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2020年7月 7日 (火)

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請書

例の休業手当をもらえない労働者向けの直接給付の申請書等がようやく厚生労働省のHPにアップされました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

労働者申請用の書類を見ると、

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000646843.pdf

労働者記入欄のほかに事業主記入欄というのもあって、

 労働者記入欄■1 の期間の休業に対し、一部でも休業手当を支払っていませんか。または支払う予定はありませんか。

というのに対して「支払っていない」にチェックを入れないといけなんですね。

事業主がこれを書き込んでくれない場合は、

●「事業主の協力を得られない」旨
●その背景となる事情(倒産、事業主と連絡がとれない等)
を記入して提出してください。
※その場合、拠点等の所在地を管轄する労働局より法律に基づき、当該事業所に連絡します。通常の審査よりお時間を要しますのでご了承ください。

とのことです。

 

2020年7月 6日 (月)

『新規開業白書2020年版』

Syuppan200706a-1 日本政策金融公庫から『新規開業白書2020年版』が刊行されました。


https://www.jfc.go.jp/n/findings/toshoj.html



総合研究所では、国民生活金融公庫総合研究所の時代から、新規開業実態調査に長年取り組んでおり、1992年度から『白書』としてその調査結果を毎年公表してきました。今回の白書では、2019年度に実施した調査の結果をもとに、多様化する新規開業者の働き方や意識に焦点を当てています。 



わたくしの「雇用類似の働き方に関する現状と課題」も収録されています。

緊急コラム「第2ステージに入った欧州各国の雇用対策」@天瀬光二

Amase_k_20200706162401 JILPTの新型コロナ緊急コラムの最新作に、天瀬光二さんの「第2ステージに入った欧州各国の雇用対策」がアップされました。イギリス、フランス、ドイツといった欧州主要国における雇用維持スキームの動向を詳しく解説しています。

https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/column/017.html

新型コロナウイルス感染拡大により停止されていた経済活動を再開させる動きが各国で活発化している。世界は、緊急事態下の感染拡大阻止を最優先した第1ステージから、コロナの感染リスクと経済活動が共存する第2ステージに入ったように思われる。各国は、第1ステージにおいてとった政策をどのように修正して対応していこうとしているのだろうか。各国における最近の動きを紹介する。・・・・

 

 

2020年7月 5日 (日)

労働基準監督官も命がけ

全労働省労働組合の『季刊労働行政研究』45号が送られてきました。全文がPDFファイルでここにアップされています。

http://www.zenrodo.com/katsudo_event/images/no.45kantoku.pdf

特集は「過重労働の解消に向けた効果的な行政手法と法整備」で、政策的なことも書かれているんですが、やはり興味をそそられたのは、実際に臨検監督している監督官たちがこんな目に遭っているんだよというところです。「過重労働の解消に向けた効果的な行政手法と法整備」という項に出てくるんですが、まあ、事業主にとってあまり歓迎されざるお客様であるためでしょうか、かなり手荒なおもてなしを受けている実態もあるようです。

Zenroudou

・ガラスの灰皿(推定2kg以上)を机上に投げつけられ、椅子を
 頭上まで振り上げられた。
・胸や首などを平手打ちされた。
・水をかけられ、体当たりされた。
・「家を燃やすぞ」と脅された。
・包丁を持ちだされた。
・日本刀を抜かれ、威圧された。
・「海に沈める」と脅された。
・水をかけられた。
・対応中に「ぶっ殺す」と言われた。
・監禁され、「無事に帰れると思うなよ」と脅された。
・「監督署にガソリンをまく」と脅された。
・「夜道に気をつけたほうがいい」と脅された。
・工具を手に追いかけられ、殴られそうになった。
・スマホを没収され半監禁された。
・ストーブで是正勧告書を燃やされ、大きな不安を感じた。
・「探偵を雇って自宅を探してやる」「家族がいるだろう」などと脅
 された。
・ヘルメットの上からハンマーで殴られた。

ここでは複数監督を原則とせよ主張するとともに、抜き打ち監督の是非について両論併記的に書かれていますが、なかなか難しいところですね。

2020年7月 4日 (土)

脇田滋編著『ディスガイズド・エンプロイメント』

Eb5zq2avcaazoki 脇田滋編著『ディスガイズド・エンプロイメント 名ばかり個人事業主』(学習の友社)をお送りいただきました。

「Disguised Employment」とは偽装雇用。実態は雇用労働者なのに個人請負の自営業者であると偽装(disguise)している、というより、させられている人々のことです。

