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2026年8月13日 (木)

人手不足の正体 雇用と労働から見えた日本のかたち【濱口桂一郎】【小熊英二】

20260716134000724x1024_20260813193901 雑誌『公研』7月号に、小熊英二さんとわたくしの対談が載ったということは、先月本ブログで告知いたしましたが、

小熊英二さんとの対話@『公研』7月号

その対談記事が、公研のホームページに全文掲載されました。

https://koken-publication.com/archives/4423

20260813153903

人手不足その1:人口減少

 小熊 私は、いまの日本がどうしてこういうかたちになっているのかをいろいろなテーマで研究してきました。近年はその一つとして、雇用システムの研究を続けています。

 今回は人手不足に紐付けて、濱口先生とお話ができる機会を大変光栄に思っています。

 濱口 私は厚生労働省の外郭団体である労働政策研究・研修機構で研究をしています。以前は厚生労働省の役人でしたが、労働に関わる政策研究という観点で研究、執筆活動をするようになり、そのうち政策自体がいわゆる左右のイデオロギーとは違う観点で変化していると感じ、そこを掘り下げていくうちに雇用システムのあり方についての研究に行きつきました。もちろん今も政策研究という観点からもアプローチをしており、気がつくと20年ぐらい労働研究をしています。

 小熊 国によって雇用システムが違えば、労働問題の現れ方も違う。濱口先生は3年間ベルギーにいらして、ヨーロッパと日本の労働法を比べる視点から、日本の雇用システムの特徴をずっと考えてこられました。今日は日本の働き方の仕組みがどのようなものか、そこでどんな問題が現れているのかを、人手不足という問題を通じてお話ししていきたいと思っています。

 まず私の見解を述べたいと思います。現代日本の人手不足には、三つの現れ方があると思っています。

人手不足その2:専門職

人手不足その3:新卒者の流動化

日本型雇用の限界

なぜ日本がこうなったのか

日本型雇用の適用範囲

改革の方向性と可能性

職業教育への価値観

(追記)

さすがにネット上に載ると多くの方が読みに来られるようです。

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/koken-publication.com/archives/4423

 

 

こんな本書いたっけ?

最近書いた覚えのない本のタイトルが私の著書として出てくることが少なくないのですが、

【未来予想シリーズ】「正社員」という幻想の終焉〜メンバーシップ型雇用の崩壊と個の未来を予想しよう〜

最後の「参考文献・主要出展(?)データ」というのを見ると、

6.濱口桂一郎 (2009), 『日本の「労働」をなにで測るか』岩波書店.
7.濱口桂一郎 (2013), 『若者と労働』中公新書.

ううむ、確かに2009年に岩波新書から『新しい労働社会』という本を出した覚えはありますが、『日本の「労働」をなにで測るか』なんて本は全く記憶にございませんが、どんな内容なんでしょうか?そもそも「労働」を測るってどういう意味なんだろう。自分が書いたことになっているだけに、やたらに興味をそそられますね。

なお、確かに2013年に中央公論社から『若者と労働』を出しておりますが、残念ながらあの深緑色の重厚な中公新書ではなく、薄い浅緑色の軽薄っぽい中公新書ラクレの方なんですね。まあ、これは誤差の範囲内かも知れませんが。

2026年8月12日 (水)

EUクオリティ・ジョブ法に向けて労使への第2次協議@WEB労政時報

WEB労政時報に「EUクオリティ・ジョブ法に向けて労使への第2次協議」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/web_limited_edition/list?genre[]=1100

去る7月20日、労働条件、労働安全衛生および労働者の権利の行使を改善するための「EUクオリティ・ジョブ法」の制定に向けて、欧州委員会はEU運営条約154条に基づく労使団体への第2次協議を開始しました。第1次協議は、昨2025年12月4日に行われています。第1次協議が「EUの行動の可能な方向に関する」労使への協議であるのに対し、第2次協議は「想定される提案の内容に関する」労使への協議であり、より具体的なものとなっています。・・・・・・

 

2026年8月10日 (月)

梅崎修『つむぐキャリア』

9784502589317_430 梅崎修・マイナビキャリアリサーチLab『つむぐキャリア―選択過剰時代のキャリアの考えかた』(中央経済社)をお送りいただきました。

https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-58931-7

選択肢が多いほどキャリア選択への不安はつのる。「正しいキャリア」の追求ではなく、さまざまな選択肢を調整・調和させる(つむぐ)視点から専門家たちとキャリアを考える。

オビにも出ているように、梅崎さんと対談しているのは、飯田泰之さん、石山恒貴さんら5人の方々ですが、飯田さんのこの台詞はまことにその通りという感じです。

飯田:会社が一方的にキャリアを与えていた時代は窮屈でしたが、「すべて自分で選べ」と言われても、実際には選べなくなってしまいます。そこで、その中間となるちょうどいいやり方を考えたくなります。

そのベースになり得るのが、会社ほどしっかりした組織ではないが、完全にフリーでもないコミュニティが存在していて、その中で仕事を紹介しあえたりできる環境があるといいと思います。

人間って、集団主義・組織主義を押しつけられると窮屈で嫌になっちゃうけれど、個人主義・自由主義を押しつけられると不安で寂しくて怖くなっちゃう生き物なんでしょうね。

 

 

 

 

2026年8月 9日 (日)

「外国人労働政策と日本型雇用システム」及び古賀玖美さんの書評@『季刊労働者の権利』366号

20260725_rensai4724x1024 日本労働弁護団の『季刊労働者の権利』366号が「排外主義と外国人労働」という特集を組んでおり、そこにわたくしも「外国人労働政策と日本型雇用システム」を寄稿しております。

https://roudou-bengodan.com/quarterly_newspaper/365%e5%8f%b7%ef%bc%882026%e5%b9%b47%e6%9c%88%e7%99%ba%e8%a1%8c%ef%bc%89/

特集1  排外主義と外国人労働

2 ILO専門委員会の育成就労制度における募集・斡旋手数料を移民労働者に課すことを撤廃する提言 香川 孝三
11 外国人労働政策と日本型雇用システム 濱口 桂一郞
19 三重県職員国籍要件事件 金 銘愛

わたくしの論は、『外国人労働政策』のダイジェストですが、ちょうどこの号に古賀玖美さんによるこの拙著の書評が載っているので、その参考にも使えるかと思います。

1 はじめに
 日本の外国人労働政策は長らくフロントドア型ではなくサイドドア型であった。本音では人手不足を補うために外国人労働力を導入したいのに、建前上はそうではなく、労働者ではなく身分として在留を認める日系人が、入国後は労働者として自由に働けるという仕組みと、労働者ではなく学生のような立場である研修生として在留を認め、実際には労働者と同じ作業をさせるという仕組みが、1989年の出入国管理及び難民認定法(入管法)改正で設けられた。前者はほぼそのまま維持されたが、後者は後述のような経緯で少しずつ労働者性を認め、労働者として在留を認める方向にシフトしてきた。

2 霞が関の権限争いと日本型雇用イデオロギーの影響
3 日系南米人というサイドドア
4 非就労在留資格としての研修
5 研修と技能実習の無原則的結合
6 技能実習の確立
7 特定技能というフロントドア
8 特定技能の前段階としての育成就労へ
9 労働力需給調整システムの問題
10 技人国と日本型雇用システムの矛盾
11 高度専門職の虚実
12 留学生のアルバイト

