海老原嗣生『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』

Shinsho1704_clanthumb150xauto577 海老原嗣生さんの『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』(星海社新書)をおおくりいただきました。ありがとうございます。

http://seikaisha.co.jp/information/2017/04/11-post-clan.html

「夢はあきらめるべきものであり、だからこそかなうものである」

本書は、「常識を疑う」ことを信条とする人事・雇用のカリスマが、「夢はあきらめると、けっこうかなう」という一見矛盾した結論を導いているキャリア論の古典にして決定版「クランボルツ理論」について、わかりやすく、また、小気味よく解説した講演の模様を160Pに濃縮したものです。お話の題材となるのは、今をときめくお笑い芸人たち。テレビやネットでおなじみの方々のキャリアをベースに、図やイラストをふんだんに使って説明していきますので、本を読むのが苦手な方にも、気軽に読んでいただけます。夢にとらわれず、こだわらず――夢と上手に付き合って、人生の難易度を下げる方法をいっしょに学びませんか?

海老原さんのもう一つの顔であるキャリア論の実践書。

出てくる例がお笑い芸人だったり、どうなのかな、っていう感じもけっこうあります。

一番心の中で突っ込みが入ったのは、徳川(松平)譜代のうち3人に一人が大名になれているというところ。いやそれはたまたま仕えた相手が徳川(松平)さんだったからで、これが今川さんや武田さんや北条さんだったらそうは問屋が卸さないでしょ。

つまらない感想で申し訳ありませんけど。

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豊田義博『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』

9784569832029 豊田義博さんの『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか? 職場での成長を放棄する若者たち』(PHPビジネス新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-83202-9

意識は高いが、目標は無難。まじめだけど、気が利かない。

 一見矛盾する若手の深層心理を知って自分から動く部下を育てる。

 まじめで優秀、自己実現志向で、意識と意欲も高い一方、報告・相談ができず、指示待ちでリスク回避志向な現代の若手社員たち。そんな彼らは、実は最初から職場での成長を“放棄”している!?――

 本書では、一見矛盾した若者の実態と彼らが生まれた背景を、30年以上にわたって日本の若者を見つめ続けてきた著者が丁寧に解説。

 「最近の若手社員が何を考えているのかわからない……」と若手育成に悩む管理職・マネジャーたちに向けて、職場で「生き生きと働けていない」新人・若手を、「自分から動ける人材」にするための処方箋を提示する1冊。

一見、近頃の若者を叱りつけている本に見えますが、基本スタンスは、その原因は彼らの側ではなく会社の側にある、というものです。

第1章 前向き、なのに頑張らない――若手社員の矛盾に満ちた実態

第2章 「新能力」「新学力」がもたらした大転換

第3章 「えもいわれぬ違和感」の正体

第4章 マネジャーへの処方箋――環境適応性を引き出す「問いかけ」の力

第5章 若手社員への処方箋――「天職探し」を捨てよ、外に出よう

そして、第2章、第3章あたりで分析していることは相当程度うなずけるものでもあります。

ところが、本書はレーベルの性格上からなのかわかりませんが、やや目先レベルの処方箋を並べることに性急になっている感があります。

何も具体的なスキルを持たない若者が試行錯誤して成果を上げられずに失敗を繰り返してもそれを見守ることのできる余裕とか、そういう若者をOJTと称して教育訓練することに相当のエネルギーを割けるような余裕を与えられていた中高年といった、いまではかなり希薄化したシステム的リソースが欠如したまま、「自分から動ける人材」に育てようというのはなかなか無理難題ではないかと思うのですが。

これは社会学的思考と心理学的思考の対立みたいなものかも知れませんが、リクルート系の方に時々感じられるある種の心理学主義的な何かには、正直どうなのかな、というところもないわけではありません。

まあ、この辺は、人によっていろいろな意見があるとは思いますが。

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雇用類似の働き方と集団的“労使”関係@『労基旬報』4月25日号