本書は、労働法学者の脇田さんの編著となっていますが、分量的に大部分はそうした個人請負という形で働いている人々の団体の活動家による実態報告集で、最後に脇田さんによる解説がついているという構成です。

ただ、ここに並んでいるさまざまな実態を、ひとしなみに「ディスガイズド・エンプロイメント」といえるかは疑問な面もあります。

おそらくこれらのうち、実態が雇用労働者とほとんど変わらず、まさにディスガイズというべきものとしては、丸八の営業社員や、スーパーホテルの支配人、美容師・理容師といった人々の例でしょう。

他方、すでに中小企業協同組合法による協同組合を作っている日本俳優連合などの場合、労働法上の労働者として認めろというよりは、フリーランスとしての性格を維持しつつ、特殊な雇用類似の働き方として、労働法のある部分を準用するような仕組みを求めているのでしょう。

さらに、最後の楽天ユニオンになると、プラットフォームの職業的ユーザーの保護という、今日世界的に大きな政策課題となっている問題の焦点であり、ディスガイズというよりも新たな次元の保護が必要という話になります。

その中間に、労働組合を作って交渉する権利を確立しようとする人々がいて、冒頭に出てくるウーバーイーツユニオンをはじめとして、団結して自分たちの権利を守るべき集団としての性格を持った人々です。

また、今回のコロナで露呈した問題として税法上の労働者概念(給与所得)と労働法・社会保障法上の労働者概念のずれがありますが(下記エントリ参照)、ヤマハ英語講師ユニオンでもこの問題が取り上げられています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-8b6d89.html(税法上の労働者性と事業者性)

今回の本はどちらかというとわりと新たなタイプの個人請負就業を取り上げています。実は現在でも労働基準監督署の窓口にやってくる労働者性事案の大部分は建設業の一人親方とか傭車運転手といった伝統的なタイプであり、今話題の夜の街の濃厚接触系のお店のホステスなんてのも多いんですが、そういう曖昧な働き方が広い分野にどんどん広がってきていることが、本書から窺われます。

本書の記述の中で注意を引いたのが、日本俳優連合の森崎めぐみさんの記述の最後のところで、2019年5月コペンハーゲンで、FIM国際音楽家連盟による初の国際フリーランス会議が催され、そこで「政府と雇用主は、フリーランスの音楽家に競争法(日本の独禁法に当たる)を適用しないことを明白にしなければならない」と声明したという部分です。

つい3日前に、EUの動きとしてこういうのを紹介したのですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-f154a7.html(EUは自営業者の団体交渉を容認するのか?)

EUでは、こういうフリーランスの団体による運動があって、遂に今回欧州委員会競争総局が動き出したのでしょうね。

2020年7月 3日 (金)

森戸英幸/小西康之『労働法トークライブ』

L24338 森戸英幸/小西康之『労働法トークライブ』(有斐閣)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641243385

日本の雇用社会,日本の労働法は,この先どうなっていくのでしょうか? 10のトピック・ケースについて,著者ふたりが真剣に(ときに面白く?)トークを繰り広げながら考えます。学生の皆さんも社会人の皆さんも,参加して一緒に考えてみませんか。

例によって森戸テイスト満載の表紙に、生のトークライブっぽい雰囲気の前説と、おちゃらけてる感が噴出してますが、中身は意外にまとも、というか(時々怒られることを気にしているらしい)菅野先生の本流から踏み外さないオーソドックスな労働法の議論が展開されています。セトリは次の通りですが、

01 採用の自由──あなたが欲しい
02 労働者性──基準はアンビバレント
03 性差別──just the way y’all are
04 障害者雇用──誰も皆ハンデを抱えている
05 高齢者雇用──私がジジババになっても
06 ハラスメント──「嫌なものは嫌!」と
07 過労死──はたらきつかれたね
08 解雇──リストラは突然に
09 正規・非正規の格差──このやるせないモヤモヤを
10 副業・兼業──もしもバイトができたなら 

この点、菅野理論をどんどん踏み出して/踏み越えて/踏み外して「思えば遠くへきたもんだ♫」という感の漂う大内さんとか水町さんとは対照的です。

さて、各章末にはSpecial Guestというコーナーがあるのですが、第1章の採用の自由では、いかにも日本的大企業の人事の人のいいそうなことを喋っているし、第2章の労働者性に至っては「元アイドルBさん」という人が出てきて、これって作っているんじゃないかと思ってしまいましたが、そのあとは福島大学の長谷川珠子さんとか清家前塾長とか、今津弁護士とか出てきて、あ!これ実在だったんだ!と。

