フォト
2020年5月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ

2020年5月28日 (木)

JILPT緊急コラム「新型コロナ休業支援金/給付金の諸問題」

JILPT緊急コラムとして「新型コロナ休業支援金/給付金の諸問題」がアップされました。

http://kakuninweb/tokusyu/covid-19/column/011.html

5月15日付の本コラム(「新型コロナ休業への公的直接給付をめぐって」)において、当時創設に向けた動きが進みつつあった新型コロナウイルス感染症に係る休業者への直接給付に関して、失業保険/雇用保険制度における災害時の見なし失業制度や一時帰休に対する失業保険の適用について簡単な解説を行った。その新たな直接給付制度の法案要綱が、5月26日の労働政策審議会職業安定審議会に諮問された。今後、法案が国会に提出され、成立すれば直ちに省令等が制定され、施行されることになる。・・・・

この制度と労働基準法上の休業手当との関係について若干論じています。

 

 

2020年5月27日 (水)

『日本労働法学会誌』133号

Isbn9784589040893 『日本労働法学会誌』133号が届きました。昨年10月に立命館大学で開催された第136回大会の記録です。

https://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-04089-3

既に本ブログでも何回か述べてきたとおり、わたくしは石田眞、石井保雄両氏と一緒に「労働法学は労働法の歴史から何を学ぶか」というワークショップで報告をしました。私のタイトルは「20世紀システムと労働法政策」で、前半は拙著『日本の労働法政策』のあらすじですが、後半は戦後労働法学、とりわけプロレーバー労働法学に対する歴史的認識をちらりと述べており、その後の石井さんの「戦後労働法学の歴史(時期)区分とその特徴」と対比しながら読むと、また一層興趣が湧くのではないかと思います。

そして、本書の冒頭には、毛塚勝利さんの特別講演「戦後労働法学の批判と継承」が載っており、このテーマに大きな示唆を与えています。

 

 

 

 

2020年5月26日 (火)

今スグ使おう!雇用調整助成金@連合

連合が「今スグ使おう!雇用調整助成金」という動画をアップしています。

 

新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律案要綱

本日、オンラインで開催された労働政策審議会の雇用保険部会の資料がアップされています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000633864.pdf

例の休業時の直接給付ですが、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」という長ったらしい名前がついています。

雇用保険法の雇用安定事業として「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」というのを創設するということなんですが、その法律上の規定ぶりがこうです。

政府は、新型コロナウイルス感染症等の影響による労働者の失業の予防を図るため、雇用安定事業として、新型コロナウイルス感染症等の影響により事業主が休業させ、その休業させられている期間の全部又は一部について賃金の支払を受けることができなかった被保険者に対して、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金を支給する事業を実施することができることとすること 

政府は、新型コロナウイルス感染症等の影響による労働者の失業の予防を図るため、新型コロナウイルス感染症等の影響により事業主が休業させ、その休業させられている期間の全部又は一部について賃金の支払を受けることができなかった被保険者でない労働者(厚生労働省令で定める者を除く。)について、予算の範囲内において、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金に準じて特別の給付金を支給することができることとすること

被保険者だけでなく、被保険者でない労働者にも出しますよというのは今日の政策方向としてはいいのですが、問題は太字のところです。休業させられているけど賃金の支払いを受けられないって、労働基準法の休業手当の支給義務があるかどうかとは関係なく、というか、本当は使用者が休業手当を払わなければならない場合であっても、そんなこと言っていては生きていけないから、とにかく支援金や給付金を支給しますよというのは、給付行政としてはそれでいいのですが、ではそれで労働基準法上の休業手当支払い義務がなくなるかというとそういうわけではないはずです。

これ、職業安定行政と労働基準行政をまたいだ結構深刻な問題をもたらす可能性がありますね。この支援金や給付金の支給を受けた休業労働者が、他方で使用者に対し労基法上の休業手当の支払いを求めた場合、この支援金や給付金は別に使用者に代わって支払ったわけではないので(その点で、未払い賃金の立て替え払いとは異なります)、使用者は当該休業労働者が国から支援金ないし給付金を受け取ったことを理由としてその支払いを拒むことはできないと解されます。

しかしそうすると、休業労働者は国と使用者から二重に休業手当を受け取れることになってしまいます。ここんところ、どう整理することができるのか、この資料からだけでは何とも言えませんね。