Chukogaikoku_20260809141401 そして、この号の後ろの方の書評コーナーでは、古賀玖美さんによるこの本の書評が載っています。

濱口桂一郞 著 中央公論新社
『外国人労働政策-霞が関の権限争いと日本型雇用慣行が招いた混迷の30年史』 古賀 玖美

丁寧な紹介で、「新鮮かつ刺激的な一冊」と評価いただいております。

・・・・・政策の形成過程に焦点を当て、客観的な史料とともにその根本的なねじれの原因を解き明かす。歴史書でありながら外国人労働政策を巡る議論に新たなアプローチを試みるもので、新鮮かつ刺激的な一冊である。

 本書は、外国人労働者政策が政治主導で行われ、労働政策からの観点を欠落させてしまっていたことを「混迷の30年」の教訓とする。育成就労制度の開始も控え、外国人労働者政策がなにかと注目を浴びる昨今、混迷の歴史と教訓を伝える本書の果たす役割はますます重要であると思われる。 

 

 

 

 

 

 

 

2026年8月 1日 (土)

朝ドラの派出看護婦会は労務供給事業

F9fmcqd_400x400_20260801104401 焦げすーもさんの疑問に答えると

朝ドラを全然追えてないけど、 これって看護師(婦)の労働者供給事業の話なの??

その通り。鈴木雅(ドラマでは大家直美)が始めた派出看護婦会は、後に大和俊子が始めた派出婦会と争いながら、1938年の改正職業紹介法によって労務供給事業と位置付けられ、戦後は1947年職業安定法によって労働者供給事業としてほぼ全面的に禁止され、その後有料職業紹介事業という形をとって、街のあちこちにある(あった)看護婦家政婦紹介所として生き伸びていったのです。その波瀾万丈の歴史の出発点。

とりあえず、学習指定文献(笑)として、『労働新聞』で書評した山下麻衣『「看護婦」の近代社会史』(朝日選書)を挙げておきます。

山下麻衣『「看護婦」の近代社会史』書評@『労働新聞』

81wewqv6xpl_sl1500_266x400 月イチの『労働新聞』書評。今回は山下麻衣『「看護婦」の近代社会史』(朝日選書)です。

https://www.rodo.co.jp/column/219552/

 4月から、NHKの朝の連続テレビ小説で『風、薫る』が放送されている。主人公の一ノ瀬りんと大家直美のモデルは大関和(おおぜきちか)と鈴木雅(すずきまさ)だ。
 ドラマにおける設定は歴史的事実とはかなりかけ離れているようだが、実在の2人は看護婦養成所を出て帝国大学医科大学附属医院に勤めた後、派出看護婦会を設立して、日本の看護婦の歴史を切り開いていった。本書はこの2人を中心に据えながら、明治初期から今日に至るまでの看護婦の歴史を描き出している。
 ただ筆者にとって、本書が描く派出看護婦会の誕生、発展、衰退、そして消滅と復活に至る有為転変の歴史は、人ごとは思えないところがある。というのも、派出看護婦会からすると資格のない女性たちによる商売敵に当たるのが、拙著『家政婦の歴史』で描きだした派出婦会であったからだ。
 大関和や鈴木雅に倣って続々と派出看護婦会が設立され、やがて大関の直訴によって東京府看護婦規則が制定され、遂に内務省令で看護婦規則が公布され、試験による免許制により質の悪い看護婦を排除することをめざした。しかし、派出看護婦に対する世間の目は冷たく、「社会の暗部」とまで見られていたという。資格のない見習看護婦を女中代わりに派出するという実態もあったようだ。そこで東京府は看護婦会取締規則を制定し、経営者に5年以上の看護婦経験を要求し、等級査定制度と見習看護婦の派出禁止が規定された。
 そういう中で、女中代わりの家事・介護労働力を臨時に派遣するニュービジネスとして派出婦会を立ち上げたのが、大和俊子(おおわとしこ)であった。彼女のビジネス・ヒストリーは拙著で詳しく書いたのでここでは省略するが、派出看護婦会の立場から見れば、これは自分たちが禁止しようとしている看護婦の資格なき付添婦の派出事業そのものであった。拙著では大和俊子は颯爽たる女性ヒーローだが、商売敵からは悪役(ヒール)に見えたであろう。
 本書はそこから戦後の職業安定法により派出看護婦会が解散に追い込まれ、その後看護婦家政婦紹介所として復活する姿を描いていくが、労働史の観点からすると若干注文をつけたいところがある。拙著で述べたように、戦前の派出婦会と派出看護婦会はいずれも1938年改正職業紹介法により労務供給事業と位置づけられ、それゆえに1947年職業安定法により労働者供給事業として禁止された。拙著で紹介した地方労働委員会でのいざこざも、派出看護婦会が中心であった。そして本書のいう「復活」も、本来のビジネスモデルたる労働者供給事業ではなく、派出先が使用者責任を負う職業紹介事業という「仮面」をかぶらざるを得なかったために、今日まで労働法上の問題を引きずっている。
 医療史の一部としての看護婦の歴史としては、労働法上の位置づけ如何というのは枝葉末節に属するのかもしれないが、筆者からすると、そこはもう少し緻密に論じてほしかったという思いが残る。

ちなみに、労務供給事業時代の看護婦派出の状況は以下の通り。

図表1 1940年の労務供給事業の供給業者数と所属労務者数

職種 供給業者数 所属労務者数
人夫 842 39,717
家政婦 700 24,643
雑役 504 24,780
職夫 265 28,770
仲仕 189 5,858
附添婦 146 7,443
看護婦 64 2,360
土工 60 5,235
大工 29 616
自動車運転手       27 1,810
湯屋従業人         23 3,401
妓夫妓女           13 3,392
料理人 8 405
店員 8 68
メッセンヂャー     4 516
左官 3 34
其の他 141 2,758
計   3,026 151,806

 

 

2026年7月31日 (金)

宮本太郎『社会保障改革の岐路』

Middle_6d861d615775465ab60fe4d6946f57b0 宮本太郎『社会保障改革の岐路 信頼のセーフティネットは可能か』(岩波新書)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

https://www.iwanami.co.jp/book/b10170459.html

なぜ社会保障制度改革は失敗を繰り返してきたのか。「負担ばかりで見返りがない」という制度不信にどう応えることができるのか。私たちの生存と承認に深く関わるセーフティネットの在り方を多角的に検証し、そのあるべき原理を明快に論じる。ポピュリズムが席巻するなか、第一人者による地に足のついた骨太の政策論。

Https___imgixproxyn8sjp_dsxzqo3386239030 『生活保障』『共生保障』に続く岩波新書3冊目ですが、この本が届いたちょうどその日に、高市首相が食料品の消費税率を来年度から1%に引下げると言ったというニュースが駆け巡り、いやまさにそういうことなんだぞ!感がひしひしを感じられた一日となりました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA300W00Q6A730C2000000/

高市早苗首相は30日、食料品にかかる消費税率を2027年4月から1%に引き下げる方針を決めたと説明した。首相の冒頭発言と記者団との質疑の要旨は以下の通り。・・・

なんでこういうことになってしまうのか。まさにこれまで高齢世代に比べて手薄だった現役世代の社会保障をこれから懸命に充実しようとしているまさにその時に、まさにそのための財源として確保しようと思っていたはずのその消費税を、国民の大多数の熱狂的な減税ポピュリズムに乗っかる形で、みすみす海の向こうに放り捨てようとしているまさにその時に、その政治心理学的メカニズムを、冷静に摘出していくのが、その近年の社会保障政策に二回にわたる政権交代をくぐり抜けながら一貫して関わってきた宮本太郎さんその人であるという、この上ない皮肉に充ち満ちた一冊です。