でもね、「元アイドルBさん」という字面を見たら、思わず例の元アイドル(グループB)事件を思い出してしまいましたがな。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/2877-864d.html(元アイドルほか(グループB)事件(東京地判平成28年7月7日))

・・・まあ、この事件自体、小学5年生の女の子にアイドルとして集団による歌唱・ダンスを中心としたライブ活動のほか、○○券を購入したファンとの交流活動(お散歩、コスプレ、プリクラ、ビンタ等)をやらせるといういささかいかがわしげな商売なんですが、それはともかく、労判の席上で渡辺章先生から思いがけない指摘を受けました。

・・・・ふむ、小学校5年生の女の子がアイドルグループとして歌ったり踊ったりすること自体が13歳未満の児童に認められる「映画の製作又は演劇の事業」には当てはまらず、労働基準法の事業分類ではそれと同類ではあるけれども、13歳未満の児童の労働が許されないその他の「興行の事業」なんじゃないか、という指摘です。・・・

・・・こういうアイドルの肉体そのものへの接近接触それ自体を営利の資源とするビジネスモデルというのは、いうまでもなく秋元康氏が作り上げたものですが、やはりその根底にいかがわしさが否定できないように思います。

ということで、あとはPOSSEのアイドル部長坂倉さんにバトンを渡した方がいいようです。

このケース、報告はしたものの、さすがにジュリストには載せなかったのですが、この渡辺先生の指摘はどこかで書いておいた方が良かったかなと思ったりもします。

 

 

と、芸能ネタで受けてみたんですが、これで良かったでしょうか?→三宅亜紗美@有斐閣さま

 

 

 


2020年7月 1日 (水)

EUは自営業者の団体交渉を容認するのか?

久しぶりに、EU労働法にかかわるすごく大事なトピックです。正確に言うと、EU労働法そのものというよりはEU競争法の適用、より正確に言うと適用除外にかかわる問題です。

いうまでもなく、労働者は団結権、団体交渉権を有し、労働組合はカルテルではないし、労働協約は不当な価格協定ではありませんが、それは労働者だと認められる限りであって、もし自営業者であればその団結は不当な談合とみなされます。

ところが、近年の情報通信技術の発達の中で、契約上は自営業者だがその実質は労働者のような就業者が増えているという話は繰り返されていますが、これが競争法当局に飛び火して、昨日(6月30日)、欧州委員会の競争当局が、そこんところを見直すプロセスを開始するというプレスリリースを出しました。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_1237(Competition: The European Commission launches a process to address the issue of collective bargaining for the self-employed)

競争:欧州委員会は自営業者の団体交渉問題を扱うプロセスを開始する

 The European Commission is launching today a process to ensure that the EU competition rules do not stand in the way of collective bargaining for those who need it. The initiative seeks to ensure that working conditions can be improved through collective agreements not only for employees, but also for those self-employed who need protection.

欧州委員会は今日、団体交渉を必要とする人々にEU競争法が立ちふさがることのないように確保するプロセスを開始する。このイニシアティブは労働協約を通じた労働条件の改善が、被用者だけではなく、保護を必要とする自営業者にも確保されることを追求する。

というわけで、近年日本でも雇用類似の働き方という名称で議論されるようになってきた問題の、集団的労使関係システムというもう一つの問題領域が、EUでは正面から政策課題に上ってきたようです。

この問題、日本では周知のように、労基法上の労働者性よりも労組法上の労働者性の方が広いんだという、労働組合法解釈の問題として、一定の(あくまで一定のですが)解決が図られていますが、EU労組法というものを持たない(正確に言えば禁じられている)EUでは、これを競争法の解釈問題として解決を図らなければいけないのですね。

この問題をEU司法裁判所の判決を契機に論じた小論として、今から5年前に『労基旬報』に寄稿したものがあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-b4a9.html(EU法における労組法上の労働者性)