『労基旬報』4月25日号に「雇用類似の働き方と集団的“労使”関係」を寄稿しました。

 安倍内閣の下で働き方改革が進められる中、経済産業省は去る2016年11月に「雇用関係によらない働き方」に関する研究会を開催し、去る今年3月には報告書を取りまとめました。同報告書は雇用関係によらない働き方を日本型雇用システムの対極にあるものと位置づけ、働き方の選択肢として確立することを目指しています。全体として雇用関係によらない働き方を楽観的に描き出そうとする傾向が強いのですが、それでもいくつかの問題点を指摘し、この働き方が広がるための環境整備として、いくつかの提言をしています。
 まず働き手のセーフティネットの不十分さです。研究会での指摘として、「雇用形態で就業中であれば病気になられても給付金があったり、救済措置がとられますが、フリーの場合は全くありません。仕事が切れてこなければ何の保障もない、病気怪我で仕事ができなくなれば明日からは保障がないということになります」「やむを得ず休業しなければならない状況になったとき、もう少し補償が欲しい」といった意見が紹介されています。ここではとりわけ受注減または廃業時の公的な保障制度が不足していることが問題視され、「労働者であれば、失業によって収入がなくなったとしても、その後の一定期間、生活の安定と再就職の促進を目的として、雇用保険から基本手当(失業給付)が支給される。これに対して、雇用関係によらない働き手(個人事業主)は、雇用保険に加入できないため、受注がなく収入がなくなったとしても、あるいは廃業をして収入がなくなったとしても、失業給付の支給を受けることができず、その他の公的なセーフティネットも、特段存在しない」述べています。
 この問題に対して同報告書は、「休業時の公的な補償制度の不足を補充するものとしては、民間の保険が考えられる」とし、「今後、そういった民間保険の種類がさらに広がるとともに、保険料の点も含めてより使いやすいものとなることが望ましい」と述べるにとどまっていますが、経済産業省の政策としては既に具体化が進んでいるようで、そのすぐ後の日経新聞(3月14日)に「フリーランス失業に保険」というかなり大きな記事が載りました。それによると、政府はフリーで働く人への支援として所得補償を受け取れる団体保険を創設し、「損保大手と専用の商品を開発し、契約がなくなった場合にも所得を得られるようにする。今年発足した業界団体「フリーランス協会」に加入すれば、保険料が最大5割軽減される団体割引の仕組みとする」とのことです。
 今年発足したばかりの団体に政府がここまで肩入れすることにやや違和感も感じますし、マクロ社会的な問題としてセーフティネットの欠如が問題であるならば、労使折半による雇用保険とは異なる形での何らかの公的な「失業」保険的なものを考えることが正道のような気もします。周知の通り、労災保険については一人親方や家内労働者について、自分で保険料を払う任意加入の形で個人加入という仕組みが設けられていますが、今のところ、そういう発想は見当たらないようです。
 これと関連して、廃業に伴って生活資金が不足するリスクの軽減策として、小規模企業共済制度を活用することを提言しています。これは、事業を営んでいる間に資金の積立を行っておくことで、事業の廃業時に一定の共済金を受領できる制度です。
 次に報酬(受注単価)が定額であり、生活を成り立たせることが困難な場合が多いことを指摘しています。アンケートでもおよそ半数が「スキルに見合った単価で受注できていない」と回答しています。労働者には最低賃金法や労働基準法の保護が及びますが、雇用関係によらない働き方ではそうした保護は及びません。ところが現実にはそうした働き方であっても、発注者に対し(特に経済的な面で)従属的立場にあり、低い契約条件で業務を行うことを余儀なくされているようです。「個人対企業の図式で仕事の交渉をする際にやはり力の差というものを感じ」るという意見も示されています。
 この問題に対して同報告書は、まずは著しく低い対価を不当に定めることを禁止する下請代金支払遅延等防止法による規制を挙げます。しかし、下請法が適用されるのは一定範囲の取引に限られる上、そもそも雇用関係によらない働き手の場合は労働者同様、企業(発注者)との関係で対等な立場に立てないがゆえに、結果として、不当な対価であっても受け入れざるを得ないことが多々あることを考えると、「その従属的立場を踏まえて、一定の範囲で労働法制による保護を及ぼすことが、中長期的には検討されてよい」とも踏み込んでいます。
 ただ、そのすぐ後で急いで、「そのような保護を及ばせると、逆に労働時間や場所の柔軟性・自立性という・・・メリットを失わせることにもなりかねない」とブレーキをかけ、「検討に当たっては、慎重な考慮が必要である」と消極的な姿勢を示しています。
 また、報酬額をはじめとした働き手の契約条件を改善するという観点から、企業と働き手との取引環境の健全化や、働き手に変わってプラットフォーマーが働き手の契約条件の適正化を図ること等も重要と指摘しています。
 さらに、報酬の不払いが起こったときの交渉が難しいなど報酬回収の不確実性についても、上記下請法による代金の支払遅延の禁止の遵守とともに、実際に支払いの遅延や不履行が生じた場合のための金銭的補償手段が設けられることが望ましいとしています。既に企業向けには、代金受領遅延の場合をカバーする民間保険が存在するようです。
 さてここまで見てきて、この経済産業省主導の研究会では全く取り上げられていない分野があるのに気がつかれた方も多いと思います。それは、こうした雇用類似の働き方で働く人々が何らかの形で団結し、集団的な枠組でものごとを解決していくという筋道です。雇用労働者をめぐる法政策は、国家権力が直接労働者保護を図る労働条件法政策、同じく国家権力が労働者のためのセーフティネットを張り巡らす社会保障法政策と並んで、労働者自らが団結して自分たちの労働条件の改善を図っていく労使関係法政策が重要な柱でした。ところが、本報告書ではそういう関心は全く見当たりません。
 経済産業省所管の制度の中にそれに該当するものがないからというわけではありません。昨年の本連載「協同組合の団体協約締結権」(2016年11月25日号)で紹介したように、法制的には労働者性のない明らかな自営業者に対しても、組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結といった集団的労使関係システムに類似した法制度を用意しているのです。これはいささか意識的な無視に見えます。
 もっとも、集団的労使関係システムの適用という点では、労働組合法上の「労働者」概念を、労働基準法等のそれよりも拡大し、個人請負として働く人々にも適用していくという方向性が、最高裁の判例等により少しずつ見られるところではあります。ただ、それには限界がありますし、この働き方が社会の相当部分を占めるに至るという未来像を想定するのであれば、やはり正面から雇用類似の働き方における集団的“労使”関係のあり方を論じていく必要があるように思います。
 実は、労働行政が所管する雇用類似の働き方に係る法規制の先行型である家内労働法の制定過程においては、野党や労働組合からそうした提案がなされたことがあります。たとえば日本社会党が1970年4月に提出した家内労働法案は、その目的として工賃、安全衛生などの労働条件だけでなく「家内労働者が自主的に家内労働者組合を組織し、委託者と対等の立場に立って交渉すること及び家内労働関係の当事者間における争議行為についてのあっせん及び調停等」をも規定しようとする包括的な法制度となっていました。「家内労働者は、工賃等、安全及び衛生その他労働条件につき、委託者又はその団体と労働協約の締結等の交渉をするため、家内労働者組合を組織することができ」、労働組合法を準用するとともに、労働委員会が家内労働関係の当事者間の争議行為についてあっせん及び調停を行うという規定です。これは結局、家内労働審議会答申では「引き続き検討」とされ、そのまま半世紀以上にわたって顧みられることはなかった事項ですが、内容規制から手続規制へという今日的観点から改めて見直してみる値打ちはありそうです。

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日本的柔軟性の限定とデジタル柔軟性の拡大@WEB労政時報

WEB労政時報に「日本的柔軟性の限定とデジタル柔軟性の拡大」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=651

去る3月28日に働き方改革実現会議で「働き方改革実行計画」が決定されました。世間の関心は、先月取り上げた長時間労働の是正と、これまた今まで何回か取り上げてきた非正規雇用の処遇改善に集中していますが、この実行計画は10を超える多くの項目を盛り込んでおり、その中でも「柔軟な働き方がしやすい環境整備」などは、これからのデジタル時代の働き方という観点からも注目する必要があります。
そして、これら両者の政策方向は、働き方の柔軟性という意味で言うと、一方は“日本的柔軟性をできるだけ限定する方向”であるのに対して、他方はデジタル技術の発展により可能となってきた“柔軟な働き方を一層促進しようという方向”です。もちろんこれは相反するわけではありませんが、今日の労働をめぐる状況を絶妙に照らし出している感があります。

まず、前者の“日本的柔軟性の限定”です。 ・・・

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明治大学労働講座

E794bbe5838f20194 2010年からずっとやっている明治大学労働講座「未来の自分をつかめ~OB・OGの働き方をとおして考える」の案内がアップされています。

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~labored/kifukoza/rodokoza2017.html

例によって、前半いろんな人が「職場のリアル」を語ったあとで、私は半ば頃に

6月6日 労働社会の改革(1) 日本の労働社会の成り立ちから現状を考える

という回を担当することになっています。

ところで、このページを見ていたら、今年は「火曜日5限(17:10〜18:50)」と書いてあるんですが、確か昨年までと同様2限と聞いていたような・・・。

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欧州社会民主主義に未来はあるか?

Royo_bio フランス大統領選が明日に迫る今日この頃ですが、ソーシャル・ヨーロッパ・マガジンからセバスチャン・ロヨの「欧州社会民主主義に未来はあるか?」を。まんまタイトル通りですが。

https://www.socialeurope.eu/2017/04/future-social-democracy-europe/

The response to the Great Recession from European social democratic/centre-left parties, with some notable exceptions like Portugal’s, was largely to implement the austerity policies of the right: they bailed out the banks and the bondholders, and they tightened fiscal policies and supported loose monetary ones. The economic and political consequences of these policies have been disastrous, particularly for Southern Europe: they led to brutal recessions that have left many of our countries in shambles, with deepening inequalities, increasing political instability, and a pervasive sense of fear and loss of hope about the future. These have led to the electoral defeats of centre-left parties and fueled the rise of populism all over Europe.

