本とする対価性要件の具体的内容
第1 対価性要件の固有の意義
 1 不定形性の指摘との関係での固有の意義
 2 弁済との関係での対価性の範囲
 (1)問題の所在
 (2)固定残業代による対価性の時間的範囲
 (3)同時に2種以上の割増賃金の支払対象となる労働時間を引き当てにする手当
 (4)小括
第2 日本ケミカル事件の事案の詳細
 1 入職2ヶ月前の雇用契約書で合意された週の各曜日の所定労働時間等
 (1)週所定労働時間
 (2)休日
 (3)月平均所定労働時間数
 2 賃金に関する契約書面の記載内容
 (1)入職2ヶ月前の雇用契約書
 (2)本件雇用契約に係る採用条件確認書
 (3)賃金規定
 3 業務手当について、会社と他の労働者の間で作成された確認書の記載
 4 労働実態
 (1)時間外労働時間
 (2)残業代に関する給与明細書の記載
第3 対価性要件の具体的当てはめ内容
第4 対価性要件の考慮要素の検討
 1 3つの要素の関係と意義
 2 事例への当てはめの特徴
 (1)労働契約上の所定労働時間の範囲と対価性の関係
 (2)実際の残業時間と対価性の関係
 (3)その他の事情の取り扱い
 3 小括

第4章 固定残業代の具体的要件
第1 賃金算定期間と賃金締切期間
第2 時給制による支払の要件
 1 時給制の賃金と通常の労働時間の賃金
 2 時給制の賃金による割増賃金支払い
第3 日給制による支払いの要件
 1 日給制の賃金の性質と通常の労働時間の賃金との関係
 2 「休日手当」(労基則19条2項)
 3 裁判例の状況
 4 限界的事例の検討
第4 月給制(狭義の固定残業代)の要件
 1 「通常の月給制」の原則
 2 給与明細書による「明確区分」
 3 就業規則で基準外賃金とされていること
 4 賃金の性質が問題になる場面ごとの展開
 (1)入職時
 (2)賃金改定時
 (3)昇給・昇進時
 5 労働契約書(就業規則)に「残業代として支払う」と明記してある
 (1)募集広告、求人票の記載やそれとの矛盾の追及
 (2)労働契約に関する文書での記載の不備や文書同士の齟齬の追及
 (3)労働契約における固定残業代の位置付けの不合理性
 (4)労働時間と固定残業代の関係
 (5)賃金増額を伴う場合
 (6)通常の労働時間の賃金の減額を伴う場合
 6 固定残業代を認めた裁判例の評価
 (1)関西ソニー販売事件
 (2)名鉄運輸事件
 (3)ユニ・フレックス事件
 (4)東和システム事件
 (5)ワークフロンティア事件
 (6)泉レストラン事件
 (7)コロワイドMD(旧コロワイド東日本)事件
 (8)結婚式場運営会社A事件
 7 固定残業代の合意が無効になる場合
 (1)時間外労働等に罰則付きの上限値の導入
 (2)上限を超える固定残業代の契約の無効
 (3)無効になる範囲
 (4)無効の場合の具体的な計算方法
 (5)制限値をどう考えるか
 (6)三六協定未締結の場合
 (7)公序良俗違反による無効

第5章 請負制(歩合給)による割増賃金の支払いの可否
第1 労基法24条との関係での請負制賃金の法的性質
 1 請負制の意義
 2 請負制賃金からの経費控除
第2 請負制の賃金の性質と通常の労働時間の賃金との関係
 1 請負制の通常の労働時間の賃金
 2 請負制の賃金該当性そのものが争点になった事例
第3 月決めの請負制の賃金全体を割増賃金とする場合
第4 月決めの出来高払制賃金の中に割合による仕切を設定する例(仕切説)
第5 通常の労働時間の賃金からの割増賃金相当額等の控除
 1 割増賃金相当額の控除
 (1)国際自動車事件第二次最高裁判決の要旨
 (2)通常の労働時間の賃金の意義に言及がなかったことについて
 (3)法37条の趣旨の実現の程度
 (4)出来高制の定義がされたこととの関係での「置き換え」の意義
 2 過去の平均割増賃金額の控除
 3 定率・定額の控除
 4 小括
第6 日決めの出来高払制等を用いて時間外労働等の時間帯のみの水揚げに対する歩合給
第7 時間決めの請負制賃金の場合
第8 まとめ

