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2021年1月27日 (水)

新卒と言ってる時点でジョブ型じゃねぇんだが

日経新聞は、いくら口を酸っぱくするほど説き聞かせても、信念を貫くようです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF261Y10W1A120C2000000(新卒からジョブ型、生産性向上へ経団連案 春季労使交渉)

・・・年功序列でなく職責や成果で評価する仕組みや、専門性を生かして働くジョブ型雇用を広めるよう労使で協議する構えだ。

いやだから、そもそもヒトを評価するのか、ポストを評価するのかという、メンバーシップ型とジョブ型の一番根源の違いを、これっぽっちも理解する気がないという気概だけはひしひしと伝わってきます。

・・・ジョブ型の新卒採用を始める。年齢を問わず職能に報いる体系にする。

いやだから、頼むから人事部一年生用の、人事労務管理の基礎の基礎の教科書をちらりとでも読んでから記事を書いてよ。「職能に報いる」のがまさに日本型システムの根幹をなす職能給って書いてあるはずだから。

そもそも、「新卒から」といった瞬間に、始めに企業の構成要素たるジョブありき、そこにジョブを遂行しうるスキルのある人を「はめ込む」というジョブ型とは根本から異なる話をしているって、分かってるんだろうか。

 

 

 

 

 

 

2021年1月26日 (火)

韓国労働法は結社の自由違反だとEU専門家パネル

韓国とEUの自由貿易協定の専門家パネルが、韓国の労働組合法はILOの結社の自由原則に違反していると判断したようです。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_203

The independent panel concluded that the Republic of Korea needs to adjust its labour laws and practices and to continue swiftly the process of ratifying four fundamental International Labour Organization (ILO) Conventions in order to comply with the agreement. 

Korea-labour-rights 韓国の労使関係法はかつて軍事政権下で団結抑制的な性格が強く、民主化以降かなりの改正がされてきたはずですが、なおILO条約の批准を要求されるようなところがあるのですね。

これについて、欧州労連(ETUC)は、かなりきつい言葉で韓国を批判しています。

https://www.etuc.org/en/pressrelease/korea-trade-breach-shows-need-eu-sanctions-over-labour-violations

“South Korea has one of the worst records in the world when it comes to workers’ rights, with basic freedoms like the right to join or form a trade union limited for decades. 

「韓国は、労働組合に加入したり結成したりする基本的自由が何十年も制限されており、こと労働者の権利については世界で最悪の記録を有する国の一つだ」

いや、そこまで言われると、もっとはるかに結社の自由がかけらもない諸国が近くにうようよしているのを知っている近隣国としては、それは言い過ぎやろ、と思ってしまいますが。

 

2021年1月25日 (月)

『日本労働研究雑誌』2021年特別号(No.727)

727_special 『日本労働研究雑誌』2021年特別号(No.727)は、例年通り2020年労働政策研究会議報告ですが、コロナ禍でこの会議自体が開催されなかったため、そこに提出された論文が載っています。

総括テーマ
総括テーマ 〈平等〉の視点からみた女性労働(PDF:464KB)
2020年労働政策研究会議準備委員会

総括テーマ・概要(PDF:624KB)
武石 恵美子(法政大学キャリアデザイン学部教授)

総括テーマセッション「〈平等〉の視点からみた女性労働」
論文
組合の視点からみた女性労働 永島 智子(元イオンリテールワーカーズユニオン中央執行委員長)

男女の雇用平等──法制の現状と課題 中窪 裕也(一橋大学教授)

日本における男女不平等──賃金格差の要因分析を中心に 山口 一男(シカゴ大学教授)

女性活躍指標の吟味からみた男女のキャリアの違い 脇坂 明(学習院大学教授)

自由論題セッション
論文要旨
芸能人の労働者性 佐藤 大和(レイ法律事務所)

管理職層における発言機構の整備──三菱電機の1981年役職制度改訂・労働協約改訂 鈴木 誠(長野大学准教授)

論文
総合職共働き世帯における転勤発生時の意思決定プロセスとその影響  小山 はるか(法政大学大学院)

論文要旨
大卒若年労働者の学び経験とキャリア形成──「ゆとり教育」に注目して 平井 晴香(同志社大学大学院博士前期課程修了)浦坂 純子(同志社大学教授)

〈平等〉の視点からみたパート労働の日独比 田中 洋子(筑波大学教授)

論文
中小企業における中途採用者の組織適応及び働きがい・定着意識向上に関する研究 田中 秀樹(同志社大学准教授)

論文要旨
自己調整学習方略が学習効果に及ぼす影響と事業戦略および学習支援の調整効果 佐藤 雄一郎(法政大学大学院博士後期課程)石山 恒貴(法政大学教授)

論文
スウェーデンにおける労働協約を通じた派遣労働者の賃金決定 西村 純(JILPT副主任研究員)前浦 穂高(JILPT副主任研究員)

ダイバーシティのもとでの集団的労使コミュニケーション──少数派による「集団的発言」機能に注目して 松浦 民恵(法政大学教授)

論文要旨
海外勤務経験者の帰国後キャリアトランジション──日本人女性事例における適応行動とアイデンティティ 細萱 伸子(上智大学准教授)

論文
仕事と介護の両立における介護疲労やストレスが就労に及ぼす影響について──離職の可能性とプレゼンティーズムに着目して  林 邦彦(法政大学大学院博士後期課程)

論文要旨
母親を取り巻く労働環境とワーク・ライフ・バランス 内藤 朋枝(成蹊大学非常勤講師)

全文掲載論文と要旨だけ載せている論文は、準備委員会が選定したとのことですが、私個人からすると、既に中身をよくわかっているのが全文掲載されている一方、「芸能人の労働者性」などタイトルからぜひ読みたいなと思うのが要旨だけになっていて、ちょっと残念です。

2021年1月24日 (日)

ボクちゃんだけが真実を知ってる症候群

そろそろテレビでは光秀が信長を殺そうとし始める頃なので、その昔の中二時代の恥ずかしい黒歴史を。

というのも、例のアメリカ大統領選挙をめぐって、日本でも大勢の馬鹿やアホやタワケどもが踊り狂った(てる)姿を見て、あるいはもろもろのインチキ論に嵌まっていく人々の群れを見て、心のどこかに「こいつら、その昔の自分やなあ」という思いも湧いてくるところがあったりするので。

Tumblr_prnk0zzsee1tcs4dno1_1280  要するに、「ボクちゃんだけが真実を知ってる症候群」なんだけど、クラスの半分くらいが不良や不良予備軍みたいな公立中学校の大したことのない目立たぬ二年生のぼうやが、なぜかほかの生徒や教師も読んでなさそうな八切止夫の歴史モノに嵌まってしまい、『信長殺し、光秀ではない』とか『上杉謙信は女だった』とか『徳川家康は替え玉だった』とか、もう何十冊も読みふけって、これこそほかの馬鹿どもが知らない歴史の真実だ!!と思い込んでしまったわけです。で、挙げ句の果てに、その公立中学校で社会科の教師をしている可哀そうな先生に、「あなたの教えているのはうそばっかりだ、歴史の真実はここに書いてあるから勉強するように」などと、めんどくさいことを言ってたんだから、まあ恥ずかしい話です。わが黒歴史。

まあ、そんじょそこらの中二のぼうやに比べりゃ、大人向けの歴史モドキの本を山のように読んでるだけで遥か認識の高みに上ったつもりになってるんだけど、そもそも歴史学ってのは、まず史料ってのがあってだな、ということがわかってない厨房だから、たまたま自分が読んだ活字がそのまま真実だと思い込んじゃう。そういう典型的なメカニズムを、中二時代にある意味一番いいサンプルで経験したもんだから、このあほだら踊りをしている人々の精神構造がじわじわわかってしまうところもあったりするわけです。

ちなみに、光秀が鞆に行ったり家康が摂津沖に船で来たりというのは、大筋以外はフィクションでいいというドラマの約束事なので、別に問題はありませんのであしからず。

労務と報酬の交換なきメンバーシップ契約の成れの果て

こういうツイートが話題になっているようですが、

https://twitter.com/_Aruko_ru_/status/1352590231313113096

 今日の面談内容です。
内定辞退する事になった決定的な会話を部分的に書き出しました訴えかける顔
詳しくは言えないですがまだ求人載せてて事務職で人気あると思いますが地雷もあるので気をつけて…

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いろんな観点から評論することができそうですが、労働法的には、そもそも本来であれば雇用契約の予約に過ぎないはずの内定を、(判例のもとになった個別事案的には、当該労働者を守ってやろうというパターナリスティックな観点から)雇用契約そのものであるというおかしな判断を下してしまったことの帰結ということもできそうです。

民法的には雇用契約とは労働に従事することと報酬の支払いという対価関係のある双方の行為の交換契約のはずですが、そのいずれもない内定状態をも雇用契約だと定義してしまうことによって、日本の雇用契約はもはや対価関係にある双方の行為の交換契約ではなく、会社の社員という地位(身分)を付与してあげる行為、私の言い方によれば、ジョブ契約ではなくメンバーシップ契約になってしまったわけです。

内定状態とは、もはやれっきとした会社のメンバーになったけれども、契約に基づく義務として労働に従事したり報酬を支払ったりする義務はない状態。義務はないけれども、もはやれっきとした会社のメンバーになったんだから、実際に仕事に従事しながらそのやり方を勉強するのは当然だよね、という感覚が、(そもそも民法の雇用契約は・・・という原理的反省が消えうせたまま)ごくごく当たり前のように蔓延してくるのも、これまたあまり不思議ではないことであるということができるでしょう。

たぶん、この会社側の人々は、学校の人が入試に合格した人に、正式に入学するまでにこれだけ勉強しておけよ、というのとまったく同じような感覚でこれを言っているのでしょうね。学校と会社を貫く日本的メンバーシップ感覚の強固さをよく表している一例です。

その強固な感覚の前には、六法全書に書かれている雇用契約の定義規定など、遥か宇宙の果ての得体のしれない謎文書のようなものでしかないのでしょうね。

 

 

 

2021年1月23日 (土)