欧州社会民主主義/中道左派政党の大不況への反応は、ポルトガルのような例外を除き、おおむね右派の緊縮政策を実施するものだった。彼らは銀行と債権所有者に資金援助し、財政政策を締め上げ、金融政策を緩和した。これら政策の経済的政治的帰結は、とりわけ南欧諸国では惨憺たるものであり、多くの国を残酷な不況により不平等の拡大と政治的不穏の増大と恐怖と未来への希望の喪失の感覚の瀰漫とともに混乱を残した。これらが選挙における中道左派の敗北をもたらし、欧州全域にわたるポピュリズムの興隆を焚き付けたのである。

The biggest mistake, of course, was the acceptance and implementation of austerity, which turned social democratic governments into reactionaries. Centre-left politicians, convinced that elections were won from the centre, obsessed with a mission to prove that they could also be fiscally responsible, incapable of joining forces at EU level to counter Germany’s dogmatism, and complacent because they felt that leftist voters had no alternatives, jumped eagerly onto the austerity bandwagon, in some cases even doubling down to prove their bona fides to the markets, with all the consequences our countries will suffer from for years to come.

最大の失敗はもちろん、緊縮策の受容と実施であり、これが社会民主主義政権を反動へと転化した。中道左派政治家たちは中道からの票で選挙に勝てると信じて、彼らが財政的に責任あることを証明する任務に取り憑かれ、左翼の有権者にはほかに投票する先なんていないとおもって、熱心に緊縮政策の流行に飛び乗り、ときには市場への善意に倍掛けするほどだったが、そのあげくはこの有様だ。

・・・・・Rather than blindly supporting fiscal austerity and free trade agreements, which have hurt their core traditional constituencies, progressive governments need to find the right mix of monetary and fiscal policies, support public sector investment, and lower taxes to the middle class to encourage greater consumption. They also need to reform their tax and welfare systems to encourage a fairer distribution of wealth and reduce inequality, as well as invest in infrastructure and in their communities; implement industrial policies that help diversify our economies as well as apply labor standards that protect our workers, even if we need to change our trade rules; and enforce financial regulations that prevent the damage caused by short-term capital flows. Finally, they need to rethink how we educate and train our workforce to meet the demands of the future.

・・・・・伝統的な中核的支持基盤を痛めつける緊縮財政と自由貿易協定を盲目的に支持するのではなく、進歩的政権は金融政策と財政政策の正しいミックスを見いだし、公共部門の投資を支持し、消費拡大のため中間層を減税する必要がある。彼らはまた税制と福祉制度を改革して富の公平な分配と不平等の削減を促進するとともにインフラとコミュニティに投資し、経済のダイバーシティを拡大する産業政策を進めるとともに労働者を保護する労働基準を適用し、短期的な資本の移動で引き起こされる被害を防止するための金融規制を強化する必要がある。最後に彼らは我々労働力が将来の需要に対応できるよう教育訓練のあり方を再検討する必要がある。

And they need to accept that many of the solutions need to be implemented at the European level. The constraints imposed by EU rules are central to understand the predicament of centre-left parties because Eurozone members must abide by a plethora of strict fiscal rules that constrain national policies and have forced centre-left parties to worship at the altar of budgetary restraint and competitiveness to satisfy their Eurozone masters (as well as financial markets), often at the expense of social policies and their citizens’. Right now, for any country to escape the fiscal straitjacket of the Growth & Stability Pact, the only real option is to leave the euro. That is the solution offered by extremist parties. Rather, what we need is more fiscal flexibility and a Eurozone-wide investment plan funded by Eurobonds. While this is now opposed by Germany, centre-left parties need to find a way to come together and counter this rigid stance.

そして彼らは多くの解決策がEUレベルで実施される必要があることを受け入れる必要がある。EU規則で強制された制約は中道左派の苦境を理解する上で枢要である。というのは、ユーロ圏諸国は国内政策を制約する厳格な財政規則の多血症に従わなければならず、これが中道左派政党に社会政策や市民を犠牲にして財政制約の祭壇に跪かせた。いまや、成長安定協定の財政的拘禁服から逃れ出るために唯一の現実的な選択肢はユーロから脱出することだ。これは急進派政党から提示されている選択肢である。むしろ我々に必要なのは、財政的柔軟性の拡大であり、ユーロ圏全域でユーロ債でまかなう投資計画である。ドイツがこれに反対しているが、中道左派政党はこれを乗り越え道を見いだす必要がある。

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元アイドルほか(グループB)事件(東京地判平成28年7月7日)

昨日、東大労働判例研究会で上記判決を報告したのですが、

http://hamachan.on.coocan.jp/rohan170421.html

72 まあ、この事件自体、小学5年生の女の子にアイドルとして集団による歌唱・ダンスを中心としたライブ活動のほか、○○券を購入したファンとの交流活動(お散歩、コスプレ、プリクラ、ビンタ等)をやらせるといういささかいかがわしげな商売なんですが、それはともかく、労判の席上で渡辺章先生から思いがけない指摘を受けました。

Maxresdefault_1 それは、労働基準法56条が満13歳未満の児童の労働を認めているのは「映画の製作又は演劇の事業」だけであって、その他の「興行の事業」は含まれないのではないかということです。

条文を引いておきますと、

(最低年齢)

第五十六条  使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。

2  前項の規定にかかわらず、別表第一第一号から第五号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。

別表第一 (第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)

一 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)

二 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業

三 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業

四 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業

五 ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業

六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業

七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業

八 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業

九 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業

十 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業

十一 郵便、信書便又は電気通信の事業

十二 教育、研究又は調査の事業

十三 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業

十四 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業

十五 焼却、清掃又はと畜場の事業

Maxresdefault ふむ、小学校5年生の女の子がアイドルグループとして歌ったり踊ったりすること自体が13歳未満の児童に認められる「映画の製作又は演劇の事業」には当てはまらず、労働基準法の事業分類ではそれと同類ではあるけれども、13歳未満の児童の労働が許されないその他の「興行の事業」なんじゃないか、という指摘です。

45ef45fd 確かに条文の規定ぶりからするとそういう解釈にもなりそうですが、そうすると、いまの芸能界は大変なことになっちゃうんじゃないかと思いますが。そもそも労働基準法ができた頃はテレビもなかったわけで、ある程度は「映画演劇」の拡大解釈でやらないと、とても持たないのでしょう。

O0640045213048887722 ちなみに、上記裁判例で小学5年生の女の子にやらせていた

・「20分散歩券」、「40分打ち合わせ券」を購入したファンと、Xスタッフの監視の下で、所定の時間一緒に過ごし、飲食店や買い物等に出かける。

・「撮影券」を購入したファンに対し、小道具を用いたり、簡単なコスプレをするなどして、写真撮影の被写体となったり、「2ショットチェキ券」を購入したファンと一定のポーズを作りツーショット写真を撮影したり、また、「プリクラ券」を購入したファンと近場のゲームセンター等へ出向いて二人きりでプリクラ撮影をしたりする。

・セーラー服・メイド服・サンタクロース・幼稚園児服・ナース服・警察官制服などを着用して、コスプレイベントに出演する。

・コスプレイベント等において、「ビンタ券」を購入したファンに対し、その要望に応じて設定されたシチュエーションに合わせてビンタをする。

てのは、いかに映画演劇を拡大解釈しても認めようのない「興行の事業」という感じですが。こういうアイドルの肉体そのものへの接近接触それ自体を営利の資源とするビジネスモデルというのは、いうまでもなく秋元康氏が作り上げたものですが、やはりその根底にいかがわしさが否定できないように思います。