第6章 法定外の支払方法に関する学説
第1 時間賃率の未成熟
第2 固定残業代等の制度の由来
 1 法定外の計算方法
 2 深夜早朝割増賃金を含める所定賃金
 3 日給制の手当による支払い
 4 請負制の計算方法による支払い
 5 狭義の固定残業代
 6 狭義の固定残業代の幅広い普及経緯についての仮説
第3 必要性の乏しさ(固定残業代のメリット論批判)
 1 メリットがないこと
 2 使用者側から語られる社会的なメリットの検討
 (1)使用者側が主張する社会的なメリット
 (2)事務負担について
 (3)負のインセンティブについて
 (4)採用上の訴求力向上について
 (5)ホワイトカラーエグゼンプションの代替について
第4 許容性と有効要件に関する学説の流れ
 1 手当型の固定残業代が学説に位置付けられる経過(1990年台初頭まで)
 (1)許容する学説の登場
 (2)通常の労働時間の賃金との関係の考察
 (3)計算過程を「基準」外とする学説の登場
 2 明確区分性説の盛衰
 (1)「明確に区分」を求める裁判例
 (2)学説化
 (3)「明確に区別」説の定式化
 (4)仕切説
 (5)その後の学説の状況
 (6)国際自動車事件第一次最高裁判決のあとの議論の活性化
 (7)最高裁判所による明確区分性説の否定
第5 差額清算(合意)の位置付けに関する議論
 1 肯定説での位置付けの変化
 2 不要説とその問題点
 3 テックジャパン事件最高裁判決の櫻井補足意見
 4 国際自動車事件第一次最高裁判決での「時間による増額」文言の消失の意義
 5 判別要件の一部としての差額清算合意ないしその実態
第6 125%説に対する25%説
 1 125%説の概要
 2 25%説の概要
 3 裁量労働制の割増率
 4 大星ビル管理事件と25%説
 5 国際自動車事件第一次最高裁判決と25%説
 6 国際自動車事件第二次最高裁判決と25%説
 7 「仕切説」と25%説
 8 まとめ

第7章 割増賃金制度の諸理論
第1 算定基礎賃金と除外賃金等
 1 算定基礎賃金(労基法37条5項)
 2 除外賃金の不算入
 (1)除外賃金の意義
 (2)除外賃金の要件
 (3)除外賃金を潜脱する例
 3 割増賃金自体の不算入
 4 法内残業代の不算入
第2 賃金単価をめぐる諸問題
 1 通常の労働時間の賃金と賃金単価の関係
 (1)最低賃金と賃金単価の関係
 (2)通常の労働時間の賃金の分割算定の可否
 (3)賃金額が減額された場合の賃金単価
 2 所定労働時間数と賃金単価の関係
 (1)就労実態が労働契約を下回る場合
 (2)月平均所定労働時間数を特定できない場合
 (3)月平均所定労働時間数が法律上の上限値より高い値の場合
 (4)月平均所定労働時間数の算定期間と賃金算定期間のずれ
 (5)賃金単価算定のため契約で過小な所定労働時間数が定められている場合
 (6)変形労働時間制が無効となった場合の労働時間数の算定
 (7)労働時間の継続と終了
第3 割増率
 1 法案起草時の割増率の設定に関する議論
 2 8時間超の規制と40時間超の規制の関係
 3 法定休日労働の割増率と割増率加算説
 (1)学説の割増率不加算説と加算説
 (2)労働行政の別立て時間計算を前提にした不加算
 (3)加算説の現代的意義
 4 深夜早朝労働の割増率、請負制の割増率、裁量労働制の割増率
 5 労働契約上の割増率と労基法37条の関係

第2部 残業代請求の実務

第1章 労働時間とその立証
第1 「労働時間」の意義
 1 「労働時間」の意義
 (1)労基法の「労働時間」とは何か
 (2)「労働時間」該当性における実際の当てはめ
 2 裁判所によって労働時間と認定された行為の類型
 (1)総論
 (2)不活動時間(仮眠時間、滞留時間、手待時間)
 (3)準備時間、朝礼(体操)、後片付け、終礼等
 (4)本務外の活動(研修、QCサークル活動等の小集団活動)
 (5)接待が労働時間になる場合もあり得る
 (6)移動時間
 3 休憩時間不取得の場合の労働時間性
 (1)休憩付与義務
 (2)非労働時間たる休憩の判断要素
 (3)裁判例
 4 持ち帰り残業の労働時間性
第2 労働時間の立証責任とその軽減
 1 主張・立証責任は原則労働者にある
 2 労働時間の推計自体は最高裁判所も認めている
 (1)使用者の労働時間適性把握義務
 (2)労働時間の推計、概括的認定、割合的認定
第3 労働時間を証明する様々な証拠
 1 「これじゃなきゃだめ」という決まりはない
 2 タイムカード、コンピューター上の出退勤管理システム
 (1)タイムカード
 (2)コンピューター上の出退勤管理システム
 3 業務上使用する業務日報等
 4 事業所の警備記録または警備システムの作動・解除の記録
 5 コンピューター上の様々な時刻の記録
 6 タコグラフ
 7 労働者が作成したメモ類
 8 勤務形態そのものからの労働時間認定
 9 公共交通機関の利用記録
 (1)IC乗車券の記録
 (2)契約駐車場の利用履歴
 (3)ETCの利用履歴
 (4)駅の駐輪場の入庫時刻の記録
 10 様々な証拠の信用性をどう考えるべきか
 (1)類型的な証拠価値の分析
 (2)様々な事情による修正
 11 完全な証拠が揃わなくても諦めない
 12 証拠保全の必要性の有無
第4 訴訟上の主張立証のポイント
 1 検討の要点
 2 居残り残業
 (1)勝手に残業していた
 (2)ダラダラ残業をしていた、遊んでいた、喫煙のために離席することがあった
 (3)残業を命じていない、承認制になっていた
 (4)残業してもやることがなかった
 3 早出を命じていない
 4 休憩時間は所定どおり取得していた