はじめに

第1章 不信に揺れる社会保障と雇用
 1 給与明細とポピュリズム
 2 社会保障とセーフティネット
 3 雇用のセーフティネット――日本のセーフティネット(1)
 4 社会保険のセーフティネット――日本のセーフティネット(2)
 5 生活保護というセーフティネット――日本のセーフティネット(3)
 6 雇用、社会保険、生活保護の関係
 7 同時多発的な不信

第2章 生存と承認のセーフティネット
 1 終わりから始まったセーフティネット
 2 セーフティネットの制度拡張――包摂の重視へ
 3 セーフティネットの機能拡大――承認の保障へ

第3章 デジタル社会の亀裂と承認格差
 1 格差と亀裂の新しいかたち
 2 承認格差のなかの孤独の拡がり
 3 ソーシャルメディアが拡げる不信

第4章 改革はなぜ成就しないか
 1 社会保障改革の困難
 2 雇用保障の転換
 3 改革が成就しないのはなぜか

第5章 雇用のデジタル転換と社会保障改革
 1 三位一体の社会保障改革
 2 AI時代のエッセンシャルワーク
 3 所得保障と給付付き税額控除
 4 対人支援サービスと地域共生社会

まとめと展望

 参考文献
 あとがき

 

 

2026年7月28日 (火)

『人事・組織改革とキャリアデザインを拓く: 高橋俊介オーラルヒストリー』

61gqax6naml_sy425_ 高橋俊介著、梅崎修・島西智輝・南雲智映監修『人事・組織改革とキャリアデザインを拓く: 高橋俊介オーラルヒストリー』(千倉書房)をお送りいただきました。

これは、昨年8月にお送りいただいていた白表紙の報告書の市販本です。

日本の人事改革の中枢に立ち、キャリアデザイン論を牽引してきた高橋俊介。時代に先駆けた人事思想の源流をたどるべく、その仕事史をオーラルヒストリーとして描く

その時の感想を再掲しておきますと、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2025/08/post-81a1a9.html

高橋俊介さんという方は、私は『成果主義』等の本でしか存じ上げなかったのですが、なかなか面白い経歴なんですね。東大で航空工学を学んだ後なぜか国鉄(JRの前の公共企業体時代)に入り、動労との労使交渉の薄暗い裏舞台とかも垣間見て、プリンストンに留学して、国鉄を辞めちゃった。辞めるときに、当時の秘書課長の井出さん(国鉄改革三羽がらすの一人で後にJR西日本社長)が激怒したエピソードが紹介されてます。「会社を途中で辞めるヤツなんて許せない」と。これってちょうど、三羽がらすで国鉄改革の陰謀をめぐらしていた頃ですね。

その後マッキンゼーで大前研一に鍛えられ、パリバを経て、ワイアットカンパニーで人材マネジメントのコンサルとして名を上げていきます。この頃から本をたくさん出していますね。

私はどちらかというと、成果主義の鼓吹者みたいな感じで見てましたが、本人が後から振り返って曰く:

・・・でも、人事部長がぼそっと言うんですよ。「結局、50代とかの給料を抑えるのにどうしても必要なんですよね」と。本当のことを言うと、団塊の世代の50代の給料を抑えるために成果主義をやろうとしたけど、成果主義という言葉は手垢がついてしまったと。今度は、バブル入社世代が50代になってくる。どうやってやろうかといったら、要は「ジョブ型、いただき」ということなんですよ。成果主義と同じことの繰り返し。そうすると、またジョブ型も手垢がつくかも知れない。・・・

いやまあ、人事コンサル界隈の流行の実相はまさにそうだったのだろうとは思いますが、ジョブ型にそういう間違った手垢がついてしまうのは、まことにつらい話ではありますが。

ちなみに、アメリカの本当のジョブ型(ブルーカラーの労働組合版ではなく、ホワイトカラーのヘイシステム)に対しても、それが公民権法への対応として作られたものだという冷静な目で見てます。このあたり、きちんと分析している学者があんまりいないので、実は貴重な話です。

・・・64年に新公民権法ができて70年代に入って、AT&TとかGMとか名だたる大企業が、それこそ黒人女性とかいろんな人から「昇進で差別を受けた」といって訴えられた。そのときに負けているときの賠償金が、数億ドルといってましたから、当時でいう数億ドルですから、金額もすごい。あと、社会的にも問題だと。

 だから、当時はいかにして、インカンベント(在職者)を人として見てない、というのが担保できないと、裁判で負ける気がします。だから、ヘイというのはすごいよかったのは、職務記述書があったら、ああいうのはアナリストがポイントを付けるでしょ。だから、インカンベントを見てない。だから、それを証明できると。だから、人の評価なんて危なくてできないと。・・・

 だから、職務給=成果主義・実力主義という幻想があるんですけど、職務給ががっちりいったのは、やっぱり人の評価をしないというね。職務でしか評価しないというのが当時、ニーズがあったという、それを緻密にやっていく。でも、実際のところは・・・・・・だけど、たてまえとしては、裁判になったときに非常に安全だというのがそこにはあったんだろうと

もういくつか、高橋さんの名言録を引用しておきましょうか。

そもそも、なんで欧米社会はジョブ型なのかというと、中根千枝さんのタテ社会論に行き着くのです。

・・・おっしゃるとおり、もうね、あまりにも不勉強だって言ってるんですよね。そもそもジョブ型の起源をまず知るためには、まず階層社会と、日本のように階層が明確にできていないタテ社会とを理解しないといけない。中根千枝さんは階層社会のことを「ヨコ社会のタテ構造」と言ってるわけじゃないですか。私はあれを「パンケーキ構造」と言ってるんですけども、だから、総意媼かで職業と社会階層が明確に結びついてきた。その一番極端なやつがインドのカーストじゃないですか。そういう歴史がある。そこで一生同じジョブをやり続けると。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』のマックス・ウェーバーじゃないですけど、プロテスタントは同じ仕事を一生続けて、そこでどれだけコミットして一生懸命やったかで、天国に行けるかどうかがわかるんだみたいな話になっちゃうと、職業というものが企業以上に、「この仕事をやり続ける」という人生観になりますよね。そのうえで、職種別労働組合ができたり、ジョブ型というものができたりしたという。

 だから日本では無理だと言っているんじゃなく、「そういう歴史を知っていますかね」と。日本で言えば、階層というものが江戸時代に作られそうになったけど、やっぱりそんなに確立できなかった。で、明治になってガラガラポンで立身出世の世の中となり、戦後は戦後の次のガラガラポンが起きた。そこに安心社会、信頼社会みたいな概念をかぶせていくと、全体像が見えてくると思うんですけど、そういうことを何も勉強しないで「ジョブ型のノウハウを読め」みたいなね。・・・

このタテ社会がどういう事態をもたらすかというと、

・・・昔から私が感じているものの一つは、日本企業が根本的に一番変えなきゃいけないのは、タテ序列至上主義。つまり、昇進がキャリアだということ。海外に行くと、早期選抜の抵抗が比較的少ないのは、それはヨコ社会のタテ構造だからじゃないのかと思います。だから、幹部になるのは序列と言うより別の職種という感じ。