ということで、あとはPOSSEのアイドル部長坂倉さんにバトンを渡した方がいいようです。

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『情報労連REPORT』4月号

1704_cover 『情報労連REPORT』4月号は「パワハラをなくそう」が特集です。

http://ictj-report.joho.or.jp/1704/

特集記事は、

あなたの会社にもいるかも!?「クラッシャー上司」への対処法は? 松崎一葉

「ブラック企業」の労働相談から読み解くパワハラ問題の背景にある社会構造とは?今野晴貴

過労死事件の多くで長時間労働とパワハラは同時に起きている 川人博

苦しみを声に出させない「ブラック部活」と「ブラック企業」の共通点 内田良

パワハラ防止措置を法制化する動き 民進党内で石橋みちひろ議員らが推進 石橋みちひろ

職場で人格を傷つけてはいけないパワハラ問題の核心は個人の尊厳の尊重 嶋﨑量

パワハラを発生させない労使コミュニケーションのあり方とは?呉学殊

「マタハラ」は異なる働き方を排除する働き方へのハラスメント 小酒部 さやか

1704_sp05_face 本ブログの読者にとってはおなじみの方々がおなじみの議論を展開しているのですが、その中でちょっと異色なのが、民進党の国会議員である石橋さんの法制化についての記事です。

http://ictj-report.joho.or.jp/1704/sp05.html

どういう法制化を考えているかというと、

現在、事務局で法案骨子を検討している段階ですが、大きな方向性としては、労働安全衛生法(安衛法)を改正して、パワハラを定義し、その防止措置や対策に関して雇用管理上の責務を事業者に課すことを想定しています。

現行の安衛法でも、事業者に対して労働者の心身の健康を守る責務のあることが規定されています。パワハラというのは、まさに心の健康や職業生活上の安心・安全を奪う恐れのある行為であって、結果、働く人を死に追い込んだり、働けない状態に追いやったりする可能性がある深刻なものです。このような観点に立てば、事業者には従業員の健康や安心を守るために、パワハラを防止して、適切な対応を取る責務があると位置付けられます。

とのことです。

そして注目すべきは、社内のパワハラだけではなく、違う企業間のものや顧客からのものも対象に考えていることでしょう。

第一に、同一企業、または事業所内でのパワハラがあります。これは、最低限、対象範囲に含めなければなりません。

しかし、パワハラが発生するのは同一事業所内の人間関係だけではありません。違う企業間でも、例えば親会社の社員から子会社の社員や、発注元から下請けの社員に対するパワハラもあるわけです。実は、民主党政権時代の2012年に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が取りまとめた「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」(図表1)というのがあって、私たちも参考にしているのですが、その中で定義したパワハラには、この企業横断的なものは対象としていません。私たちはこれを第二類型として、検討課題としています。

そしてもう一つは、昨今、問題が大きくなっていますが、消費者や公共サービス等の利用者などから労働者や公務員に対して起きるパワハラです。例えば、モンスターペアレントやモンスターペイシェントなど、教育機関や医療の現場などで度を超した悪質なクレームによる被害が拡大しています。いわゆる「感情労働」問題ですが、これを第三類型として議論の俎上に載せました(図表2)。

具体的な防止措置の内容としては、

まず、国に対して、パワハラ対策として事業主が講ずべき措置に関する指針を策定させます。その上で、事業者に対し、国の指針に基づいた行動計画の策定と、対策を実行するための部署の設置または担当者の任命を求めます。こうしたスキームを通じて、(1)予防的措置(2)問題の早期発見(3)問題発生後の迅速かつ適切な対応策─を講じることを求めます。

適切な措置を取らない事業者に対しては、セクハラやマタハラと同じように、指導・勧告、そして企業名公表などの措置を想定しています。また、紛争解決処理に関しては、個別労働紛争解決促進法に基づくあっせん、その他中立的な第三者機関による紛争処理を想定しています。その他の中立的な第三者機関としたのは、前述した第二類型、第三類型に対応させる必要があるためで、これは今後の議論でさらに検討を深めていきます。

とのことですが、第二類型やとりわけ第三類型になるとなかなか難しそうです。

この「お客様は神様」問題について、石橋さんは、

第三類型はもっと難しいです。というのも、例えば消費者保護法など現行の法体系では、「消費者は弱い立場」なので保護が必要だという前提で作られています。条件付きとはいえ、消費者を加害者と位置付けること自体にハードルが非常に高いのです。ただ、さまざまな産業分野で悪質クレイマーへの対策について要請があるのも事実ですので、何らかの対策を講じることができないか、引き続き慎重に検討していきたいと思います。

と、難しさを認識しつつ、取り組んでいきたいという気持ちを示しています。

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同一労働同一賃金部会

厚労省のHPに労政審の同一労働同一賃金部会の案内が出ています。4月28日、ゴールデンウィークの直前の金曜日に招集するようです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000162861.html

正確にいうと、

「第1回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会」

です。

ふむ、働き方改革実行計画では、労働契約法、労働者派遣法、パート労働法を一括改正すると云う事になっているので、3分科会のもとに一つの部会をこしらえてまとめてやってしまうと云う事ですね。

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年功給か職務給か? by 金子良事×龍井葉二

956b今月から月刊化した『労働情報』の4月号に、面白い対談が載っています。

http://www.rodojoho.org/index.html

●〈論争のススメ〉 第1回

 年功給か職務給か?

 …… 金子 良事(大原社会問題研究所 兼任研究員)

 …… 龍井 葉二(元連合総研副所長)

ちょっと短い対談なので、意を尽くせていないところもありますが、どちらもすごく重要なことをさらりと語っています。

近年の日本ではなまじ非正規労働者の格差是正という文脈のみで論じられてきてしまったため、職務給で格差がなくなるという誤解が生まれてしまったようですが、もちろん、そういうわけではありません。

たとえばこういう相談に対してどう答えるのか、とか。

龍井 実際にあった労働相談で、あるスーパーの勤続10年のシングルマザーから電話がかかってきて、昨日入ってきた高校生の女の子と何でほとんど同じ時給なのかって。・・・

龍井 ・・・まあ経験の違いはあるけど、同一労働とも言える。でも養ってもらっている高校生と、子どもを育てているお母さんと時給が同じというのはどう考えたらいいか。なかなか簡単に答えが出ないんだけど、考えさせられた相談だったよ。そこにはどうしても生活給、生計費という問題を避けて通れないわけです。