諸外国のテレワーク法制概観議事録@第4回これからのテレワークでの働き方に関する検討会

昨年11月16日の第4回これからのテレワークでの働き方に関する検討会で報告した諸外国のテレワーク法制概観については、そのときにパワポスライドをお見せしましたが、その時のわたくしの発言を字に起こした議事録が厚労省のホームページにアップされていたようなので、こちらに私の発言部分と、質疑応答に応えた部分を切り取って載せておきます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000721083.pdf

○濱口委員 濱口でございます。
 今日、これから、ここにありますように「諸外国のテレワーク法制概観」ということで簡単に御報告申し上げたいと思います。
 これは、今回、コロナ禍で急速にテレワークが広がったということで、厚生労働省のほうから我々JILPTのほうに御依頼があって、うちの研究員を中心に、あと、外部の研究者も含めて、現在、研究中でございます。まとまるのは恐らく来年度の早いうちということになろうかと思いますが、本日はその途中段階、言わば中間報告的な形で御報告をさせていただこうと思っております。
 最初に、まず、総論的お話なのですが、実は、ちょうど1年前、コロナ禍が始まる直前、2019年11月に、ILOが「21世紀のテレワーク」という報告書を出しております。これは、コロナ禍直前における各国の状況が書かれているのですが、その序章で、これは前にもちらっとお話をしたのですが、テレワークの進化について3段階論的な説明をしております。頭の整理にいいのではないかと思いますので、ここで簡単に説明いたします。
 第1世代は「ホームオフィス」で、これは80年代から90年代にかけて、自宅で電話とかファクスを利用して仕事をするものです。当時はテレコミューティングという言い方が普通で、当時、トフラーの『第三の波』という本で、これが賞賛されていたということも御承知かと思います。
 第2世代は、90年代半ばから2000年にかけての時代で、ラップトップコンピューターとか携帯電話を利用して、自宅以外でも仕事ができるようになりました。これを、この本では「モバイルオフィス」の時代と呼んでおります。
 さらに2010年代以降は、スマートフォンとかタブレットで、情報処理と通信が完全に一体化します。また、情報もクラウド上で常時アクセス可能になります。そこで、もうモバイルオフィスを超えて今や「バーチャルオフィス」の時代になったのだと、この本は言っております。
 少し前にILOとEUの労働研究機構が出した共同研究の報告書があります。タイトルがなかなか興味深くて、「working anytime anywhere」、いつでもどこでも働くというタイトルです。これがコロナ禍の直前の状況だったのですが、ただ、いつでもどこでも働くと言っていたのは数%に過ぎません。ヨーロッパ全体でも3%ぐらいなのです。
 ところが、そこにコロナ禍が来て、一気に3分の1が在宅勤務になりました。皮肉な話ですけれども、進化の段階論からいうと、第1世代のホームオフィスが大々的に広がったというわけです。これは恐らく日本もそうでしょうし、世界中、似たような状況ではないかと思います。
 各国を見ていく前に、まず、EUの動きをちょっと概観しておきます。90年代後半からテレワークに対する問題意識が高まってまいりまして、もう20年近く昔になりますが、2002年に、EUレベルの労使団体、具体的には欧州労連とか欧州経団連といったところが、EUレベルのテレワーク協約というのを締結しております。これは、それ自体としては法的拘束力があるものではないのですが、各国の労使が自発的にこれに基づいて施行するという扱いになっております。
 協約の中身は、テレワークというのは自発的にやるものだとか、職場で働く人と同一の雇用条件、データ保護とかプライバシーの尊重、機材の費用をどう負担するか、安全衛生、労働組織、訓練、集団的権利等々といったことが書いてあります。
 ただ、当時はやはりテレワーカーは少数派だったのですが、コロナ禍の下で、EUの労働研究機構でもいろいろ調査をしております。それによると、恒常的にテレワークをしているのが約3分の1、何らかのテレワークをしているのが半数弱に上っております。
 以下、各国の状況を見てまいります。
 まず、ドイツでございますが、コロナ禍で労働者の36%が在宅勤務をしています。ドイツの連邦政府では、現在モバイルワーク請求権の法案の策定作業を進めております。実は、当初案は、モバイルワークを希望する労働者との協議を義務づけるというほどほどの案だったのですが、去る10月にハイル労働社会相、この方は社民党の政治家なのですが、この方が主導した草案では、労働者に1年につき24日のモバイルワーク請求権を付与し、使用者は緊急の経営上の理由がなければ拒否できないという、かなり強硬な案を政府部内で提起しているようなのです。ところが、連立を組むキリスト教民主同盟のほうでは、それはちょっときつ過ぎるのではないかということで異論もあるようです。これが今後どうなるかはまだ不透明だということでありまして、現行法上は、原則として労働者に在宅勤務請求権というのはありませんし、また、在宅勤務をする義務もありません。
 また、在宅勤務用の貸与機材を毀損したときに、損害賠償責任がどうなるかとか、労働者の支出した必要経費の負担をどうするか、あるいは、ホームオフィスへの立入権の問題もあります。これは、自宅への立入権は原則として認められていないということがありますので、逆に安全衛生の義務等も一部免除されているようです。さらに、通信障害による就労不能時にも賃金請求権があるというような扱いになっているようです。
 一番関心の高い労働時間規制ですが、まず、法律上、テレワークに関する特則というのはございません。ただ、使用者側には労働時間の把握が困難であるということで、労働者側にはワーク・ライフ・バランスの観点から、柔軟性、フレキシビリティーのニーズが高いということで、信頼労働時間という仕組みがあります。これは法律上の制度ではないのですけれども、使用者は労働時間管理を行わない、労働者のセルフマネジメントに委ねるという仕組みです。
 この場合でも、あくまでも労働時間規制はかかっておりますので、みなしや適用除外ではありません。ただ、いつ仕事を始めて終わったということのマネジメントを労働者に委ねるという仕組みであります。この信頼労働時間の下では、労働時間記録義務というのは、労働者の自己記録によるというのが通説であります。
 ただ、これは非常に最近の動きなのですが、昨年、EU司法裁判所で、CCOO事件の判決が下りました。これはスペインの労働組合が訴えた事件に対する判決です。EUレベルで労働時間指令というのがありまして、この解釈権限はEU司法裁判所にあります。そして、その解釈が、ドイツであろうがフランスであろうが全てのEU加盟国に影響を及ぼすのです。この昨年の判決で、労働時間を記録するための適切な手段の導入というのが使用者の義務であるということを、EU司法裁判所が判断しております。そこで、今後、この使用者の労働時間把握義務というものが信頼労働時間にも及ぶのではないか、それがテレワークにも妥当するのではないかという議論がされているようです。まだ非常にホットな話なので、どのように落ち着くか分かりませんが、今、そういうことがドイツでは問題になっているとのことです。
 なお、ヨーロッパ、特にフランスをはじめとしていろいろな諸国で、今、つながらない権利というのが注目を集めているのですが、ドイツはこれについては、少なくとも連邦労働社会省は、これをわざわざ規定しようといった方向性はあまりなく、消極的だということです。
 また、先ほどもちょっと申しましたが、労働安全衛生規制については、作業場規則の一部、VDT作業についての規制はかかるのですが、それ以外は基本的にかからない。なぜかというと、そもそも自宅なので使用者に立入権限がないからだということです。
 さらに、労災保険については、自宅で仕事をしていて階段から落ちて、これが労災になるかならないかということで裁判になったという事例はあるようです。日本で注目される過労死とか過労自殺というのは、そもそもドイツの労災保険では、そういうのは労災・職業病ではないという扱いになっています。日本ではどうしてもそこに注目が集まるのですが、ドイツではそれは問題にはならないということです。ただ、テレワークの途中で、子供を保育園に送り迎えしている途中でけがをしたのが、これが通勤災害になるかどうかという議論はあるようです。
 なお、テレワークの導入には、事業所委員会(Betriebsrat)との協議、同意が必要になっております。
 次がフランスでございますが、フランスは、15年前の2005年に、テレワークに関する全国職際協定を締結しています。職際というのは、職業別ではなくて、全ての職業を覆う全国協約という意味ですが、これが締結され、これの中身を踏まえて、2012年に雇用型テレワークに関する規定が労働法典に導入されています。そういう意味で、テレワークに関する規定が労働法上に存在する国であります。その規定が2017年のオルドナンス(政令)と2018年の法律で改正をされています。その中身は後でお話をします。
 この規定では、テレワークというのは労使の合意で実施するのが原則で、労働者は拒否することができるというのが大原則です。ただ、使用者が憲章(Charte)を一方的に策定し、あるいは集団協定(労使協定の一種)を締結して、これにより実施する場合には、ある労働者がその憲章や集団協定に基づいてテレワークをしたいと希望したにもかかわらず、それを使用者が拒否する場合には、その理由を説明する義務があるということになっています。
 この点を捉まえて、フランスではテレワークの権利があるのだという向きもあるようですが、これはあくまでも理由の説明義務であって、テレワークの権利、先ほどのドイツのハイル労働社会相の草案で言うような意味での権利、請求権があるわけではありません。逆に、今回のコロナ禍などの特別な状況下では、テレワークの勤務を命じうるのだと解されているようであります。
 また、先ほど見た全国職際協定や労働法典に基づいて、テレワーク勤務者は企業施設で勤務する者と同一の権利を有するとされています。なお、2012年に労働法典にテレワークの規定が設けられたときには、テレワークの費用は全て使用者負担とするという規定があったのですが、それが2017年、2018年の改正で削除されているようです。
 さらに、労働時間規制については、法律上、テレワークに関する特別の規制は特にないということです。もちろん、労働時間規制そのものについてはカードルの扱いなど、いろいろな特別の法制はあるのですが、テレワークということに着目した特則はないということです。
 なお、労災保険では、テレワークの労働者が業務遂行中に、テレワークを行っている場所で発生した災害は労働災害と推定するという規定が設けられています。
 次はイギリスでありますが、イギリスは、ある種の権利がかなり前の段階で入っております。2002年に雇用権法という法律が改正されて、ここで労働時間や就労場所について柔軟な働き方を要請する権利というものが、もう20年近く前の段階で入っておりました。ただ、この段階では、育児・介護等を行う被用者のみが対象だったのですが、これが2014年に改正をされて、26週間以上継続雇用されている全ての被用者に、この時間や場所についての柔軟な働き方を要請する権利が認められました。その意味では、一定のテレワーク請求権というべきものがイギリスにはあると言っていいのだろうと思います。ただ、申請できるのは12か月のうち1回のみですし、派遣労働者には権利がありません。
 また、ここで「被用者」とあえて書いているのは、イギリスでは被用者と労働者という概念は別でありまして、労働者よりも少し狭い被用者についての権利だということです。
 このように、被用者には要請する権利があるのですが、使用者は一定の場合にのみ要請を拒否できます。その場合、使用者に対する不服申立てが可能で、状況によって雇用審判所への申立ても可能です。こう見ると、結構強いハードな権利のようにも見えるのですが、ただ、拒否できる一定の場合というのが、8つぐらいの項目がずらずらと並んでおりまして、何でもそのどれかには該当するのではないかという感じもあります。。実態がどうなっているかを、もう少し突っ込んで調べる必要があるのだと思いますが、形としては請求権になっているけれども、実態としては少し緩い面があるのかもしれません。
 なお、テレワークにも労働時間規制が適用されるのですが、御承知の方も多いかと思いますが、イギリスはオプトアウトというのがあります。これはEUの労働時間指令を導入するときに設けた特例ですが、週労働時間の上限規制を個別に適用除外するという制度があります。実は、現在、雇用契約を結ぶときには、デフォルトで、必ず週労働時間の上限は私は適用しませんという条項を入れます。それをしないとそもそも雇用契約を結べないという状況らしいので、労働時間規制が適用されるといっても、あまりそこのところは意味がないという状況のようです。
 また、これは法制ではないのですが、今回の新型コロナが流行する下で、ACAS(助言斡旋仲裁局)という行政による労働紛争処理システムが、テレワークに係る助言、アドバイスという文書を公表しておりまして、使用者のなすべきことを中心として事項がここにいろいろ列挙されております。
 次にアメリカです。アメリカでは、今回のコロナ禍の下でテレワークがどういう状況になっているか。5月と9月の数字を書いておりますが、5月のときにはかなり増えたのですが、若干減ってきているようです。
 これを見ると公務が大変多いのですが、実は公務部門、とりわけ連邦政府職員については、過去20年超にわたり法令に基づきテレワークが推進されてきました。一般的な民間部門では、特段テレワークについての法制度というのはなくて、実務上は既存の法令の枠内で対処されているのですが、公務部門、とりわけ連邦政府職員については20年間にわたってテレワークを推進するという形でやってきたのがアメリカということです。
 アメリカの法制度、特にアメリカの労働法の在り方自体がほかの国と違っているので、少し分かりにくいところがあるのですが、公正労働基準法上、労働の許容というのがあって、これも雇用に含むと解釈されているために、使用者はテレワーカーの実労働時間を把握する必要があるのだとされているということです。
 また、職業安全衛生法の雇用の場所には自宅も含まれるということで、使用者は自宅での就労環境についても、危険がないようにするのがリスク回避としてベターだと考えているそうであります。
 労災補償法については、アメリカの労災補償は連邦法ではなくて州レベルで制定をされているのですが、ここでは災害が雇用から生じ、かつ、雇用の過程において生じた場合には補償の対象とするとなっておりますので、テレワーカーの自宅における行動の公私の区別が問題となるとされております。
 また、差別禁止事由に該当する属性の者、人種とか性別とかですが、他の属性の者と異なってテレワークを命じないこと、あるいは命じることは差別に該当します。障害者差別の関係では、テレワークの合理的配慮該当性が問題とされます。ただ、アメリカは、そもそも正規・非正規差別などという問題がないので、日本で問題となるそちらの問題は、逆に問題にならないということであります。
 先ほど申し上げた連邦政府職員のテレワークについては、2010年のTelework Enhancement Actという法律に基づいて推進をされているということです。
 主な4か国は以上でありますが、最後のところで、これは若干エピソード的にちらっと見かけたものを最後に放り込んだみたいな感じなのですが、その他の諸国として2か国ほど紹介をしております。
 まずオランダですが、オランダは2000年に労働時間調整法という法律が設けられまして、労働時間の長さに選択の自由というのが導入されました。これは、パートタイムにするかフルタイムにするかの選択の自由なのですが、これが2015年改正で柔軟労働法という法律になりまして、その働く時間帯と就業場所についても選択権が導入されました。これは、ある種のテレワークの権利だと思うのですが、ただ、この就業場所についての選択権については、企業側に裁量権があって、あくまでの申請権だということのようであります。
 それから、フィンランドは、ちょっと前の1996年の労働時間法で、始業時間、終業時間を3時間移動できるとされていたのですが、これが昨年、2019年の改正で、1週間の労働時間40時間のうち半分の時間については、従業員が、いつ、どこで働くのかを決められるようになったという情報がございます。
 このように、主要4か国以外でもテレワークについていろいろな動きがあるということを最後に付け加えて、私からの報告は終わりたいと思います。
 以上でございます。
 