 ところが日本の場合は、全部タテ型で、出世しないと惨めみたいな感じになって、それがキャリアステップだという形になっちゃっている。そこで止まるということ自体が、もうそれは負け組だと。だから、中根千枝さんも言ってるんですけど、「インドのカーストというのは、下の方のカーストの人でも自分たちは負け組だという悲壮感はないんだ」と書いているんですよ。私は、昔からそこが最大の問題だと思っていました。よく「選抜してあとの人がやる気がなくなっちゃったらどうするんだ」と言うけど、選抜したらあとの人のやる気がなくなっちゃう状況の方がおかしいんだと。・・・

というわけで、これが特殊日本型管理職問題につながるわけですね。

 

 

 

 

 

2026年7月27日 (月)

労働政策フォーラム[物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─]@『ビジネス・レーバー・トレンド』2026年8月号

『ビジネス・レーバー・トレンド』2026年8・9月号に、去る5月29日に開催した労働政策フォーラム:物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─の報告とパネルディスカッションの記録が載っております。

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/index.html

持続可能な物流と働き方 ――トラック業界が直面する課題と今後の展望
国内貨物輸送では、輸送量(トンベース)の約9割を自動車での輸送が占めており、トラックを中心とした自動車輸送が、これからも国内貨物輸送の中心的な役割を担う。しかし、トラック運送業界では長年、他産業よりも長い労働時間や、全産業平均より5%~15%低い年間賃金、若年層割合の低さなどの課題を抱え、深刻な人手不足にも直面している。一方、2024年適用の自動車運転業務への時間外労働の上限規制は、労働者の働き方にも影響を及ぼしている。本号では、トラック運送業界が直面する課題と対応策などについて議論した労働政策フォーラムの内容を中心に、持続可能な物流と働き方の実現に向けた有効な方策について展望する。

労働政策フォーラム
物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─
5月に開催した労働政策フォーラムでは、深刻な人手不足が続くトラック業界について、法改正も含めた行政による取り組みの報告と、研究者からの現状分析報告に加え、物流企業の労使それぞれの取り組み事例を紹介しながら、持続可能な物流の姿と、処遇改善など労働問題への対応のあり方などについて、識者と関係者が議論した。(各報告およびパネルディスカッションの概要は調査部で再構成したものを掲載している。)

【基調講演】持続可能な物流の実現に向けて 首藤 若菜 立教大学 経済学部 教授

【研究報告】時間外労働の上限規制への対応──運輸業の事例 前浦 穂高 長野大学 地域経営学部 准教授/元 労働政策研究・研修機構 副主任研究員

【行政報告】国土交通省の取組報告 指田 徹 国土交通省 物流・自動車局 貨物流通事業課長

【事例報告①】2024年問題に対応したサステナビリティな物流を目指して 吉田 明宏 西濃運輸株式会社 執行役員 運行部 部長

【事例報告②】今、直面している実態・課題と未来 村山 大樹 仙台運送労働組合 中央執行委員長

【パネルディスカッション】物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─
パネリスト: 首藤 若菜 立教大学 経済学部 教授
吉田 明宏 西濃運輸株式会社 執行役員 運行部 部長
渡辺 俊幸 西濃運輸株式会社 運行部 運行課 東日本担当課長
村山 大樹 仙台運送労働組合 中央執行委員長
前浦 穂高 長野大学 地域経営学部 准教授/元 労働政策研究・研修機構 副主任研究員
コーディネーター: 濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長

https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20260529/houkoku/06_discussion.html

濱口 今回は、大きく3つのテーマに分けて議論します。1つめは、働き方改革やいわゆる2024年問題のなかで、労働時間や労働条件などの観点から、トラック運転者の就業環境がどのように変わってきているのか、あるいは、変わらずにどんな課題が残っているのか、また、人手不足に対してどういった対応がされているのか、といったところをうかがえればと思います。

2つめは、国土交通省の指田さんに行政報告で非常に詳しくお話しいただきましたが、この間、物流に関するさまざまな法改正や対策が講じられてきており、これについてどう考えるかということを取り上げたいと思います。

そして3つめは、それらもふまえて、今後、物流業界が持続可能な業界として未来に向けて進んでいくうえで、どのようなことが必要なのかについて取り上げてまいります。・・・

論点1:トラック運転者の就業環境や人材確保について
荷役を分けることで、1人が運転する時間を短縮
働きやすさや職場のよい雰囲気づくりにも配慮
高齢化に伴い増加する慶弔休暇の取得には本社が現場をフォロー
すぐに中型免許を取得できない高卒従業員の育成も課題
繁忙期の異なる事業所を統合することで生産性を向上
社員からの紹介で採用する制度も活用
外国人の採用については会社側が慎重な姿勢
西濃運輸ではグループで約600人の外国人従業員が働く
中長期的にも外国人ドライバーの活用は大きなポイントに
中小事業者でも荷役を分割するような工夫は可能か
中小企業が人材を確保して体制を維持するには独自性が有効
運送会社が荷主の声を聞き過ぎるのも要因か
運送会社が増え過ぎて荷主の言うことを聞く会社だけが儲かる構造に
難しい荷主との運賃の引き上げ交渉
トラックGメン・倉庫Gメンの配置で無理なことは言われなくなった
論点2:物流業界の法改正・政策対応について
価格転嫁にどう対応しているのか
どれぐらい還元できるかは話し合いで合意する
担当者が自社のことをどれだけ理解しているかにかかってくる部分も
「配送=サービス」という誤った印象を与える「送料無料」の表記
付随した業務を無料で行うような商慣行の是正もいまだ残る論点
適正原価、最低運賃の考え方には賛成
難しいのは、何を適正とみなすか
わかりやすい運賃体系を荷主企業にいかに示せるかがポイント
共同配送では荷待ち時間の精査が難しい場合も
根本的な問題は、かかっているコストが最終価格に上乗せされないということ
ルールづくりが難しく面倒で、収受しないことになっている実態も
ざっくりと請求できるようにすべきかも今後の検討課題に
論点3:今後、物流業界が持続可能な業界となっていくには
ドライバーへの還元を政策的にどう担保するか
人口減少社会のなかで効率化だけですべてを解決できるか
一産業だけで賃上げによって人材を確保していくのは難しい
個社だけの取り組みでは限界がある
他社も巻き込みいろいろな取り組みを行うことが物流業界の持続につながる
いまの人数で回せる仕事をすることも1つの方法
顧客と物流業界がお互いウィン・ウィンの関係であるべき
賃金・労働時間のツケを物流業界に回してきた面も

最後の首藤さんのまとめがとてもよいので、やや長めに引用しておきますが、是非リンク先にいってすべてお読み頂ければと思います。

濱口 最後のそれぞれのパネリストの発言に対するコメントも含め、本日の総括コメントを首藤さんにいただければと思います。

物流業界の課題が人手不足につながったのではないか

首藤 今の濱口さんのご意見には私も強く賛同します。人手不足が物流持続可能性のための非常に大きなボトルネックだというふうに考えられていますが、この業界をみていて思うのは、物流課題の原因に人手不足があるのではなくて、結果的にそうなっているのではないかということです。

要するに、最も大きな原因は、トラック運送をどう使ってきたのかという問題があって、できるだけ安く、早く、柔軟に、便利に、としてきた結果、人手不足が起きていると私も思っています。ですので、人手不足にどう対応するかということが盛んに議論されるけれども、人手不足を緩和させていくためには、やはりトラック運送のあり方自体を見直していくことが必要なのだと思います。