そう、そして、それこそが約100年前に呉海軍工廠の伍堂卓雄(なぜか対談では「貞夫」になってますけど)が考えたことでもあるのですね。

 由来給与と生活費は夫々階級に応じ各自の社会的自覚によりて比較的平穏に経過し来りたるものなれども、近時資本家生活資料供給者家主等の如き従来相当公徳を維持し来りたるものが順次利己的傾向を明かにするに至りたると又這次の生活上の大変動は一般に労働者の社会的地位に対し自覚を促したる状況にあるに関らず現状に於ては彼等の生活を調整するの組織なく此儘にして放任せんか終には思潮の悪化を誘導して社会的攪乱の禍因を醸成するの虞れなしとせず此際局に当るものは職工給与に関し慎重なる考慮を払い合理的なる制度の採用を促進するの最大急務なるを惟う。・・・
 彼等が生活費の最低限として当然要求し得るものは一人前の職工とし其職を励む以上自己一身の生活は勿論日本の社会制度として避くべからざる家族の扶養に差支なき程度のものならざるべからず。・・・
 最近生活費の上騰は「フィッキドウエージ」により一般に至当と認めらるる家族に要する生活費に達せしむる事は現状到底望み得べからざるを以て年齢と共に増加する式と改むるの外なきが如し此式による時は昇給は本人の技能の上達及び物価騰貴に全然関係なきものにして単に生活費の増加に応ずるものとなり給料の高低に関らず或る程度以上の高給者と未成年者を除き勤続者は常に一定の昇給率を以て昇給することとなるべし

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明治大学現代中国研究所日中雇用・労使関係シンポジウム

明治大学現代中国研究所主催の第3回日中雇用・労使関係シンポジウムの案内がアップされていたので、こちらでもご紹介。

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~china/report/

Toplogo

明治大学現代中国研究所主催、明治大学労働教育メディア研究センター後援

第三回 日中雇用・労使関係シンポジウム──非正規時代の労働問題

(第三届劳动关系与劳工问题 日中学术研讨会──非正规雇佣时代的课题)

■5月20日(土)会場:明治大学駿河台校舎リバティタワー1012教室

09:00〜09:30 参加者受付、資料配布

09:30     開幕

09:30〜09:35 日本側代表挨拶:石井知章(明治大学商学部教授)

09:35〜09:40 中国側代表挨拶:楊河清(首都経済貿易大学労働経済学院教授)

09:40〜10:40 記念講演1 花見忠(上智大学名誉教授)演題:「最近の日本における過労死問題」

10:40〜10:55 休憩

10:55〜11:55 記念講演2 常凱(首都経済貿易大学労働経済学院教授)演題:「中国における非正規労働政策と課題」

11:55〜12:20 質問と討論

12:20〜13:20 お昼休み

13:20〜15:00 セッション1 非正規雇用と法規制

  コーディネーター 馮喜良(首都経済貿易大学労働経済学院教授)

  (発表時間:1人10分、通訳を含め20分以内)

  1.濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構労使関係部門統括研究員)テーマ:「日本における非正規雇用の歴史」

  2.陶文忠(首都経済貿易大学労働経済学院副教授)テーマ:「非正規雇用労働関係についての判断」

  3.易定紅(中国人民大学労働人事学院教授)テーマ:「中国の非正規部門およびその労働関係」

  4.劉誠(上海師範大学教授)テーマ:「Analysis on Anti-Labor Contract Law Viewpoints(反労働契約法的観点についての分析)」

  5.範囲(首都経済貿易大学労働経済学院副教授)

    テーマ:「独立請負人、あるいは労働者:中国ネット予約タクシーの法律身分に関する境界設定──判例を基礎として」

15:00〜15:20 質問と討論

15:20〜15:35 休憩

15:35〜17:15 セッション2  労使関係と団体労使争議の処理

  コーディネーター 藤川久昭(青山学院大学法学部教授)

  1.鈴木賢(明治大学法学部教授、北海道大学名誉教授)テーマ:「日本における非正規労働者の増加と労働組合」

  2.早川智津子(佐賀大学大学院地域デザイン研究科・経済学部教授)テーマ:「日本の労使関係と紛争処理制度」

  3.王侃(中国労働関係学院講師)テーマ:「中国労働NGOの発展の現状」

  4.戸谷義治(琉球大学法文学部准教授)テーマ:「非正規労働者と団結権保障」

  5.石井知章(明治大学商学部教授)テーマ:「非正規雇用問題に関する日中比較研究」

17:15〜17:35 質問と討論

■5月21日会場:明治大学グローバルフロント・グローバルホール

09:30〜11:40 セッション3 非正規就業労働者の権利保護

  コーディネーター  楊河清(首都経済貿易大学労働経済学院教授)

  1.龍井葉二(前連合非正規労働センター長)テーマ:「非正規雇用と労働運動~連合の取り組みを中心に」

  2.高須裕彦(一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センタープロジェクトディレクター)

    テーマ:「日本の非正規労働者と労働組合・労働NGOの取り組み」

  3.馮喜良(首都経済貿易大学労働経済学院教授)

    テーマ:「インタネット・プラットホーム雇用モデルにおける労働者権益の保護研究」

10:30〜10:40 休憩

  4.葉迎(中国労働関係学院副教授)テーマ:「中国養老介護職の発展に係る問題研究」

  5.山下昇(九州大学法学部教授)テーマ:「能力不足を理由とする解雇の日中比較」

  6.阿古智子(東京大学総合文化研究科准教授)テーマ:「戸籍をめぐる雇用差別から考える中国の労働者の権利」

11:40〜12:00 質問と討論

12:00〜13:00 お昼休み

13:00〜15:00 セッション4 労働力市場の法規制

  コーディネーター 早川智津子(佐賀大学大学院地域デザイン研究科・経済学部教授)

  1.梶谷懐(神戸大学大学院経済学研究科教授)テーマ:「中国の労働問題と日中関係―歴史的視点から」

  2.馮彦君(吉林大学法学院教授)テーマ:「中国の非典型労働関係における報酬権とその実現」

  3.小玉潤(社会保険労務士法人J&Cマネジメントパートナー代表社員、特定社会保険労務士)

    テーマ:「日本における過労死問題と法規制」

  4.呂学静(首都経済貿易大学労働経済学院教授)テーマ:「中国における新業態就業と失業保険問題に関する研究」

  5.王晶(首都経済貿易大学労働経済学院副教授)テーマ:「経済労働関係の享有に関する挑戦」

  6.崔勛(南開大学商学院教授、博士課程指導教官)

    テーマ:「非典型労働者における雇用の安全感と公平感の組織アイデンティティに対する影響研究」

15:00〜15:20 質問と討論

15:20〜15:30 休憩

15:30〜16:50 セッション5 日中間における労働関係のホットイシュー

  コーディネーター 阿古智子(東京大学総合文化研究科准教授)

  1.章群(西南財経大学教授)テーマ:「インターネット:タクシーネット予約業界の労働関係についての境界設定」

  2.藤川久昭(青山学院大学法学部教授)テーマ:「労働裁判・労働審判手続において労働法学は有用か」

  3.王長城(中南財経政法大学労働経済研究所所長、教授)テーマ:「特殊気候条件下における労働保護問題」

  4.楊河清(首都経済貿易大学労働経済学院教授)テーマ:「中日両国における過労問題研究状況の比較」

16:50〜17:10 質問と討論

17:10〜17:30 総括コメント 常凱(首都経済貿易大学労働経済学院教授)

17:30〜17:35 閉幕のあいさつ 鈴木賢(明治大学法学部教授)

ということで、土日の二日間をフルに使った大シンポジウムですね。

わたくしは初日の午後いちで報告をします。発表時間:1人10分、通訳を含め20分以内てことなんですが、できるかな。

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玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

24070そのものズバリ、聞きたいことをそのままタイトルにした本です。曰く:人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか?

https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766424072/

“最大の謎”の解明に挑む!