○濱口委員 これが、今、御説明できるだけの知識は私はございません。まず、イギリスの場合、被用者(Employee)というコアの概念があり、その周りに労働者(worker)という概念があり、さらにその外側に自営業者があるという3層構造になっていて、この、時間や就労についての要請権というのは、あくまでもワーカーではなくてエンプロイーだという形での一種の差別というか差異があります。さらにそのエンプロイーであっても派遣労働者の場合には権利がないという構造になっています。私からお答えできるのはその程度なのですが、そこについてどういう議論があるかというと、派遣労働者のところについての議論というのは、私は承知しておりません。むしろエンプロイーとワーカーで差があることについては、この問題だけではなく、ほかのいろいろな権利についてもエンプロイーとワーカーに相当差があるので、これを見直すべきではないかという議論は、今回のコロナ禍以前から、もっと包括的な、いろいろな側面についてずっと議論はされています。
 御質問に対するダイレクトな答えにはならないのですけれども、私の知る限りではそんな状況かと思います。
 

 ○濱口委員 ありがとうございます。
 今年に入ってから、コロナ禍の中でどういう動きがあるかということで言うと、明らかな動きとしてあるのはドイツかと思います。先ほど申し上げたように、テレワーク請求権、かなり強いハードな請求権というアイデアが、政府部内のハイル労働社会相が主導する形で行われているということです。これは現在進行形ですので、どのように動いていくかを注目して見ていきたいと思うのですが、ほかの国々では、必ずしもコロナ禍でもって法制を今すぐどうするという動きがあるとは聞こえていない状況かと思います。
 もちろん、ある意味、ヨーロッパも、第一波の後、第2波になって、今、感染者数が相当な数になっていますので、また、これがどういう影響を及ぼしてくるかというのは見ていかないといけないと思うのですが、現時点では、今年に入ってから、そういう法制の大きな動きがあるのはドイツかなという感じです。

○濱口委員 そこは正直よく分からないのです。テレワークをする権利については、ハイル労働社会相が大変熱心で、政府内で議論を先導しているということは分かるのですが、逆に、つながらない権利に対してあまり積極的でない理由というのは、私の見た限りではあまり出てきません。
 実は、ドイツ以外のヨーロッパ諸国、どちらかというラテン系の国々でつながらない権利が論じられています。フランスの場合、毎年、労使交渉をするということが義務づけられているのですが、その義務的交渉事項の中に、つながらない権利についても含めるという規定が数年前に設けられたということがあります。同じように、イタリアとかスペインとかベルギーといった、ラテン系の国々では、そういうつながらない権利に関する問題意識というのがあるようですが、ほかの国々ではあまりないようです。その辺はもしかしたら国民性が影響しているのかもしれません。
 いずれにしてもドイツ人は、テレワークする権利ということについては非常に熱心といいますか、ホットな議論をしているけれども、つながらない権利ということについては、それほどの熱心さでは議論はしていないということのようです。
○萩原委員 ありがとうございます。
○濱口委員 あと一点、最初に萩原さんが言われた話なのですが、我々JILPTのほうでも、コロナ禍になってからいろいろ調査しております。それによると、非正規の中がはっきり分かれていて、契約社員や派遣社員は、正社員とほぼ同じぐらいテレワークをしていて、パート、アルバイトはかなり低いという結果が確かに出ております。そこは、今、萩原委員がおっしゃったとおりだと思います。

○濱口委員 パフォーマンスという話ではないのです。パフォーマンスというのは、いずれにしても、テレワークをちゃんとやっているものの、その業績評価という話だと思うのですが、そういう話は実は全然出てこないです。そこが日本での議論と大分違うところかなという感じがいたします。
 基本的に、やる、やらないという話であって、テレワークをやる際のパフォーマンスとか生産性が問題になるというのは、少なくとも諸外国のテレワークに関する議論の中には出てこないです。そういう意味では日本独特の議論かなという感じがいたします。
 ここでいうのは、あくまでも通信障害で、そもそも全然できなかったという、そこの責任を、一種の危険負担をどちらが負うかという話で、業績評価の話ではないです。ほかの国々も含めて、このテレワークについて業績評価をどうするかという話というのは、実は見る限り出てこないです。そういう意味では日本独特の議論かなという気がいたします。
 