 

 

雇用類似の働き方に関する現状と課題@『日本政策金融公庫論集』第47号

『日本政策金融公庫論集』第47号に「雇用類似の働き方に関する現状と課題」を寄稿しました。

https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun2005_03.pdf

 近年、第4次産業革命と呼ばれる情報通信技術の発展により、これまで雇用契約の下で遂行されてきたさまざまな業務がプラットフォーム経済、ギグ経済、クラウド労働等々、個人請負等の自営業として行われる傾向が高まり、雇用類似の働き方に対する政策対応が試みられている。雇用類似の働き方の歴史は古く、これまでも家内労働法、労災保険の特別加入といった法政策とともに、在宅ワークガイドラインなど非法制的対応もとられてきた。とりわけ2017年3月の働き方改革実行計画以降、厚生労働省は累次の検討会を開催し、その政策対応を図っている。

 検討会に示されたJILPTの試算によれば、「発注者から仕事の委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対償として報酬を得る者」と定義される雇用類似就業者の数は、全体で約228万人であり、このうち主に事業者を直接の相手とする者は約170万人である。

 諸外国でも雇用類似就業者に対するさまざまな政策対応が試みられているが、近年注目すべきものとして、アメリカのカリフォルニア州で2019年にギグ法といわれる法改正があり、独立請負業者として認められる要件を厳格に限定している。

 

今野浩一郎/佐藤博樹『人事管理入門(第3版)』

9784532135027_2 今野浩一郎/佐藤博樹『人事管理入門(第3版)』(日本経済新聞出版社)をお送りいただきました。ありがとうございます。佐藤先生には、本ブログにコメントしていただいたのとほぼ同時ということになります。

https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/13502

人事管理をめぐり状況変化は続いています。本書は、人事管理の決定版テキストとして好評を博しているテキストの改訂版です。同一労働同一賃金については関連する章で説明し、データも全面刷新しました。新たなテーマについてはcolumnを中心として解説しています。

初版が2002年ですからもう20年近くになりますが、依然としてこの分野の基本書中の基本書ですね。

コラムの中には、トピックス編として「ジョブ型雇用(限定雇用)とメンバーシップ型雇用(無限定雇用)」というのもあり、

・・・限定雇用が欧米企業の雇用システムに該当し無限定雇用は日本企業の雇用システムに該当すると主張するなど、理念型を現実の雇用システムと同視する議論もある。しかし、2つの類型は、雇用システムの理念型であり、現実の雇用システムの特徴を理念型との異同によって把握するための分析概念である。・・・

と、ややもすれば陥りがちな議論に釘を刺しています。

 

 

 

『ビジネス・レーバー・トレンド』2020年6月号

202006 一方、『ビジネス・レーバー・トレンド』2020年6月号はJILPTの調査に基づく「日本人の就業実態の変化」が特集ですが、

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2020/06/index.html

JILPT調査
20 ~ 40 代では男性より女性の方が仕事を生きがいにする割合が高い――30 代女性の就業率が約7ポイント伸びるなどM字カーブは改善傾向に「第3回日本人の就業実態に関する総合調査」結果から 調査部

解説 意欲を持って仕事に生きがいを感じる働き盛り女性の姿が浮き彫りに――正規・非正規の格差解消の環境整備も 就業実態に関する総合調査から8年間のデータの変化を見る 郡司正人・調査部長 

いま現在の状況からすると、その次の

ビジネス・レーバー・モニター(産別・単組)調査 新型コロナウイルス感染症の影響が広範囲に影を落とす 調査部 

が注目でしょう。これは全文PDFファイルで読めますので、是非ざっと目を通してみて下さい。

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2020/06/024-027.pdf

 新型コロナウイルス感染症の影響について、調査対象労組の多くが、景況の悪化による賃金交渉への影響の懸念や、企業における働き方の変化を報告――JILPTが実施した産別・単組対象の「ビジネス・レーバー・モニター」調査の回答からは、例年の賃金交渉とは異なる状況が浮かび上がっている。調査ではモニターの産別、単組に対し、①春季労使交渉での要求の柱と、妥結・合意した賃上げ結果・労働条件改定の内容②新型コロナウイルス問題に起因する国内外の経済状況がどのように影響をおよぼしたか、またそれらが職場の働き方等にどのような変化をもたらしたか――について尋ねた。調査票は産別24組織、単組26組織に配布し、産別6組織、単組9組織から回答を得た。単組はほぼ大手企業の労組が対象。調査期間は2020年3月10日から同月24日。