働き手にとって最重要な関心事である所得アップが実現しないのは、なぜ?
22名の気鋭が、現代日本の労働市場の構造を、驚きと納得の視点から明らかに。
▼企業業績は回復し人手不足の状態なのに賃金が思ったほど上がらないのはなぜか? この問題に対して22名の気鋭の労働経済学者、エコノミストらが一堂に会し、多方面から議論する読み応え十分な経済学アンソロジー。
▼各章は論点を「労働需給」「行動」「制度」「規制」「正規雇用」「能力開発」「年齢」の七つの切り口のどれか(複数もあり)を中心に展開。読者はこの章が何を中心に論議しているのかが一目瞭然に理解できる、わかりやすい構成となっている。
▼編者の玄田教授はまず、本テーマがなぜいまの日本において重要か、という「問いの背景」を説明し、各章へと導く。最後に執筆者一同がどのような議論を展開したかを総括で解題する。
▼労働経済学のほか、経営学、社会学、マクロ経済、国際経済の専門家や、厚生労働省、総務省統計局、日銀のエコノミストなど多彩な顔ぶれによる多面的な解釈は、まさに現代日本の労働市場が置かれているさまを記録としてとどめる役割も果たしている。

詳細な目次はこちらにありますので、ご参考までに。

玄田さんの編集なので経済学者がやや多いですが、人事労務管理論の人、労使関係論の人、社会学の人など、それぞれの切り口の違いが面白いです。

経済学系の議論ではやはり、第5章(山本、黒田)や第14章(加藤)が論じている賃金の上方硬直性の原因論が面白いです。

えっ?上方硬直性?そう、景気が悪くなっても賃金が下がらない現象を下方硬直性と呼ぶならば、景気がよくなっても賃金が上がらない現象は上方硬直性ですね。

その原因を、これら論文は下方硬直性にあるといいます。えっ?何のこと?

細かい議論は第14章でされていますが、第5章での表現を使えば、

・・・過去の不況期に賃下げに苦慮した企業ほど、景気回復期に賃上げを控える傾向にある可能性、すなわち「名目賃金の上方硬直性」は「名目賃金の下方硬直性」によってもたらされている可能性があることを指摘する。

という議論です。ちょっとアクロバティックな感じをかもしつつきっちりと経済学的な議論になっていて、とても面白いです。

一方、人事労務管理や労使関係の専門家がこの問題に取り組むと違った側面が見えてきます。

第6章(梅崎)は人材育成力の低下による「分厚い中間層」の崩壊が原因なんだと説きます。企業から見たら、人手不足だけれど本当に欲しい人材がいないからだと。

あるいは、JILPTの西村さんの第13章は、前に本ブログでも若干紹介しましたが、賃金表が変わってきて、積み上げ型からゾーン別昇給表になってきたため、ベースアップしてもそれが後に効果として残っていかなくなっているということを指摘します。

そして社会学の立場から第15章(有田)は、日本の非正規雇用が身分制が強く、生活保障の必要性が正社員との格差の正当化理由だったのに、能力という別の正当化ロジックで都合のよい使い分けがされてきたといいます。これについても、有田さんの本を紹介した時にやや詳しく紹介しました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-8659.html(有田伸『就業機会と報酬格差の社会学』)

事実認識として結構衝撃的なのは、第4章(黒田)が示す、就職氷河期世代が見事に低賃金のまま今に至ってきているというデータでしょう。

2010年から2015年にきま給の変化を学歴別年齢階層別に見ると、高卒と高専短大卒で35-39歳層、大学大学院卒で35-39歳層ととりわけ40-45歳層でぐっと落ち込んでいるのです。これはつまり上のコーホートよりも低賃金になったということで、就職氷河期世代が被った「傷痕」効果は極めて大きなものであったことが分かります。

ちなみに、この黒田さんの論文は連合総研が昨年11月に出した『就職氷河期世代の経済・社会への影響と対策に関する研究委員会報告書』の黒田論文のサマリーになっていて、そちらから、グラフを引用しておきますね。

http://www.rengo-soken.or.jp/report_db/file/1478760813_a.pdf

Diodio

他の論文もそれぞれに興味深い議論を展開しています。この問題に関心のある人々にとっては「買い」でしょう。

基本データ 人手不足と賃金停滞   玄田有史・深井太洋

 序  問いの背景   玄田有史

第1章 人手不足なのに賃金が上がらない三つの理由   近藤絢子
 ポイント 【規制】 【需給】 【行動】
  1 求人増加の異なる背景
  2 医療・福祉:介護報酬制度による介護職の賃金抑制
  3 「人手不足イコール労働力に対する超過需要」ではない可能性
  4 名目賃金の下方硬直性の裏返し
  5 複合的な要因解明が必要

第2章 賃上げについての経営側の考えとその背景   小倉一哉
 ポイント 【制度】
  1 賃上げ率と賞与・一時金の動向
  2 経団連の主張と主な特徴
  3 成果主義の普及
  4 経営環境の変化
  5 今後も不透明は漂う

第3章 規制を緩和しても賃金は上がらない
――バス運転手の事例から   阿部正浩
 ポイント 【規制】 【制度】
  1 バス需要の増加と深刻な運転手の人手不足問題
  2 バス運転手の仕事と労働市場の特徴
  3 バス運転手の賃金構造の変化
  4 なぜ賃金水準は下がったのか
  5 バス運転手の労働市場の問題か

第4章 今も続いている就職氷河期の影響   黒田啓太
 ポイント 【年齢】 【正規】 【能開】
  1 「就職氷河期世代」への注目
  2 同一年齢で見る世代間賃金格差
  (1) 学歴別・性別によるちがい
  (2) 雇用形態別の給与額
  (3) 給与額増減の要因分解
  (4) 「就職氷河期世代」の労働者数に占める割合について
  3 「就職氷河期世代」の賃金が低い理由
  4 氷河期世代の悲劇

第5章 給与の下方硬直性がもたらす上方硬直性   山本 勲・黒田祥子
 ポイント 【行動】
  1 下方硬直性によって生じ得る名目賃金の上方硬直性
  2 名目賃金の下方硬直性が生じる理由とエビデンス
  3 企業のパネルデータを用いた検証
  (1) 利用するデータと検証方法
  (2) 過去の賃金カットと賃上げの状況
  (3) 名目賃金の下方硬直性と上方硬直性の関係
  4 日本の賃金変動の特徴と政策的な含意

第6章 人材育成力の低下による「分厚い中間層」の崩壊   梅崎 修
 ポイント 【制度】 【能開】
  1 「欲しい人材」と「働きたい人材」のズレ
  2 「分厚い中間層」の崩壊
  3 New Deal at Workのジレンマ
  4 企業内OJTの衰退
  (1) 長期競争よりも短期競争
  (2) 経験の場の消失
  5 解決策は実現可能な希望なのか