労働条件だけでなく、取引慣行・サプライチェーンのあり方など全体を見直すべき時期に

2024年問題などもそうですが、結局、きっかけは労働規制だったと思います。労働時間を短くしないといけないという話から始まったわけですけれども、労働条件だけを改善しようとしても、いわゆる労働市場のなかだけで解決できる問題ではないので、取引の慣行やサプライチェーン全体のあり方、そういったものまで見直さないといけないというように広がってきたのが、この業界の実態なのだと私は思っています。

ドライバーの成り手がいなくて困っている状況にあるわけですが、難しいのは、荷主企業側からみると、トラックの運賃は当然安ければ安いほどいいわけです。できるだけ買いたたいたほうがいいし、荷待ちだってできるだけ待ってくれたほうが便利なので、できるだけ待たせたほうが便利でよいという話になります。

しかし、その個社の合理性をみんなが追求していくと、社会全体でみたら、運賃がみんな安くて、ドライバーの賃金も安くなって、荷待ちが長いから長時間労働になって、人がいなくなって、物流が止まるというところに陥る。物流が止まると、みんな困るという話になります。

業界で起きた「合成の誤謬」を社会全体で改善する

「合成の誤謬」という用語があって、経済学でいう、ミクロで見ると合理的だけれども、マクロで見ると不合理だという状況が起きている問題です。「合成の誤謬」をどうやって是正していくのかを考えると、やはりマクロな社会全体の仕組みをどうしていくのかという観点からの法規制が必要だということで、今回さまざまな法改正がされてきたのだと思います。

物流はもう社会インフラでもあって社会全体の非常に重要な課題なので、運送会社はもちろん、労働組合も使用者も、荷主も消費者である私たち一人ひとりも、理解を深めていって、対応していけるとよいと思っているところです。

濱口 首藤さんが言われたように、人手不足がゆえに起こっているというだけではなく、むしろそういったことが人手不足をもたらしている、それがお互いにある種の悪循環をつくり出し、社会全体の大きな問題になってきたというのが、まさに今、起こっている問題だろうと思います。そういう意味では、労働政策フォーラムで、物流業界の問題を重点的に取り上げる回を今回行ったことは、実は一業界の問題に過ぎないのではなく、社会全体、全員の問題だということをメッセージとして伝える意味があったのではないかと思います。

今日はかなり長時間にわたって、こちらが当初考えていたのではないようなところまで話が時に飛びながらも、この物流業界が抱えているさまざまな構造的な問題が摘出できたのではないかと思っております。皆さん、このフォーラムにご参加いただいて本当にありがとうございました。

 

2026年7月25日 (土)

EUでアクティベーションに向けた労使への第1次協議開始

去る7月22日、欧州委員会はアクティベーションに向けた労使団体への第1次協議を開始しました。

https://employment-social-affairs.ec.europa.eu/document/download/41284c74-049c-4358-9f80-dbbc8ea2178c_en

CONSULTATION DOCUMENT
First-phase consultation of social partners under Article 154 TFEU on possible EU action on activation of persons facing significant barriers to enter the labour market

 

2026年7月23日 (木)

労働判例研究-労働組合の役員選出総会決議の不存在確認-プレカリアートユニオン事件@『ジュリスト』2026年8月号

L20260529308 『ジュリスト』2026年8月号の労働判例研究に「労働組合の役員選出総会決議の不存在確認-プレカリアートユニオン事件」を寄稿しました。

https://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/021797

これは、今年の4月に東大の労働判例研究会で報告したものに加筆修正を加えたものですが、ちょうど先週の7月16日に、最高裁がプレカリアートユニオン(テイケイ)事件で破棄差戻し判決を下しており、

https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96798.pdf

その理由が:

・・・第1審本訴被告の組合員が第1審本訴被告に対して提起した別件訴訟において、令和6年2月、Aを代表者に選任する旨の平成27年から令和5年までの間における各総会決議がいずれも不存在であることを確認する旨の判決がされ、同判決は、令和7年7月、確定した。
2 上記1の経緯によれば、本件訴訟は、第1審本訴被告について、代表権を欠く者を代表者として提起・追行されたものというべきである。
 したがって、原判決には、民訴法312条2項4号に該当する事由がある。原判決は、破棄を免れない。
3 ところで、第1審本訴被告は、当審に令和8年4月27日付け及び同年5月18日付けの各書面を提出し、令和6年5月及び令和7年9月に開催された各総会において、改めてAを代表者に選任する旨の各決議がされ、同人によってこれまでの訴訟行為が追認された旨を主張している。これに対し、第1審本訴原告は、当審に令和8年5月19日付け書面を提出し、第1審本訴被告の上記の主張を争うことを明らかにしている。そこで、上記各決議の存否や効力の有無など、第1審本訴被告の上記主張の当否について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。なお、代表権の有無は職権探知事項であるから、本件において原判決を破棄するについては、必ずしも口頭弁論を経ることを要しないと解するのが相当である(最高裁昭和62年(オ)第685号平成19年3月27日第三小法廷判決・民集61巻2号711頁参照)。

と、まさに本評釈の対象事案の確定判決であることからも、本判決をきちんと分析評価しておく必要性は高いものと思われます。

 

 

 

 

育成就労制度の施行半年前@『労基旬報』2026年7月25日号

『労基旬報』2026年7月25日号に「育成就労制度の施行半年前」を寄稿しました。

 2024年6月14日に出入国管理及び難民認定法(入管法)と外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)の改正法が成立し、同月21日に公布されました。これにより、現在の技能実習制度は育成就労制度に変わることになりますが、その施行は2027年4月1日とされています。ほぼ半年後ですが、そのための政省令告示運用要領その他も出そろい、制度の詳細がほぼ明らかになってきました。そこで今回はこの改正の経緯を改めて振り返るとともに、施行半年前になっている育成就労制度の論点を考えてみたいと思います。
 