○濱口委員 ありがとうございます。
 2002年のEUレベルの協約というのは、ここにも書いてございますけれども、実は、その少し前に、行政府である欧州委員会が、雇用関係の現代化についての労使協議というのを行って、これを受けて結ばれたというものでありまして、実は、その中身というのはテレワークと、もう一つは経済的従属労働者という、今の言い方で言うとフリーランスの話です。このテレワークとフリーランスという新しい働き方が出てきたということで、これについてどうしますかという問題提起を投げかけたことに対して、少なくともテレワークについては、我々で、労使で一定の、自発的な、自主的な、ルールをつくりましたという関係になっております。
 ちょうど、この90年代終わりから21世紀にかけての時期に、情報通信革命、当時、IT革命といわれたものが世界的に大きく取り上げられておりました。これによって労働社会が大きく変わっていくということが、日本も含めてですけれども大変ホットな議論になっていたので、その議論に乗る形で、欧州委員会から提起がされ、労使団体のほうでもそれを受けて協約を結んだということです。当時の時代状況はそういうものでした。
 その後は、2002年に協約が結ばれた後、フランスが2005年のテレワークに関する全国職際協定を、EUの協約を受けて締結したように、そのようにやっているところもあるのですが、ドイツは労使で一緒にパンフレットをつくってそれで終わりにしている程度だし、イギリスは、ほかの大陸諸国のように労使で共同して何かやるというカルチャーがそもそもありません。ですので、EUレベルで協約は結んだけれども、各国レベルの動きについては、国によって非常に様々な状況でした。
 ただ、コロナ禍の少し前の、まさに2010年代になってから、AIとかIoTとかいうことがどんどん言われるようになって、第3世代のバーチャルオフィスが、議論として盛り上がってきました。先ほど申し上げた、いつでも、どこでも働くという働き方が、数としては、割合としては、少ないけれども、非常に最先端的な働き方として注目を集めるようなってきていたところに、今度は今年に入ってからコロナ禍で、働き方としては第1世代のホームオフィスなのですが、労働者全体の3割とか4割というような多くの人たちが、強制的に在宅勤務をするようになったわけです。このように、いろいろなことが積み重なっていって、今から見ると、この2002年のEUレベルの協約というのは、ちょっと昔の話という感じになっているのかなという感じがいたします。
 今、いろいろ各国レベルで動きがあるのですが、その動きが直接、この18年前のEUレベルの協約を受けてという話ではもうない。時代としては次のフェーズに移っているという感じがいたします。
 それから、2つ目の、労働者の希望を尊重するという点ですが、これはどちらかというと、この検討会でも、前の議論のときに、私もテレワークの権利とか義務とかという形でお話をしたのですが、こういった労働に関わるいろいろな物事を、権利とか義務とかいう枠組みで捉えて議論をするという、カルチャーというか背景があるのではないかと思います。コロナ禍になってからテレワークをめぐる議論というのは世界中で非常にホットな形であるのですが、やはり、日本では、先ほど小豆川さんがおっしゃったように、パフォーマンスがどうとか評価どうとかということに着目する議論が多いのに対して、ヨーロッパではそうではなくて、やはり権利とか義務とかという切り口からの議論が多いようです。これは、なぜかというと、労働社会のカルチャーとしてそういうものがあるのではないかと、そんな感じがいたします。
 あまりお答えになっていないのですが、多分、テレワークに限らず、ほかのことについても、やはり議論のスタイルとして、権利とか義務とかという形で議論をするという傾向があるのかなという印象を持っております。
 

○濱口委員 ちょっと付け加えますと、先ほどフランスのところで述べたように、使用者が、憲章(Charte)かあるいは集団協定で実施する場合に、労働者がテレワークを希望して、それが使用者が拒否する場合には、その理由を説明する義務があります。これをもって、フランス政府自身が、これはテレワークの権利を認めた規定だと言っているらしいのです。理由を説明する義務がある程度で権利と言えるのか、という感じがするのですが、それを権利というように政府自身が言うというところに、物事を権利とか義務とかという用語で語ろうとするカルチャーが反映しているのではないかと思います。 

○濱口委員 あくまでも、この信頼労働時間というのは、法律上の制度でも何でもなくて、慣行といいますか、労働時間規制は適用するけれども、労働時間の把握義務というか、記録義務が使用者ではなくて労働者にあって、そのこと自体は、別に法律上に労働時間の把握義務や記録義務が規定されているわけではないので、事実として、特にホワイトカラーの場合にはそういうのが割と一般的に行われているということだったようなのです。
 ただ、ドイツもEUの加盟国であり、労働時間については各国の法律の上にEUの労働時間指令というのがあります。そこで、どこかの国でもめごとがあって、それが、EU司法裁判所に行って判決が出されると、その判決は、事件のあった当該のその国だけではなくて全加盟国を拘束します。今、イギリスは抜けてしまいましたけども、ドイツであれフランスであれ、その国の法律の解釈は、EU司法裁判所の判決で拘束されてしまうのです。
 そういうことで、ドイツから見ると、若干もらい事故みたいなところがあるかもしれませんが、労働時間を毎日きちんと記録する義務があるのだというのが、EU指令の解釈として、EUレベルで確定してしまうと、今までドイツが、ドイツの法律の解釈としてはこれでいいのだよとやっていたけれども、それで本当にいいのかどうかというのが、今、問題になっているということのようであります。
 

 

なお、これまでの発言も併せて再度載せておきます。

第1回

 〇 濱口委員
 濱口でございます。ありがとうございました。特に、小豆川さんのお話は、大変詳細でかつ、私の知らないような細かい事も教えていただいて、非常に勉強になりました。ただ、冒頭の7つの時期区分をされたのですが、非常に細かくて、もう少しざっくりとした時期区分を紹介したいと思います。
今回新型コロナ危機で世界的にテレワークが注目されていますが、その直前までも、ここ数年来、世界的にテレワークというのが大変注目を集めたトピックになっていました。とりわけ、昨年2019年にILOが「21世紀におけるテレワーク」という報告書を出していまして、日本、EU、アメリカ、インド、ブラジル、アルゼンチンの実態を調べています。その序章で、メッセンジャーさんという方が、テレワークの進化を三段階に区分されています。これが非常に分かりやすく、かつ、今ものを考える上でも役に立つのではないかと思います。第1世代は70年代末ぐらいから80年代にかけての時期です。この頃はだいたいコンピューターはスタンドアローンで、通信機器も電話とファックスでやっていたような時代です。彼はこの時期を「ホームオフィスの時代」と呼んでいます。通勤する代わりに自宅が職場になるという意味で、テレコミューティングとも呼ばれました。次の第2世代は、90年代から2000年代の時期です。これは彼は「モバイルオフィスの時代」と呼んでいます。コンピューターはラップトップコになり、また携帯電話(モバイルフォン)を使って、家を離れても仕事ができるようになったので「モバイル」なんですが、データはやはりオフィスに集中されていました。それが、2010年代、とりわけその半ば以降は、彼はそれを第3世代と呼ぶのですが、「バーチャルオフィスの時代」になります。スマートフォンやタブレットのように、情報機器と通信機器が完全合体して、どこに居ようが職場や自宅と同じように仕事ができる、同じようなレベルで仕事ができるという時代です。この時代を最もよく言い表すフレーズとして、私が気に入っているのが、少し前の2017年に、ILOとEUの労働研究機構が共同で出した研究報告書のタイトルで、「Working Anytime Anywhere」というものです。いつでもどこでも働けます。というすごいタイトルですが、これができるようになったことで、今までの時間的、空間的に限定された場所で、それが職場であろうが自宅であろうが、あるいはサテライトオフィスであろうが、そこで働くのが労働だという、労働法の基本概念自体がガラガラと変わりつつあるという議論をしています。このように、大きく三段階に分けると見通しが良くなるのではないかと思います。そういう意味から言うと、今回の新型コロナ危機というのは、直前まではこの三段階のいわば先端部分が、技術の発達に乗っかる形で、できるところがどんどん先に行くみたいな形で進んでいたのが、むしろそうじゃなかったところに、いきなりロックダウンとか緊急事態宣言により、ステイホームでホームオフィスが強制されたようなところがあります。つまり、テレワークの進化の段階からいうと最先端ではなくむしろやや古いタイプのホームオフィスですが、それが今までテレワークなどしていなかったような人々にまで大量に適用されることで、多くの問題が出てくる。そういう状況ではなかろうかと思うのです。
先程、小豆川さんが言われたような、最近までずっと、テレワークというのはワークライフバランスに資すると言ってきたわけですが、実際にやってみたらワークライフバランスどころか、むしろワークライフコンフリクトが噴き出しているという面もあります。あるいは、これはもしかしたら、日本の雇用システムの問題かもしれませんが、仕事の仕方が個人のジョブに切り分けられていないために、テレワークをしようとしたらいろいろトラブルが発生するという話もあります。先程の三段階論で言うと、最先端というよりも少し前の世代のテレワークなのですが、新型コロナ危機によりそれが一気に拡大したことで、雇用システムとしていろいろ問題が起きているとも言えます。そういう意味では、今テレワークを論じるに当たっては、去年まで先端的なところで議論していたような「いつでもどこでも働ける」という話と、世代論的にはむしろ旧世代のテレワークになりますが、強制的に在宅勤務をせざるを得なくなったために、今までの働き方との間でいろいろ矛盾が生じているという話との、両にらみのような形で議論していくことが必要であろうと思っています。先程の開催要綱からすると、この検討会はどちらかというとやや後者に重点があるのだろうとは思いますが、一方で最近ワーケーションという言葉もちらちら出てきています。ワーケーションは、ある意味まさしく典型的なworking anytime anywhereの表れみたいなところがありますから、それが労働の在り方、労働法とか労使関係の在り方にどう影響するかということも、併せて念頭に置きながら議論していく必要があるのではないかと感じました。

第2回

○濱口委員 濱口でございます。
 この論点の書き方はテレワーク対象者を選定するという企業の雇用管理の観点からの書き方なのですが、労働問題というのは、当然のことながら、アクターは使用者と労働者と両方あるわけで、選定されなかった労働者はどうなるのだという問題が出てきます。一方でテレワークをする権利という議論は既にヨーロッパで出てきておりますが、そこは権利性をどこまで認めるのか、認めないのかという話と裏腹なのです。今言われた新入社員の話は、いかにもそれはふさわしくないだろうなという感じもあるのですが、例えばやっている業務の性格だとか、もう少し難しくなってくると、あなたの職位がどうだとか、就業形態がどうだとかみたいな話になってくると、結構大きな労働問題になり得る。
 その話を裏返すと、今のはテレワークは一種の権利、つまり望ましいものであるという観点からの話なのですが、実は必ずしもそうでもないかもしれない。つまり、私はテレワークなんかしたくないのに、会社からテレワークを命じられた、断る権利はあるのか、という問題もありうる。つまり、権利と義務がそれぞれプラスの話とマイナスの話と二重になっていて、そこをどのように解きほぐしていくのかという論点と、そもそもの問題提起としてあるような労務管理上、どのようにすれば企業の業務遂行上、望ましいテレワークの配分の仕方が可能なのかという話と、両面から議論する必要があるだろうなということを感じました。
 以上です。