海外労働事情では、ドイツの「労働社会相、「在宅勤務権」の法案構想――新型コロナウイルスを契機に」という記事が注目です。

これは残念ながらまだネット上では読めませんが、ちょっとだけチラ見せすると、

・・・フベルトゥス・ハイル労働社会相は、ウイルスの脅威が去った後も、労働者が望めば在宅で勤務できる権利(在宅勤務権)に関する法案の構想を発表した。早ければ今年の秋頃に新たな法案が出される可能性がある。・・・

・・・報道によると、フベルトゥス・ハイル労働社会相の提案は、同氏が属する社会民主党(SPD)の議員や野党議員から多くの賛同を得ている。・・・

・・・他方、ドイツ使用者団体連盟(BDA)のシュテファン・カンペテル会長は、時代遅れの政策で、このような立法は不要だとした上で、「人々が在宅で働くだけでは経済は回らない」と述べて反対している。

これ、ドイツに詳しい人による詳報が欲しいところです。

 

 

 

『日本労働研究雑誌』2020年6月号

719_06 『日本労働研究雑誌』2020年6月号は「無償労働と有償労働の間」が特集です。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2020/06/index.html

提言 無償労働の再定義へ 野川忍(明治大学法科大学院教授)

解題 無償労働と有償労働の間 編集委員会

論文 無償労働の経済的評価 橋本美由紀(高崎経済大学非常勤講師)
「無償」労働と賃金 皆川宏之(千葉大学教授)
介護手当と家族介護──ドイツの動向から考える 森周子(成城大学准教授)
家事と仕事をめぐる夫婦の関係 永井暁子(日本女子大学准教授)
労働の動機づけにおける金銭的報酬と非金銭的報酬の役割 村山航(レディング大学教授) 

このうち法律論は皆川さんの論文だけですが、概説的で、もう少し突っ込みがあればよかったかなという感もあります。

とりわけ、今回の高齢法改正で65歳から70歳までの就業メニューにも入ってきた有償ボランティアについては、法律論として突っ込みどころが満載で、それだけで一本論文を立てても良かったくらいだと思うので。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/07/post-92e181.html(さわやか福祉財団『いわゆる有償ボランティアのボランティア性』)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-08b743.html(有償ボランティアの労働者性@WEB労政時報)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-d8ca.html(ボランティアといえば労働じゃなくなる?)

もちろん、ボランティア活動はたいへん崇高なものではありますが、とはいえ親分が「おめえらはボランテアなんだぞ、わかってんだろうな」とじろりと一睨みして、子分がすくみ上がって「も、もちろんあっしは労働者なんぞじゃありやせん」と言えば、最低賃金も何も適用がなくなるという法制度はいかがなものか、と。 

 

 

 

 

就業形態による社会保険格差の盲点-傷病手当金@WEB労政時報

WEB労政時報に「就業形態による社会保険格差の盲点-傷病手当金」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/login.php

新型コロナウイルス感染症に対する対策として、労働社会政策においてもさまざまな施策が打ち出されていますが、その中に日ごろあまり世間の関心を惹かないある分野が顔を出しています。それは、3月10日の「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策 ―第2弾-」にあるこの一節です。・・・・ 

傷病手当金とは、健康保険等公的医療保険の被保険者が疾病または負傷により業務に就くことができない場合に、療養中の生活保障として保険者(全国健康保険協会、健康保険組合等)から行われる金銭給付です。実物給付である療養の給付と並ぶ重要な給付なのですが、社会保障に関する議論ではあまり重視されない傾向があります。・・・・ 

今回のコロナ危機は、様々な雇用形態、就業形態間の格差を露わにしましたが、その一つとして、あまり意識されない傷病手当金を取り上げてみました。

 

ホストクラブとキャバクラはメンバーシップ型とジョブ型?