 この改正の出発点は、2022年1月に当時の古川禎久法務大臣が閣議後記者会見で、特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会を設置し、両制度の在り方について,先入観にとらわれることなく意見を聞きたいと述べたことに遡ります。古川大臣は同年7月までに計10名から意見を聞き、同月の閣議後記者会見で所感として、特に技能実習制度について、人づくりによる国際貢献という技能実習制度の目的と人手不足を補う労働力として扱っているという実態が乖離していること等の問題を挙げ、人権が尊重される制度であることが必要と述べました。
 同年11月には、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の下に技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議学識者15名、座長:田中明彦が設置され、翌2023年4月に中間報告書をまとめ、同年11月に最終報告書をとりまとめました。そこでは、技能実習生が企業労働力として貢献している実態から、人材育成による国際貢献のみを目的に掲げるのは望ましくないとし、技能実習制度を廃止して人材確保と人材育成を目的とする新たな制度(育成就労制度)を創設すべきとしています。人材確保を目的とする特定技能に吸収するのではなく、なお人材育成をも目的とする新制度を設けるのですが、それは国際貢献よりも国内で引き続き就労することを重視したものとなっています。この関係で、新制度の対象職種を特定技能に合わせることや特定技能第2号を拡充することも提起されており、いわば特定技能第0号との位置づけです。
 技能実習制度が繰り返し人権侵害との批判を受けてきたことから、転籍の在り方についても一定の見直しを求めていますが、人材育成を制度趣旨とすることに基づく転籍制限は残すとしており、中途半端な姿勢となっています。具体的には、同一の受入れ機関において就労した期間が1年を超えていることと技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格していること等を要件として認めるとしつつ、当分の間、受入れ対象分野によっては1年を超える期間を設定することを認めるなど、必要な経過措置を設けるとしています。また、監理団体や登録支援機関の在り方についても適正化や排除が必要と述べるなど、見直しを求めています。
 2023年11月の有識者会議報告書を受けて、翌2024年2月の外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議で政府方針が決定され、現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、人手不足分野における人材確保及び人材育成を目的とする育成就労制度を創設することとされました。問題の転籍については、「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大・明確化するとともに手続を柔軟化するとした上で、①同一の機関において就労した期間が一定の期間(分野ごとに1~2年の範囲内で設定)を超えている、②技能検定試験基礎級等・一定水準以上の日本語能力に係る試験に合格、③転籍先が、適切であると認められる一定の要件を満たす、を満たす場合に同一業務区分内に限り本人意向による転籍を認めるとしています。この転籍が可能となる期間については、「人材育成の観点を踏まえた上で1年とすることを目指しつつも、1年を超える期間を設定する場合には、当該期間を選択する受入れ機関において、就労開始から1年を経過した後には転籍の制限を理由とした昇給その他待遇の向上等を図るための仕組みを検討する」と書かれ、また「本人の意向により転籍を行う場合、転籍前の受入れ機関が支出した初期費用等のうち、転籍後の受入れ機関にも分担させるべき費用については、転籍前の受入れ機関が正当な補?を受けられるようにするための仕組みを検討する」との記述もあります。受入れ機関からの転籍を抑制する方向への強いロビイングの影響が窺われます。また、転籍については「当分の間、民間の職業紹介事業者の関与は認めない」とともに、「転籍ブローカー等の排除を担保するため、転籍の仲介状況等に係る情報を把握できる仕組みを設けるとともに、不法就労助長罪の法定刑を引き上げつつ適切な取締りを行う」と、極めて警戒的な姿勢を示しています。
 同年3月、政府は入管法と技能実習法の改正案を国会に提出し、同年6月に成立に至りました。これにより、技能実習法は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)となり、技能実習制度は育成就労制度に置き換えられました。技能実習する外国人が「技能実習生」と留学生並びの呼び名であったものが、育成就労では「育成就労外国人」と正面から外国人労働者としての呼び名になっています。これまでの企業単独型技能実習が単独型育成就労に、団体管理型技能実習が監理型育成就労に移行しますが、後者には季節的業務について労働者派遣による就労を通じて技能を習得させる「労働者派遣等育成就労産業分野」というのが設けられました。これは2月の政府方針にも姿を見せておらず、その間に挿入されたものと思われます。ちなみに、技能実習法の基本理念にあった「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」は削除されました。また、これまでの政府全体の基本方針に加え、個別育成就労産業分野を所管する主務大臣が法務大臣、厚生労働大臣と共同して分野別運用方針を定めることとされています。
 新たな規定として、「育成就労外国人による育成就労実施者の変更の希望の申出等」に係る規定が第8条の2から第8条の5まで及び第9条の2の5か条にわたって詳細に規定されています。ここで、出入国在留管理庁長官と厚生労働大臣が新たな育成就労計画の認定をする際の要件として、育成就労実施者が当該育成就労外国人を対象として育成就労を行わせた期間が、1年以上2年以下の範囲内で育成就労外国人に従事させる業務の内容等を勘案して主務省令で定める期間を超えていること」が書き込まれています。
 なお同時に行なわれた入管法の改正により、これまで技術・人文知識・国際業務に限られてきた企業内転勤の在留資格が、技能等の修得にまで拡大されています。これは事実上、企業単独型技能実習を単独型育成就労とは別のルートで、転籍ができないような形で生き残らせるための制度と見ることができます。
 
 育成就労法に基づく基本方針は2025年3月に、分野別運用方針は2026年1月に閣議決定されました。これにより、これまでの特定技能の対象であった特定産業分野に新たに3分野(リネンサプライ分野、物流倉庫分野、資源循環分野)が追加され、そこから2分野(航空分野、自動車運送業分野)を除いた17分野が育成就労産業分野とされました。
 分野別運用方針では特定技能制度と同様に、育成就労産業分野ごとに受入れ見込数を定めることとなっています。分野ごとの特定技能と育成就労の受入れ見込数は次の表の通り
です。参考までに転籍制限期間も示しておきます。
分野 特定技能 育成就労 分野全体 転籍制限期間
介護 126,900 33,800 160,700 2年
ビルクリーニング 32,200 7,300 39,500 1年
建設 76,000 123,500 199,500 2年
造船・舶用工業 23,400 13,500 36,900 2年
自動車整備 9,400 9,900 19,300 2年
宿泊 14,800 5,200 20,000 1年
自動車運送業 22,100 - 22,100 -
農業 73,300 26,300 99,600 1年
漁業 14,800 2,600 17,400 1年
外食業 50,000 5,300 55,300 2年
林業 900 500 1,400 1年
木材産業 4,500 2,200 6,700 1年
工業製品製造業 199,500 119,700 319,200 2年
航空 4,900 - 4,900 -
鉄道 2,900 1,100 4,000 1年
飲食料品製造業 133,500 61,400 194,900 2年
リネンサプライ 4,300 3,400 7,700 1年
物流倉庫 11,400 6,900 18,300 1年
資源循環 900 3,600 4,500 2年
合計 805,700 426,200 1,231,900  
 
 育成就労制度でも技能実習制度と同様、育成就労実施者は個々の育成就労外国人ごとに、育成就労に係る業務、技能、日本語能力等の目標や内容を盛り込んだ育成就労計画を作成し、出入国在留管理庁長官と厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。監理型育成就労の場合は、育成就労計画は監理支援機関の指導を受けて作成します。育成就労計画の認定は、外国人育成就労機構が行ないますが、その際の認定要件として、外国人が外国の送出機関に支払った費用の額が適正な金額であることが規定されました。
 技能実習制度時代の監理団体に代えて監理支援機関が設けられ、その許可要件が厳格化されました。すなわち、育成就労実施者と密接な関係を有する役員又は職員の監理への関与が制限され、外部監査人の設置が義務化されました。また育成就労外国人から転籍の希望の申出がなされた際に、当該外国人の育成就労の継続が可能となるよう、関係機関との連絡調整を図らなければなりません。
 技能実習制度では悪質な送出機関が高額な手数料を徴収しているとの批判が絶えなかったため、育成就労制度では創出国との間の二国間取決め(MOC)を新たに作成し、育成就労外国人の受入れは原則としてMOC作成国の送出機関からのみ行うこととしています。また前述のように、送出機関が徴収できる費用の上限額が外国人の月給2か月分を超えないことを育成就労計画の認定要件としています。これは現状からすれば一歩前進であることは確かですが、そもそも国内労働者であれば、職業安定法に基づき許可を得た有料職業紹介事業者のみが雇用の仲介をすることができ、かつ原則として手数料は使用者からしか徴収することができないことと比較すると、その原則を逸脱していることに変わりはありません。この問題はなお完全には解決されていないのです。
 転籍については上述のように法改正前の段階からすったもんだを繰り返した問題ですが、結局原則の転籍制限期間は1年、特定の産業分野(上記表の8分野)については2年となり、育成就労3年間の約半分前後が転籍制限の下に置かれることになりました。なお、転籍を認める要件として、分野別運用方針で業務区分ごとに定められた一定の技能試験及び日本語能力試験に合格していることが必要です。
 この日本語能力については、就労開始前に実施される入国後講習において、認定日本語教育機関の日本語能力A1相当の講習を受講する必要があり、また育成就労開始1年後までにA1相当、育成就労終了までにA2相当の試験を受験させることとされています。
 個々の育成就労実施者が育成就労外国人を受け入れられる人数枠は、基本的には育成就労実施者の常勤職員数によって細かく設定されており、301人以上では常勤職員数の20分の3で規模が小さくなるほど枠が大きめになっていきます。ただし、優良な育成就労実施者では人数がほぼその2倍に設定され、さらに指定区域(大都市圏以外の地域)内にあればほぼその3倍になります。これを見ると、中小零細企業になればなるほど常勤職員数よりも多くの育成就労外国人を抱えることができるようになっており、この制度が人手不足に苦し
む中小零細企業の救済のためのものであることがよく分かります。
育成就労実施者の常勤職員数 一般の育成就労実施者 優良な育成就労実施者 指定区域内の優良な育成就労実施者
301人以上