第2章 残業代の計算
第1 賃金単価の算出
 1 請求原因事実の特定方法
 2 賃金単価の意義
 (1)法定計算で契約により定まるのは賃金単価のみ
 (2)時間比例性
 (3)賃金単価は計算上の概念であり「通常の労働時間の賃金」ではない
第2 月給制の賃金単価の算出方法(労基則19条1項4号)
 1 問題の所在
 2 そもそも月給制なのかのチェック
 3 賃金単価算出の分母となる月平均所定労働時間の計算式
 4 賃金単価算出の分母となる月平均所定労働時間数の算出
 (1)月平均所定労働時間数に関する経験則
 (2)不特定や上限値超の場合の処理
 (3)使用者側が173.8時間を使用する問題点
 5 賃金単価計算の分子となる月給額(算定基礎賃金)の算出
 (1)一方的な減給は無視して元の賃金を算入
 (2)「休日手当」等や判別不能な固定残業代の算入
 (3)除外賃金の除外
 (4)法内残業代の控除
第3 他の賃金算定期間別の賃金単価の算出方法
 1 時給制の賃金単価(労基則19条1項1号)
 2 日給制の賃金単価(労基則19条1項2号)
 3 賃金算定期間が非典型的な場合の労基則19条1項5号の賃金
第4 請負制の賃金の賃金単価(労基則19条1項6号)
 1 そもそも請負制の賃金なのかのチェック
 2 請負制の賃金単価の計算方法
 3 賃金締切日(締め日)が設定されている場合
第5 時間外労働等の時間数の算出方法
 1 法定時間外労働の時間数
 (1)法概念と計算の関係
 (2)1日8時間超の時間数
 (3)週40時間超の時間数
 (4)月60時間超の時間数
 2 週40時間制と法内残業の関係
 (1)週40時間制と週5日勤務制の下での所定休日労働の関係
 (2)週40時間制と週6日労働制の所定時間外労働の関係
 3 法定休日労働の時間数
 (1)計算の前提となる法定休日の事後的な特定
 (2)休日の振替
 (3)時間概念としての法定休日の範囲
 4 深夜早朝労働の時間数
 5 法内残業の時間数
 (1)法内残業が生じる場合
 (2)所定休日労働が24時を超えた場合の扱い
 6 まとめ
第6 割増賃金の計算