第3回

○濱口委員 濱口でございます。
 今の幾つかの論点について、まず1つ目の人事評価ですが、確かにこの間、マスコミ等で人事評価が最大の問題だという議論をされているのですが、人事評価というのはどちらかというと表面的な話であり、むしろ根っこの話は業務のやり方、進め方の問題ではないかと思います。
 例えば欧米のオフィスであれば、ITが入る以前から基本的に紙ベースで仕事をしています。そうすると、その紙ベースの仕事の進め方が電子化されるだけであり、その電子化された紙ベースの仕事の仕方がテレワークになって距離が離れても基本的にその延長線上で行われるのです。これに対して、もともと日本のオフィスでは紙ベースというよりも、いわばバーバルコミュニケーションあるいは場合によったらノンバーバルコミュニケーションが重要でした。だから、それが電子化されてもやはりちょっと来て、説明しろみたいな話になりますし、それをテレワークでやるのはなかなか難しい。
 その難しさが表面に現れた一つが人事評価の問題なのです。確かに人事評価という形で問題が露呈しているのですが、根っこはむしろ業務の進め方の問題ではないかと。そういう意味では、かなり根が深い話です。ただ、だからといって、仕事の進め方をがらっと変えて、基本的に文書ベースで全部やるべきだという話になるのかどうか。これがまた日本の組織の在り方とも密接に絡む問題なのでなかなか難しいのではないか。これは後の人材育成の問題も一緒だと思うのですが、日本の雇用の在り方の根っこに関わる話ではないかと感じております。人事評価をどうするか、成果なのかプロセスなのかという話だけでは話が解決しない、そういう印象を持っております。
 それから、費用負担の話も、例えばテレワーク手当という話が幾つかのところで出ているのですが、これは前回、私のほうから提起した、そもそもテレワークする権利があるのか、義務があるのかという、そこを踏まえないといけないのではないか。テレワークにかかるコストについては、既に厚労省で助成金も用意されていますが、そうではなくて労働者に対するテレワーク手当ということになると、やはりそもそもテレワークするということが権利、義務としてどうなのかという話をきちんと詰めた上でないと、やや先走りの話ではないかという印象を持ちます。
 人材育成は、先ほど申し上げた人事評価の話とつながっていますが、日本の場合、即戦力として採用するわけではなくて、いわば素人を採用して、それをその上司や先輩が鍛えていくというやり方です。そうすると、そこはやはり文書ベースだけではなかなかうまくいかないので、どうしてもバーバルなあるいはノンバーバルなコミュニケーションとともにやっていくことになる。となると、テレワークとの相性というのはなかなか難しい。これも人材育成をどうするかという形で問題としては出てくるのですが、やはりその根っこのところには根深い問題があるのではないかと思います。
 雑駁ですけれども、この3つの論点について、そんな印象を持っております。

○濱口委員 濱口でございます。
 労働時間の問題はいろいろな意味で非常に大きな問題なのですが、基本的な物の考え方として、労働時間管理というのは労働者にとってどういう意味を持つものなのかということから考えたい。これには両面あって、過度な長時間労働にならないようにするのが労働時間管理であるという側面があるとともに、一方で、せっかく会社から離れてある程度自由に働けるはずなのに一挙手一投足を管理されるのは嫌だという、そういう側面もあると思うのです。
 この両方をどういうふうに調和させるか、いいバランスを取るかということが重要です。私は、個人的には、一昨年につくられたガイドライン、非常によくできているのですが、ちょっと違和感があるのは、例えば中抜け時間について休憩時間とするとか、時間単位年休とするというような規定があるのです。それは確かに通常の労働時間制度を前提とすればそうなるのですが、せっかく会社から離れているのにそこまで厳格な時間管理をするのかという感じもします。つまり、これは労働者にとってのメリット、デメリットというのがそう単純ではないということを考える必要があるのではないか。
 ただ、だからといって、ずるずると自由にやらせればいいではないかというところに行ってしまうと、過度な長時間労働になる危険性もあります。おそらく次の話題ですが、安全衛生管理の問題も出てくるので、そこは過度な長時間労働にならないような大枠としての労働時間管理は必要になります。今、労働安全衛生法上では、労働時間の状況の把握義務は、みなし制とか管理監督者も含めてかかっていますので、そういう大きな枠で時間管理する中で、ややミクロな、仕事の合間にちょっと子供の面倒をみるというようなところまで休憩時間とか時間単位年休というようなことにしなければいけないのか、あるいはそこはもう少しざっくりとしてもいいのかという、その辺を両にらみのような形で考えていく必要があるのではないかと感じおります。
 

○濱口委員 濱口でございます。
 先ほども申しましたけれども、労働時間をどう管理するかという話と、こちらの健康管理、メンタルヘルスの話というのは表裏の関係にあります。今までの日本の労働時間の議論というのはミクロな労働時間管理に関心を集中し、それは何のための労働時間管理かというと、ややもすると賃金対象時間という意味の話ばかりをやってきたきらいがあります。最近になってようやく健康管理という観点から、あまり細かい何分何秒働いたから残業代がいくらという話ではなくて、健康を損ねるような長時間労働はまずいねという話になってきたと思うのです。まずは健康管理のために、過度な長時間労働にならないようにするにはどうしたらいいか。それは今までの賃金対象時間という観点からの労働時間管理とは異なり、ややマクロな、ざっくりとした、しかし、過度な長時間労働にならないような仕組みをどういうようにきちんとつくっていくかという観点が重要なのだろうなというように思っております。
 もう一つ、実はかつての在宅勤務通達やガイドラインでは、私生活との関係というのが重要だと言っています。確かにできるだけきれいに分けたほうがいいとは言われているのですが、そうはいっても、とりわけ日本の普通の住宅の実情からすると、どうしてもそこはダブってこざるを得ないところがあります。そこを前提として、ある程度、私生活と在宅でやっている仕事が時間的、空間的にダブってくることを前提として、それをうまく回すような仕組みというのをどう考えるのか。テレワークにおいても私生活と仕事を峻別すべきだ、それがあるべきテレワークだ、みんなそうすべきだというように言ってしまうと、多くの人がそこから外れていってしまうので、仕事をしている最中に子供が泣くこともあるというようなことを前提とした仕組みの構築というのを考えていく必要があるのではないかと、そんなざっくりとした感想を持っております。
 

○濱口委員 濱口でございます。
 このワーケーションの話はここで取り上げるべき話題なのかどうか。国土交通省のほうでワーケーションの検討会を始められたということなので、そちらで主としてやられるのだと思うのですが、ただ、当然ここにも書いてあるとおり、基本的には年休を取ってワーケーションに行っている間にホテルの部屋で仕事をした、その時間は一体何なのかとか、労働時間制度の観点からすると結構大きな論点を提起しているように思われます。一方でワーケーションの推進という観点で、国土交通省なり観光庁で進められていくのだと思うのですが、それを労働基準法なり労災保険法との関係でどういうように見るべきかというのは、当然こちらのほうで考えていく必要がある話だろうと思います。
 それから、つながらない権利の問題は、先ほど来ずっと出てきている健康管理の観点からの、細かな賃金対象時間よりも、フィジカル、メンタル両面の健康管理のためにどういう労働時間規制の在り方があり得るのかといったときに、テレワークしている本人の主体性というものを中心に置くと、最近フランスとかイタリアとかスペインとかベルギーなんかで導入されているつながらない権利という発想は一つのヒントになるのではないか。どういう形でできるかというのはなかなか難しいところはあるのですが、そういう観点は頭に置いておく必要があるでしょう。先ほど風神先生がインターバル規制に触れられたのですが、テレワークしている方にとってのインターバル規制の在り方としては、このつながらない権利という形で出てくるのかなという気づきを与えていただきました。そういう観点からこの問題は議論していく必要があるという感想を持ちました。
 以上です。
 

○濱口委員 今の座長のまとめでほぼ尽きていると思うのですが、そういう観点からしても、最初のところで申し上げた、過度な労働時間管理を再考した方がいい。これは半分笑い話みたいなものですが、最近「テレワークで生産性が落ちていませんか、四六時中、社員を見張れる機械がありますよ」というような宣伝があるらしいのです。それはそれで確かにその企業の人事管理のスタイルがそういうものだという面もあるのかもしれないのですが、もし労働時間というものをきっちりと、ミクロな一挙手一投足まで全部監視しないといけないと思っているのだとすると、それはテレワークそのものの生産性をむしろ逆に下げる危険性もあるのではないか。労働時間管理というのは基本的にはテレワークであれ、職場勤務であれ、健康をきちんと守るために過度な長時間労働にならないようにするのが労働時間管理というものの本来の趣旨なのだということは、きちんとメッセージとして伝えていく必要があるのではないか。
 いや、それは分かっているけれども、やはり一挙手一投足を管理したいのだという方向に流れるとすると、それはかえって問題を生み出しかねないのではないかと、そう考えています。
 

第5回 

○濱口委員 ありがとうございました。
 こうやって全文読み上げていただきますと、目で見たときにはあまり気がつかなかったことで気になることがありまして、7ページ目の下から2つ目のパラグラフ、テレワークの人事評価のところなのですが、書いてあることは全くそのとおりであって、おっしゃるとおりなのです。テレワークをせずに出社していることのみを理由として高く評価してはいけないのだと。そのとおりだと思うのですが、ただ、改めてこれを見て感じたのは、実は今回のコロナ禍で大きな問題になったのは、一つはテレワークなのですけれども、もう一つ、実はエッセンシャルワークの問題があるのです。その文脈というのは、テレワークをしたくてもできない、出勤して仕事をしなくてはいけないのに、処遇が低いのは問題ではないかということです。もちろんここは直接それに関わっているわけではないのです。テレワークができる職種の中でしている人としていない人で出勤したことを高く評価するようなことをしてはいけないという話であって、それは全くそうなのです。しかし、エッセンシャルワークと言うはどうかはともかくとして、そもそもテレワークできない職種をどう考えるのかという反応がありうる。つまりここでいう人事評価というのは人を評価するという話であって、職種を評価するというのはまったく別の話だということを何らかの形で注記しておかないといけないのではないか。書いてあることは全くそのとおりなのですが、エッセンシャルワークを無視しているとか、おとしめているといった印象をもし与えるとまずいなと感じたところです。そこは書き方を工夫していただければと思います。
 以上です。
 