Image_20200526065101 いまや、ジョブ型、メンバーシップ型という概念はほとんど何にでもつくくらいポピュラーになったんだなあ、としみじみ思うような文章がありました。

新宿、歌舞伎町の元売れっ子ホスト手塚マキさんのインタビュー記事から。 

https://www.timeout.jp/tokyo/ja/things-to-do/interview-maki-teduka

・・・ホストクラブとキャバクラの違いについて、私は「メンバーシップ型」と「ジョブ型」という言い方をよくします(濱口桂一郎著『若者と労働』より)。高度成長期の日本のように、とにかく一度雇って本人の個性や魅力を判断し、うまく成長させていくのがメンバーシップ型、女の子が入店初日から商品価値を問われるのがジョブ型です。
では、ホストクラブは?というと、思い切りメンバーシップ型です。まだ何者でもない男の子たちを、とりあえず受け入れて育てていくわけですから。しかも、ホストクラブというのは、一見さんが来ていきなり10万円を使うことはほぼありません。最初は3,000〜5,000円程度のお試し価格で入店し、顧客がホストを気に入り指名するようになって、初めて売り上げが立つのです。・・・ 

ふうむ、そうなのかぁ。

 

2020年5月25日 (月)

『Japan Labor Issues』5・6月号

Jli_20200525214301 JILPTの英文誌『Japan Labor Issues』5・6月号がアップされました。

https://www.jil.go.jp/english/jli/documents/2020/023-00.pdf

Trends Key topic: Challenges Facing Japan: Work Styles and Labor Shortages: MHLW’s White Paper on the Labor Economy 2019

Research Research notes: Realities of Restructuring Enterprise Organization in Japan: Frontlines of Industrial Relations OH, Hak-Soo

Judgments and Orders Worker Status of the Joint Enterprise Cooperative Members The Joint Enterprise Cooperative Workers’ Collective Wadachi Higashimurayama Case HAMAGUCHI Keiichiro

Japan’s Employment System and Public Policy 2017-2022 Wages in Japan Part I: Why Does Japanese Wage Curve Have a Strong Seniority Element? NISHIMURA Itaru 

呉学殊さんの企業組織再編に係る労使関係の分析、西村純さんの日本の賃金制度の分析に挟まれて、わたくしの判例評釈は企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山事件で、テーマは企業組合メンバーの労働者性です。これは、一見周辺的なトピックのようですが、なかなか興味深い問題を提起していると思います。

 

 

2020年5月23日 (土)

菅野和夫『労働法の基軸』

L24322 菅野和夫著、岩村正彦・荒木尚志聞き手『労働法の基軸 学者五十年の思惟』(有斐閣)をお送りいただきました。菅野先生が自らの人生を弟子の岩村・荒木両氏に語った本です。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641243224

副題には「学者五十年」とありますが、それ以前の生い立ちから幼少時代、学生時代のこともたっぷりと語られています。冒頭、菅野先生のお父様が満州からソ連に抑留され、シベリアのチタ州の収容所で亡くなったこととか、中学校のクラスの半数以上が集団就職していったこととか、ほかの3人兄弟は商業高校に進学し、和夫先生だけが普通科に行ったこととか、1950~60年代の地方の有様が浮かび上がってきます。

学生時代は全然授業に出ず、合気道ばかりやっていて、司法試験に合格して司法修習所で修習が終わるころ、労働弁護士を目指して旬報法律事務所に就職が決まっていたのが、突然石川吉右衛門先生に「助手になれ」と言われて、一転研究者人生が始まった・・・というあたりもなかなか波乱万丈です。

その後も、この目次のように、実に幅広い活躍をしてこられているので、話の広がりが大きいです。

第1章 ふるさとから東京へ
第2章 労働法学へ
第3章 菅野労働法学
第4章 労働政策への関わり
第5章 労働委員会での労使紛争処理
第6章 国際人として
第7章 大学人として
第8章 JILPTの調査研究に参加して
第9章 研究者生活を通じて
終 章 労働法五十年の変化をみつめて 

非常に多くの方が、自分にかかわりのあるところをどこかに見出すでしょうが、私の場合、もちろん菅野先生がJILPT理事長だったころにその部下としてお仕えした時期がそれにあたります。独法改革で国際関係業務がバッサリ削られていたJILPTの国際プレゼンスを高めなければならないという大号令で始まった国際比較労働政策セミナーの第2回目で、理事長から「君が基調報告をやれ」と言われ、逃げ回っても許してくれず、おぼつかない英語でやらざるを得なかった記憶が、316ページ辺りを読んで蘇ってきました。

 

 

 

2020年5月22日 (金)