第3章 計算ソフトの活用
第1 開発経緯
 1 ソフト開発の経過(ソフトの必要性)
 2 どのソフトを使うべきか
第2 ソフトを使用するうえでの共通した留意点
 1 前提となる法的知識を身につけること
 2 新しいバージョンのMicrosoft Excelを使用すること
 3 ソフト上の始業時刻、終業時刻、休憩時間の概念
 4 各週について労働日、(法定)休日の日の検討を行うべきこと
 5 ソフトの保護を解除しようと思わないこと(ソフトを改変したいと思わないこと)
 6 1事例1ファイルの原則(ファイルの使い回し禁止)
 7 時刻データとして認識させること
 8 計算に関する共通した特徴、制約
 (1)計算上の四捨五入
 (2)変形労働時間制には対応しないこと
 (3)賃金締切期間は月のもののみであること
第3 給与第一の使用方法
 1 ソフトの特性
 2 計算の前提となる諸条件の設定(「計算規則」シート)
 (1)計算期間の設定
 (2)賃金締め日の設定
 (3)賃金支払日の設定
 (4)月の表示の設定
 (5)1週間の起点となる曜日設定
 (6)月60時間超の150%割増賃金の適用の有無
 (7)所定労働時間の設定
 (8)残業代の計算方法の設定
 (9)法内残業の割増率の設定
 (10)時間、法定の割増率の設定
 3 賃金単価、既払金の計算(「単価・既払金計算書」シート)
 (1)月給制の賃金単価の算出
 (2)日給制の場合の賃金単価計算
 (3)時給制の場合の賃金単価計算
 (4)請負制の賃金(歩合給)の賃金単価の計算
 (5)既払金の計算
 4 時間外労働等の時間の計算(時間計算書シート)
 (1)時間と時刻の記入のルール
 (2)始業時刻、終業時刻、休憩時間の記入
 (3)「始業時刻前日」の列
 (4)日属性の特定
 (5)休憩時間の記入
 (6)事業所所定労働時間数の修正・月末日の修正
 (7)週6日労働の事案への対応
 5 残業代、既払金、遅延損害金、付加金の計算(割増賃金計算書シート)
 (1)遅延損害金に関係する入力
 (2)法内残業割増率の設定、既払金の控除
 (3)付加金について
 6 「詳細計算書」による割増賃金、既払金の詳細な計算
 (1)「詳細計算書」でできること
 (2)入力方法
 (3)各ケースへの対応方法
 7 当事者の主張の対照(労働時間認否・認定書シート)
 8 「『きょうとソフト』へ出力」シートの活用方法
第4 きょうとソフトの使用方法
 1 ソフトの特性
 2 計算の前提となる諸条件の設定(要素シート:XY共通)
 (1)表を作成する期間
 (2)法定休日(原則)
 (3)週労働時間の制限時間数
 (4)週労働時間制限の起算曜日
 (5)1日の所定労働時間(原則)
 (6)賃金の支払方法
 (7)賃金月度の表示形式
 (8)月60時間規制の適用
 (9)付加金請求の日
 (10)確定遅延損害金計算の終期(A)
 (11)遅延損害金の利率(年○%)(B)
 (12)退職日(C)
 3 賃金単価の計算(単価シート:XY別)
 4 時間外労働等の時間の計算(時間シート:XY別)
 (1)時間と時刻の記入のルール
 (2)始業時刻・終業時刻、休憩時間の入力
 (3)始業時刻の前日指定
 (4)法定休日の例外形、所定労働時間の例外形の記入
 (5)週6日労働の事案への対応
 5 残業代の計算(金額シート:労使別)
 (1)賃金単価
 (2)歩合給額
 (3)法内残業代の割増率が100%ではない場合
 (4)既払金額
 (5)遅延損害金の計算
 6 当事者の主張の対照(対照シート)

第4章 相談から請求まで
第1 時効の完成猶予
 1 残業代請求における「消滅時効は2年」の意味
 2 締め日と支払日
 3 まずは時効を止める
 (1)催告のために債権額の特定は必須ではない
 (2)当初の計算額が結果として過少でも問題はない
 (3)交渉過程と時効の関係
 (4)実際の催告のやり方
 4 付加金と時効の関係
第2 証拠の類型、使用方法、入手方法
 1 証拠収集の経路
 2 労働時間に関するもの
 (1)タイムカードなど労働時間証明の資料
 (2)変形労働時間制に関する資料
 3 労働契約、労働実態に関するもの
 (1)ハローワーク求人票、労働者募集広告
 (2)労働条件通知書、労働契約書
 (3)就業規則、賃金規定、労働協約書
 4 賃金の実態に関するもの
 (1)給与明細書
 (2)賃金台帳
 (3)三六協定書
 5 「周知されていないこと」に関する証拠
第3 打ち合わせで順次確認すべき事項
 1 全体を通じて
 2 労働時間、職務について
 (1)職務内容(管理監督者に該当する可能性の有無)
 (2)労働契約上の始業・終業時刻、休憩時間、所定労働時間数(休日数)
 (3)大ざっぱな残業時間と理由
 (4)労働時間の証拠の有無、入手の可否、証明力の検討
 (5)就労場所、就労パターンの変遷
 3 賃金について
 (1)賃金形態、賃金支払実態
 (2)締め日、支払日
 (3)給与明細書上の賃金と契約上の賃金の対応関係の有無
 (4)賃金減額や天引きの理由
 4 その他のことについて
 (1)労働時間以外の証拠の収集方法の検討
 (2)代表者の氏名、会社のFAX番号
 (3)事業所の存続可能性
 (4)付加金について期待を持たせる発言をすべきではないこと
第4 請求
 1 示談交渉
 2 法的手続きの選択
 (1)労働審判
 (2)訴訟