 ○濱口委員 今、風神委員が、私がさっき申し上げたことにコメントされたのですが、結局この問題は、日本の社会に職務意識が非常に乏しいために、職務単位で物を考えることを飛ばしていきなり個人ベースの話に行ってしまうから、こういう変な問題が起きるのではないかという感じがするのです。ここでは、まず最初に来るのが対象者の選定なのです。まず人ベースの対象者の選定で、その後にようやく対象業務が来るのです。しかしながら、本来、この仕事はテレワークできるのかできないのか、というのが先に来なければおかしい。テレワークできないと言っているけれども、それは判こを押さなくてはいけないからだというのなら、それはおかしいので、テレワークできるでしょうという話がまずあって、その上で人の選定に行くはずなのです。まず業務ができるかできないかというレベルで、例えばテレワークがどうしてもできない、本質的な意味でのエッセンシャルワークだから、この業務を高く評価するのだというのはあり得る話だと思うのです。ところが、日本人の感覚がそうだからなのですが、それが後のほうに追いやられて、先に人ベース、個人ベースの評価の話に行ってしまっているから話が混乱するのではないか。
 そういう意味からは、最初の対象者の選定の話もまず業務があって、それから個人なのではないかと。評価もそういう意味からいうと、職務評価があって、それで個人の評価なのではないか。そこを明確にした上で、業務についてもこれは今までできないと思っていたけれども実はできるのだというような話がある、そのテレワークできる業務の中で、する人としない人で、そこで差別があってはならないなどというように、きちんと整理したほうがいいのかという感じがいたします。私はたまたま、別件でエッセンシャルワークの話があるものですから、それが頭に残っていたのでそのように感じたのですが、多くの方もこれを読まれたときにそのように感じるところがあるのではないかと思ったものですから。そこは少し構成が変わるかもしれないですけれども、初めにまず業務があって、それから個人に行くということを考えていただければと思いました。
 それから、先ほどの川田委員や小西委員が指摘されたこととの関わりなのですが、経緯的に言うと、事業場外労働自体はもう30年以上前にできた制度で、そのときはいわゆるポケベル通達というものがあって、その考え方がいまでもあるのです。一方で、このテレワーク、在宅勤務については2004年、2008年に通達が出されていて、そこは大きく言えばその枠内なのですけれども、少し細かく要件が示されていて、必ずしも単純に労働時間を算定しがたいということではなく、むしろきちんと体制を整えることで、時間を算定しようと思えばできるけれどもあえてしないような仕組みにすることが要件になっていると私は理解しております。基本的には2004年、2008年の通達の考え方が現在の2018年のガイドラインにもそのまま書かれていますので、考え方としてはそれに基づいているのだろうと思います。そこが非常に重要なところで、テレワークの中でも特に在宅勤務というのは、一方で労働者にとっての私生活の場と切り分けると言いながらなかなか切り分けにくいところがあるので、あえてきちんとコントロールしない、やろうと思ったらできるのだけれども、あえてそれを仕組みとしてしないことをもってみなし制の適用という要件にかからしめているところがあるので、むしろそこをきちんと明確に示したほうがいいのではないか。もちろん読めば分かるのですが、もともとの2004年、2008年のときの通達にはそこがかなり明確に書かれていたこともありますので、そこの考え方を再度もう少し明確に示されたほうがいいのではないかという感じがしました。
 以上です。

○濱口委員 先ほど竹田委員が言われたことは、官庁もエッセンシャルワークなのか、それとも判こ押しのための出勤なのかというのは考えてみる必要があるかと思います。これは半ば冗談ですが。
 この検討会に出させていただいて、感想として2つほど思っております。一つは、ワーク・ライフ・バランスという言葉がここ十数年来ずっとはやっているのです。ただ、今までは基本的にはワーク・ライフ・バランスというのはワークの場とライフの場が分かれている、分かれていることを前提として、できるだけライフを確保しよう、だから、ワークを限定しようということでほぼ話は済んでいたのです。ところが、テレワーク、とりわけ在宅勤務というのは、いや応なしに場所的にワークとライフが入り交じってしまう。そういう中で、ワークとライフをバランスさせるというのはどういうことなのかというのを、今までもあったのですが、改めて考える機会になりました。これだけ非常に多くの、瞬間風速的には労働者の半分以上の方がテレワークする時期もあったということから、改めてワークとライフをバランスさせるというのはどういうことなのかを、私も含めて考えさせるいい機会になったのかと思います。この報告書はあくまでその一里塚であって、ワーク・ライフ・バランスをどのように考えていくべきなのかということは、これを一里塚としてさらにもっと考えを深めていく必要があるのだろうと思っております。
 もう一つ、これは小西委員がちらっと言われたことと関わるのですが、時間や場所にとらわれない働き方というのは、逆に言うと労働者性の判断基準の中に時間的・空間的拘束性があるということがあって、あまりそこを強調し過ぎると労働者でないというようになってしまう危険性があります。ただ、それを裏返して、労働者でなくなってしまうリスクにならないためにそこをぎちぎちに規制しなければいけないという話だと、これは逆にテレワークのメリットをかえって減殺することにもなってしまいます。なかなか話は難しいのですが、労働者としての一般的な保護を維持しつつ、しかし、その中でそういった時間的・空間的な拘束性のなさというものがどこまで可能なのか。これももちろん今までもあった話ではあるのですが、これだけ大規模にテレワークが拡大することを経験した時代の中で、これからの課題としても考えていく必要があることなのだろうということを改めて感じました。
 私の感想は以上です。
 

 

 

 

 

 

 

2021年1月22日 (金)

和田肇編著『コロナ禍に立ち向かう働き方と法』

08446 和田肇編著『コロナ禍に立ち向かう働き方と法』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8446.html

目次は下にあるとおりですが、和田さんのはしがきによると、本書の構想は、

・・・しかし、多くの方から、学者はなにをしているのかというお叱りの声が聞こえてきた。多くの本が出されたが、概して社会科学者の対応は鈍かった。こうした危機に対して、何らかの展望を示すことができないと、雇用問題に深く関わっている私たちの存在意義は薄れてしまいかねない。・・・

というところから始まったようです。

まさに私もそう感じていましたし、その意味では労働研究機関としてのJILPTの対応は素早かったと思います。

Booklet01201221_20210122120901 本書のカバーする雇用調整助成金や休業給付金、テレワーク、非正規雇用やフリーランスのセーフティネットの問題は、昨夏に東京労働大学で講義し、昨年末に刊行した『新型コロナウイルスと労働政策の未来』ともかなり重なります。拙著と比べながら読んでいただくのも一興かもしれません。

 

はしがき
序章……和田 肇
第1章 コロナ禍と雇用の現場 ……浅野文秀(名古屋ふれあいユニオン副委員長)・小島周一(弁護士)
コラム 営業「自粛」と憲法……愛敬浩二(早稲田大学教授)
第2章 解雇、雇止め、派遣切りと労働法 ……塩見卓也(弁護士)
第3章 休業手当、雇用調整助成金、休業給付金……和田 肇
 資料 社会保険労務士に聞く
 補論 ドイツの操業短縮手当
第4章 テレワークの意義と可能性……山川和義(広島大学教授)
 補論 テレワークの国際比較……和田 肇
第5章 非正規雇用のセーフティネット……上田真理(東洋大学教授)
第6章 フリーランスのセーフティネット……和田 肇
 コラム 街にあふれる「ウーバーイーツ」と労働法……川上資人(弁護士)
第7章 コロナ禍とジェンダー……浅倉むつ子(早稲田大学名誉教授)
第8章 韓国における「幸福国家」への展望……緒方桂子(南山大学教授)
第9章 ポスト・コロナの「新しい常態」と働き方、働かせ方……和田 肇 

 

 

新型コロナウイルスと今後の労働政策@『月刊社労士』2021年1月号

Image0_20210122114201 『月刊社労士』2021年1月号に「新型コロナウイルスと今後の労働政策」を寄稿しました。

 1 はじめに

 2020年は同一労働同一賃金やパワハラなど新たな労働政策の門出となるはずであったが、年初から世界的に急速に蔓延しパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症への緊急対策が続々と打ち出される中で、労働法政策においても注目すべき動きがいくつもあった。
 本稿ではそのうち、労働市場セーフティネットの拡大というテーマに関わって、学生アルバイトとフリーランスの問題を取り上げたい。

2 労働政策対象から排除されていた学生アルバイト
 
 学生アルバイトといえども、労働法上は主婦パートやフリーターと何ら変わらない短時間非正規労働者であるが・・・・

3 学生アルバイトの社会的変容に即した社会保障を

4 コロナ禍で注目されたフリーランスへの保障

5 フリーランスへの社会保障適用の議論を

2021年1月21日 (木)

「白地から書く力」、それを「素人力」という

朝日の記事で、

https://www.asahi.com/articles/ASP1H3Q10P15UTFK010.html(重用された経産官僚 「白地から書く力」頼った安倍政権)

 今井首相秘書官ら経済産業省出身の官邸官僚が力を持ち、安倍政権は「経産省内閣」とも呼ばれた。なぜ、彼らは重用されたのか。入省1年目からたたき込まれる、ある能力があるという。・・・・

いや、それって要するに「素人力」でしょ。

全然専門知識のない人さまの分野に入り込んで、知らない強みを存分に発揮するというのは。

実は私は、いわゆる官邸主導を必ずしも否定しないし、ある局面では必要だとも思っている。

専門家がきちんと議論して設計図をあれこれ書いても、利害関係が絡み合ってなかなか実行に移せない時には、蛮勇をふるって設計図を実行に移してしまうことが必要な局面というのはある。