第7章 人手不足と賃金停滞の並存は経済理論で説明できる   川口大司・原ひろみ
 ポイント 【正規】 【需給】 【能開】
  1 問題意識――パズルは存在するか
  2 企業の賃金改定の状況とその理由
  3 労働者の構成変化が平均賃金に与える影響
  4 女性・高齢者による弾力的な労働供給
  5 労働供給構造の転換点と賃金上昇
  6 賃金が上昇する経済環境を整えるために――人的資本投資の強化

第8章 サーチ=マッチング・モデルと行動経済学から考える賃金停滞   佐々木勝
 ポイント 【需給】 【行動】
  1 日本だけの問題なのか
  2 標準モデルから予想できること
  3 モデルは循環的特性を再現できるか
  4 なぜ賃金調整は硬直的なのか
  5 賃金硬直性の帰結と背景

第9章 家計調査等から探る賃金低迷の理由――企業負担の増大   大島敬士・佐藤朋彦
 ポイント 【年齢】 【正規】 【制度】
  1 世帯の側からの視点
  2 世帯主の勤め先収入
  3 世帯主の年齢分布
  4 高齢化・非正規化の影響
  5 増加する賃金以外の雇主負担
  (1) 上昇する社会保険料率
  (2) 非消費支出比率の上昇
  (3) 世帯主の勤め先収入
  (4) 1人あたり雇主の社会負担
  6 社会保険料率等の引き上げの影響

第10章 国際競争がサービス業の賃金を抑えたのか   塩路悦朗
 ポイント 【規制】 【需給】
  1 高齢化社会と「あり得たはずのもう一つの現実」
  2 パズルは本当にパズルなのか――国際競争に注目する理由
  3 イベント分析の対象としてのリーマン・ショック
  4 検証1:求職者は対人サービス部門に押し寄せたか
  5 検証2:求職者の波に対人サービス賃金は反応したか
  6 検証結果のまとめ
  7 労働市場で何が起きているのか? 図解
  8 今後の課題:なぜ対人サービス賃金は硬直的なのか

第11章 賃金が上がらないのは複合的な要因による   太田聰一
 ポイント 【正規】 【需給】 【年齢】
  1 原因は一つではない
  2 非正規雇用者の増大
  3 賃金版フィリップス曲線から
  4 誰の賃金が上がっていないのか
  5 議論――「世代リスク」にどう対処するか

第12章 マクロ経済からみる労働需給と賃金の関係   中井雅之
 ポイント 【需給】 【正規】
  1 日本的雇用慣行の特徴から労働需給と賃金の関係を考える
  2 労働需給と賃金は必ずしも連動しない
  3 需給変動と内部・外部労働市場
  4 雇用の非正規化と一般の時間あたり賃金の動向
  5 労働市場の課題と労働政策

第13章 賃金表の変化から考える賃金が上がりにくい理由   西村 純
 ポイント 【制度】
  1 賃金の決まり方
  (1) 賃金表
  (2) 三つの要素
  2 昇給の仕組み(三つの方法)
  3 昇給額決定の実際
  (1) 「積み上げ型」の賃金表
  (2) 「ゾーン別昇給表」の登場
  (3) ベースアップ
  (4)賃金表変化の背景
  4 賃金を上げるために

第14章 非正規増加と賃金下方硬直の影響についての理論的考察   加藤 涼
 ポイント 【正規】 【年齢】 【行動】
  1 なぜ賃金は上がりにくくなったのか――問題の所在
  2 賃金が硬直的な下での正規・非正規の二部門モデル
  3 賃金の下方硬直性と上方硬直性
  4 人的資本への過少投資と賃金の上方硬直性

第15章 社会学から考える非正規雇用の低賃金とその変容   有田 伸
 ポイント 【正規】
  1 社会学と国際比較の視点から
  2 日本の非正規雇用とは何か
  (1) 正規/非正規雇用間の賃金格差
  (2) 賃金格差の強い「標準性」
  (3) 非正規雇用の補捉方法の特徴
  3 なぜ日本の非正規雇用の賃金は低いのか
  (1) 格差の正当化ロジックへの着目
  (2) 企業による生活保障システムと格差の正当化
  (3) もう一つの正当化ロジックと都合のよい使い分け
  4 非正規雇用の静かな変容
  5 なぜ賃金が上がらないのか――非正規雇用に着目して考える

第16章 賃金は本当に上がっていないのか――疑似パネルによる検証   上野有子・神林龍
 ポイント 【需給】 【年齢】
  1 上がらない賃金?
  2 賃金センサス疑似パネルからみた名目賃金変化率
  3 賃金総額の変化の分解
  4 結論――上がらない賃金と人手不足傾向の解釈

結び 総括――人手不足期に賃金が上がらなかった理由   玄田有史

あとがき

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福田耕治編著『EU・欧州統合研究[改訂版]』

51rzab447fl__sx350_bo1204203200_引馬知子さんより、福田耕治編著『EU・欧州統合研究[改訂版]Brexit以後の欧州ガバナンス』(成文堂)をお送りいただきました。

http://www.seibundoh.co.jp/pub/search/030621.html

2009年に出た本の改訂版です。2009年にいただいた時のエントリはこちらです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/eu-6583.html