第5章 頻出論点への対応
第1 問題の所在
第2 労働者性
 1 立証責任は労働者側
 2 使用従属性の判断基準
第3 変形労働時間制
 1 対応検討の要点
 (1)制度のイメージ
 (2)制度の種類
 (3)対応の要点(抗弁事由であること)
 2 変形制の有効要件
 (1)1ヶ月以内単位
 (2)1年以内単位
 3 労働契約書に記載がない
 4 制度に具体性がない
 5 起算日の不特定
 6 労働日、各労働日の労働時間、始業時刻・終業時刻の不特定
 (1)1ヶ月以下単位の場合
 (2)1年以下単位の場合
 7 労働時間制限違反
 (1)1ヶ月以下単位の場合
 (2)1年以下単位の場合
 8 対象期間に入ってからの労働日の変更
 (1)1ヶ月以下単位の場合
 (2)1年以下単位の場合
 9 労使協定の締結手続きの瑕疵
 (1)労働者代表の選出手続きの瑕疵
 (2)締結時期の瑕疵
 10 制度を周知していない
 11 労基署への届出がない
第4 事業場外のみなし労働時間制
第5 裁量労働制
 1 検討の要点
 2 要件
 (1)専門業務型
 (2)企画業務型
第6 管理監督者(適用除外 )
 1 検討の要点
 2 「実態に基づく判断」の要素
 3 裁判例とその概観
第7 他の適用除外
 1 農業・畜産・水産業
 2 監視又は断続的労働
 (1)要件
 (2)監視に従事する者
 (3)断続的労働に従事する者
 (4)断続的労働としての宿日直労働
第8 週44時間制の特例
 1 検討の要点
 2 事業所性の判断基準
第9 付加金
 1 制度概要
 2 制度趣旨
 3 口頭弁論終結前の弁済
 (1)付加金発生時に関する最高裁の見解
 (2)最高裁の判決時説に対する度重なる批判
 (3)いつの「未払額」なのか
 4 判決確定前の弁済
 5 付加金の認定割合
 6 一部弁済の場合の充当関係
第10 割増賃金不払いの不法行為性
関連条文
判例一覧

そうなんですが、そもそものところで、私は残業代の議論というものに、あまり重要な意義を感じられないので、素晴らしい力作だとは思うのですが、やや斜め方面からのコメントになってしまうことをあらかじめお詫びしておきます。

残業代が重要でないとは何事だと怒り出す人がいるかもしれません。いや確かに、使用者と労働者の間の賃金問題として極めて重要です。そして、労使間の紛争に法的に取り組む弁護士の皆さんにとっても極めて重要であることも否定しません。しかし、国家が労働条件の最低基準を定め、その最低基準を下回るような非人間的な劣悪な労働条件に対しては刑罰を以て禁止しなければならないという労働基準法政策の観点からすると、最低賃金を下回るような低賃金を払うとか、最長労働時間を超えて働かせるというような意味での「最低労働基準」なのか、という大きな疑問があります。

これはもう十数年前から繰り返し言い続けてきていることですが、時給1000円の薄給の人が1時間残業したら1250円しか払えと言わないのに、月給100万円近くで時給換算して5000円の高給の人が1時間残業したら6000円払えというのは、もちろん民事契約上はまことに正当ですし、弁護士がそう主張するのも当然ですが、国家権力が刑罰を以て強制する原理としてまで正当なのかどうかは、私は深い疑問を抱いています。

そんな金持ち労働者の権利なんか、民事上の問題で十分じゃないか、国家権力がわざわざ出張ってまで強制しなければならないのは、もっと厳しい状況に置かれている労働者の権利なのではないか、という問題意識に、きちんと答えてくれた人はいままでいません。

なぜそうなったかももちろん明らかであって、労働基準法に最長労働時間規制があると言いながらそれはほとんど空文化し、2018年に過労死水準の上限規制が設けられるまでは、管理監督者でも裁量制でもなんでもないヒラ社員でも残業代さえ払えば無制限の長時間労働が可能であったからで、本来賃金規制に過ぎない残業代規制が、あたかもそれだけが労働時間規制であるかのようなでかい顔をしてしゃしゃり出るようになってしまったわけです。

Posse というような話は、実は本書の著者である渡辺輝人さんと2014年に『POSSE』で対談しています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/posse242014-fd3.html