それは本来的な意味での「政治」の役割であって、そういう政治主導、官邸主導というのは、ものによっては必要だし、不可欠なこともある。

でも、それはいかなる意味でも「白地に(素人の強みで好き放題に)絵を描く」こととは違うんだな。

素人力だけで突き進むと、「ぼくがかんがえたさいきょうの」政策が華麗に花開くことになる。

安倍政権の「働き方改革」についても、局部的にはいろいろ変なところもあるとはいえ、総体的には決して白地に官邸が絵を描いたわけではなく、労働時間規制にしても同一労働同一賃金にしても、すでに山のような議論がされたものに決断を下したものであることを確認した方がいいと思う。

 

2021年1月20日 (水)

『2021年版経営労働政策特別委員会報告』

598b2c866fa247dd6ddf54443bbeb1bc3fedc703 昨日公表された経団連の『2021年版経営労働政策特別委員会報告 エンゲージメントを高めてウィズコロナ時代を乗り越え、Society 5.0の実現を目指す』をお送りいただきました。

https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/pub/cat/96718e1583e95b85c148393767a2cba100882f16.html

新型コロナウイルス感染症の拡大により、人々の生活様式やデジタル化の加速など社会のあり方が大きく変わり、わが国企業を取り巻く経営環境も激変しました。
こうした中で迎える2021年春季労使交渉・協議は、例年に増して重要な討議の場となります。コロナ禍を乗り越え、企業の再生・発展を図るべく、雇用の維持や自社の実情に適した賃金決定が重要な課題となるほか、生産性向上に資する働き方改革の推進方策についても、企業労使で真剣に議論することが求められています。
そこで、2021年版の「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)では、今年の春季労使交渉・協議における賃金改定や総合的な処遇改善に関する経営側の基本スタンスに加え、社員のエンゲージメントを高める人事労務施策や、コロナ禍で急速に普及したテレワーク推進のあり方、「自社型」雇用システムの検討など、「ウィズコロナ」時代における人事労務改革の重要性について言及しています。あわせて、直近の雇用・労働分野における法改正とそれに伴い企業に求められる対応などについても取り上げています。今次春季労使交渉・協議における経営側の指針書としてご活用ください。

目次は下記のとおりですが、昨年版で話題を呼んだ「ジョブ型」は、今年も5の「自社型雇用システムの検討」の中に、さまざまなケースの中に出てきます。さまざまというのは、メンバーシップ型(全社員)(ケース1)からジョブ型(全社員)(ケース7)まで、縦割り横割りさまざまな組み合わせを提示しているんですね。まあ、そういうことですね。

はじめに
第1章 「ウィズコロナ」時代における人事労務改革の重要性~「ポストコロナ」を見据えて-~
1.働き手のエンゲージメントを高める働き方改革
(1)「働き方改革フェーズⅡ」への深化の重要性
(2)求められるエンゲージメント向上への取組みの強化
(3)現場業務に従事する働き手のエンゲージメント
2.「場所と時間に捉われない働き方」の推進
(1)コロナ禍の下での急速なテレワークの普及
(2)今後の方向性
(3)テレワーク定着に向け企業に求められる取組み
3.見直しが求められる労働時間法制
(1)現行法の課題
(2)裁量労働制の対象拡大
(3)エンゲージメント向上に資する働き方を支える新しい労働時間法制
4.ダイバーシティ&インクルージョンの重要性
(1)女性の活躍推進
(2)障害者の活躍推進
(3)外国人材の活躍推進
5.「自社型」雇用システムの検討
(1)「メンバーシップ型」雇用と「ジョブ型」雇用
(2)自社に適した多様な雇用システム
(3)ジョブ型雇用の導入・活用に向けた論点
(4)今後の課題
6.地域と中小企業の活性化に向けた取組み
(1)地域資源とデジタル技術を活用した魅力的な地域づくり
(2)コロナ禍の下での地方居住をめぐる関心の高まり
(3)東京に本社を置く企業の移転等をめぐる状況
(4)東京圏から地方への人の流れの創出に向けた課題
7.人材育成の重要性
(1)リカレント教育や職業訓練の充実・強化
(2)労働移動の円滑化に向けたマッチング機能の強化
第2章 労働法制の改正動向と諸課題への対応
1.改正高年齢者雇用安定法の施行に向けて
(1)改正高齢法の概要
(2)企業の検討状況と今後の対応
(3)高年齢社員の安全衛生に関する留意点
2.副業・兼業とフリーランス
(1)副業・兼業
(2)フリーランス
3.最低賃金制度に関する考え方
(1)地域別最低賃金
(2)特定最低賃金
第3章 2021年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス
1.わが国企業を取り巻く経営環境
2.連合「2021春季生活闘争方針」への見解
3.経営側の基本スタンス
(1)2020年春季労使交渉・協議の総括
(2)重要性が高まる労使コミュニケーション
(3)2021年春季労使交渉・協議にあたっての基本スタンス

 

 

ジョン・マクドネル編『99%のための経済学』

9784909237569_600 ジョン・マクドネル編『99%のための経済学 コービンが率いた英国労働党の戦略』(堀之内出版)をお送りいただきました。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909237569

新自由主義によって破壊された人々の生活、広がる格差と貧困、富を蓄積する大企業、深刻化する気候変動、そしてコロナ禍……。
次々と襲ってくる「危機」に対して、ヨーロッパの左派はどのように立ち向かおうとしているのか?
本書は、ジェレミー・コービンが党首時代の英国労働党で、経済政策ブレーンたちがその叡智を結集した、革新的で、刺激的な、政策論集。
いまこそ、99%のための経済学を! 

出版人的センスからいうと、うーん、出すのが一歩遅かった、という感じでしょうか。

アメリカのサンダースとともに、左翼3.0(@松尾匡)の代表格だった頃に出しておれば、見事に嵌まったはずですが、2019年の選挙に敗れたあとでもまだ効能はあったでしょうが、反ユダヤ主義で追放されてしまって、素直に左翼ポピュリズムといえるのかというところに来ちゃったのでねえ。

この本を見て思い出したのは、もう半世紀以上昔の本ですが、ペリー・アンダスン編の『ニュー・レフトの思想 先進国革命の道』(河出書房)です。これも、当時のイギリスの左派系知識人が新しい左翼の方向性をあれこれ論じていて、そういう熱っぽい雰囲気が共通しているな、と思いました。

日本語版への序文 ジョン・マクドネル
序 文 ジョン・マクドネル
【第1章】ポスト真実の世界で経済学を民主化する
 アントニア・ジェニングス
【第2章】労働党の財政信頼性ルール
 サイモン・レン=ルイス
【第3章】租税回避問題に取り組む
 プレム・シッカ
【第4章】未来を守るために、英国はグリーン・ニューディールを必要としている
 アン・ペティファー
【第5章】フェアでオープンで革新的!――労働党の国際貿易政策
 バリー・ガーディナー
【第6章】英国経済の「脱金融化」と公共銀行の重要性
 コスタス・ラパビスタス
【第7章】企業の所有形態のモデルを提案する
 ロブ・カルバート・ジャンプ
【第8章】分断を超えて――国の繁栄のための権限移譲
 グレース・ブレイクリー/ルーク・レイクス
【第9章】新しい経済における民主的所有形態
 ジョー・ギナン/トーマス・M・ハンナ
【第10章】新しい地域経済システム――英国と米国を例に
 マシュー・ブラウン/テッド・ハワード/マシュー・ジャクソン/ニール・マキンロイ
【第11章】債務依存と日常生活の金融化
 ジョンナ・モンゴメリー
【第12章】プラットフォーム独占とAIの政治経済学
 ニック・スルニチェック
【第13章】データ・ニューディール
 フランセスカ・ブリア
【第14章】新しい経済と新しい経済学
 J・クリストファー・プロクター
【第15章】ソーシャルインフラへの公共投資で、生産的で持続可能な配慮型経済をつくる
 オズレム・オナラン
【第16章】レンティア資本主義とプレカリアート――コモンズ基金がなぜ必要か
 ガイ・スタンディング
 

 

2021年1月19日 (火)