 日本では過去数年間、労組法上の労働者性の議論が沸騰し、2011年の最高裁判決で一応の決着がついた後もなお議論が続いています。しかし、そこで議論の素材となっているのはほとんどもっぱら不当労働行為事件であり、団体交渉の要求を正当な理由なく拒否する事業主に対して、団体交渉に応じよと命令することが出来るか否かというレベルの話に過ぎません。しかし、団体交渉拒否の不当労働行為制度を有している国は先進国でも少なく、そういう問題設定は多くの先進諸国では共有されているわけではありません。
 これに対し、契約上は自営業者である人々が労働組合を結成して団体交渉を要求したり、労働協約を締結したり、労働争議を実施することは、日本では独占禁止法に当たる競争法の領域ではまさに違法性が問われる問題であり、労組法上の労働者性が議論されるとしたら、それこそが議論の焦点になるべき問題です。日本ではあまり議論にならないこの問題について、EU法の領域では昨年12月に、興味深いEU司法裁判所の判決が出されています。
 オランダの情報メディア労連(FNV)は、雇用労働者だけでなくいわゆるフリーランスの独立サービス提供者も加盟しており、雇用労働者の賃金だけではなくフリーランサーの報酬(フィー)も労働協約で決めていました。これは、オランダ法の下では全く合法的です。というのは、オランダの労働協約法第1条は、
1 「労働協約」とは一又はそれ以上の使用者若しくは法人格を有する一又はそれ以上の使用者団体と、法人格を有する一又はそれ以上の労働者団体によって、主としてまたはもっぱら雇用契約において尊重されるべき雇用の条件を規定する協約を意味する。
2 労働協約は、特定役務の遂行の契約又は専門職業サービスの契約にも関わることが出来る。この場合、労働協約、使用者及び労働者に係る本法の規定は準用する。
と規定しています。雇用労働者でなくても団体交渉して労働協約で報酬を決めることができるのです。ところが一方、オランダにも競争法があり、その第6条第1項は、
 オランダ市場における競争の防止、制限又は歪みを目的とし又は結果とするような企業間の協定、企業の団体の決定及び企業間の共同行為は、禁止される。
とする一方、第16条は
 第6条第1項は、(a)労働協約法第1条1項の労働協約には適用しない。
とも規定しています。これだけを頭に置いてください。
 さて、FNVとオランダ音楽家ユニオンはオランダオーケストラ協会との間で労働協約を締結しましたが、それは雇われ楽団員だけでなく自営音楽家の最低報酬も決めていました。そこで登場したのがオランダ競争当局で、自営業者の労働協約は適用除外にならないという見解を示したのです。これを受けてオーケストラ協会は従前の協約を終了させ、自営業者については新たな協約の締結を拒否しました。カルテルだと摘発されてはたまりませんからね。これに怒ったFNVは裁判所に訴え、これがEU司法裁判所に持ち込まれたのです。というのも、オランダであれどこの国であれ、競争法はEU運営条約第101条第1項に明記されたEUの大原則で、競争制限的行為が合法か違法かはすべて最終的にはEUレベルで判断されることになっているからです。
 この事件(C-413/13)の判決は2014年12月4日に下されました。判決はまず、労働者の雇用・労働条件を改善するための労働協約がその性質上条約第101条第1項の適用対象とならないことを確認した上で、しかしながら、たとえ雇用労働者と全く同じ労務(本件でいえば楽器の演奏)を提供しているのであっても、サービス提供者は原則として同条同項にいうところの「企業」にあたると判示しました。労働者を代表する団体がその会員である自営業者のためにその名で交渉しているとしても、それは労働組合としての行為ではなく、企業の団体としての行為に当たるというのです。従って、本件労働協約は条約第101条第1項の適用を除外することは出来ない、というのが結論です。
 ただし、とここでEU司法裁は例外的な状況を示します。もしその自営業者が実際には偽装自営業者であるなら、話は別だと。そして、国内法で「自営業者」と分類されている者であっても、その者の独立性が名目的で、雇用関係を隠して偽装しているのであれば、EU法の適用において労働者と分類することを妨げるものではないと述べます。税制や行政上のために国内法で自営業者とされていても、その者が時間や空間、仕事内容の選択の自由において使用者の指揮命令下にあり、企業活動の不可欠な一部を為しているのであれば、EU法上の労働者としての地位に変わりはないのです。というわけで、EU司法裁はこの「自営音楽家」の労働者性を確認せよと、オランダの裁判所に事案を返しました。
 EU司法裁は条約や指令の解釈を明らかにするところであって、事実審ではないので、かれらオランダの自営音楽家たちの労働者性自体は本判決ではそれ以上議論されていません。しかし、オランダの労働協約法が「準用」されていた自営業者が、それだけでは、つまり偽装自営業者でない限りは、競争法の対象となることから逃れることが出来ないことを明らかにしたという意味で、本判決はかなり重要な意味を有するように思われます。
 日本では現在までのところ、労組法上の労働者性が問題となるのはもっぱら不当労働行為に関わる事案ばかりですが、日本ももちろん独占禁止法という立派な競争法を持ち、公正取引委員会という立派な競争当局を有しているのですから、いずれこうした問題が持ち上がってくることは避けられないのではないでしょうか。そのためにも、今のうちからこうした労働法と競争法の交錯に関わる領域をきちんと検討しておく必要があるように思われます。 