濱口:先ほど学者対実務者の枠組みとおっしゃっていましたが、私は自分を純粋な学者とは思っていません。実際に労働法学者と呼ばれる方々のほとんどが行っているのは労働法解釈学であって、その方々の感覚の基本的な土俵は渡辺さんと同じだと思います。私自身は、いま渡辺さんがおっしゃったようなもの(本号では省略)が労働時間規制であるという発想自体に対して批判的な立場です。特に「1日8時間1週間40時間を超えたら残業代を払わなければならない」というのが日本の労働時間規制だとする見解でくくれば、労働弁護士も経営法曹も労働法学者も同じ労働法サークルに属していて、そこに対して私が孤立的な立場に立っているという認識です。
 日本の労働時間規制は条文を素直に読めば物理的な時間を規制しているので、制度的にみれば実はヨーロッパ型であると言えます。1日8時間、週40時間を超えて働かせてはならず、超過して働かせた場合には刑事罰まであります。これに対してアメリカの公正労働基準法は、週40時間を超えた場合には50%割増しの規定があるのみで、それさえ守ればいくらでも長く働かせることができる。そのような違いがあるにもかかわらず、労働法サークル内外のほとんどの人は日本の労働時間規制はアメリカ型の残業代規制だと思っている。皮肉な言い方をすれば、一方にサルを神様だと思い込んで拝んでいる人がいて、その傍らにはサルを悪魔だといって叩こうとしている人々がいるというような状況です。たとえば変形労働時間制といっても、1日10時間に達したときに、そこで強制的に労働を終わらせる義務はなく、それ以降は割増しを払う必要があるというだけです。時間外労働や休日出勤といった際、日本人には時間外手当や休日手当を払うべき時間という以上の意識がない。そのため、法定休日か否かという議論も、単に割増率が25%か35%かという議論に還元されてしまいます。そんなものが休日規制の名に値するのかが問題ですが、実務家からも学者からも提起されることはありません。ここに最大の問題があるというのが私の問題意識です。
 労働時間規制でないものを労働時間規制だとするこのような発想は、マスコミや政治家など労働法サークルの外部にまで浸透しています。ここでも残業代ゼロが是か非かという議論に現れているように、サルを拝んだり叩いたりしているだけで、本質的な部分がすっぽりと抜け落ちているわけです。第一次安倍内閣のWEの議論の際からその流れがずっと続いていて、ようやく最近になって残業代とは切り離して労働時間の物理的な上限規制を設けるべきだという議論が出てきました。規制改革会議が明確にそれを提起し始めていますし、骨抜きになっているとはいえ産業競争力会議もリップサービスとしては言及しています。
 
濱口:そのように議論すること自体が、サルの話になってしまっています。35%が良いか悪いかではなく、そもそも法定休日とは仕事をさせてはいけない日なんです。EU指令の法定休日とはまさにそういう意味です。それがいつの間にか加算するかしないかの話になってしまうのが今の日本の状態で、労働時間の問題がお金の問題に還元されてしまっている。法定休日に働かせているだけで刑罰の対象になるという感覚が全くないんですね。もっとも、法学者や実務家は実際に出てきた判例を評釈しなければならず、サルしかいないところでサルばかり相手にしているので、いつの間にか本来の神がみえなくなってしまっているわけです。
 
濱口:そのような議論も、法定休日をお金の問題としかとらえていません。日本の法律の仕組みは本来はあくまでもヨーロッパ型です。お金ではなく物理的な時間規制です。つまり、物理的労働時間を規定する32条こそ重要なはずですが、現実には32条は空洞化していて、割増賃金を規定する37条こそが労働時間規制の本質だと思われているのです。
 第一次安倍内閣の時にも、労働時間規制を抜本的に変えようという議論がありましたが、エコノミスト、経済評論家、マスコミ、経営者、政治家などほとんどが、労働時間規制とはすなわち残業代規制であるという、労働法の世界から発信されている主張をそのまま受け取って議論していました。たしかに現在の残業代規制は不合理な面をもっていますが、それよりも議論の土俵自体が間違っているところにより大きな問題があります。
 