 
育成就労実施者の常勤職員の総数の20分の3 育成就労実施者の常勤職員の総数の10分の3 育成就労実施者の常勤職員の総数の20分の9
201-300人 45人 90人 135人
101-200人 30人 60人 90人
51-100人 18人 36人 54人
41-50人 15人 30人 45人
31-40人 12人 24人 36人
9-30人 9人 18人 27人
8人 9人 18人 24人
7人 9人 18人 21人
6人 9人 18人 19人
5人 9人 15人 16人
4人 9人 12人 13人
3人 9人 10人 11人
2人 6人 7人 8人
1人 3人 4人 5人
 こうした取扱いの違いは転籍の受入れ枠にも見られます。まずそもそも転籍先の育成就労実施者は「優良」でなければなりませんが、転籍先の育成就労外国人総数に占める転籍者の割合は、転籍元と転籍先の育成就労実施者の住所によって、地方→大都市圏の場合は6分の1以下、それ以外の場合は3分の1以下とされています。また転籍者の人数枠も、育成就労外国人総数ごとに地方→大都市圏とそれ以外では差をつけています。これは、この問題の本質が地方と大都市圏の賃金格差による需給アンバランスであることを雄弁に物語っています。

 

井上幸治『平安貴族の仕事と昇進』@『労働新聞』書評

Images_20260723091001 毎月の『労働新聞』の書評ですが、今回は井上幸治『平安貴族の仕事と昇進』(吉川弘文館)です。

https://www.rodo.co.jp/column/222957/

 昔の日本人はどのように働いていたのか? 『労働新聞』にふさわしいそんな本を、今までも十川陽一『人事の古代史』(ちくま新書)(2021年5月10日号)渡邊大門『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』(星海社新書)(23年4月10日号)戸森麻衣子『仕事と江戸時代』(ちくま新書)(24年4月1日号)と紹介してきたが、今回は平安貴族たちのお仕事ぶりだ。

 平安貴族というと女流文学の影響で、仕事もせずに蹴鞠や和歌、管弦などにばかり明け暮れていたイメージがあるが、実際はかなりの激務であったらしい。もっとも、生まれによって出世のコースが厳然と分かれている身分社会なので、一生懸命働くのは四位と五位の諸太夫と六位以下の侍(侍といっても後世の武士ではなく、下級官吏のこと)だ。外記政(げきせい)という、諸国や各官庁から提出された書類(申文=もうしぶみ)を読み、決裁する政務についてみると、史という侍クラスが申文を読み上げ、三位以上の公卿が「よし」と裁許を下し、諸太夫クラスの少納言・外記が「オオー」と称唯(いしょう)するという儀式が決まっている。

 しかしそのためには、参考となる先例をまとめた附属資料の続文(つづきぶみ)を準備しなければならず、やがて政務を開始する前に続文を作成するための事務局会議(結政=かたなし)が行なわれるようになった。

 年間をとおしてこの類いの政務は頻繁に開催されるが、公卿はけっこう平気で欠席するので、下級官吏たちは振り回される。正月の儀式では、公卿たちのために下級官吏は一日中夜中まで平安京を駆けずり回る。読むだけでヘトヘトに疲れる。

 それほど働いても、出世の見込みは生まれでほぼ決まっている。本書副題の「どこまで出世できるのか」に対する答えは、49頁のこの一節に尽きるだろう。曰く、「身分をこえた抜擢は、ほぼない。身分とは、個人の能力ごときではびくともしない、ケタ違いに分厚く高い壁である。それをこえさせることができるのは、強大な権力を握った院権力のような存在だけであろう。だが、そこでなされる抜擢は通常、優れていることを理由にしない。平安貴族社会の中では、日常の勤務を続ける限りにおいて、身分をこえるような昇進は、滅多に見られないレア・ケースなのである」。

 一方で、平安時代はウソも方便がまかり通る社会でもあった。和泉式部の夫の藤原保昌は大和守に任じられ、任地に向けて出発したが、その途次で携えていた任符を紛失してしまった。これは新任国司であることを証明する身分証明書である。そこで、保昌は任符の再発行を願い出た。しかし正式の再発行となると、手間もかかるし、保昌の責任論になる。

 ならばと、先に発行したものは捺印されていなかったことにして、正式なものを改めて発行することにした。ハンコを押すのは侍クラスよりも下の無位の史生(ししょう)たちである。永遠の下積みの彼らのせいにしておけば、物事は丸く収まるというわけだ。めでたしめでたし。

 

2026年7月22日 (水)

EUクオリティ・ジョブ法への第2次協議開始

Colleaguesworkinginofficeusingcomputer20 昨年12月に、欧州委員会がクオリティ・ジョブ法についての労使団体への第1次協議を開始したことを伝えましたが、それから半年余りたって、第2次協議が開始されたようです。

https://employment-social-affairs.ec.europa.eu/news/commission-opens-second-phase-consultation-quality-jobs-act-2026-07-20_en

The European Commission has launched the second-phase consultation with European social partners on the upcoming Quality Jobs Act. The initiative aims to improve working conditions, health and safety and workers’ rights across the EU.

論点は5つにわたります。

  • Algorithmic management and artificial intelligence at work – making automated decisions more transparent and human-centred, and protecting employees from excessive monitoring.
  • Safety and health at work – updating rules for workplaces outside traditional offices and tackling risks such as extreme heat and psychosocial hazards, including sexual harassment.
  • Workers’ rights in subcontracting chains – improving transparency, liability and enforcement to prevent labour exploitation.
  • Fair digital and green transitions – supporting skills development and social dialogue so workers are not left behind when companies adapt to a changing economy.
  • Enforcement and role of social partners – strengthening labour inspections, sanctions for non-compliance, and social dialogue.