 

 

 

 

リサーチアイ「フルタイム労働を襲ったコロナショック」

Takami_t_20200701163801 引き続き、JILPTの高見具広さんがコロナにかかわってリサーチアイ「フルタイム労働を襲ったコロナショック─時短、在宅勤務と格差」をアップしています。これは先月JILPTが発表した個人調査の結果をもとに、労働時間への影響と在宅勤務における格差が拡大再生産されている姿を浮き彫りにしています。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/039_200701.html

これはもうぜひリンク先の分析をじっくりと読んでその分析の切れ味を味わってほしいところですが、最後の方の一節だけ、引用しておきますと:

・・・・整理した表1をみると、高所得層ほど、在宅勤務への早期移行がなされ[注13]、労働時間変動が少なく、収入を維持していることがうかがえる。高所得層ほど、働く場所を柔軟に移行できたこともあって、働く時間の変動を最小限に抑え、収入低下も防いだという構図が見えてくる[注14]。逆に、低所得層ほど、コロナ禍の影響を強く受け、労働条件が変動(労働時間減少、収入低下)したと言うことができる。
もともとの所得階層が高いほど労働条件を維持することができ、所得階層が低いほど維持できない。極端に言うと、働く時間・場所の変動を媒介として「格差が再生産された」局面だったようにも読める。

おわりに

暴風が吹き荒れる中、それに対処する資源には厳然たる階層格差があり、それが格差増幅にも直につながりうるという、危機の時代がもつ恐ろしさを見せつける調査データである。労働政策のみならず、広く社会政策のあり方を考える際に顧みなければならない事実を提示している。 

 

緊急コラム「正規・非正規雇用とコロナショック」@高橋康二

Takahashi_k2020_20200701162401 JILPTのコロナ緊急コラム、続々とアップされています。昨日の中井雅之さんに続いて、今日は高橋康二さんがやはり労働力調査のデータを使って、正規、非正規という雇用形態別にどのようなインパクトを与えたのかを分析しています。

https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/column/016.html

最後近くのまとめのパラグラフだけ引用しますが、この記述のもとになる分析を、ぜひリンク先に跳んでみてください。

・・・・まとめると、次のようになる。第1に、非正規雇用について言うならば、コロナ禍の比較的早い時期に労働時間調整、人数調整がなされ、5月調査の時点では調整が一巡していたと見ることもできる。第2に、他方で、正規雇用については、5月調査においてようやく前年同月差の就業者数の減少が確認されたが、実数ベースでの減少幅は(4~5月にかけて)29万人と比較的小さく、大半の正規雇用者の雇用は守られていると言える。第3に、しかし、完全失業率の動向やその内訳の変化から推論するに、コロナショックの正規雇用への影響が少し遅れてやってきている可能性はある。第4に、それに加えて、5月調査の時点ではすでに緊急事態宣言が全国から解除されていたことを踏まえるならば、この時期における正規雇用者数の減少には、企業が雇用負担に持ちこたえられなくなったという側面だけでなく、業界・企業が「アフターコロナ」ないし「ポストコロナ」的な経営・営業体制に移行する中で生じているという側面もなくはないだろう。 

 

2020年6月30日 (火)

緊急コラム「新型コロナの影響を受けて増加した休業者のその後」@中井雅之

本日公表された労働力調査のデータ等をもとに、JILPTの中井雅之さんが緊急コラム「新型コロナの影響を受けて増加した休業者のその後─休業者から従業者に移る動きと、非労働力から失業(職探し)に移る動き─」をアップしています。

https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/column/015.html

休業者の推移をみると、下のグラフのように4月に急増した後5月に若干減少しており、その分稼働している従業者が増えていますね。

015fig1

あと、遅い遅いと批判された雇用調整助成金ですが、最新の数字では累計支給申請件数29万6,972件、累計支給決定件数は19万2,964件に上っています。

イエスは白人でも黒人でもないはずだが・・・

Whitejesus220629thumb720xauto203810 これは正直、意味がよく分からないのですが、

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93812.php(イエス・キリストは白人から黒人に戻る?)