副題にもあるように、初版が出た時からのEUは疾風怒濤の時期を経験し、昨年は遂にイギリス離脱というところまでいきました。

はしがき…福田耕治
第1部 EU/欧州統合研究の基礎
第1章 ヨーロッパとは何か
―欧州統合の理念と歴史…森原隆…2
はじめに…2
第1節 「ヨーロッパ」の起源とギリシア・ローマ世界の
「ヨーロッパ」…3
第2節 聖書・初期キリスト教の「ヨーロッパ」…6
第3節 中世「キリスト教世界」の精神的統合と
近世「ヨーロッパ」の分化…10
第4節 近世ヨーロッパの勢力均衡,統合・平和思想…13
第5節 近代ヨーロッパの国民・文明・文化統合の動き…16
第6節 20世紀「ヨーロッパ連合・EU」前史…18
おわりに…20
第2章 EU・欧州統合過程と欧州統合理論…福田耕治…23
はじめに…23
第1節 欧州統合の起源とクーデンホーフ・カレルギー…24
第2節 欧州統合の目的と制度設計…26
第3節 欧州地域統合の歴史的発展…28
第4節 EU条約―マーストリヒト条約から
リスボン条約までの変遷…30
第5節 欧州統合理論アプローチ…34
おわりに…42
第3章 EU経済通貨統合と世界金融・経済危機…田中素香…47
はじめに…47
第1節 経済統合について…47
第2節 EUの経済統合発展の諸段階(経済統合の深化)…49
第3節 域内市場統合―経済統合の後期(広域国民経済形成)
その1―…53
第4節 通貨統合―経済統合の後期(広域国民経済形成)
その2―ユーロについて…56
第5節 EUの拡大…63
第6節 世界金融・経済危機とEU…67
おわりに…71
第2部 EU機構と政策過程
第4章 EU/EC法秩序とリスボン条約…須網隆夫…76
はじめに…76
第1節 EU/EC法秩序の基礎…77
第2節 「多義的な主権概念」と「主権の分割可能性」…78
第3節 国家主権とEC権限…83
第4節 統治権限の移譲の意味…87
第5節 リスボン条約の構造とEU法…91
おわりに…95
第5章 EU・欧州ガバナンスと政策過程の民主化
―リスボン条約による機構改革―…福田耕治…100
はじめに…100
第1節 EUにおける法制化と民主的ガバナンス…101
第2節 欧州ガバナンス:ハード・ローによる法制化と
デモクラシー…105
第3節 EU政策過程と欧州ガバナンスの類型…111
第4節 EU・リスボン条約における法制化と民主的ガバナンス…113
おわりに…120
第6章 欧州議会の機能と構造
―立法・選挙・政党…日野愛郎…124
はじめに…124
第1節 欧州議会の立法権…124
第2節 欧州議会の選挙制度…129
第3節 欧州議会の政党システム…135
おわりに…137
第3部 EUの持続可能なガバナンスとリスク管理
第7章 EU高齢者政策とリスク管理
―貧困・社会的排除とCSRによるリスク制御―…福田耕治…142
はじめに…142
第1節 EUの持続可能な社会の構築とリスク管理…143
第2節 EU高齢者政策と各加盟国の年金制度改革:
開放型年金整合化方式(OMC)による調整…147
第3節 EUの高齢者雇用・社会的排除のリスク制御と
EUのCSR政策…151
おわりに…154
第8章 EU対テロ規制と法政策…須網隆夫…158
はじめに…158
第1節 EUにおける国際テロリズム規制…158
第2節 国際テロリズム規制と基本的人権の保障…165
おわりに…173
第9章 EU不正防止政策と欧州不正防止局
…山本直…177
はじめに…177
第1節 EU不正防止政策の始動…177
第2節 欧州不正防止局の設置と捜査活動…180
第3節 EU政治システムにおける欧州不正防止局…185
おわりに…186
第10章 EUタバコ規制政策と健康リスク管理…福田八寿絵…189
はじめに…189
第1節 喫煙と健康リスク…190
第2節 EUのタバコ規制政策の形成…191
第3節 各加盟国のタバコ規制の取り組み…194
第4節 タバコ規制に係わるステークホルダー…199
第5節 タバコの喫煙率の現状と喫煙に対する市民の意識…201
おわりに…202
第4部 EUの域内政策の展開と課題
第11章 EU共通農業政策と東方拡大…弦間正彦…212
はじめに…212
第1節 共通農業政策と改革…213
第2節 東方拡大とCAP…219
おわりに…223
第12章 EU社会政策の多次元的展開と均等待遇保障
―人々の多様性を尊重し活かす社会の創造に向けて―…引馬知子…226
はじめに…226
第1節 EU社会政策と均等待遇保障…227
第2節 EU均等法…230
第3節 雇用均等枠組指令とEU全加盟国での置換…232
第4節 加盟国間の履行上の相違と収斂…234
第5節 EUによる均等施策・行動計画…243
第6節 EU均等法施策における「福祉アプローチ」と
「市民権アプローチ」の共存…244
おわりに…245
第13章 EU科学技術政策とジェンダー
―先端生命医科学研究政策を事例として―
…福田八寿絵…250
はじめに…250
第1節 EU科学技術政策の形成…251
第2節 EU科学技術政策(FP7)とリスボン戦略…252
第3節 EUにおける科学技術政策とジェンダー…254
第4節 女性と科学―生命医科学研究開発分野への
女性支援政策の形成と展開…256
第5節 生命医科学研究におけるジェンダー配慮の必要性…259
おわりに…263
第5部 EUの対外政策と課題
第14章 EU共通通商政策とWTO…須網隆夫…270
はじめに…270
第1節 共通通商政策に係る権限の性質…271
第2節 共通通商政策の範囲―WTO協定の文脈において―…273
第3節 WTO法の裁判規範性…279
おわりに…285
第15章 EUとアフリカ…片岡貞治…289
はじめに…289
第1節 EUの開発援助政策の特殊性と概略…290
第2節 EUの対アフリカ戦略…297
おわりに…304
第16章 EUの対西バルカン政策…久保慶一…308
はじめに…308
第1節 欧州の「挫折」―EUと旧ユーゴ紛争…308
第2節 EU加盟プロセスの発足…312
第3節 危機管理能力の向上―CFSPの発展と紛争後
平和構築…316
おわりに…319

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前田正子『保育園問題』

102429 前田正子さんの『保育園問題 待機児童、保育士不足、建設反対運動』(中公新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/04/102429.html

毎年2万人以上の待機児童が生まれる日本。厳しい「保活」を経ても、保育園に入れない子どもが多数いる。少子化の進む日本で、保育園が増えてもなぜ待機児童は減らないのか。なぜ保育士のなり手が少ないのか。量の拡充に走る一方、事故の心配はないのか。開設に反対する近隣住民を説得できるのか――。母親として、横浜副市長として、研究者として、この課題に取り組んできた著者が、広い視野から丁寧に解き明かす。

前田正子さんといえば、先月『大卒無業女性の憂鬱』を紹介したばかりですが、今度の本は前田さんの本領中の本領、保育所問題をこの上なく見事にまとめた一冊になっています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-1111.html

最近、中公新書こそがあらゆる新書の保守本流になっているという声をよく聞きますが、本書などまさにその典型、ちょっと斜め後ろから批判しているような本も良いけれど、この問題だったらこの一冊と何のためらいもなく人に勧められる本というのも、新書本の果たすべき一つの役割なのでしょう。

第1章で日本の保育制度を簡潔明瞭に説明したあと、第2章「待機児童はなぜ解消されないのか」、第3章「なぜ保育士が足りないのか」と、今日の保育制度が抱える難題を手際よく解き明かし、第4章「量も質ものジレンマ」では、副題にもある建設反対運動の問題から始まって、保育事故の問題にも言及し、親が過敏になっていることの問題点も指摘するという目配りの良さです。この章の最後では、ある種の経済学者が唱道したがるバウチャー制がもたらす問題点も見事に指摘されています。

第5章「大人が変われば子育てが変わる」は、大人たちの働き方に矛先が向かい、育児休業と0歳児保育の問題にも論究しています。

その中でちらちらと前田さん自身の体験に基づく記述が挟み込まれ、説得力を増しています。

保育所問題についてこの一冊といえば疑いなくこの一冊、と言える本でしょう。

一点だけよくわからないのは、本書の中では一貫して「保育所」と呼ばれているにもかかわらず、なぜか本のタイトルでだけ「保育園」になっていることです。

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安中繁『週4正社員のススメ』

51pbhkj9bal__sx351_bo1204203200_社会保険労務士の安中繁さんから『週4正社員のススメ』(経営書院)をおおくりいただきました。

最近、介護離職や、長時間労働が問題視されています。長時間労働の是正は、我が国における重大な政策テーマと位置づけられるようになりました。 本書では、「週4正社員制度」をはじめ、多様な正社員制度を導入した企業の先行事例を紹介するとともに、導入プロセスと導入に際して出てくる課題への対応、就業規則の規定例等をまじえ具体的に解説しています。

もちろん実務書の作りですが、はじめの方の社会を取り巻く環境変化の中ではメンバーシップ型雇用の説明なども出てきます。

著者の安中さん自身が、コラムによると「現在妊娠8か月で本稿を執筆中」とのことで、その辺が文章にじみ出ているのでしょう。

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