シフト制アルバイトはゼロ時間契約か?@『労基旬報』2021年1月25日号

『労基旬報』2021年1月25日号に「シフト制アルバイトはゼロ時間契約か?」を寄稿しました。

 昨年初めからのコロナ禍に対する雇用政策でもっとも重視され、金額的にも大きかったのは雇用調整助成金であり、それを補う新たな休業支援金(新型コロナウイルス感染症対策有業支援金)ですが、その中でいままであまり注目されてこなかった問題が露呈してきました。それは、特に飲食店や対人サービス業といった今回コロナ禍の矢面に立たされた業界でよく見られる勤務慣行ですが、勤務日や勤務時間がその都度決められていくいわゆるシフト制のアルバイトです。勤務日や勤務時間が固定されている通常の勤務形態であれば、勤務するはずの日や時間帯に働かなくてもいいと言われれば、それが労基法26条の「休業」であり、雇用保険法施行規則102条の3の「休業」であることは明らかです。ですから使用者は休業手当を支払い、国は雇用調整助成金を支給する。さもなければ今回の新たな休業支援金を支給する、という話になるわけです。
 ところが、飲食店や対人サービス業におけるシフト制のアルバイトの場合、そもそも契約上で勤務日や勤務時間が決まっていません。多くの場合、店長がその都度シフト割を作成して、Aさんはこの日のこの時間帯、Bさんはこの日のこの時間帯、というのを決めていきます。ということは、あらかじめこの日のこの時間帯は必ず就業するというのは存在しないことになります。そうすると、勤務するはずの日や時間帯が存在しないのだから、労基法26条の「休業」は存在しないし、雇用調整助成金の支給対象たる「休業」も存在しないということになってしまいます。実際、今回のコロナ禍で、そのようなトラブルがかなり多く発生したようです。
 ここで同じ「シフト制」という言葉を使いながら異なる概念と区別しておく必要があります。鉄鋼を初めとする連続操業の事業所や、医療のように24時間対応が求められる事業所では、昔から昼夜二交替制とか、8時間3交替制といった勤務形態が見られます。しかしこれらの場合、所定労働時間は決まっていて、それをいくつかの時間帯に分散配置させるだけですし、そのシフト割のパターンもあらかじめ決まっています。ですから、例えばオイルショックで製鉄工場が休業したときに、そこで働く労働者に昼夜シフトが入らなくなればそれは当然労基法26条の「休業」であり、それをなんとかするために雇用調整給付金が作られたわけです。
 これに対し、今回のコロナ禍で露呈した飲食店や対人サービス業のシフト制アルバイトでは、そもそも所定労働時間という概念が成立しにくいように思われます。もちろん労働者である以上労基法は全面的に適用されるのですが、シフトをその都度入れていって、それが法定労働時間を超過しないように、あるいは超過してしまったら時間外手当を払うようにしなければならないということであって、逆にどの日のどの時間帯に就業するかは店長がシフト表を作るまでは何も決まっていない、というのが実態でしょう。それゆえに、店長がシフト表にある労働者のシフトを入れないことが直ちに「休業」とは認識されないのでしょう。
 こうしたシフト制アルバイトの問題に対しては、厚生労働省は文部科学省と共同で2015年から2016年にかけて、学生アルバイト、高校生アルバイトの問題という形で業界に対して要請を行っています。その時に問題意識にあったのは、採用時に合意した以上のシフトを入れられたとか、試験期間にシフトを入れられたなど、学業とアルバイトの適切な両立への影響の問題でした。シフト制アルバイトの労働時間の不確定性が労働時間過多の方向で問題化され、学生の本分である学業とアルバイトの適切な両立のためのシフト設定などの課題へ配慮することが求められたのです。
 ところが今回のコロナ禍で表出したのは、シフト制アルバイトの労働時間の不確定性が労働時間過少の方向に問題化されるという事態でした。具体的にどの日のどの時間帯かは全然決まっていないにしても、大体この期間には大体この程度の分量の勤務時間が入ってくるはずという不確定ながらもある程度確実性のある期待が、直前のシフト表作成時にシフトが入らないという形で裏切られても、それが労使双方に権利義務関係を発生させる「休業」にはならないという事態です。
 この問題は、日本では今回コロナ禍で初めて全面的に表出しましたが、実はヨーロッパ諸国では過去十年近くにわたって「ゼロ時間契約」として問題視されていたものとほぼ同じ問題です。ゼロ時間契約とは文字通り、雇用契約に所定労働時間は決められておらず、その都度呼び出しの形で就業するという雇用形態です。オンコール労働とか、オンデマンド労働という言い方もよくされますが、この「オンコール」という言葉も、いままで存在してきた(通常の所定労働時間外の)待機時間や呼び出し待機時間と言葉が重なるため、やや紛らわしいところがあります。ゼロ時間契約の問題は、呼び出されて働く時間以外に保証された労働時間が存在しないという点にあります。呼び出されない限り、呼び出しの電話やメールを待っている時間は非労働時間ですから、賃金は発生しません。といって、その時間帯に他で働いてしまうと、呼び出しに応じられなくなってしまいます。じりじりしながら呼び出しを待っていなければならないというのは労働者に対して不当ではないか、という問題意識から、近年欧州諸国ではこれに対する法的規制が行われるようになってきました。
 2019年6月に成立したEUの透明で予見可能な労働条件指令については、本誌『労基旬報』2019年9月25日号で紹介したところですが、この中でこのゼロ時間契約に対する一定の規制を試みています。
第4条 通知義務
1 加盟国は使用者が労働者に雇用関係の本質的な側面を通知するよう求められることを確保するものとする。
2 第1項にいう情報は少なくとも次のものを含むものとする。
(m) 労働パターンが完全に又は大部分が予見可能でない場合、使用者は労働者に以下を通知するものとする。
 (i) 作業日程が変動的であるという原則、最低保証賃金支払時間数及び最低保証時間を超えてなされた労働の報酬、
 (ii) 労働者が労働を求められる参照時間及び参照日、
 (iii) 労働者が作業割当の開始以前に受け取るべき最低事前告知期間、及びもしあれば第10条第3項にいう取消の最終期限、
第10条 最低限の労働予見可能性
1 加盟国は、労働者の作業日程が完全に又は大部分が予見可能でない場合、以下の条件をいずれも充足しない限り、労働者は使用者によって労働を求められることがないよう確保するものとする。
(a) 第4条第2項第(m)号第(ii)文にいう事前に決定された参照時間及び参照日の範囲内で労働が行われる場合、
(b) 第4条第2項第(m)号第(iii)文にいう国内法、労働協約又は慣行に従い定められた合理的な事前告知期間をおいて使用者が労働者に作業割当を通知する場合。
2 第1項に定める要件の一又はいずれも充足されない場合、労働者は不利益な結果をもたらすことなく作業割当を拒否する権利を有するものとする。
3 加盟国が使用者に補償を支払うことなく作業割当を取り消すことを許容する場合、加盟国は国内法、労働協約又は慣行に従い、労働者が既に合意した作業割当を使用者が一定の合理的な期限後に取り消した場合には労働者が補償を受ける権利を有することを確保するために必要な措置をとるものとする。
4 加盟国は、国内法、労働協約又は慣行に従い、本条の適用の態様を規定することができる。
第11条 オンデマンド契約への補完的な措置
 加盟国がオンデマンド又は類似の雇用契約の利用を許容する場合は、濫用を防止するために以下の一又はそれ以上の措置をとるものとする。
(a) オンデマンド又は類似の雇用契約の利用及び期間の制限、
(b) 一定期間内に労働した平均労働時間に基づき、最低限の賃金支払対象時間を伴う雇用契約の存在の反証可能な推定、
(c) 濫用の効果的な防止を確保するための他の同等の措置。
 加盟国はかかる措置を欧州委員会に通知するものとする。
 日本ではいままであまり注目されてきませんでしたが、今回のコロナ禍でいかに広い範囲にわたってこのシフト制アルバイトが広がっていたかが可視化されました。このEU指令による規制方法が直ちに日本のシフト制アルバイトに対する対策として有効であるかどうかは検討の余地がありますが、少なくとも政策の方向性を考える上での参考資料にはなると思われます。

 

2021年1月18日 (月)

二宮孝『企業経営を誤らない、「同一労働同一賃金」の具体的な進め方』

9784863198029170x240 二宮孝『企業経営を誤らない、「同一労働同一賃金」の具体的な進め方』(労働調査会)をお送りいただきました。

https://www.chosakai.co.jp/publications/25044/

いよいよ令和2年度(中小企業は令和3年度)から同一労働同一賃金が適用され、
これからの日本の人事賃金制度は、職務分析・職務評価の推進、浸透が避けられません。
しかしながら、大企業でもいまだに手探りの状況です。
一方で派遣社員に対する賃金処遇制度の改正についても、
現場サイドでは相当の混乱を招いているようです。
このように中堅・中小企業の経営者、人事担当者にとってはいまだに着地点が見えない
「同一労働同一賃金」ですが、本書を読むことで現状をより深く理解できるように、
企業経営の現実を見据えながらわかりやすく解説します。
職務(役割)評価・3つの事例(パート・シニア・専門契約社員)
・項目別のQ&Aによって、まさに今、取り組むべきことが見えてきます!

 

 

2021年1月17日 (日)

年末年始に、欧州3か国でプラットフォーム労働関係で判決

欧州労連によると、この年末年始に欧州3か国(スペイン、ベルギー、イタリア)で、プラットフォーム労働の労働者性にかかわる判決が続けざまに出されたようです。ちなみにデリバルーは欧州で一番流行っているプラットフォームデリバリー企業で、日本のウーバーイーツとほぼ同じです。

https://www.etuc.org/en/pressrelease/national-rulings-platform-work-show-need-eu-action

Three rulings in three countries on the rights of delivery riders shows why EU action is needed to end the scandal of platforms not accepting their responsibilities as employers.

A court in Spain found over 700 Deliveroo workers were falsely self-employed, an Italian court found the platform discriminated against riders who take sick leave and the Belgian government found Uber’s working conditions were incompatible with self-employment.

The European Commission is scheduled to launch a consultation on “improving the working conditions of platform workers” on February 24 but these decisions show why workers need action not merely more talk・・・

デリバリー・ライダーの権利に関する3か国の3つの判決は、プラットフォームが使用者責任を受け入れようとしないスキャンダルを終わらせるためにEUの行動が必要であることを示している。

スペインの裁判所は700人以上のデリバルー労働者が偽装自営業者であるとみなし、イタリアの裁判所はプラットフォームが病休をとったライダーを差別したと判断し、ベルギー政府はウーバーの労働条件が自営業者というには不適合だとした。

欧州委員会は来たる2月24日に「プラットフォーム労働者の労働条件の改善」に関して協議を開始する予定であるが、これらの判決は労働者が単なるおしゃべりではなく行動を必要としている理由を示している。・・・

というわけで、来月24日にはいよいよ欧州委員会がプラットフォーム労働者の労働条件について協議を始めるようです。

 

 

シフト制アルバイトの問題(予告)

朝日新聞にシフト制のアルバイトで休業補償がされないという記事が出ていますが、

https://www.asahi.com/articles/DA3S14762299.html「シフト減、補償されず」 休業手当なく支援金も対象外 大手飲食、働き手訴え

飲食店で営業時間の短縮が進むなか、大手チェーンの働き手から、シフトを減らされた分の収入減が補償されないとの訴えが相次いでいる。職場が休業手当を払う必要はないと主張する企業がある一方、そうした場合に国が働き手に直接払う支援金は、大手の働き手が対象外になっているからだ。・・・・

この問題は、シフト制アルバイトにおける「休業」とはそもそも何かという、なかなか原理的な問題にかかわっています。

この点について、近く出る『労基旬報』1月25日号に、「シフト制アルバイトはゼロ時間契約か?」を寄稿していますので、ご参考にしていただければ幸いです。

 

 

 

 

«倉重公太朗編著『【日本版】同一労働同一賃金の理論と企業対応のすべて』予告