イギリスのカンタベリー大司教ジャスティン・ウェルビーは6月26日、英国国教会をはじめ世界中の宗教機関は、「白いキリスト」について「当然」再考すべきだと語った。
制度的な人種差別を終わらせろと抗議する行動が世界中で勢いを増す中、世界の165を超える国にまたがる数百万人もの信者の頂点に立つアングリカン・コミュニオンの大司教が、イエス・キリストを白人として描くことは人種差別的だと反対の声を上げたのだ。 

いや、「白人」という言葉の意味も実は不明確ですが、古代パレスチナにユダヤ人として生まれ、アラム語を喋っていた若者が、ヨーロッパ半島の印欧語族ではないことは確かですが、サハラ砂漠以南に住む黒人でないことも確かだと思いますが。

わざわざタイトルに「黒人」といっているので、どこかでそんなことを言っているのかなと見ていくと、

市民活動家のショーン・キングは、白人のイエス・キリスト像は「白人至上主義の一形態」であるとし、ツイッターで撤去を呼びかけた。現在のパレスチナで生まれたイエス・キリストが白人だったはずはなく、黒人だった可能性が高いというのは専門家も認めるところだ。 

いや歴史上、「黒人」という言葉の意味も実は不明確ですが、少なくとも私の知る限り、パレスチナの地にサハラ砂漠以南に住む黒人が住んでいたという記録はないはずですが。

これ、ニューズウィーク日本版に載っているので、もとの英語版を見てみたら、当該部分は

https://www.newsweek.com/head-church-england-white-jesus-should-reconsidered-amid-protests-1513809

Earlier this week, activist Shaun King added white Jesus monuments to the growing list, saying the depictions were "a form of white supremacy." 

あれ、イエスが黒人だと主張している部分がないんですけど。

その次のパラグラフも、

BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動ニューヨーク地区責任者のホーク・ニューサムは24日、フォックス・ニュースのインタビューでキングに同調した。「青白い肌のキリストの肖像は、アメリカと世界における偽善と白人至上主義にすぎない」と、ニューサムは言った。「イエスは白人ではなかった。誰でも知っていることだ」

Hawk Newsome, the chairman of Black Lives Matter's New York chapter, echoed King's criticism during an interview with Fox News on Wednesday. "It's just the hypocrisy and the white supremacy in America and in the world that we show portraits of a pasty, white Jesus," Newsome said. "Jesus was not white. We all know this." 

いやだから、(ヨーロッパ系の)白人じゃないと、当たり前のことをいっているだけで、(アフリカ系の)黒人だなんていっていないと思うんですけど、なんでこうなるんだろう。

 

 

2020年6月29日 (月)

ホテル配膳人はなぜ日雇なのか

東京新聞に興味深い記事が出ています。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/38558(ホテル配膳人の失業相次ぐ 日雇い慣行、コロナ不況直撃 「常勤並み」でも休業手当なし)

ホテルのレストランや宴会、結婚式などで接客を担う「配膳人」。新型コロナウイルスの影響でホテルの利用者が激減していることを受け、休業手当などの補償も受けられないまま仕事を失う人が相次いでいる。ホテル業界では長年、配膳人をその日の需要に応じて日雇いで集める慣行が続いているが、実際には常勤に近い形で働く例も多い。専門家からは「慣行自体を見直すべきだ」という声も聞かれる。・・・ 

これ、多くの人が内心変だと思いながら、まあ昔からそうなっているからとそのまま来ている慣行なんですね。

ただね、実際は常勤で働いているのに形式上日雇ということになっているのには、かつて職業安定法により労働者供給事業がほぼ全面的に禁止されている中で、実態は労働者供給事業なのに、それを有料職業紹介事業だということにして、表面だけ取り繕ってやってきたことの帰結という面があるんですね。

その典型は、戦前労務供給事業でやっていた看護婦家政婦の派出事業ですが、病院の付添婦が賄えないので大変だということで、むりむり有料職業紹介だということでやれたために、その後マネキンとか配膳人とかも同じビジネスモデルに載っていったわけです。