濱口:しかし、そのような主張は結局のところ、過労死するほど働かせても残業代さえきちんと支払っていれば問題ないという発想に吸収されてしまうと思います。EUの労働時間指令は残業代の話を一切抜きにして時間だけを規制しており、また日本も昔は女性に対して1日2時間、年150時間以という物理的な時間外労働の上限がかけられていました。一方でアメリカはお金で間接的に規制しようという立場です。
 いまの立法論の議論は、工場法・労働基準法以来の物理的な労働時間規制の建前が運用のなかで実質的に空洞化されてきたところを、さらに建前の部分も空洞化しようとしています。実務家として残業代請求が主戦場だと思うのはよく理解できますが、立法論の基本からいえば、残業代だけに集中した議論は、100年前から続く天守閣をやすやす明け渡して、二の次に作っていた小さな櫓にしがみついている、と言わざるを得ません。主たる天守閣が空洞化している中では櫓しか闘う拠点がないので、現実にそれが役に立っているのは確かですが、その櫓が攻撃されている理由は天守閣との関係ではなく、櫓そのものにあります。城を守る方の立場からすると天守閣をそっちのけにして櫓だけ守ってみても意味をなさないわけですが、攻める方からみると、櫓だけが邪魔者に見えるのです。具体的には、櫓に対する攻撃にあたっては、天守閣との関連でではなく、櫓そのもの、つまり賃金制度としての合理性に対して批判がなされるわけです。もっとも典型的なのは、時間と比例した賃金制度はおかしいという主張ですね。そのため、櫓だけしか目に入らない議論をしていると、賃金制度の基準を時間に置くべきか成果に置くべきかという狭い議論に陥ってしまうので、まさに櫓だけが攻防の場となってしまいます。労働法の実務家も解釈学者も含めたすべての人に対して、そのような議論をしていていいのかと問いかけたい最大の理由がここにあります。

 

濱口:マスコミも労働法のプロではないので、残業代による間接的な規制ではなく、過労死させないという観点から労働時間そのものを規制することが重要なんだと、櫓と天守閣を峻別した議論を理解してもらうことが必要です。ところが前回も今回も、批判派の議論はもっぱら、残業代を払わせることが長時間労働・過労死を防止している、すなわち櫓が天守閣の代わりに闘っているからいいんだという言説です。でもから見ると、なぜ天守閣ではなく櫓だけを大事にするのかという印象を受けます。実務家の立場としてはよくわかりますが、一国のルールをゼロベースで作るとなった際に、その議論では天守閣の姿がまったく見えてきません。残業代ゼロは過労死の促進だと強調したところで、結局それは労働法サークルの中でしか通用しない話です。一歩その外に出て、天守閣と櫓についての事情を知らない人に対してそのように打ち出したところで、妙な櫓を守れという話しかしていないように思われてしまう
今の情勢はゼロベースで労働時間規制をどうするべきかという議論ができるまたとない絶好の機会で、しかも規制改革会議は部分的に私の主張を取り込んでいます。36協定も終戦直後はそれなりに抑制力のあるものでしたが、50年代に数回にわたって行われた省令改正によって空洞化されてしまった歴史があります。細かいところは後々詰めていけばいい話ですが、天守閣がなくなった跡地に再度小さなものでもいいので天守閣を作ろうという議論がまず第一になされるべきであり、もともと殿様がいるわけでもない櫓を守ることばかりに全力を注がないほうがいいのではないかと思っています。
 
濱口:バーター論と言っても、こちら側の合理性である長時間労働規制を何としてでも手に入れるためにしぶしぶ経営側の合理性である残業代規制の緩和を認めざるをえない、という捉え方は少し誤解があります。先ほども申したように、経営側は、天守閣がないなかで成果に基づいて報酬を支払いたいというロジックなので、一定の合理性があるわけです。そこに、現在長時間労働を間接的に防いでいる櫓を壊すのであれば、その代わりに新しい天守閣を作らなければいけないというこれまた合理性のあるロジックを持ち出すことになるので、このバーター論ではそれらの合理性を前提にした、話し合いの余地が十分にあります。
 
濱口:経営側のいう残業代規制の矛盾が顕著に現れている例としては、モルガンスタンレーサービスリミテッド事件があります。
 
濱口:まともな労働法学者が評釈したら疑う余地もなく判旨反対となりますが、一般の意見としてはそんなの当たり前だろうと捉えられてしまう。世の中の大半の人がこれ以外の結論はないと思うことが違法になってしまうような仕組みはおかしいわけです。この例の場合は年収3000万円ですが、これが1000万や800万に引き下げられた場合はどうなのか。そのあたりになると世間の常識がせめぎ合うようになるわけです。高給取りであれば残業代規制に守られていなくても仕方がないという常識による攻撃に櫓がさらされたとき、単に判旨反対では守れません。そこで生きてくるのがバーター論です。物理的な労働時間以外の領域における線引きをどのように釣り合わせていくかという政治的な判断の領域においてはそのような議論が必要になってくると思います。

 

 

 

2021年9月18日 (土)

『ジョブ型雇用社会とは何か』の冒頭20ページほどが試し読み可能に

71cahqvlel 昨日刊行され、今日あたりから本屋さんに並びつつある『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)の冒頭20ページほどが、岩波書店のサイトで試し読み可能になっているようです。

https://www.iwanami.co.jp/book/b589310.html

https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/tachiyomi/4318940.pdf

試し読みして興味をそそられた方は、ぜひGo To 書店!