請負でも実態で労供というのは戦前から

ついでに、もひとつ労働法政策トリビアを。

下のエントリで極めて重要といった職業安定法施行規則改正第4条ですが、実は形式は請負といっていても、実態が労供なら労供と判断するってのは、戦前の1938年の改正職業紹介法に基づき労務供給事業が規制対象となって時からのものなんですね。

労務供給事業規則に関する疑義の件(昭和13年10月15日収職第514号)で、「事業請負の形式なるもその内容は主として労務の供給をなす場合」は「その形式の如何を問わず労務供給事業として労務供給事業規則の適用を受くべきもの」と回答しています。

派遣請負区分告示の一番早い時期の源流はおそらくこの通牒だと思われます。

職業安定法施行規則は1条ずつずらしていた!

はっきり言って、これは超ウルトラトリビアですので、労働法政策のトリビアに関心のない人は読まない方がいいです。

11021851_5bdc1e379a12a_20200522173401 さて、労働力需給調整システムの立法史において、1948年2月の職業安定法施行規則により挿入された第4条の労働者供給事業と請負の区分基準は、後に労働者派遣事業と請負の区分基準告示のもとになったものとして極めて重要な意味を持っています。拙著『日本の労働法政策』においても、このようにその経緯が記述されています。

・・・・ある意味では戦後職業安定法の最大の特徴は労働者供給事業のほぼ全面的な禁止にあると言うこともできる。この禁止については、法律で「何人も、第四十五条に規定する場合(=労働組合が許可を受けた場合)を除くの外、労働者供給事業を行つてはならない」(第44条)と規定しただけでは足らず、たとえ契約が請負の形式であっても労働力を主体とする作業は労働者供給事業として禁止せよとGHQの厳命が出た。これにより、GHQ指示メモの通りに1948年2月職業安定法施行規則が改正され(第4条)、たとえ契約が請負契約であっても、①作業の完成について事業主としての財政上並びに法律上の全ての責任を負うものであること、②作業に従事する労働者を指揮監督するものであること、③作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定された全ての義務を負うものであること、④自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要な簡単な工具を除く)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は専門的な企画、技術を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと、という4要件を全て満たさない限り、労働者供給事業と見なして禁止するというところまで行きついた(請負4要件)。・・・・ 

さて、職業安定法施行規則を改正して新たに第4条を設けた・・・とすると、改正前の第4条はどうなったんでしょうか?当然あったはずですよね。

というわけでいろいろ探してみたのですが、なにしろ、そもそも職業安定法施行規則自体ができたのが1947年12月27日で、できてすぐに改正されているんですね。その2か月足らずの間の条文というのがなかなか見つからない。

ようやく探し当てて、第4条を見たら・・・・改正後の第5条でした。第5条を見たら改正後の第6条でした。以下同文で、結局最後の第34条が改正後の第35条でした。

なんと、第3条と第4条の間に新たに1条を挿入するのに、その後ろの条文をすべて1条ずつずらすというやり方をしていたんですね。

今だったら当然、第3条の2とするところですが、終戦直後の時代にはこんな法制執務でやっていたのでしょうか。

 

 

フルプレイヤーとして働く高齢者が必要なんだが

本体ではなくしっぽの検察官の定年延長ばかりに焦点が当たって炎上した国家公務員法改正案は、当の某認証官の賭けマージャン退職に揺れる中で、本体の見直しに向かいつつあるようです。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000184528.html(国家公務員法改正案 安倍総理見直し検討の考え)

 安倍総理大臣は検察官を含む国家公務員の定年の延長を可能にする国家公務員法の改正案について、見直しを検討する考えを示しました。
 安倍総理大臣:「この法案を作った時とは状況 が違っているのではないかという(自民)党にもそういう意見があることも承知している。そうしたことを含めてしっかりと検討していく必要はあるんだろうと思っている」
 改正案について、自民党内からは新型コロナウイルスの影響で雇用情勢が悪化しているなかで「公務員だけ定年を延長してよいのか」と見直しを求める声が上がっています。安倍総理は「定年延長を含む制度改革は国民の意見に耳を傾けることが不可欠だ。国民の理解なくして前に進めることはできない」とも述べ、見直しを検討する考えを示しました。 

この自民党内の声は、あたかも定年を引き上げることが労働者(本件では公務員)の有利であることが前提になっているようですが、世界的にはむしろ、フランスの労働組合の定年引上げ反対デモに見られるように、逆の考え方も多く見られます。