職場のアルゴリズム管理と人工知能、労働安全衛生、下請連鎖における労働者の権利、公正なデジタル・グリーンな移行、実施と労使対話の役割というやや幅広な論点ですが、今後どのように進展していくか引き続き関心を持ってフォローしていきたいと思います。

 

 

2026年7月20日 (月)

労働判例研究 労働組合の役員選出総会決議の不存在確認-プレカリアートユニオン事件@『ジュリスト』2026年8月号の予告

最高裁の判例検索を見ていたら、つい先日の7月16日の最高裁判決

https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96798.pdf

令和6年(オ)第720号、第721号 損害賠償請求本訴、同反訴事件 令和8年7月16日 第一小法廷判決

というのが掲載されていて、これは例のプレカリアートユニオンに係る事件なんですね。

1 職権をもって調査すると、記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。
⑴ 第1審本訴被告は、労働組合法11条の登記がされた法人である労働組合であって、その規約においては、代表者は同法上の総会によって選任される旨が定められている。
⑵ 第1審本訴原告は、令和2年6月、第1審本訴被告の代表者を、令和元年6月に代表者に重任された旨登記されていたAとして、本件本訴を提起し、Aは、第1審本訴被告の代表者として、令和3年1月、本件反訴を提起した。第1審が、令和5年4月、本件本訴、本件反訴のそれぞれについて請求を一部認容し、その余の請求を棄却したところ、双方から控訴が提起され、原審は、令和6年1月、各控訴を棄却した。本件訴訟の第1審本訴被告に係る訴訟追行は、その代表者をAとして行われたものであった。
⑶ 第1審本訴被告の組合員が第1審本訴被告に対して提起した別件訴訟において、令和6年2月、Aを代表者に選任する旨の平成27年から令和5年までの間における各総会決議がいずれも不存在であることを確認する旨の判決がされ、同判決は、令和7年7月、確定した。
2 上記1の経緯によれば、本件訴訟は、第1審本訴被告について、代表権を欠く者を代表者として提起・追行されたものというべきである。
したがって、原判決には、民訴法312条2項4号に該当する事由がある。原判決は、破棄を免れない。

この第1審本訴被告というのがプレカリアートユニオンで、第1審本訴原告はテイケイという会社ですが、最高裁への上告の段階で例の総会決議不存在確認判決を持ち出してきたということのようで、それを受けて最高裁は高裁に差し戻したというわけです。

3 ところで、第1審本訴被告は、当審に令和8年4月27日付け及び同年5月18日付けの各書面を提出し、令和6年5月及び令和7年9月に開催された各総会において、改めてAを代表者に選任する旨の各決議がされ、同人によってこれまでの訴訟行為が追認された旨を主張している。これに対し、第1審本訴原告は、当審に令和8年5月19日付け書面を提出し、第1審本訴被告の上記の主張を争うことを明らかにしている。そこで、上記各決議の存否や効力の有無など、第1審本訴被告の上記主張の当否について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。なお、代表権の有無は職権探知事項であるから、本件において原判決を破棄するについては、必ずしも口頭弁論を経ることを要しないと解するのが相当である(最高裁昭和62年(オ)第685号平成19年3月27日第三小法廷判決・民集61巻2号711頁参照)。

815tn4fpl_sy522_ ここで上告理由となっている総会決議不存在確認判決については、実は今年の4月に東大の労働判例研究会で報告し、5日後に刊行される『ジュリスト』2026年8月号に掲載される予定です。

https://www.yuhikaku.co.jp/jurist/next

労働判例研究
130 労働組合の役員選出総会決議の不存在確認――プレカリアートユニオン事件(東京高判令和6・11・13)●濱口桂一郎
134 通勤災害における複数居所の「住居」該当性――土浦労基署長(通勤災害)事件(東京地判令和6・3・14)●中益陽子

 

 

2026年7月17日 (金)

ドイツ:「連邦協約遵守法」の概説と邦語訳

JILPTのHPに、山本陽大さんと木内大登さん(同志社大学の博士課程)によるドイツの「連邦協約遵守法」の概説と邦語訳が掲載されています。

https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2026/07/germany.html

https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2026/07/germany_01.html

今般の連邦協約遵守法は、いわゆる公共調達に際し受注企業の労働者に一定水準以上の労働条件を保障し、当該企業に対してその遵守を義務付ける点で、機能的には、わが国における公契約条例に相当する。ドイツにおいても、これまでに州レベルの公共調達に関しては各州法による同様の規制が存在したが、連邦協約遵守法は、その名の通り、連邦レベルでの公共調達に関して連邦法の形式をもって規制を行うものとなっている。・・・

産別協約による労働条件規制のモデル国とも思われているドイツですが、足下では組織率低下による空洞化が進んできており、それを何とか支えようという試みが2014年の協約自治強化法だったわけですが、今回のはそれを公契約というルートで行おうというもののようです。

労働条件規制を単なる個別労働問題としてだけではなく、集団的労使関係システムの強化という観点から進めようというこの動きは、もちろん企業別組合主体の日本とは全く文脈は異なるとはいえ、その問題意識は共有する値打ちはあるはずでしょう。

 

 

2026年7月16日 (木)

小熊英二さんとの対話@『公研』7月号

20260716134000724x1024 公益産業研究調査会の雑誌『公研』の7月号に、小熊英二さんとの対話「人手不足の正体 雇用と労働から見えた日本のかたち」が載っています。

https://koken-publication.com/%E6%9C%80%E6%96%B0%E5%8F%B7

◆対話
人手不足の正体 雇用と労働から見えた日本のかたち
労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長 /濱口桂一郎
慶應義塾大学総合政策学部 教授/小熊英二

人手不足を切り口に、人口減少、専門職、新卒者の流動化、日本型雇用の限界、なぜ日本がこうなったか、日本型雇用の適用範囲、改革の方向性と可能性、職業教育への価値観、といったトピックについて語り合っています。おおむね、小熊さんがツッコミ役で、わたしがボケ役です。

 

 

『日本の労働経済事情 2026年版』

07131402_6a5471677495c 日本経済団体連合会事務局著『日本の労働経済事情 2026年版』(経団連出版)をお送りいただきました。

https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/pub/cat2/efb229a9b1a611368ec886574cc6ab4dd8b81ebf.html

人事・労務全般に関する基本的な事項や、重要な労働法制の概要と改正の動向、わが国労働市場の動向などについて、1テーマ・1頁を基本に、図表を用いてわかりやすく簡潔に解説します。2026年版では、パートタイム・有期雇用労働法、男女雇用機会均等法、労働安全衛生法等の法令改正のほか、カスタマーハラスメント防止対策、若年社員の活躍推進、労働移動の積極的な推進に向けた施策等、最新の動向を解説しています。人事・労務部門の初任担当者がはじめに学習する際に役立つことはもちろん、新任管理職など、業務等を通じて人事・労務に関心を持たれた方が基本的な事項を理解・確認する手引きとしてもご活用いただけます。

 

 

 

2026年7月14日 (火)

「能力」の正体@WEB労政時報

WEB労政時報に「「能力」の正体」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/article/91139

近年、日本政府は「リ・スキリング」を大々的に唱道しています。安倍政権時の日本再興戦略から始まり、近年も岸田政権時の「三位一体の労働市場改革」から、現・高市政権下の「人材育成システム改革ビジョン」に至るまで、スキル、つまり具体的な職務(ジョブ)を遂行する技能(スキル)を身に付け、向上することが政策の中心課題として掲げられています。ところが、政府が鉦(かね)鉦(かね)や太鼓でリ・スキリングをあおり立てても、・・・・・

 

 

『管理職の戦後史』がHRアワード書籍部門に入賞したようです

Asahishinsho2_20260714092201 日本の人事部というところが毎年やっているHRアワードという催しがあって、2022年には拙著『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)が入賞したことがありますが、その2026年の書籍部門に、『管理職の戦後史』(朝日新書)が入賞したようです。

https://jinjibu.jp/hr-award/prize.php#prize2

いや正直言って、『ジョブ型雇用社会とは何か』はかなり評判になったし、週刊東洋経済や日経新聞のベスト経済書とか中央公論の新書大賞にも入賞したので、まあそういうものかなと思いましたが、今回の『管理職の戦後史』は悲しいかなあんまり評判にもなっていないし、書評も少なく、新書大賞でも小熊英二さんがちらりと触れてくれただけで、いささか忘れられている感があったので、入賞というのは思いがけないものでした。

これで少しでも売れてくれればいいんですが。

 

 

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