もしそういう姑息なやり方をしないで、(後に派遣法で実現するように)正面から労働者派遣事業という形でやっていれば、派遣料でまかなえるものを、紹介手数料で賄わなければならないものだから、紹介しっぱなしでは取れるものもとれないので、日々紹介して日々手数料を取っているという形式を整えて、今までやってきたわけです。その帰結。

 

 

 

 

 

日本型雇用システムのあした@『ひろばユニオン』7月号

Hiroba 『ひろばユニオン』7月号に「日本型雇用システムのあした」を寄稿しました。

中身はおおむね次の通りですが、

ジョブ型とメンバーシップ型
「働き方改革」をめぐって
ジョブ型 経営側は抑制的
ジョブ型からタスク型へ?
第4次産業革命の揺さぶり

このうち、最近の経団連の動きについて論じた一節だけ、世間での議論がねじれ気味であるだけに、ちょっと公開しておきます。

 一方、近年経団連が「ジョブ型」を推進しようとしていることが注目されている。もっとも、今年1月の『2020年版経営労働政策特別委員会報告』は、「メンバーシップ型社員の採用・育成を中心とした日本型雇用システムには様々なメリットがある一方で、経営環境の変化などに伴い、課題も顕在化してきている」と指摘しつつ、「ただちに自社の制度全般や全社員を対象としてジョブ型への移行を検討することは現実的ではない」と抑制的である。

 具体的に示唆しているのは「Society5.0時代に向けて、最先端のデジタル技術などの分野で優れた能力・スキルを有する人材への企業のニーズが高まっていることから、こうした高度人材に対して、市場価値も勘案し、通常とは異なる処遇を提示してジョブ型の採用を行うこと」や、そうした「ジョブ型社員には職務給や仕事給、役割給の適用を検討する」ことなどであり、要するに「メンバーシップ型のメリットを活かしながら、適切な形でジョブ型を組み合わせた『自社型』雇用システムを確立すること」である。一部マスコミ報道が煽り立てるような、全面的なジョブ型社会への移行を唱えているわけではない。

 これを見て想起されるのは、四半世紀前の1995年に当時の日経連が打ち出した『新時代の「日本的経営」』における「高度専門能力活用型」である。

 同書は「長期蓄積能力活用型」という名で正社員を(主に入口で)絞り込みつつ、「雇用柔軟型」という名の非正規雇用を拡大していくという戦略を示したが、その中間に「高度専門能力活用型」の創設が提起されていた。これが両者の中間におかれているのは、その定着性の観点からであって、その社会的地位がメンバーシップ型正社員とパート・アルバイトの中間という意味ではなかったはずである。

 ところがこの四半世紀、「契約社員」という名の新たな非正規労働者は明らかにメンバーシップ型正社員の下に位置付けられ、パート・アルバイトと大して変わらないような存在となってきた。その結果、高給の「働かないおじさん」の隣で、非正規の専門職労働者たちが主戦力化しているという光景が、日本のあちこちで見られるようになっている。

 経団連のいう「ジョブ型」とは、働き方改革が目指す限定正社員への接近ではなく、四半世紀前の「高度専門能力活用型」のリバイバルと見た方がわかりやすい。少なくとも、1960年代までの日経連のように、同一労働同一賃金に基づく職務給の導入を声高に唱道しているわけではない。せいぜい、「キャリア面では、メンバーシップ型とジョブ型社員の双方から、経営トップ層へ登用していく実績をつく」ることが目新しい程度である。
 

 

 

 

 

 

2020年6月28日 (日)

濱口語法?

https://twitter.com/ssig33/status/1217478471661715457

Ocywmxdx_400x400 濱口桂一郎が使う言葉や概念、その界隈において広く受け入れられているかというとそうではないのだけど、濱口桂一郎がずっとブログを使っていてインターネットのある種の人達の間では彼と彼の使う概念が広く浸透していて、濱口語法みたいのが人からでてくるとオッってなる 

いやまあ、濱口語法だか何だか知りませんが、「リベサヨ」にしても「ジョブ型」にしても、その言葉を作った当の本人から見てあまりにもトンデモな語法が堂々と世間で通用してしまっているのを、毎日毎日これでもかこれでもかと見せつけられると、おそらくこのツイートの方の趣旨とはやや違った意味においてではありますが、「オッってな」りますね。

2020年6月26日 (金)

「経産省のチャラ男」とはあなたのこと

経産省の脱藩官僚こと古賀茂明氏が「経産省のチャラ男たちが国を亡ぼす」と言っていますが、いやその典型があなたなのでは?