2021年9月17日 (金)

EU諸国におけるプラットフォーム労働政策@『労基旬報』2021年9月25日号

『労基旬報』2021年9月25日号に「EU諸国におけるプラットフォーム労働政策」を寄稿しました。

 本紙3月25号に「EUのプラットフォーム労働における労働条件に関する労使への第1次協議」を書いた後、6月15日には労使団体への第2次協議が行われました。その中ではプラットフォーム事業者とそれを通じて就労する者との間の契約が雇用関係であるという反証可能な推定規定とか、司法手続きにおける立証責任の転換(プラットフォーム事業者を通じて就労する者は自動的に雇用関係とみなされるわけではないが、雇用関係が存在する証拠となるごくわずかな基本的事実(プリマ・ファシ)を提示すればよく、その場合その者が真に自営業者であることを立証すべきはプラットフォーム事業の側となる)といった提案がなされており、今年中にも欧州委員会からプラットフォーム労働指令案の提出が見込まれています。
 この第2次協議文書(C(2021)4230)には分厚い職員作業文書(SWD(2021)143)が付いており、加盟各国におけるプラットフォーム労働に対する諸施策や国内裁判所の判決の動向がまとめられています。今後予想される日本における議論にも参考になると思われるので、その一端を紹介しておきましょう。
 プラットフォームを通じて就労する者を対象とした立法を有するのはフランスだけで、2016年のエル・コムリ法により、プラットフォーム企業の保険料負担による任意労災補償、労働組合の権利、教育訓練の権利が認められています。さらに2019年のモビリティ法により、適切な労働条件を定める憲章を作成すれば、運輸業のプラットフォーム就労者を自営業者と認めるという誘導策もとっていましたが、後述のように破毀院(最高裁)は労働者性を認める判決を出しています。
 イタリアでは2019年、フードデリバリーの自営業者に対し、労働条件の通知、出来高給の禁止(時給は労働協約によること)、夜間休日割増などの権利を認める法律が成立しています。スペインの2021年5月の新法は、食料・荷物のデリバリーのプラットフォーム就労者を労働者と推定し、プラットフォーム側に立証責任を転換するとともに、その用いるアルゴリズムやAIについて労働組合に情報提供することを求めるもので、今年末に予想されるEU指令案の先行型と言えます。
 ドイツでも、2020年11月に連邦労働社会省が出した「プラットフォーム経済における公正な労働」において、プラットフォーム就労者の潜在的誤分類に対して挙証責任の転換を検討しているようです。オランダ政府は2020年10月、プラットフォーム就労者を労働者と法的に推定する規定を提起しました。ポルトガルも2020年11月の「労働の未来緑書」で、労働者の地位の法的推定と集団的代表の権利などを提案しています。
 加盟国の国内裁判所の判例の動向も見ておきましょう。こちらもフランスの破毀院(最高裁)が先行していて、2018年11月28日のTake Eat Easy事件判決でフードデリバリーのプラットフォーム就労者を労働者と認めた後、2020年3月4日のUber事件判決でタクシー型旅客運送のプラットフォーム就労者の労働者性も認めました。
 スペインでも2020年9月23日のGlovo事件最高裁判決で労働者性を認めており、さらに同年12月1日にはドイツの連邦労働裁判所がRoamler事件判決で、ガソリンスタンドの商品陳列のマイクロタスクを遂行するクラウドワーカーの労働者性を認めるに至っています。一方、イタリア破毀院(最高裁)は2020年1月24日のFoodora事件判決で、フードデリバリーのプラットフォーム就労者を、労働者でも自営業者でもない第三のカテゴリーの「lavoro eteroorganizzato(異種組織労働)」と判断しています。 既に最高裁判決に至ったのはこれら諸国ですが、ベルギーやオランダでもDeliveroo事件が最高裁に係っており、判決が出るのも間近なようです。
 なおもはやEU加盟国ではありませんが、イギリスの貴族院(最高裁)も2021年2月19日にUber事件判決で自営業者ではなく、(employeeとは異なるイギリス独特の概念である)workerであるとの判断を下しています。ちなみに、アメリカのカリフォルニア州では労働者性を認める最高裁判決の後、それを法制化したギグ法の制定、それをひっくり返す住民投票、さらにそれを違法と断じる高裁判決・・・と、自体が二転三転していますが、ここでは省略しておきます*1
 日本では今年3月に『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』を策定し、自営業者(フリーランス)であることを前提にした公正取引委員会による「優越的地位の濫用」規制で進め、労災保険の特別加入で補うという方向に進んでいますが、世界の潮流は必ずしもそれとは一致しない方向に進んでいるようです。 

*1「カリフォルニア州のギグ法」(本紙2020年2月25日号)

 

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