基本に立ち返って考えれば、もし提供する労務とその対価として支払われる給与が釣り合っているならば、一方的に有利でも不利でもないはずですが、日本では定年引上げが労働者に有利であるように受け取られるのは、いうまでもなく高齢層(それに先立つ中高年層)において、提供する労務とその対価として支払われる給与が釣り合っていない、要するにその働きよりもたくさん給与をもらっていると思われているからであり、それは日本型雇用システムにのっとり年功的な給与体系のもとでは、多くの場合事実であるからでしょう。

いやむしろ、定年前の段階では、働きよりもたくさん給与をもらっていること大前提にして、7割に引き下げるという(同一労働同一賃金原則に正面から反する)ことを平然とやろうとしているのが今回の改正案なのですが、そっれでもなお、提供するであろう労務に比べて釣り合わない高すぎる給与だと、みんな思っているから、こういう反応が出てくるわけですね。

12日前に本ブログで書いたように、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-1cb698.html(メンバーシップ型公務員制度をそのままにした弥縫策としての改正案)

・・・でもね、国家公務員法という法律は今から70年以上も昔、純粋ジョブ型公務員制度として出発していたということを知っている人からすれば、ここまでジョブ型原理に反する年齢差別的な仕組みを持ち込まないと動きが取れないほどに、メンバーシップ型の制度になり果ててしまったんだなあ、と思い半ばに過ぎるものがあるかもしれませんね。 

結局、年齢が上がるにつれてその貢献に比べてもらいすぎになるという構造をそのままにして、年金改正に合わせた高齢者雇用を進めようとすれば、こういう矛盾が露呈することにならざるを得ないわけですが、そういう一番肝心かなめの議論をみんな回避して、枝葉末節のことばかりにかまけてきたことのツケが、今の惨状なのかもしれません。

もひとつ、今回の改正案について、しっぽじゃない本体それ自体の問題点に着目していた数少ない議論として、厚労省を退職した千正康裕さんの議論がありました。

https://note.com/yasusensho/n/n42cc6c902943(誰も指摘しない検察庁法改正法案の最大の懸念)

 改正法案で導入されるのはいわゆる役職定年と定年延長です。
平たく言うと、60歳超えると幹部にはならずに給料が7割に減るということです。
つまり、幹部ではなくスタッフになるわけですが、さすがに60歳超えた人に、24時間、土日対応は難しいと思いますし、させるべきでもありません。時間ではなく、知識や経験を活かすような形で働いてもらうしかないでしょう。
また、国家公務員は定員が法令で決められていて全体の人数は変わらないので、定年延長される人の分、60歳以下の職員の人数が減ることになります。
結果として起こることは、24時間、土日対応可能な職員の割合がますます減っていくということです。

そもそも論でいえば、今の霞が関のような常時「24時間、土日対応可能」を前提とする仕組みそのものが異常なので、それこそ真っ先に見直されるべきではありますが、そうでなくても、普通のまともなフルの働き方すらできなくなっている(いわゆる「働かないおじさん」)ということも、この問題の背景にあるでしょう。日本型雇用システムのもとでは、管理職というのはマネジメントという一個の専門職ではなく、勤続への報償的性格を有するため、マネジメント能力の足りないしろうと管理職が給与が上がるにつれて却ってプレイヤーとしての能力を減退させていき、役職を外されると、かつてはそれなりにあったはずのプレイヤーとして活躍することすら難しくなり、やることなくただ高給を食んでいるとみなされていくわけです。そうなると、7割に給与を下げたところで、もらいすぎに変わりはなく、そんな公務員に一方的に有利な改正は見直せというような意見が、もっともらしく見えてくるわけですね。

その意味では、本来必要であり進めるべき定年引上げの前提条件としては、年功的な給与体系を働きに見合ったものにどうしていくかということに加えて、そもそも(素人管理職にすることなく)フルのプレイヤーとして若年期から中高年期、そして高齢期の65歳までを一貫して働き続けるような人事管理のシステムをどう構築していくかという大きな課題があるといえるのでしょう。

で、もともと国家公務員法はそういう設計(職階制)で作られていたんだけどね、とぼそっとつぶやいてみたりするわけですが。

 

 

«野川忍編著『労働法制の改革と展望』