https://dot.asahi.com/wa/2020062200052.html

・・・彼は、「チャラ男」で有名。誰もが知る事実だ。では、なぜ彼が出世するのか。それは、経産省がチャラ男なしには生きていけないからだ。 

少なくとも彼が書いた本を読む限り、もっとも経産省的なチャラ男というのは古賀茂明氏ご自身以外の誰でもないように思われるのですが。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-916a.html(古賀茂明氏の偉大なる「実績」)

4062170744  正直言って、ここ十数年あまりマスコミや政界で「正義」として語られ続け、そろそろ化けの皮が剥がれかかってきたやや陳腐な議論を、今更の如く大音声で呼ばわっているような印象を受ける本ではありますが、それ自体は人によってさまざまな見解があるところでしょうし、それを素晴らしいと思う人がいても不思議ではありません。
 彼が全力投球してきた公務員制度改革についてもいろいろと書かれていますが、不思議なことに、公務員全体の人数の圧倒的多数を占める現場で働くノンキャリの一般公務員のことはほとんど念頭になく、ましてや現在では現場で直接国民に向かい合う仕事の相当部分を担っている非正規公務員のことなどまるで関心はなく、もっぱら霞ヶ関に生息するごく一部のキャリア公務員のあり方にばかり関心を寄せていることが、(もちろんマスコミ界や政界の関心の持ちようがそのようであるからといえばそれまでですが)本来地に足のついた議論を展開すべき高級官僚としてはどういうものなのだろうか、と率直に感じました。まあ、それも人によって意見が分かれるところかも知れませんが。
 しかし、実はそれより何より、この本を読んで一番びっくりし、公僕の分際でそこまで平然とやるのか、しかもそれを堂々と、得々と、立派なことをやり遂げたかのように書くのか、と感じたのは、独占禁止法を改正してそれまで禁止されてきた持株会社を解禁するという法改正をやったときの自慢話です。
 不磨の大典といわれた独禁法9条を改正するために、当時通産省の産業政策局産業組織政策室の室長だった古賀茂明氏は、独禁法を所管する公正取引委員会を懐柔するために、公取のポストを格上げし、事務局を事務総局にして事務総長を次官クラスにする、経済部と取引部を統合して経済取引局にし、審査部を審査局に格上げするというやりかたをとったと書いてあるのですね。
嘘かほんとか知りませんが、
>公取の職員はプロパーなので、次官ポストが出来るというだけで大喜びするはずだ。公取の懐柔策としてはこれ以上のものはないという、という私の予想は的確だった。
>思った通り、公取は一も二もなく乗ってきた。ただ、公取としては、あれだけ反対していたので、すぐに持株会社解禁OKと掌を返しにくい。・・・
>・・・公取の人たちは「こんなことをやっていると世間に知れたら、、我々は死刑だ」と恐れていたので、何があっても表沙汰には出来ない。
>この独禁法改正が、今のところ私の官僚人生で、もっとも大きな仕事である。
 純粋持株会社の解禁という政策それ自体をどう評価するかどうかは人によってさまざまでしょう。それにしても、こういう本来政策的な正々堂々たる議論(もちろんその中には政治家やマスコミに対する説得活動も当然ありますが)によって決着を付け、方向性を決めていくべきまさ国家戦略を、役所同士のポストの取引でやってのけたと、自慢たらたら書く方が、どの面下げて「日本中枢の崩壊」とか語るのだろうか、いや、今の日本の中枢が崩壊しているかどうかの判断はとりあえず別にして、少なくとも古賀氏の倫理感覚も同じくらいメルトダウンしているのではなかろうか、と感じずにはいられませんでした。
 わたくしも公務員制度改革は必要だと思いますし、とりわけ古賀氏が関心を集中するエリート官僚層の問題よりも現場の公務員のあり方自体を根本的に考えるべき時期に来ているとも思いますが、すくなくとも、国家の基本に関わる政策を正攻法ではなくこういう隠微なやり口でやってのけたと自慢するような方の手によっては、行われて欲しくはない気がします。
 それにしても、通常の政策プロセスで、それを実現するために政治家やマスコミに対して理解を求めるためにいろいろと説明しに行くことについてすら、あたかも許し難い悪行であるかのように語る人々が、こういう古賀氏の所業については何ら黙して語らないというあたりにも、そういう人々の偏向ぶりが自ずから窺われるといえるかも知れません。 

 

 

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